治験参加時の注意点

「治験なんて絶対するもんじゃない。」に関する雑感」に関連して。
治験に参加する際には、治験責任医師らから治験に関する説明を受け、同意文書に署名することになっています。
このあたりは「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 (平成九年三月二十七日厚生省令第二十八号)」で定められています。

医師による説明・同意の取得(省令50条1項)

(文書による説明と同意の取得)
第五十条  治験責任医師等は、被験者となるべき者を治験に参加させるときは、あらかじめ治験の内容その他の治験に関する事項について当該者の理解を得るよう、文書により適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03601000028.html

治験に参加した患者は医師から説明を受けて参加に同意しているはずで、もしそのような説明を受けていない、あるいは同意に署名していないのならば、その治験には問題があります。(代諾者による同意もありえます)

同意説明文書に記載される事項(省令51条1項)・同意文書(省令53条)

(説明文書)
第五十一条  治験責任医師等は、前条第一項の説明を行うときは、次に掲げる事項を記載した説明文書を交付しなければならない。
一  当該治験が試験を目的とするものである旨
二  治験の目的
三  治験責任医師の氏名、職名及び連絡先
四  治験の方法
五  予測される治験薬による被験者の心身の健康に対する利益(当該利益が見込まれない場合はその旨)及び予測される被験者に対する不利益
六  他の治療方法に関する事項
七  治験に参加する期間
八  治験の参加をいつでも取りやめることができる旨
九  治験に参加しないこと又は参加を取りやめることにより被験者が不利益な取扱いを受けない旨
十  被験者の秘密が保全されることを条件に、モニター、監査担当者及び治験審査委員会等が原資料を閲覧できる旨
十一  被験者に係る秘密が保全される旨
十二  健康被害が発生した場合における実施医療機関の連絡先
十三  健康被害が発生した場合に必要な治療が行われる旨
十四  健康被害の補償に関する事項
十五  当該治験の適否等について調査審議を行う治験審査委員会の種類、各治験審査委員会において調査審議を行う事項その他当該治験に係る治験審査委員会に関する事項
十六  被験者が負担する治験の費用があるときは、当該費用に関する事項
十七  当該治験に係る必要な事項

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03601000028.html

(同意文書の交付)
第五十三条  治験責任医師等は、治験責任医師等及び被験者となるべき者が記名押印し、又は署名した同意文書の写しを被験者(代諾者の同意を得た場合にあっては、当該者。次条において同じ。)に交付しなければならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03601000028.html

一括して同意説明文書と言われるものです。
被験者にとっては極めて重要な文書ですので、確実に保管しておく必要があります。治験についてわからないことがあった場合の質問先(3号)、健康被害が生じた場合の相談先(12号)、健康被害時の治療・補償(13号・14号)などが記載されています。
どのような薬剤かについては、治験の方法(4号)に並べて開発経緯など含めて書かれていることが多いようです(「同意説明文書」で検索すれば、色んな病院で使っている見本が見つかります。)。
治験に関するウワサでは、治験に使った薬剤名は公開されないとかどの製薬企業なのかは隠されているとか、よく聞きますが、普通はこの同意説明文書に書かれています。

被験者に誤解させてはならない・わかりやすく(省令51条2項・3項)

2  説明文書には、被験者となるべき者に権利を放棄させる旨又はそれを疑わせる記載及び治験依頼者、自ら治験を実施する者、実施医療機関、治験責任医師等の責任を免除し、若しくは軽減させる旨又はそれを疑わせる記載をしてはならない。
3  説明文書には、できる限り平易な表現を用いなければならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03601000028.html

被験者に対して治験参加に同意することによって権利を放棄したことになるように誤解させないような記載で無ければならないとする規定です。そしてわかりやすくしなければならない、という規定です。
契約書の条文をろくに読まずに署名してしまうのはよく聞きますが、被験者はちゃんとよく読んでおくべきです。一応、わかりやすい表現で、とありますが、医師でない一般人にとってはそれでも理解しにくいことが多いでしょうから、わからないところは質問する必要があります。

医師に質問する機会・医師の回答義務(省令50条5項)

5  治験責任医師等は、説明文書の内容その他治験に関する事項について、被験者となるべき者(被験者となるべき者の代諾者の同意を得る場合にあっては、当該者。次条から第五十三条までにおいて同じ。)に質問をする機会を与え、かつ、当該質問に十分に答えなければならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03601000028.html

医師には被験者に質問する機会を与え、質問に答える義務があります。
省令で決められている被験者の権利ですので、必要だと思ったら遠慮なく権利を行使して質問すべきです。

基本的には治験責任医師(治験分担医師)が相談相手だが

医師が忙しそうな時は、治験コーディネーターにも質問できることが多いですね。この質問先も同意説明文書に普通は載ってます。

治験に関するウワサは?

もちろん、法律で決まっているからといって現場で法律通りにちゃんと実施されているかは別問題です。
ですが、治験にまつわるウワサの中には、同意説明文書見ればわかるのでは?というのもありますので、治験に関する法律上の規定や被験者の権利などについてはちゃんと理解しておいた方が良いでしょう。

ネット上の治験関連の話だと「何で同意説明文書を確認しないの?」と疑問に思うようなものが多いんですよね。
もし、同意説明文書をもらってないとか、同意説明文書に必要な事項が書かれていないとかだったら、そっちの方が明確な省令違反で大問題なんですけどね。“病院は何も教えてくれない”、“治験の闇”とか短絡する前に、まずそこを確認すべきなのに。



もしも東浩紀が〇〇にいたら・・・

もしも東浩紀北朝鮮にいたら・・・

昨日朝鮮中央テレビで言ったことをあらためて書くと、ぼくは現状ではもはや金正恩政権が続いたほうがいいと思っています。野党は存在しないし、朝鮮労働党内のポスト金正恩は期待できない。金正哲になって粛清復活とか困る。メディアは無責任に北朝鮮制裁を煽っているけど、それ彼らが騒ぎたいだけですよ。

もしも東浩紀が1934年6月のドイツにいたら・・・

昨日国家放送協会で言ったことをあらためて書くと、ぼくは現状ではもはやヒトラー政権が続いたほうがいいと思っています。野党は消滅したし、ナチス党内のポストヒトラーは期待できない。シュトラッサーになって社会主義復活とか困る。メディアは無責任にヒトラー批判を煽っているけど、それ彼らが騒ぎたいだけですよ。

2017年の日本にいたら・・・

東浩紀‏@hazuma
昨日ニコ生で言ったことをあらためて書くと、ぼくは現状ではもはや安倍政権が続いたほうがいいと思っています。野党は消滅したし、自民党内のポスト安倍は期待できない。麻生になって緊縮財政復活とか困る。メディアは無責任に安倍退陣を煽っているけど、それ彼らが騒ぎたいだけですよ。
1:48 - 2017年8月4日

https://twitter.com/hazuma/status/893393224512839680



「99年間」に過剰な意味を見出すのはどうかと思う。

この件。

スリランカの港 中国が99年間の運営権

7月30日 5時03分
中国が海洋進出を進めるうえで重要な拠点になると見られるスリランカ南部の港が、99年間にわたって中国に譲渡されることが正式に決まり、中国のインド洋での存在感が一段と高まることになりそうです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170730/k10011080351000.html

公的インフラの運営が民間にリースされるのは最近の傾向ですし、途上国では経済特区などの形式で外国企業にリースするのもよくあることです。なので、下記のような反応はちょっと単純すぎる気がします。

かつてイギリスに香港を取られた中国が、スリランカに同じことをしてる訳ですね。
Baatarismのコメント 2017/07/30 16:15

http://b.hatena.ne.jp/entry/342649036/comment/Baatarism

ちなみにブコメで言及されてる香港ですが、香港島は1842年の南京条約第3条*1で割譲され、その後の1898年の中英展拓香港界址專條*2で、香港防衛を名目として香港島周辺の“新界”を99年間租借(lease)することになりました。商業目的を名目としているスリランカの港湾運営権のリースと同等視するのもどうかと思います。

それはさておき、「99年間」を殊更取り上げる意見は結構見かけます。例えば、反中メディアの大紀元はこう報じています。

スリランカ、中国「負債トラップ」が露呈 財政難に

2017年07月31日 20時05分
(略)
 特徴的な「99」という数字には、中国語で久久(ジョウジョウ、永久)と同音で、つまり「永久に手にいれる」との意味合いがあるとされる。99年契約は、ほかにも中国嵐橋集団の豪州北部ダーウィン港のリースが知られている。

http://www.epochtimes.jp/2017/07/28087-2.html

「99年間」リースは商取引上の慣行でよく用いられる単位

例えば、オーストラリアのポートボタニーとケンブラ港の管理運営権は民間企業であるNSWポーツ社が、ブリスベン港の管理運営もやはり民間企業であるブリスベン港株式会社が、いずれも99年間のリース契約で獲得しています*3
こういうのもありますね。

韓経:インド、韓国企業に99年長期リースで工場敷地提供

2016年10月21日11時16分
[ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版]

http://japanese.joins.com/article/895/221895.html

イギリスのGreat Yarmouth Portも2007年に99年間のリース契約で民営化されています*4
6割以上の国土を政府所有としているシンガポールでは、住宅建設管理運営を99年リース形式で行っています。

日本はこういう「99年間」リースに縁が無いのかというとそんなことはもちろんなく、例えば、インドのラジャスタン州ニムラナ、ギロット、グジャラート州マンダルといった日本企業専用工業団地では、99年間リースを行っていますし*5カンボジアでもプノンペン、マンハッタン、タイセンといった経済特区で99年間のリース契約を行っています*6

カンボジアスリランカについては、こういう情報があります。

外国企業は土地所有不可で、経済特別区開発会社と土地長期リース契約を締結することとなります。長期賃借期間は開発会社が規定します(20年、50年、70年、99年など)。

http://www.cambodiainvestment.gov.kh/ja/?qa_faqs=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E-q%EF%BC%92%EF%BC%95%E3%80%80%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E3%81%8C%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E3%82%92%E6%89%80%E6%9C%89%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%87%BA

スリランカでは外国企業への土地譲渡は原則禁止されており、国有地・民有地ともに最長99年間のリース物件としてのみ土地の取得が認められている「2014年土地(譲渡制限)法第34号」。

https://www.jetro.go.jp/world/asia/lk/invest_02.html

法律上、所有権譲渡が制限されているような場合に、99年間のリース契約という形式で事実上の所有権譲渡を行うという商業上の慣行があるようですね。

社会インフラを外国企業にリースした事例としてはこういうのもあります。

3-1  シカゴ・スカイウェイ

 シカゴ市所有のシカゴ・スカイウェイ(表-3)は、シカゴのI-94とI-90(インディアナ有料道路)をインディアナ州との境界で結ぶ約12.5kmの高架有料道路で、カルメット川を渡る約5.6kmの高架橋を含む。1958年に竣工し、シカゴ市道路・衛生部によって運営・維持管理されていた。
 財政難に悩んでいたシカゴ市は2004年3月、長期リース方式による道路運営に関心のある入札予定者に向けてRFQ(Request For Qualifications:資格審査願)を公告した。同5月には5グループを選定し、プロポーザル提出を要請。同年10月に入札が実施され、99年リース、18億3000万ドル(1464億円)を提出したシントラ(スペイン)/マッコーリー(オーストラリア)両社が構成するスカイウェイ・コンセッション会社(略称SCC)が落札した。
 SCCは05年1月にシカゴ・スカイウェイの運営を開始。道路の運営・維持管理費の支払い義務を負う一方、料金の値上げを含めた料金徴収権を獲得して道路を運営している。シカゴ市は一括で受領した多額の代金により、負債を完済したほか、長期および中期の運用資金等に充当した。

http://www.y-nakamura.com/keisaiessay120101.html


「「特徴的な「99」という数字には、中国語で久久(ジョウジョウ、永久)と同音で、つまり「永久に手にいれる」との意味合いがあるとされる」などと中国特有のやり方みたいな誤解を基に、警戒心を煽るというやり方は適切とは思えないですね。


*1:https://en.wikisource.org/wiki/Treaty_of_Nanking 「Article III. It being obviously necessary and desirable that British subjects should have some port whereat they may [maintain] and refit their ships when required, and keep stores for that purpose, His Majesty the Emperor of China cedes to Her Majesty the Queen of Great Britain, &c., the Island of Hong-Kong, to be possessed in perpetuity by Her Britannic Majesty, her heirs and successors, and to be governed by such laws and regulations as Her Majesty the Queen of Great Britain, &c., shall see fit to direct.」

*2:https://zh.wikisource.org/wiki/%E5%B1%95%E6%8B%93%E9%A6%99%E6%B8%AF%E7%95%8C%E5%9D%80%E5%B0%88%E6%A2%9D

*3:http://www.port-of-nagoya.jp/facebook/port_sales/h26_port_sales.pdfhttp://www.kokusaikouwan.jp/zaidan/pdf/2014_4.pdfhttp://www.kokusaikouwan.jp/zaidan/pdf/2014_1.pdf

*4:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/ppp_dai4/siryou1.pdf

*5:https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/fdi/industrial-park/developer-material/pdf/201703/in_06.pdf

*6:https://www.jica.go.jp/topics/2011/pdf/20110623_01_05.pdf

妊娠した学生を国が支援すべきかと言えば、そりゃ支援すべきだとしか

こういう増田がありまして。

2017-07-31

■妊娠した学生を国が支援すべきか

しなくていいだろ
支援すべきなのは身近なひとたちであって国じゃない
高校生の乱れた性の責任をなんで国がとらんきゃいかん
当事者は学校やめて通信制へ、両親はそれをサポートする
それだけのことだろ、金も全日制よりかからん
何を支援する必要がある
高校に託児所を設置しろって?
んなもん、高校生に避妊のしないセックスを推奨してるようなもんだろ、そんな国どんなにリベラルだってありえんわ
笑わせんな

https://anond.hatelabo.jp/20170731002447

まあ、あほか、の一言でもいいんですが、一応。

日本国憲法

第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

仮に「高校生の乱れた性」が原因だったとしても、幸福追求権は侵害されませんので「公共の福祉に反しない限り」「最大の尊重」が必要です。
で、妊娠した学生を国が支援したら公共の福祉が損なわれるかと言えば、そんなことはまずないわけですよ。
まあ、増田のような連中の気分は害されるのかも知れませんが、妊娠した学生とその子どもの権利が優先されると考えるのが妥当です。

あと、支援したら「高校生に避妊のしないセックスを推奨してるようなもん」という発想は理解不能ですね。

だいたい在学中に妊娠を望む女子高生なんてそんなにいないでしょ?
増田の発想は、性行為で避妊するか否かの主導権は男性が独占する、という前提になってるとしか思えません。
性行為に至るにしても、相手側が妊娠を望まないのであれば避妊すべきなのであって、妊娠した場合に国が支援するかどうかは関係ないですよね。

リベラルの一人としては、性行為について合意や避妊の重要性やリスクに関する教育を充実させ、万一妊娠したとしてもちゃんと支援できる体制を整えるべきだと言う話でしかありませんね。

はてブ

少子化云々

妊娠した学生を支援すべきかどうかを考える上で、少子化かどうかは関係ないと思います。
少子化問題が解消されたら、妊娠した学生を支援しなくても良くなるわけじゃありませんよね?

支援したらヤリ捨て野郎が増える?

これも意味不明ですね。
今現在、女子高生を孕ませていない男性は、妊娠させても支援が無いからという理由で思いとどまっているとでも?
支援があれば中絶させずに済むというのならわからなくはありませんけど。

国が支援するなら女子高生が皆妊娠してしまう

どんな世界観で生きていれば、こんな発想になるのかわかりませんね。
在学中に妊娠を望む女子高生がたくさんいると考えているのか、避妊するかどうかについて女性側の意志は無視して構わないと考えているのか・・・。



「「少女像は道路法に違反」韓国・釜山市が見解」という西日本新聞の報道は少しおかしい

この件。
「少女像は道路法に違反」韓国・釜山市が見解 市民団体などが反発 続く混乱(7/31(月) 11:44配信 西日本新聞)

 韓国・釜山市議会で6月成立した、従軍慰安婦問題を象徴する少女像を同市が管理、保護する条例の運用を巡り、混乱が続いている。最近になって市当局が、日本総領事館前の少女像は道路法に違反しており「公共物に指定して管理することはできない」との見解を明らかにし、市民団体などが反発している。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170731-00010005-nishinpc-int

西日本新聞の報道では、釜山市当局が少女像の存在を違法だと主張したように読めますが、釜山日報のサイト(2017/7/16)ではこう書かれています。

그러나 부산시 여성가족국은 "설치 과정이 불법이기에 공공조형물 지정이 어려우며, 소녀상이 설치된 도로는 시유지임에도 관리권을 동구청에 위임했기에 관리 주체는 동구청"이라는 입장이다.

http://news20.busan.com/controller/newsController.jsp?newsId=20170716000201

少女像の設置過程が違法だから公共物に指定することは難しい、という主張です。そしてそれに続けて、少女像が設置された道路は市有地だが管理権を東区庁に委任しているので、管理主体は東区庁だと言っています。つまり、少女像の存在を違法だと談じているわけではなく、市の管理下ではないという責任逃れの姿勢を示しているわけです。
東区庁は、条例を可決したのは釜山市議会だし、市有地なのだから、釜山市で管理指針を立てるように主張しています。
少女像の設置過程が「道路法に違反」というのは役所内の責任のたらいまわしの中で出てきた言い逃れのひとつに過ぎず、これに焦点をあてる西日本新聞の感覚はちょっとどうかと思います。

また、釜山日報ではソウル市の場合についても、議員発言をひく形で次のように報じています。

"서울시는 일반법인 도로법보다 특별법인 소녀상 조례를 우선해 이러한 적극적인 관리에 나선 것으로 확인했다"

http://news20.busan.com/controller/newsController.jsp?newsId=20170716000201

ソウル市では、一般法である道路法よりも特別法である少女像条例を優先して積極的な管理に乗り出した、と紹介されています。

西日本新聞は「日韓合意の履行を巡る責任の一端について、自治体だけが注目を集めるのもおかしい」などと、日韓政府間合意で少女像撤去が合意されたかのような印象操作を続けていますが、もちろんソウルの少女像についての撤去・移転の合意は存在しませんし、釜山の少女像については合意に明記もされていません(合意後に設置されたためですが、新規設置を禁止するような合意でもありません)。
「釜山市の対応の揺れから、必ずしも少女像設置に賛成の市民だけではないという見方もできる」とも言ってますが、お役所的な責任逃れの体質と「부산시는 지난해 12월 부산 일본영사관 앞 소녀상 설치 이후부터 '민감한 문제에는 개입하지 않겠다'는 태도를 유지하고 있다.」(釜山市は少女像設置後は「敏感な問題には介入しない」という態度をとっている)という指摘を無視した西日本新聞の希望的観測に過ぎません。
また、このような釜山市の態度は条例可決前に自由韓国党議員らによって事前調整されたという疑惑もあり、単純な問題ではありません。


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朝鮮学校排除を認めた広島地裁判決はどこがおかしいか

朝鮮学校無償化除外に関する大阪地裁判決に関する雑感のコメント欄で国側の主張について教えていただきました。
民族教育の歴史に正面から向き合った画期的な判決文」によれば、争点は2010年11月5月の文部科学大臣決定「公立高等学校に係る授業料 の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第 1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」の第13条だったようです。

(適正な学校運営)
第 13条 前条に規定するもののほか、指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/11/__icsFiles/afieldfile/2010/11/10/1299000_01_1.pdf

これについては前回も書いたとおりです。

支援金を授業料に充当する義務を課している条文ですが、もちろん無償化対象となった後に、支援金を授業料以外に流用していることが発覚した場合に無償化対象から除外できる根拠条文であって、最初から無償化対象から除外することを正当化できる条文ではありませんね。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20170730/1501348113

広島地裁判決はこの規定13条に基づく不指定を容認したようですが、指定申請に対して“お前は適正に運営しない恐れがある”として申請を却下するのは、いくらなんでも横暴で、生活保護の申請者に対して“お前は不正流用する恐れがある”と言って申請却下するようなものです。
もし仮に申請者側の体制が不正を防止するのに不十分な場合でも、通常なら対策を講じた後に再申請を受け付けるべきですが、この場合は不指定と同時の2013年2月20日の省令改正で朝鮮学校の申請資格を消滅させたわけですから、行政側の措置は著しく不誠実と言う他ありません。それも行政手続き上生じた陥穽ではなく、安倍政権が朝鮮学校を狙い撃ちにすると宣言した状態で行われた意図的な排除ですからなおさらです。

広島地裁判決は、そのような朝鮮学校排除が大した問題ではないというロジックを作るために、「小西裁判長は判決で「除外によっても教育を受ける権利は何ら制限されない」と指摘」*1したように思えます。教育の権利と言う問題であることを認めれば、朝鮮学校排除の論理が不当であることを認めざるを得ないため、無償化対象の指定の有無は教育の権利に関わらない些細な問題であるかのように扱ったのでしょう。

しかしながら、高校無償化法の第1条で「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする」と書かれている以上、「除外によっても教育を受ける権利は何ら制限されない」という広島地裁判決は法の趣旨に反していると言わざるを得ません。

経済的負担を軽減し教育の機会均等を図るための無償化から除外されても、教育の機会が何ら制限されないということはありえません。



蓮舫氏を差別している連中がとうとう“戸籍はプライバシーじゃない”とか言い出した。

誰かと思えば、産経の古森義久氏でした。
肩書きが「ジャーナリスト・麗澤大学特別教授」とかになってますが、「活動家」に代えるべきだと思います。

【まとめ】
・「二重国籍問題」で民進党蓮舫代表、戸籍開示は「プライバシーに属する」と発言。
・しかし戸籍は私文書ではなく、国や地方自治体など公的機関が管理する公的文書。
・従って戸籍は個々人が独占的に所有する私的な情報であり開示はプライバシー侵害と断じるのは「勘違い」である。
民進党代表の蓮舫氏の二重国籍問題での発言にはまだまだ不可解な点がある。自分自身の戸籍を一部でも開示することが「プライバシーに属する」から本来は「あってはならない」と述べたこともその一つだ。この点は朝日新聞の社説もまったく同じことを主張していた。
だが戸籍は私文書ではない。国や地方自治体など公的機関が管理する公的文書なのだ。一般にいうプライバシーの対象となる文書類とは基本が異なるのだ。個々人が所有し、保管する文書とは基本が別なのである。しかも蓮舫氏は私人ではなく公人なのである。

http://blogos.com/article/236802/

一言で言えば、“戸籍は公文書だからプライバシーじゃない”という内容です。

あほか、の一言で反論終わらせたい気分でいっぱいです。こんなバカの妄言にもいちいち指摘したほうがいいのかなぁ・・・。

とりあえず個人情報保護法を示しておきます。

個人情報保護法

(目的)
第一条  この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html

第2条の定義を見れば、戸籍の情報はもろに個人情報であることがわかりますね。
で、この個人情報について、国・政府には保護の義務があることが明記されています。

(基本理念)
第三条  個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない。

(国の責務)
第四条  国は、この法律の趣旨にのっとり、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有する。

(法制上の措置等)
第六条  政府は、個人情報の性質及び利用方法にかんがみ、個人の権利利益の一層の保護を図るため特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について、保護のための格別の措置が講じられるよう必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html

ちなみに、改正法で「要配慮個人情報」の概念が追加され、以下のように定義されています

(改正法で追加された記載)
3  この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

誰がどう見たって戸籍に記載されているのは、要配慮個人情報に相当しますよね。それがわからないのは産経読者くらいじゃないですかね。

そもそも、古森氏の言うように「国や地方自治体など公的機関が管理する公的文書」が「一般にいうプライバシーの対象となる文書類とは基本が異なる」と言うのであれば、個々人の犯罪歴や犯罪被害歴などはプライバシーではないことになりますよね。
改正個人情報保護法で要配慮個人情報と定義されている「犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実」は、いくらでも開示して流布して構わないことになります。一度犯罪を犯したものは、いくら罪を償い反省しても生きている限り差別され続けますし、強姦など性暴力を受けた被害者はいつまでも好奇の目に晒され続けることになります。

原爆被爆者の情報は国が管理していますから戸籍情報とあわせて、どこの誰が被爆者でその家族はどんな人間かを公開しても、古森説では構わないことになります。古森氏の思考回路では、結婚相手の家族に被爆者がいないか調べて暴露してもプライバシーの侵害にはあたらないようです。

病歴も保険などのデータとして国が管理していますから、どこの誰がいつどんな病気にかかり、どんな薬を処方されたか、その公開を迫っても、古森説ではプライバシー侵害にはあたらないようです。精神疾患性感染症の病歴、妊娠・堕胎の記録、それらがあちこちにばら撒かれても、古森氏の解釈によればプライバシーの侵害にはあたりませんね。

とても信じられない世界観です。


産経新聞はここまで個人情報に関してデタラメな認識の人物を記者として雇っていたわけですから、産経新聞では適切に個人情報が管理されているのか非常に不安になりますね。
産経新聞に対してはいかなる個人情報も絶対に提供しない方が良さそうです。


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