金桂冠第1外務次官の談話は「瀬戸際戦術」とかではなくて、経済制裁解除を核放棄に先行させないことを容認するというメッセージじゃないのかな

この件。

北朝鮮、核放棄先行を拒否=米朝首脳会談の再考警告―強硬派のボルトン米補佐官攻撃

5/16(水) 17:23配信 時事通信
 【ソウル時事】朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は16日、談話を発表し、強硬派のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)らが北朝鮮に対する制裁緩和より核放棄を先行させる「リビア方式」の適用を主張していると非難し、改めて拒否した。
 6月12日に予定されている史上初の米朝首脳会談の取りやめを示唆し、トランプ政権をけん制する「瀬戸際戦術」を繰り出した。
 北朝鮮はこれまでも、経済制裁の解除など「見返り」を得ながら進める段階的な非核化を要求している。長年対米外交を統括している金桂冠氏が今回、「ボルトンに対する拒否感を隠さない」と攻撃したことで、短期の非核化を目指している米国との水面下での調整が難航していることを浮き彫りにした。
 金氏は「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」と強調。「トランプ米政権が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、そのような対話にもはや興味を持たないだろう」と表明し、米朝会談の再考を警告した。 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000089-jij-kr

米国による軍事的圧力と経済制裁をまとめて「米国の敵視政策」と解釈すると、核放棄先行を要求する米国に北朝鮮は制裁解除先行を主張して対立しているという理解になります。ただ朝鮮中央通信記事の記載を見ると、以下のような記載もあり、少し違った印象を受けます。

미국이 우리가 핵을 포기하면 경제적보상과 혜택을 주겠다고 떠들고있는데 우리는 언제한번 미국에 기대를 걸고 경제건설을 해본적이 없으며 앞으로도 그런 거래를 절대로 하지 않을것이다.

機械翻訳
アメリカが私たちが核をあきらめれば経済的補償と恩恵を与えると騒いでいるので私たちは堤防一度アメリカに期待をかけて経済建設をしてみたことがなくて今後もそのような取り引きを絶対にしないだろう。

これ、米国の経済支援は不要だと言ってるわけで読みようによっては経済制裁解除や経済支援については核放棄に先行させる必要が無いと北朝鮮が表明しているとも取れます。
上記引用の少し前に以下の「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」という記載があります。

우리는 이미 조선반도비핵화용의를 표명하였고 이를 위하여서는 미국의 대조선적대시정책과 핵위협공갈을 끝장내는것이 그 선결조건으로 된다는데 대하여 수차에 걸쳐 천명하였다.

機械翻訳
私たちはすでに朝鮮半島非核化用意を表明したしこれのためではアメリカの対朝鮮敵対視政策と核脅威恐喝をけりをつけることがその先決条件になるというのに対して数回にかけて明らかにした。

上記二つの引用を考慮すると、北朝鮮は米国による軍事的圧力と経済制裁を分けて考えていて、経済制裁解除は核放棄に先行しないことを容認するが、軍事的圧力の解除は核放棄より先行させなければ認めない、という考えであることが読み取れます。
そうすると、落としどころとして以下の3段階を思い描いているのではないかと思えます。

(1)米国の軍事的圧力の解除>(2)核放棄完了>(3)経済制裁解除

(2)>(3)は米国としても異論は無いでしょうから、論点は(1)の具体的な中身ということになり、朝鮮戦争終結は勿論含まれているでしょうが、それに加えて米韓合同軍事演習や在韓米軍の取り扱いあたりが現在、水面下での議題になっているのかも知れません。



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5月16日付の朝鮮中央通信による米韓合同演習(マックス・サンダー)に関する記事とそれに付随する話

北朝鮮 南北閣僚級会談の中止を表明(5月16日 5時24分)

北朝鮮が16日に予定していた南北閣僚級会談を突如中止することを表明しました。
日本側では南北・米朝関係が再び緊張化することを歓迎しているかのようなコメントが目立ちます。
北朝鮮は信用できない”“どうせ裏切る”といった先入観でものを見るようによく調教されている感じです。
NHK記事でも「来月の米朝首脳会談の中止の可能性もちらつかせてトランプ政権をけん制」と表現しています。

では北朝鮮はどういう理由で南北閣僚級会談中止を表明したのでしょうか。

理由として挙げているのは、5月11日から25日まで実施される米韓合同軍事演習(マックス・サンダー)で、特にB-52戦略爆撃機F-22ステルス戦闘機の参加についての懸念です。
参加機数は約100機で例年通りの規模で、2017年12月の米韓合同軍事演習(ヴィジラント・エース)での230機よりも少ないのですが、F-22の機数は2017ヴィジラント・エースで6機だったものが2018マックス・サンダーでは8機に増え、B-52の参加も予定されています。
この辺が、北朝鮮にとって脅威に感じられたということでしょう。

2017ヴィジラント・エースではB-1爆撃機も参加しましたが、その時点では南北関係はいまだ緊迫した状態でした。南北首脳会談を経た現時点において、戦略爆撃機を参加させた合同訓練は確かに、緊張緩和に逆行すると言えます。

朝鮮中央通信記事)
이번 훈련은 남조선강점 미제침략군과 남조선공군의 주관하에 미군의 《B-52》전략핵폭격기와 《F-22랩터》스텔스전투기를 포함한 100여대의 각종 전투기들이 동원되여 25일까지 진행된다.
내외여론들은 이번 훈련이 력대 최대규모라고 하면서 이는 우리에 대한 《최고의 압박과 제재》를 계속 가하려는 미국과 남조선의 변함없는 립장의 반영이라고 평하고있다.
남조선전역에서 우리를 겨냥하여 벌어지고있는 이번 훈련은 판문점선언에 대한 로골적인 도전이며 좋게 발전하는 조선반도정세흐름에 역행하는 고의적인 군사적도발이다.

別の米韓合同軍事演習フォール・イーグルは今回の南北緊張緩和に歩調を合わせ、平昌五輪を理由に時期をずらした上に期間も短縮させ、空母の参加も見送りました。あくまで米韓の自発的な対応としての規模縮小の体を取りましたが、明らかに北朝鮮に対する譲歩ですし、この米韓の譲歩に対応して、北朝鮮側も米韓合同軍事演習実施について容認するという形で譲歩しています。

明確な条件での合意があるわけでは無いでしょうが、2018フォール・イーグルでは北朝鮮が米韓合同軍事演習を容認するという譲歩をし、米韓は自発的に演習規模を縮小するという譲歩をしていたと言えます。
おそらく北朝鮮は、2018マックス・サンダーでも米韓側に同様の譲歩を期待していたのでしょうし、南北首脳会談の流れから見てもそれ自体が不当な期待とも思いません。そのため、報道されているようなB-52の参加まで含む例年と同等の“自発的な譲歩のない”規模での合同演習が完遂される前に、南北閣僚級会談の中止という形で意思表示をした、という感じに見えます。

さて、これに対して米国防総省は、合同演習は「防衛的な性質のもの」だと主張しました。

国防総省「防衛的な性質のもの」

アメリカ国防総省のマニング報道部長は15日、声明で、現在、実施中の韓国軍との共同訓練について「目的は韓国を守るための同盟の能力を強化することにあり、防衛的な性質のものであることは何十年にもわたって明確に示され、今も変わっていない」として、あくまで防衛目的の定期的な訓練だと強調しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180516/k10011439981000.html

ただまあ「あくまで防衛目的の定期的な訓練」ならばB-52戦略爆撃機は不要ですから、これを言葉通り受け止めるわけにはいきませんし、当然北朝鮮もそう感じているでしょう。そして北朝鮮がそう感じていることを韓国も米国も朝鮮中央通信記事から間違いなく読み取ったはずです。

で、こういう動きになったと。
実施中の韓米演習にB52参加せず 北朝鮮の南北会談中止と関連か(5/16(水) 9:56配信)

朝鮮中央通信記事が名指ししていた2機種のうち一つであるB-52戦略爆撃機の参加を見送る方向で動く見込みのようです。

実際この通りにB-52が不参加となれば、当然北朝鮮はその意図を読み取るでしょうから、おそらくそれで対話の方向に戻るでしょうね。

日本政府と日本人の多くにとっては不本意かも知れませんけど。




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産経新聞、また印象操作。与野党双方の譲歩による国会正常化を野党の“完敗”と歪曲

例によって産経新聞

戦略なき審議拒否に限界、折れた野党 「18連休」批判で追い込まれ

5/8(火) 8:30配信 産経新聞
 18日間の国会審議拒否を続けた立憲民主党などの野党は審議復帰を決めたが、条件として求めた麻生太郎副総理兼財務相の辞任や柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)の証人喚問は勝ち取れなかった。与党は野党に構わず審議を進め、世論の批判の矛先は安倍晋三政権から「連休」をとり続ける野党へと変わっていった。目立った成果に乏しく、野党は国会戦術で完敗したといえる。
(略)
 自民党幹部は7日夜、迷走した野党の国会戦術をこうあざ笑った。「野党は税金泥棒といわれるのが嫌だろうからな」(田中一世、小沢慶太)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180507-00000562-san-pol

8億円値引きという形で税金を盗んだ安倍政権に対して異常に甘い産経新聞が事実を捻じ曲げるのはいつものことですけどね。

毎日新聞では国会正常化について次のように報じています。

 焦点は、柳瀬唯夫元首相秘書官の国会招致だった。強引な国会運営との批判を懸念する与党は、加計(かけ)学園問題を巡って、柳瀬氏が参考人招致に応じて2015年4月に同学園関係者と会ったと認めるという新たな「カード」を事実上提示。証人喚問にこだわっていた野党も、柳瀬氏の新証言を得られる確証を得てこれに乗った。「た野党も、柳瀬氏の新証言が得られる確証を得て、これに乗った。」*1
 加計学園は昨年1月、安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議で事業者に選ばれた。与党は手続きに問題がないとの証言を得るため、同会議メンバーの八田達夫大阪大名誉教授も招致することを野党に受け入れさせた。一方、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんでは財務省に決裁前文書を18日までに公開させ、自衛隊の日報問題では防衛省の調査チームに月内に結果を報告させることを決定。予算委集中審議は14日に加えて少なくとももう1回開くことで一致。いずれも野党の要求を受け入れた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180507-00000085-mai-pol

証人喚問を求める野党に対して、与党は参考人招致に加えて新証言を出すという条件を追加したわけですから、野党が与党側から譲歩を勝ち取ったと言える部分ですが、産経に言わせれば、要求が100%通ったわけではないから野党の「完敗」ということになるようです。
与党も野党に対して、擁護担当として国家戦略特区諮問会議メンバーである八田達夫氏を招致するという条件を飲ませたわけで、これは野党側の譲歩とも言えますが、野党にとってさほど拒否する理由があるようにも思えません。

まあ、柳瀬氏の参考人招致ですが、結果的には安倍政権に都合のいい記憶の無くし方をしていたようですね。首相秘書官が、紹介されてもいない相手から会いたいと言われるがままに会って国家戦略特区の話をしていながら、メモも取らず、首相に報告もせず、2014年には官邸には「笑っていいとも」に電話で出演した記録すら残っていると安倍が自慢げに語っていたにもかかわらず、加計関連の官邸訪問者の記録は突如として残されていないことになるとか*2

その意味では、参考人招致を与党に認めさせたのは野党の成功だったと言えるでしょうね。



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アメリカに対する「けん制」と呼ばれる北朝鮮の反応について

少し古くなりましたが、この記事。

2018.5.6 13:30

北朝鮮情勢】制裁、人権問題…「刺激すれば対話白紙に」 北朝鮮が米国をけん制

 北朝鮮外務省の報道官は6日、米国が米朝首脳会談を前に、核放棄するまで制裁を緩めないとしていることや、人権問題を取り上げる構えを見せていることなどを非難し「相手を意図的に刺激する行為は対話ムードに冷や水を浴びせ、情勢を白紙に戻す危険な試みだ」と米国をけん制した。朝鮮中央通信が伝えた。
 報道官は、北朝鮮が非核化の意思を示したことを、米国が制裁や圧力の結果だとアピールして「世論をミスリードしている」と反発。「われわれの平和愛好の意思を軟弱さと勘違いし、圧力や軍事的威嚇を追求し続けるのは、問題の解決に役立たない」と警告した。(共同)

http://www.sankei.com/world/news/180506/wor1805060028-n1.html

関連する朝鮮中央通信記事は多分これ。

조선외무성 대변인 공화국에 대한 압박도수를 높이고있는 미국에 경고

(평양 5월 6일발 조선중앙통신)
조선민주의의인민공화국 외무성 대변인은 미국이 우리에 대한 압박도수를 높이고있는것과 관련하여 6일 조선중앙통신사 기자가 제기한 질문에 다음과 같이 대답하였다.
최근 미국이 력사적인 북남수뇌회담에서 채택된 판문점선언에 밝혀진 우리의 조선반도비핵화의지와 관련하여 그 무슨 제재압박의 결과인듯이 여론을 오도하고있다.
이와 동시에 미국은 우리가 핵을 완전히 포기할때까지 제재압박을 늦추지 않겠다고 로골적으로 떠들어대면서 조선반도에 전략자산들을 끌어들이고 반공화국《인권》소동에 열을 올리는 등 조선반도정세를 또다시 긴장시키려 하고있다.
력사적인 북남수뇌회담과 판문점선언으로 조선반도정세가 평화와 화해의 방향으로 나아가고있는 이때 상대방을 의도적으로 자극하는 행위는 모처럼 마련된 대화분위기에 찬물을 끼얹고 정세를 원점으로 되돌려세우려는 위험한 시도로밖에 달리볼수 없다.
미국이 우리의 평화애호적인 의지를 《나약성》으로 오판하고 우리에 대한 압박과 군사적위협을 계속 추구한다면 문제해결에 도움이 되지 않을것이다.(끝)

機械翻訳

朝鮮外務省スポークスマン共和国に対する圧迫導水を高めているアメリカに警告

(平壌ピョンヤン)5月6日発朝鮮中央通信)
朝鮮民主意義人民共和国外務省スポークスマンはアメリカが私たちに対する圧迫導水を高めているのと関連して6日朝鮮中央通信社記者が提起した質問に次の通り答えた。
最近アメリカが歴史的な南北首脳会談で採択された板門店(パンムンジョム)宣言に明らかになった私たちの朝鮮半島非核化意志と関連してその何の制裁圧迫の結果のようだが世論を誤った導きをしている。
これと同時にアメリカは私たちが核を完全にあきらめる時まで制裁圧迫を遅らせないと露骨的に喚き出して朝鮮半島に戦略資産を引き込んで反共和国《人権》騒動に熱を上げるなど朝鮮半島情勢をまた再び緊張させようとしている。
歴史的な南北首脳会談と板門店(パンムンジョム)宣言で朝鮮半島情勢が平和と和解の方向に進んでいるこの時相手方を意図的に刺激する行為はせっかく用意された対話の雰囲気に冷水を浴びせて情勢を原点で戻してたてようとする危険な試みだとしか別に見ることはできない。
アメリカが私たちの平和愛好的な意志を《脆弱性》で誤認して私たちに対する圧迫と軍事的威嚇をずっと追求するならば問題解決に役に立たないだろう。(終わり)

「반공화국《인권》소동(反共和国《人権》騒動)」が何を指しているのか、この記事だけだとよくわからないのですが、前日5月5日の記事がこんなのが出ていました。

《민주조선》 인권유린왕초 미국의 반공화국《인권》타령을 조소

(평양 5월 5일발 조선중앙통신)
미국이 《2017년 나라별인권보고서》에서 《지독한 인권침해》니,《일상적으로 자국내에서 인권을 침해하는 불안정세력》이니 하면서 공화국을 헐뜯어댔다.
5일부 《민주조선》은 개인필명의 론평에서 이것은 공화국의 존엄높은 체제에 대한 공공연한 부정이고 용납 못할 우롱이며 터무니없는 모략중상이라고 단죄하였다.
론평은 미국이 고아대고있는 《인권문제》란 애당초 공화국에 있어본적이 없으며 이에 대해서는 공화국을 다녀간 외국인들과 해외동포들 누구나가 인정하고 세계가 격찬하고있다고 밝혔다.
미국이 그 누구의 《인권문제》에 대해 삿대질을 해대고있지만 실지로 피고석에 끌려나와 심판받아야 할 인권유린범죄국가는 다름아닌 미국이라고 하면서 론평은 다음과 같이 지적하였다.
그런데도 인권유린의 왕초인 미국이 격에 맞지 않게 《인권재판관》흉내를 내며 다른 나라들을 헐뜯어대고있는것이야말로 도적이 도적이야 하는 격의 파렴치하고 비렬한 추태가 아닐수 없다.
지금 전체 조선민족은 물론 국제사회는 미국이 우리의 성의있고 아량있는 주동적인 조치에 화답하여 대조선적대시정책을 하루빨리 철회하고 조선반도에 공고한 평화체제를 수립해야 한다고 일치하게 요구하고있다.
그럼에도 불구하고 미국이 다 낡아빠진 《북인권》나발을 불어대는것은 미국에 대조선적대시정책을 철회할 의사가 없으며 어렵게 마련된 현정세흐름을 과거에로 되돌려세우려는것으로밖에 달리 볼수 없다.
미국은 황당한 반공화국《인권》소동으로 우리를 중상모독하는것이 대사를 그르치는 돌이킬수 없는 후과를 초래하게 된다는것을 똑바로 알고 제 집안의 인권문제해결에나 신경을 쓰는것이 좋을것이라고 론평은 강조하였다.(끝)

《民主朝鮮》人権蹂躪王初アメリカの反共和国《人権》たわごとを嘲笑

(平壌ピョンヤン)5月5日発朝鮮中央通信)
アメリカが《2017年国星人権報告書》で《ものすごい人権侵害》君の、《日常的に自国内で人権を侵害する不安定勢力》としながら共和国をけなしまくった。
5日付《民主朝鮮》は個人ペンネームの論評でこれは共和国の尊厳高い体制に対するおおっぴらな不正で容認できない愚弄でありとんでもない謀略重傷だと断罪した。
論評はアメリカが煮込みまくっている《人権問題》欄当初共和国にあって見たことがなくてこれに対し対しては共和国に立ち寄った外国人らと海外同胞誰でもが認めて世界がほめちぎっていると明らかにした。
アメリカがその誰の《人権問題》に対して妨げまくっているが実地で被告席にクルリョナと審判受けなければならない人権蹂躪犯罪国家は他でもないアメリカといって論評は次の通り指摘した。
それでも人権蹂躪の超招引アメリカが格に合わないように《人権裁判官》まねて他の国々をけなしまくっていることこそ盗賊が盗賊はするようなものの破廉恥で卑劣な醜態に違いない。
今全体朝鮮民族はもちろん国際社会はアメリカが私たちの誠意あって寛大な心ある主動的な措置にうなずく返事をして対朝鮮敵対視政策を一日も早く撤回して朝鮮半島に公告した平和体制を樹立しなければなければならないと一致するように要求している。
それにもかかわらず、アメリカがみな非常に古臭い《北人権》ラッパを吹きつけるのはアメリカに対朝鮮敵対視政策を撤回する意思がなくて難しく用意された現情勢の流れを過去に戻してたてようとすることとしか別に見ることはできない。
アメリカはあきれる反共和国《人権》騒動で私たちを重傷冒とくすることが大使を誤らせる元に戻すことはできない後日の禍を招くことになるというのを真っすぐ知って私の家の人権問題解決にでも気を遣うことが良いことだと論評は強調した。(終わり)

2018年4月20日に公表された米国による2017年国別人権報告で北朝鮮の人権状況が非難されたことを「반공화국《인권》타령(反共和国《人権》たわごと)」と呼んで反論しています。
この人権報告は毎年出されているもので、北朝鮮の人権状況も毎回非難されています。2017年にも2016年国別人権報告が出されていて北朝鮮の人権状況を非難しています。この時既にトランプ政権になっていましたが就任間もない時期でしたので、実質的に今回のがトランプ政権で初の人権報告と判断しているようです。
で、このある意味“いつも通り”の北朝鮮の人権問題指摘に対して、北朝鮮も“いつも通り”に反発しているということになるでしょうか。

冒頭挙げた「核放棄するまで制裁を緩めないとしていることや、人権問題を取り上げる構えを見せていることなどを非難し「相手を意図的に刺激する行為は対話ムードに冷や水を浴びせ、情勢を白紙に戻す危険な試みだ」と米国をけん制した」という共同通信記事ですが、「人権問題を取り上げる構えを見せていること」については、あまり重要視すべき箇所ではなさそうに思えます。

もう一件、北朝鮮の人権状況に関わる話があります。
米国務省 北朝鮮の人権状況「深刻に憂慮」と表明(毎日新聞2018年5月3日 21時51分(最終更新 5月3日 21時51分))」にある通り、4月28日~5月5日が「北朝鮮自由週間」に定められており、それに関連して国務省報道官が「「世界で最も抑圧的で劣悪な体制のもとで苦しむ多くの北朝鮮国民のことを忘れてはならない」と強調し、北朝鮮の人権状況を「深刻に憂慮している」と表明した」そうです。ですので、それに対する反応という意味もありそうです。
で、この「北朝鮮自由週間」を主導しているのは、韓国の反共保守派で、こんな感じの主張をしています。

この日、北朝鮮自由週間開幕式を支援した自由韓党議員は、27日開かれた南北首脳会談に対して「対国民詐欺」,「惨憺たる結果」と壇上で苦言を呈した。

http://asian-reporters.com/nkjiyujinkensyukannews/

そして「<北核廃棄、自由統一のためのソウル宣言文>」ではこう述べています。

金正恩が白旗を揚げて降参する時まで、つまり北朝鮮に存在する全ての核兵器と大量殺傷武器を国際社会の目前で完全に廃棄するときまで、北朝鮮圧迫と経済制裁は続けなければならないというのが、私たち脱北者と国際NGO団体の変わりない立場だ。
よって今後の南北首脳会談は、料理の種類と晩餐のリハーサルに集中する会談でなく、北核廃棄に焦点を合わせた建設的な会談になるように願う。また、会談の重要議題として北朝鮮政治犯収容所解体問題、韓国と日本、国際社会に広がった拉致とテロ問題の再発防止と解決策が幅広く扱われることを促す。
北朝鮮の人権問題解決は核とミサイル、麻薬とニセ札など、北朝鮮が抱える全ての問題の先決条件だ。よって米国のトランプ大統領も、米朝首脳会談を通じて核問題とともに北朝鮮の人権問題、日本人拉致問題を主な議題として扱うことを改めて促す。

http://asian-reporters.com/nkjiyujinkensyukannews/

要するに、北朝鮮の人権問題解決と核兵器大量破壊兵器の完全廃棄まで圧力と経済制裁を続けよ、という主張です。「金正恩が白旗を揚げて降参する時まで」と言っているように、北朝鮮を無条件降伏させることを要求しているわけですが、現実主義とはかけ離れた主張と言わざるを得ませんね*1

まあそれはそれとして、この「北朝鮮自由週間」には自由韓国党が深く関わっているという点が重要で、朝鮮中央通信では「남조선보수패거리들의 히스테리적발작증(南朝鮮保守連中のヒステリー的発作)」という記事を同じ5月6日付けであげています。

지금 온 남녘땅이 력사적인 판문점수뇌상봉과 판문점선언발표로 환희와 격정속에 들끓고있는 가운데 유독 남조선보수패거리들만이 이를 악랄하게 비방중상하며 북남관계개선분위기를 흐려놓고있다.
홍준표를 비롯한 《자유한국당》패들은 《이번 남북정상회담은 북과 문재인정권이 합작한 위장평화쇼에 불과했다.》,《우리 민족끼리의 북의 주장에 동조한 회담이다.》고 고아대면서 그 의미와 성과를 깎아내리기 위해 분주탕을 피우고있다.

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今来た南の方の土が歴史的な板門店(パンムンジョム)首脳対面と板門店(パンムンジョム)宣言発表で歓喜と激情の中に沸き立っている中で唯一南朝鮮保守やからだけがこれをあくらつに誹謗中傷して南北関係改善の雰囲気を曖昧にしている。
ホン・ジュンピョをはじめとする《自由韓国当たり》パドルは《今回の南北首脳会談は北とムン・ジェイン政権が合作した胃腸(偽装)平和ショーに過ぎなかった。》、《私たちの民族どうしの北の主張に同調した会談だ。》で孤児対としながらその意味と成果を引き降ろすために奔走汁を吸っている。

この記事は結構長くて“米国に対するけん制”だという記事の2倍以上あります。北朝鮮としては、自由韓国党による反北朝鮮プロパガンダに対するけん制を主な目的としていそうな感じです。
北朝鮮の“けん制”については、BBCも報じていますが*2、「トランプ大統領は、自分の厳しい姿勢が南北対話につながったとして、引き続き北朝鮮に制裁や圧力をかけていくと述べている」点に触れてはいるものの、人権問題に関する言及は見られません。もっともロイターの報道では人権問題に関する言及に触れていますので、全く無視されているわけではありませんが。

単純に“圧力の成果だ”と公言するアメリカと“平和的な意図”による対話と主張する北朝鮮の両者によるプロパガンダ合戦の一幕

と見ていいんじゃないかなと思います。もちろん、水面下の交渉の一角が顔をのぞかせたとも言えるでしょうね。

トランプアメリカは“圧力で北朝鮮を屈服させた”という体で交渉に臨みたいし、金正恩北朝鮮は“核武装によって米国と対等になった”という体で交渉に臨みたい、と。
会談日時と場所について合意したとのことですが、具体的に公表されていないというのも関わっているかもしれません*3

まあ、いずれにせよ、“圧力で北朝鮮を屈服させた”という体で交渉に臨みたいアメリカも“核武装によって米国と対等になった”という体で交渉に臨みたい北朝鮮も、お互いそれが体裁に過ぎないことは理解していることは間違いないでしょうね。
双方とも口頭では勇ましいことを言っていながら、米韓合同演習の規模を縮小したり、演習の実施を容認したり、在韓米軍の存在を容認したり、在韓米軍の縮小を検討したりしているわけですから。

トランプ大統領が圧力の成果だと触れ回ってきたことを踏まえれば、北朝鮮の今回の反応は“けん制”としてささやかなものであって、むしろ米朝交渉自体は相当程度進展していることを匂わせるものだと思いますけどね。

そういうわけで、ここのブコメのような“効いてる効いてる”みたいな反応は、何だかなぁ、と思ってます。



*1:もちろん理想主義は大事ですが、理想を実現させるために現実的な行程を採るというのも大事であって、少なくとも南北融和と緊張緩和を経て北朝鮮内部の状況も改善することを求めるというのは現実的な行程だと言えますし、そもそも韓国政府の統一方策もそれを志向しています。

*2:北朝鮮「米国の『挑発』が平和を脅かす」 首脳会談前にけん制(5/7(月) 13:04配信 BBC News)

*3:敵国の軍隊に囲まれて、まるで降伏文書に調印するかのような環境が生じえる場所が会談場所であれば、事前に釘を刺したいところでしょう。

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補足的な話

臨床薬理学会がTBSに出した苦情に関連して。

この中にこう書かれています。

治験にかかわるものたちが驚愕したのが、患者さんへの負担軽減費300万円というものです。負担軽減費は治験に参加することによって生じる種々の損失をなんとか補おうという趣旨で始まった制度です。いくらという決まりはありませんが、あくまで負担軽減費です。ほとんどのところで、一回の来院あたり、7000円〜8000円としています。患者様と付き添いの方が来院する交通費と軽い昼食代に相当する額を調査し、この額なら治験参加の誘因にならないだろうと定められた背景があります。高額の軽減費で治験への参加を誘導することは厳に戒められておりますし、負担軽減費の具体的な額は治験審査委員会でその額の妥当性についてあらかじめ審査されています。300万円という額はなんらかの別の費用を誤解されたものと思われます。

https://www.facebook.com/jscptkoho/posts/419004868578254

私も健康食品の治験に参加したことがありますが、交通費程度の金額しかもらいませんでしたので「300万円」とかドラマの演出にしてもひどいと思いますね。

臨床薬理学会の言う「この額なら治験参加の誘因にならないだろうと定められた」とか「負担軽減費の具体的な額は治験審査委員会でその額の妥当性についてあらかじめ審査されています」については、法令上の根拠もあります。
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」です。
省令条文に明記されているわけではありませんが、運用上の留意事項について厚労省から以下の文書が出ています。。

医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について

(治験審査委員会の責務)
第 32 条 第 27 条第1項の治験審査委員会(以下本条において「治験審査委員会」という。)は、第 30 条第1項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、審査の対象とされる治験が倫理的及び科学的に妥当であるかどうかその他当該治験が当該実施医療機関において行うのに適当であるかどうかを、次に掲げる資料に基づき審査し、文書に
より意見を述べなければならない。
1)第 10 条第1項各号又は第 15 条の7各号に掲げる文書
2)被験者の募集の手順に関する資料
3)第7条第5項又は第 15 条の4第4項に規定する情報その他治験を適正に行うために重要な情報を記載した文書
4)治験責任医師等となるべき者の履歴書
5)その他当該治験審査委員会が必要と認める資料


2 専門治験審査委員会は、第 30 条第4項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、審査の対象とされる特定の専門的事項について前項各号に掲げる資料(当該専門治験審査委員会が必要と認めるものに限る。)に基づき審査し、文書により意見を述べなければならない。

〈第1項〉〈第2項〉

9 治験審査委員会は、被験者に対する金銭等の支払がある場合には、その支払額及び支払方法を審査し、これらが被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないことを確認すること。被験者への金銭等の支払は、参加期間等によって案分されなければならず、被験者が治験を完遂しなければ支払が全くなされないような方法は不適当である。
10 治験審査委員会は、被験者に対する金銭等の支払がある場合には、その支払方法、支払金額、支払時期等の情報が説明文書に記述されていることを確認し、参加期間等による案分の方法が明記されていることを確認すること。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/130415_2_4.pdf

被験者に金銭などの支払いがある場合は、治験審査委員会が支払額及び支払方法を審査することになっていて、その際、「これらが被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないことを確認すること」が求められています。
そしてそれらは「説明文書に記述されていること」が必要だと。

借金に困っている人に300万円で治験に参加させるとか、まあ、あり得ないんですよね。

ちなみに生活保護受給者の治験参加についても、相当慎重に判断されます(参加を認めない治験もあったはず)。
例えばこんな感じ。

国立病院機構における治験等受託研究 Q&A

Q72 生活保護受給者が治験に参加することは可能か。

生活保護法第52条第2項の規定により、生活保護受給者は保険外併用療養費制度が適用されず、また、被験者負担軽減費の受取により生活保護が打ち切られる可能性もあることから、生活保護受給者の治験参加については、管轄の福祉事務所に相談のうえ、十分に検討し、決定してください。

http://www.chiba-easthp.jp/wp-content/uploads/2017/04/5ba596abb60b3fdbaf86982773d767d7.pdf



ブコメに対する回答のようなもの

北朝鮮の“態度変化”は経済制裁の効果とはちょっと言えない。」の続き的な。

北朝鮮の“態度変化”は経済制裁の効果とはちょっと言えない。 - 誰かの妄想・はてなブログ版

この見立てが正しいとすると、正男ころころしたのも案外あちこちに了解はつけてたのかな?/「この筋一本でいくから、それ以外の回路は潰しとけ」みたいな。

2018/05/02 09:42
b.hatena.ne.jp
金正男殺害事件は2017年2月で、韓国ではまだ文政権が成立しておらず状況が随分と違います。
北朝鮮にとって2017年2月時点で韓国の次期政権がどうなるのか予測できる状況ではなかったはずで、金正男事件と直接の関係はまず無いでしょう。金正男事件の主犯が北朝鮮指導部だというのが事実だとしても、その理由は単純な権力争いか、外国勢力により使嗾されたクーデターを予防するためのものと見るのが自然だと思いますね。

北朝鮮の“態度変化”は経済制裁の効果とはちょっと言えない。 - 誰かの妄想・はてなブログ版

この間の動き(経済制裁も含め)に対する中国の関与についての見方も聞きたいところ

2018/05/02 12:42
b.hatena.ne.jp

中国はほぼ一貫して対話による解決を支持してきましたから、南北問題に関する立場としては北朝鮮と近いと言えます。中国による経済制裁も数年来続いていた話で、2017年に急にレベルが上がったわけでもありませんから、それが北朝鮮の“方針転換”の決定打とも考えにくいですね*1
2017年12月23日の国連決議に基づく石油禁輸が2018年1月に開始した、という点もこの時期既に南北関係緊張緩和の兆しが見えていましたし、「禁輸」のレベルも石油年間400万バレルの制限*2で、2016年の石油消費量が日量1万5000バレルといわれる*3北朝鮮にとって、それほど脅威に感じたかどうかも疑問です(年間消費量550万バレルと仮定して生じる150万バレル分程度なら、石炭液化などで対応したんじゃないですかね。それに北朝鮮のエネルギー供給源に石油が占める割合は5.8%(2012年)に過ぎないという話もありますし*4*5

2018年1月5日の中国の対応

商務省は北朝鮮に対する原油輸出制限を発表しました。

中国、北朝鮮原油輸出制限 国連制裁決議受け初

2018年1月6日 朝刊
 【北京=秦淳哉】中国商務省は五日、北朝鮮への原油輸出の上限を年間四百万バレルとする公告を関係機関に通知した。昨年十二月に採択された国連安全保障理事会の制裁決議を受けた措置で、石油精製品の上限も五十万バレルとする。六日から効力が生じる。中国が原油供給を制限するのは初めて。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201801/CK2018010602000134.html

一方、外務省は、南北高官級協議が1月9日で板門店に開かれることについて歓迎する旨のコメントを出しています。

 问:据报道,5日,韩国统一部发言人称,朝鲜当天表示,同意接受韩方此前提议,于9日在板门店举行朝韩高级别会谈。中方对此有何评论?
 答:我们注意到这一最新进展。
 连日来,我已多次就最近半岛局势中出现的积极动向作出回应,表明中方立场。我愿再次强调,作为半岛的近邻,中方欢迎并支持朝韩双方近来就缓和相互关系采取的积极举动。我们希望国际社会对此予以支持,共同努力找到缓和紧张、增进互信、恢复对话的有效路径。

http://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/t1523806.shtml

見ようによっては、中国は南北関係改善を見越して経済制裁の体裁を取り繕ったようにも見えますね。

そもそも中朝関係が悪化していたという一般的な見方も実際には言われているほどでは無かったんじゃないかなと個人的には見ています。根拠とされる内容の多くが“面子がつぶされた”云々の感情的・情緒的なもので、とても論理的には見えませんでしたし。
中国との関係を悪化させたと言われる張成沢粛清についても金正恩の権力掌握の過程での権力争いであって、中国側が恨みに思うような話ではありませんし*6



*1:2017年3月に北朝鮮の石炭輸出量が急減したという指摘はあります(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7557_1.php)が、それ自体は2016年11月の国連決議に基づきます(https://dailynk.jp/archives/81976)。ただ、石炭は北朝鮮にとっては主要なエネルギー源でもありますので、輸出量が減っても外貨を得られないという以外には制裁の効果としての影響は少ないと言えるでしょう。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201801/CK2018010602000134.html

*3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8649.php

*4:http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11517?page=2

*5:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8649_2.php

*6:中国との窓口だった人物が権力争いで粛清されたとしても、権力争いの勝者と交渉して関係を築けば良いだけで、窓口だった人物との関係を当該国との関係より重視するなどあまりにも情緒的すぎます。

北朝鮮の“態度変化”は経済制裁の効果とはちょっと言えない。

日米の“経済制裁の効果”というのは韓国文政権のリップサービス以外に特に根拠があるとは言えません。
まあ、もちろん全く皆無というわけでは無いでしょうけど、“ある程度の効果”くらいの影響ならば、北朝鮮は米国を射程に収めた核ミサイルを完成させるまで実験をしたでしょうからね。

北朝鮮は4月20日に核戦力を完成させたと宣言してはいますが*1、実態としては完成間際ではあっても完成してはいないというのが衆目の一致するところでしょう。
経済制裁の効果がある程度出ていたとしても、それだけでは完成間際の核ミサイル開発を停止しようという動機として不十分すぎます。
そういう場合、むしろあと一息とばかりに開発を加速させるんじゃないですかね。

そもそも、北朝鮮は“態度変化”したのかという点も疑問です。

北朝鮮の外交的な目標は、米国との直接交渉によって自国の安全保障を確立することで一貫してましたよね。核実験もミサイル開発も全てそのために行なってきたわけですよね。
様々な制裁を受けても開発を続けてきたのは、そうしないと体制を崩壊させられるという恐怖感からです。
何せ朝鮮戦争は未だ終了しておらず、世界最強の米軍が韓国や日本に駐留し、頻繁に軍事演習で脅しをかけてきている状態でしたから、いつ先制攻撃を仕掛けられるかわからない恐怖をずっと感じていたでしょうね。
朝鮮戦争の敵国である米国は北朝鮮悪の枢軸だとかテロ支援国家だとか名指しし、日本は冷戦終結以降、敵視の度合いを一貫して増加させ拉致問題を認めた後もより悪化しています。韓国にしても、公式には平和的な統一を志向する姿勢を示しながら保守政権下では北朝鮮敵視を続けていたような状態です。中国、ロシアも中ソ対立後の支援引き上げに始まり、米中国交正常化や冷戦終結で、有事の際に朝鮮戦争当時のような軍事的支援を期待することはまず出来ない状態。
北朝鮮の立場から見れば、米国と対等に交渉して体制保障の確信を得ないと自国の安全を守る意味で安心できませんよね。

米国と対等に交渉するには軍事的に対抗できる必要があり、それが核開発でした。国連制裁決議などが出されても、北朝鮮はその国連軍と対峙している状態ですからおいそれと聞くわけもありません。北朝鮮から見れば国連軍の元締めもまた米国ですから、結局、米国との交渉がすべてのカギになっているわけです。

ならば、米朝首脳会談は北朝鮮にとって悲願達成に向けた最終段階であって、“態度変化”というよりも規定の路線というのが正しい見方でしょう。

しかし、本来なら北朝鮮の目論見通りにこぎつけるのは極めて困難でした。

なぜならば、北朝鮮は核戦力が無ければ米国と交渉できないと考えていた一方で、米国は北朝鮮が核放棄しなければ交渉しないと考えていたからです*2

そこで間に立ったのが韓国文政権でした。

韓国は、公式に核放棄を発言できない北朝鮮に代って米国に核放棄の意志があることを伝え、核放棄まで圧力維持と表明せざるを得ない米国に代って北朝鮮米朝首脳会談の了解と当面の軍事力行使の回避を伝えたわけです。この動きの表面的な部分は2018年1月になってからですが、おそらく実際には文政権発足直後から様々なルートで北朝鮮と米国に働きかけていたと思います。
当然、文政権はいざとなれば泥をかぶる覚悟だったでしょう。北朝鮮が公式に非核化方針を示すまでに決裂していれば、北朝鮮は非核化については韓国が勝手に言ったことにしたでしょうからね。米国も同様に韓国特使にあった後に米朝首脳会談を否定していたら、北朝鮮は韓国の仲介を信じなくなっていたでしょう。

こうした韓国の仲介によって、米朝は軍事的対立から外交交渉へと状態を変化させることが出来ました。

北朝鮮には核戦力の完成によって米国との直接交渉ができるようになったと主張できる余地を与え、米国(日本にも)には圧力によって北朝鮮に非核化を宣言させたと主張できる余地を与えた、双方の面子を立てたわけですね。

その意味では日本が北朝鮮の“態度変化”は経済制裁の効果だと主張する行為は、それ自体が文政権の手のひらの上で踊っているような状態とも言えますね。



*1:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/23/003000

*2:個人的には、だからこそ核開発が進む以前に交渉して戦争状態を終らせるべきだったと思うんですけどね。