安倍政権による非常災害対策本部の設置時期の評価について

今回の災害に対する非常災害対策本部の設置が過去の事例と比べて遅くないという説が流れていますので、一応指摘しておきます。

まず基本的な事実として非常災害対策本部は災害時に必ず設置されるものではありません。
例えば、長野県北部地震(2014年11月)とか2015年台風18号による災害(2015年9月)とかでは非常災害対策本部は設置されていません。
つまり、非常災害対策本部(あるいは緊急災害対策本部)が設置される災害は、それなりの被災規模であるということになります。

その辺を踏まえた上で、東日本大震災以降の設置状況を見てみましょう。

本部名称 設置日 廃止日 災害発生日 災害タイプ
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部 2011/3/11 2011/3/11 地震津波
平成23年(2011年)台風第12号非常災害対策本部 2011/9/4 2014/12/26 2011/8/30 台風
平成26年(2014年)豪雪非常災害対策本部 2014/2/18 2014/5/30 2014/2/14 豪雪
平成26年(2014年)8月豪雨非常災害対策本部 2014/8/22 2015/1/9 2014/8/19 豪雨
平成26年(2014年)御嶽山噴火非常災害対策本部 2014/9/28 2015/11/9 2014/9/27 噴火
平成28年(2016年)熊本県熊本地方を震源とする地震非常災害対策本部 2016/4/14 2016/4/14 地震

パッと見、地震や噴火では本部の設置が早いというように見えます。
東日本大震災熊本地震では発生当日、御嶽山噴火では翌日に設置していますので、確かに早いのですが、地震や噴火は規模のカテゴリ化が明確で被災範囲もわかりやすいというのが大きいと言えるでしょう。
台風・豪雨・雪害では災害規模が地震や噴火のようなカテゴリ化が一般的ではありませんから、その意味で判断が難しいといえるかもしてませんが、それでも判断の基準となる事象がないわけではありません。

台風・豪雨の災害規模については土砂崩れや河川の氾濫といった事象の規模と範囲を把握することで概ね判断することができます。

2011年台風12号では大雨は2011年8月30日から始まっていますが、大規模災害となった奈良・和歌山での土砂崩れの発生は2011年9月4日です。そして、非常災害対策本部は土砂崩れ発生後、即日設置されています。
2014年8月豪雨も広島に限定すれば雨の発生は2014年8月19日ですが、先行する福知山市での大雨洪水警報は8月16日に出ています。しかし、この2014年8月豪雨の災害規模を決定的にした広島土砂災害の発生は2014年8月20日です。これに対して安倍政権が非常災害対策本部を設置したのは2日後の8月22日でした。

2014年豪雪の場合は非常災害対策本部の設置のきっかけが積雪による集落の孤立状態が3日を越えたことのようで、2014年2月14日の降り始めから4日後の2014年2月18日に設置されています。孤立状態3日を目安とすることの是非は検討の余地がありそうですが。

その辺を考慮して、今回の豪雨も含めるとこんな感じになります。

災害 発生日 対策本部設置日 設置までの期間
東日本大震災 2011/3/11 14:46 2011/3/11 15:14 30分後
2011年台風12号 (土)2011/9/4 00:00 2011/9/4 20:00 20時間後
2014年豪雪 (集落孤立)2014/2/14 2014/2/18 10:30 4日後
2014年8月豪雨 (土)2014/8/20 03:00 2014/8/22 09:00 54時間後
2014御嶽山噴火 2014/9/27 11:52 2014/9/28 17:00 29時間後
熊本地震 2016/4/14 21:26 2016/4/14 22:10 1時間後
西日本豪雨 (土・河)2018/7/7 00:00 2018/7/8 08:00 32時間後

(※ 土:土砂崩れ発生、河:河川氾濫発生)
なお、今回の豪雨災害では2018年7月6日19時時点で広島で車30台ほどが巻き込まれる土砂崩れをはじめ何件かの土砂崩れが発生していますが、2011年台風14号災害でも9月3日に奈良で河川氾濫が起きていることも考慮して、累積的な規模・広域性を踏まえて一応、今回の豪雨災害では小田川が氾濫した7月7日0時頃を起点に、2011年台風12号災害では奈良・和歌山の土砂災害が発生した9月4日0時頃を起点としました。

災害対策本部設置までにかかった時間を見ると地震災害で早いことが改めてわかりますが、それでも東日本大震災時の30分に比べ、熊本地震では1時間と差がありますね。豪雪・噴火を例外として、台風・豪雨で見ると、大規模な土砂災害発生から20時間で非常災害対策本部を設置した2011年台風12号災害に比べ、2014年8月豪雨では54時間もかかっています。今回の豪雨災害でも32時間かかっており、安倍政権下での災害における災害対策本部設置は概して遅い傾向にあるとは言えそうです。

今回の西日本豪雨災害における非常災害対策本部設置に対する評価

手続的には東日本大震災熊本地震の例からわかる通り、30分~1時間もあれば災害対策本部の設置はできるわけです。もちろん災害が発生した時刻によっては閣議の召集に時間を要することもあるでしょうが、それを考慮しても災害規模を把握してから24時間を超えるのはちょっと考えられません。2011年台風12号の際の災害対策本部設置は、野田内閣成立直後(2011年9月2日発足)ですが、それでも奈良・和歌山の土砂災害発生当日中に設置しています。
それを考慮すると、今回の災害でも遅くとも2018年7月7日中には非常災害対策本部の設置ができたはずですし、すべきだったと思います。

そしてその7月7日を安倍首相がどう過ごしたかというと、こんな感じだったらしいです。

首相動静(7月7日)

 午前8時現在、公邸。朝の来客なし。
 午前9時43分、公邸発。同44分、官邸着。
 午前10時1分から同16分まで「7月5日からの大雨に関する関係閣僚会議」。
 午前11時35分、官邸発。
 午前11時49分、東京・富ケ谷の私邸着。
 午後は来客なく、私邸で過ごす。
 8日午前0時現在、私邸。来客なし。(2018/07/08-00:20)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018070700281&g=pol

首相動静―7月7日

2018年7月7日18時58分
 【午前】9時44分、官邸。10時1分、7月5日からの大雨に関する関係閣僚会議。11時49分、東京・富ケ谷の自宅。
 【午後】自宅で過ごす。

https://digital.asahi.com/articles/ASL775GMLL77UTFK003.html

2018年7月7日 土曜日の首相動静
9時43分 公邸発
9時44分 官邸着。左手をあげて「おはようございます」とあいさつ
10時0分 西日本を中心とした記録的な大雨による被害の拡大を受けた関係閣僚会議に出席し「事態は極めて深刻な状況だ」と述べる(~10:16)
11時35分 官邸発
11時49分 東京・富ヶ谷の私邸着

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何してた?

https://www.nhk.or.jp/politics/souri/2018/07/07.html

いやホントに何してたんだよ?



産経・名村記者、終戦宣言に拘束力がないなどと訳の分からぬことを言う

産経がこんな記事を書いていました。

 終戦宣言は平和協定の締結とは違い、あくまでも“象徴的”な意味合いを持つもので、それには拘束されない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180624-00000003-san-kr

南北首脳会談で合意された“今年中の終戦宣言”に関連しての名村記者の説明です。
まあ、名村記者はご存じないようですが、日ソ共同宣言というのがありまして、その第1項にはこう書かれています。

日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の全権団の間で行われたこの交渉の結果,次の合意が成立した。
1 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態は,この宣言が効力を生ずる日に終了し,両国の間に平和及び友好善隣関係が回復される。

http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19561019.D1J.html

日ソ間の終戦宣言にあたる条項ですが、さて現在、日本とロシアはこの宣言に「拘束されない」のでしょうか?
もちろんそんなことは無く、一般的に日ソ共同宣言は広義の条約の一種とみなされています。

きょうどうせんげん【共同宣言 joint declaration】

国際法上の宣言は,本来,ある国家あるいは複数の国家の政策表明として行われるもので,一方的な意思表示を意味する。しかし,ときには国家間の合意を内容とする場合がある。この場合は広義の条約の一種ということができる。たとえば,1956年の日ソ共同宣言などはそれにあたる。第2次大戦後における日本とソ連の国交回復に関して,本来ならば平和条約方式によるのが望ましかったわけであるが,最大の懸案事項であった領土問題について合意に至らず,この問題を棚上げしたまま,とりあえず国交を回復するために,正式の条約よりも軽便な方式である共同宣言という形式を採ることになったといえる。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について

https://kotobank.jp/word/%E5%85%B1%E5%90%8C%E5%AE%A3%E8%A8%80-159041

日本政府見解も同様で、日ソ共同宣言を「法的拘束力を有する条約」とみなしています。

Q4 1956年の日ソ共同宣言とはどのようなものですか?

A4 ソ連がサン・フランシスコ平和条約への署名を拒否したため、我が国はソ連との間で平和条約交渉を別途行うこととなり、1956年、日ソ両国は日ソ共同宣言を締結して、戦争状態を終了させ、外交関係を再開しました。日ソ共同宣言は、日ソ両国の立法府での承認を受けて批准された法的拘束力を有する条約です。  
同宣言において、両国は、正常な外交関係が回復された後、平和条約の交渉を継続することとなっており、またソ連は、平和条約の締結後に歯舞群島及び色丹島を我が国に引き渡すこととなっています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/mondai_qa.html#q4

つまり、北朝鮮、米国、韓国、中国といった朝鮮戦争当事国間での合意という形で終戦宣言がされるなら、それは広義の条約であり、当然に拘束力を持つと言えるわけです。
産経・名村記者は、そんなことも知らない、あるいは知らないふりをしてデマをばら撒いている、と。

まあ、所詮産経だから、こんなもんでしょうけど。



産経・名村隆寛記者の手抜きの手口

以下の二本の産経記事。

米朝首脳会談 「日本は疎外、孤立」「拉致解決済み」…北が牽制、韓国も「北を疑うな」

6/4(月) 20:00配信 産経新聞
 【ソウル=名村隆寛】米朝首脳会談を前に、北朝鮮が日本の「疎外、孤立」を強調すると同時に、「拉致問題は解決済み」と主張し日本の朝鮮半島統治に対する賠償まで要求している。
 北朝鮮祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は3日の論評で「米国の手下にすぎない日本反動らが『最大の圧迫共助』をわめき立てている」とし、「そんな醜態がもたらすのは現在のような『日本疎外』現象だけだ」と非難。4日の論評では拉致問題を「既に解決された」「白紙化された」とし、「過去にわが国を占領し、わが民族に与えた前代未聞の罪をまず謝罪し、賠償すべきだ」と主張した。
 北朝鮮メディアは4月に、日本の一部メディアの報道を引用し「日本が現在、『日本疎外』現象に大いに憂慮している」と報じ、以降、「ジャパン・パッシング(日本素通り)」や「蚊帳の外」などの言葉で対日批判を続けてきた。
 日本の孤立を意味する一連の表現は、一部日本メディアや韓国メディアが安倍晋三政権を批判する中で多用してきたものだ。ただ、安倍首相は「日本が蚊帳の外に置かれることはない」と断言。北朝鮮はこれが気に入らないようだ。むしろ孤立をあおり、日本からの接近に期待している様子がうかがえる。日本に「賠償」を要求する北朝鮮は、米朝会談の結果次第で日朝の国交が正常化し、日本からの経済支援が実現することを期待しているようだ。
 韓国も北朝鮮への見方を変えるよう日本に促している。シンガポールでのアジア安全保障会議(2日)で小野寺五典防衛相は「対話に応じるだけで見返りを与えるべきではない」と述べたが、韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相は「疑い続けては対話に支障が出る。北朝鮮を理解してほしい」と反論した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180604-00000555-san-kr&pos=2

北「日本は孤立」強調 半島統治時代の賠償要求

6/5(火) 7:55配信 産経新聞
 【ソウル=名村隆寛】米朝首脳会談を前に、北朝鮮が日本の「疎外」「孤立」を強調すると同時に、「拉致問題は解決済み」と主張し日本の朝鮮半島統治に対する賠償を要求している。
 北朝鮮祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は3日の論評で「米国の手下にすぎない日本反動らが『最大の圧迫共助』をわめき立てている」とし、「そのような醜態がもたらすのは、現在のような『日本疎外』現象だけだ」と非難した。
 また、4日の論評では拉致問題を「既に解決された」「白紙化された」とし、その前に「過去にわが国を占領し、わが民族に対し耐え難い不幸と苦痛を与えた前代未聞の罪をまず謝罪し、賠償すべきだ」と主張。論評は安倍晋三首相、小野寺五典防衛相、菅義偉官房長官らを名指しした。
 北朝鮮メディアは4月に、日本の一部メディアの報道を引用するかたちで「日本が現在、『日本疎外』現象に大いに憂慮している」と報じ、以降、「ジャパン・パッシング(日本素通り)」や「蚊帳の外」などの言葉で対日批判を続けてきた。
 日本の孤立を意味する一連の表現は、一部日本メディアや韓国メディアが安倍政権を批判する中で多用してきたものだ。ただ、安倍首相は「日本が蚊帳の外に置かれることはない」と断言した。北朝鮮はこれが気に入らないようだ。むしろ「日本の孤立」をあおることで、日本の接近に期待している様子がうかがえる。
 日本に「賠償」を要求している北朝鮮は、米朝会談の結果次第で日朝の国交が正常化し、日本からの経済支援が実現することを期待しているようだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180605-00000059-san-kr

6月4日記事と6月5日記事でタイトル以外で違う箇所

『「疎外、孤立」』→『「疎外」「孤立」』

6月4日記事「北朝鮮が日本の「疎外、孤立」を強調する」
6月5日記事「北朝鮮が日本の「疎外」「孤立」を強調する」

『賠償まで要求』→『賠償を要求』

6月4日記事「日本の朝鮮半島統治に対する賠償まで要求している」
6月5日記事「日本の朝鮮半島統治に対する賠償を要求している」

『そんな醜態がもたらすのは』 → 『そのような醜態がもたらすのは、』、『非難』→『非難した』

6月4日記事「「そんな醜態がもたらすのは現在のような『日本疎外』現象だけだ」と非難。」
6月5日記事「「そのような醜態がもたらすのは、現在のような『日本疎外』現象だけだ」と非難した。」

追加『また、』、『その前に』、『わが民族に与えた』→『わが民族に対し耐え難い不幸と苦痛を与えた』、『主張した』→『主張』、追加『論評は安倍晋三首相、小野寺五典防衛相、菅義偉官房長官らを名指しした。』

6月4日記事「4日の論評では拉致問題を「既に解決された」「白紙化された」とし、「過去にわが国を占領し、わが民族に与えた前代未聞の罪をまず謝罪し、賠償すべきだ」と主張した。」
6月5日記事「また、4日の論評では拉致問題を「既に解決された」「白紙化された」とし、その前に「過去にわが国を占領し、わが民族に対し耐え難い不幸と苦痛を与えた前代未聞の罪をまず謝罪し、賠償すべきだ」と主張。論評は安倍晋三首相、小野寺五典防衛相、菅義偉官房長官らを名指しした。」

『引用し』→『引用するかたちで』

6月4日記事「日本の一部メディアの報道を引用し」
6月5日記事「日本の一部メディアの報道を引用するかたちで」

安倍晋三政権』→『安倍政権』

6月4日記事「安倍晋三政権を批判する中で多用してきた」
6月5日記事「安倍政権を批判する中で多用してきた」

『断言』→『断言した』

6月4日記事「安倍首相は「日本が蚊帳の外に置かれることはない」と断言。」
6月5日記事「安倍首相は「日本が蚊帳の外に置かれることはない」と断言した。」

『孤立をあおり、』→『「日本の孤立」をあおることで、』、『日本からの接近』→『日本の接近』

6月4日記事「むしろ孤立をあおり、日本からの接近に期待している様子がうかがえる。」
6月5日記事「むしろ「日本の孤立」をあおることで、日本の接近に期待している様子がうかがえる。」

段落全体が別内容。

6月4日記事「韓国も北朝鮮への見方を変えるよう日本に促している。シンガポールでのアジア安全保障会議(2日)で小野寺五典防衛相は「対話に応じるだけで見返りを与えるべきではない」と述べたが、韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相は「疑い続けては対話に支障が出る。北朝鮮を理解してほしい」と反論した。」
6月5日記事「日本に「賠償」を要求している北朝鮮は、米朝会談の結果次第で日朝の国交が正常化し、日本からの経済支援が実現することを期待しているようだ。」

まとめ

実質的に違う内容になっているのは、最後の段落のみで、強いて言えば「論評は安倍晋三首相、小野寺五典防衛相、菅義偉官房長官らを名指しした。」の部分の追加も含められるくらいですね。

それ以外は、『安倍晋三政権』を『安倍政権』に直したり、『断言』を『断言した』に直してるだけで意味は変わっていません。
大学生が他人のレポートをコピーして提出する際にやるような改編ばかりで、実に産経らしい変造です。

いい年して何やってんだか・・・。
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“他に適当な人がいない”とかいうよく聞くアレ

安倍政権を支持する理由を具体的に挙げられない場合の言い訳みたいなやつですが、実態としては消去法とか消極的支持とかじゃなくて、単に他の政治家を知らないだけってのがほとんどだと思うんですよね。
そして多くの場合、“次期首相候補”としてメディアに取り上げられることが少ないから知らないんだろうな、と。

こういうと「野党ガー」とか言い出す人が多そうなのですが、自民党内に限っても同じような傾向は見られます
例えば、こういう世論調査

2018.3.13 00:46更新

【産経・FNN合同世論調査】「次の首相」で石破茂氏が28・6%、安倍晋三首相の30・0%に肉薄

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が10、11両日に行った合同世論調査で次期首相にふさわしい自民党議員を尋ねたところ、安倍晋三首相が30・0%とトップを維持したものの前回調査した1月の31・7%から微減した。逆に石破茂元幹事長は28・6%と前回の20・6%から8・0ポイント増やし、首相に肉薄した。
 調査は、9月の自民党総裁選への出馬が取り沙汰される首相と石破氏、岸田文雄政調会長河野太郎外相、野田聖子総務相の5氏を選択肢に挙げた。岸田氏は9・7%、河野氏は5・8%、野田氏は5・2%だった。
 年代別にみると、首相は40代以下の層が前回の34・1%から38・9%に増え、50代以降が29・6%から22・4%に減った。逆に石破氏は全世代で支持を伸ばした。ただ、自民党支持層でみると首相は56・2%、石破氏は18・9%だった。
 前回は18・1%を占めた小泉進次郎筆頭副幹事長が入っていないためか「他の国会議員」が前回の2・4%から13・5%に増えた。

https://www.sankei.com/politics/news/180313/plt1803130006-n1.html

この手の質問は、既に選択肢が限られているわけですが(「首相と石破氏、岸田文雄政調会長河野太郎外相、野田聖子総務相の5氏を選択肢に挙げた」)、こういう記事に接した人は次期首相候補として挙げられた面子を意識すると共に、挙げられていない人は意識に上らなくなります。

選択肢   2018年1月 2018年3月
安倍晋三  31.7 30.0
石破茂   20.6 28.6
岸田文雄  6.0 9.7
河野太郎  5.0 5.8
野田聖子  4.1 5.2
小泉進次郎 18.1 ----
その他自民 2.4 13.5
いない   9.6 ----
わからない 2.5 7.2

1月の産経FNNの世論調査*1では小泉議員を選択肢に含めていましたが、3月の世論調査*2では選択肢から消えています。産経記事は「前回は18・1%を占めた小泉進次郎筆頭副幹事長が入っていないためか「他の国会議員」が前回の2・4%から13・5%に増えた」と書いており、その見立てはおそらく正しいのでしょうが、それ以外に注目すべき点があります。

1月の世論調査で「小泉進次郎」か「その他自民」を選択した割合は合計で20.5%ですが、3月の世論調査で「その他自民」を選択した割合は13.5%に過ぎません。この期間に7%も支持者を減らすような不祥事が小泉氏にあったかというとそんなこともなく、単純に選択肢にないから他の候補に流れたと見るのが自然でしょう。実際、石破・岸田・河野・野田の4氏いずれも数字を増やしています。
小泉氏はメディア露出の多い議員ですから選択肢にあがらなくても“他の5氏よりは”と選ぶ人が多いようですが、それでも選択肢に挙がらないだけで7%の支持者が減るわけですね。

念のため2018年3月の報道ステーション世論調査結果*3を挙げておきます。

次の自民党総裁は誰がよいか?

選択肢   2018年3月
安倍晋三  19
石破茂   25
岸田文雄  8
河野太郎  3
野田聖子  3
小泉進次郎 23
その他   1
わからない 18

小泉氏の事例は、提供される選択肢に挙がらないというだけで思考上の比較対象から消えてしまう事例と言えるでしょう。

「「安倍さん以上に現状を良く扱える人がいるか?」という問い」

少し古いですが、「与党支持でも野党支持でもいいけど「安倍首相の後を誰がやるか」を考えてる人の意見が読みたい 」と題したブログ記事にこんなことが書かれていました。

「安倍さん以上に現状を良く扱える人がいるか?」という問いに答えられない限り、何を言っても彼らの心に響かないと思う

http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2018/03/15/083000

この問いの答えは同じ記事内に書かれていてこんな感じです。

彼らの本音は「安倍さん以外の選択肢を考えたくない」である。いろいろな選択肢を比較して考えた結果安倍さんを選んだというよりは、安倍さん以外について考えるのがめんどくさいから、全部安倍さんに丸投げして安心したい」である。他の選択肢やリスクが存在すると考えること自体がもうストレスになっている。ゴルディロックス(適温)相場中の投資家たちと同じような状態といえる。

http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2018/03/15/083000


こういう人たちが自分で首相候補となりうる政治家をピックアップして掲げている政策を比較検討するなんてことはまずないですよね。多少でも検討しようかと考えられるのは、こうやって次期総裁候補とか次期首相候補とか、メディアによって既にフィルタリングされた選択肢でしかありません。
自民党総裁に限定せず次期首相候補として野党候補も含んだ調査もありますが、せいぜい野党第一党の党首とメディア露出の多い石原慎太郎氏や橋下徹氏といった程度に過ぎないんですよね。
“他に適当な人がいない”とか言ってる人たちの思考にはその程度の選択肢しか無く、その選択肢内ですら政策レベルになるとまともな情報に欠けた状態でほとんど先入観のみで判断してる感じです(小泉進次郎氏の支持がやたら高いのもメディアを通じて形成されたイメージという先入観によるものですよね)。

“他に適当な人がいない”に隠された前提がついたりとか

単純に“次期首相として適当な人”として考えるなら、自由な思考でよいとは思うんですが大体は、安倍・石破・岸田・河野・野田あたりに別枠として小泉進次郎氏とか*4を含めて、その中でああだこうだ言ってることが多くないですかね。野党は党単位で考えられることが多い気がします、それも最初から当て馬という扱いで。
それって要するに、次期首相を狙えそうな人に限定して、その中で“次期首相として適当な人”として考えてるってことだと思います。そして、その時点で“誰が適当なのか”ではなく、“誰が勝ちそうなのか”に話が変わっちゃってるんですよね。
もう少し自由に考えてみればいいと思うんですよね。

安倍以外の“適当な人”の選択肢を提示してみる

野党政治家の中から示しても良いんですが、あえて自民党政治家の中から提示してみます。“他に適当な人がいない”と言っている人たちにとっては、全て安倍氏以下だということでいいはずですが。

菅義偉(現内閣官房長官
麻生太郎(現財務大臣
野田聖子(現総務大臣
河野太郎(現外務大臣
小野寺五典(現防衛大臣
世耕弘成(現経産大臣)
上川陽子(現法務大臣
林芳正(現文科大臣)
加藤勝信(現厚労大臣)
高村正彦(現自民党副総裁)
二階俊博(現自民党幹事長)
萩生田光一(現自民党幹事長代行)
林幹雄(現自民党幹事長代理)
金田勝年(現自民党幹事長代理)
松村祥史(現自民党幹事長代理)
柴山昌彦(現自民党筆頭副幹事長)
小泉進次郎(現自民党筆頭副幹事長)
石破茂(元自民党幹事長)
岸田文雄(現自民党政務調査会会長)
石原伸晃(現自民党外交戦略再生会議議長)

とりあえず上記20人の自民党議員を見渡しても、安倍氏以外は不適当なんですかね?
別の選択肢もありますね。例えばこんな感じ。

石井啓一 (現国交大臣)
山口那津男(現公明党代表
井上義久(現公明党幹事長)

与党としての経験を十分積んでいる政党の議員ですし、政権担当能力とやらも期待できるんじゃないですか?それともやっぱり安倍氏よりも劣りますか?




こういう擁護をする連中がいるからバカバカしい答弁閣議決定が無くならないんじゃないかな

「セクハラ罪はない」 バカバカしい(?)閣議決定はなぜされるのか(坂東太郎 | 日本ニュース時事能力検定協会検定委員 5/30(水) 10:00 )

立憲民主党逢坂誠二衆院議員の質疑に対する「セクハラ罪はない」 という答弁書閣議決定に関し、坂東太郎氏はこう述べています。

 ここまでをご理解いただいた上でペンディングしておいた「バカバカしい」かどうかの材料を拾ってみます。まず「セクハラ罪」から。質問主意書
・現行法令で「セクハラ罪っていう罪はない」という理解でよいか。
・セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することはあるのではないか。該当することがあるのであれば「セクハラ罪」という呼称を持たないものの、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事法上の罪に該当するのではないか。
といった内容です。
 答弁書は「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」「セクハラが刑法の強制わいせつ等の刑罰法令に該当すれば犯罪が成立し得るが、成立するのは強制わいせつ等の罪であり『セクハラ罪』ではない」といった内容です。
 まあ涙が出るほど当たり前の答えですね。これをもって質問主意書そのものが無駄であったといえるのかも。一方で答弁書の内容云々ではなく改めて麻生発言の是非、特に「犯罪でなければ何をやってもいいのか」という疑問を提起したので価値があるともいえなくもありません。

https://news.yahoo.co.jp/byline/tarobando/20180530-00085775/

一言で言えば、“答弁内容は当たり前、質疑そのものが無駄”と評しているわけです。
しかし坂東記事に記載されてない事情を見ると、逢坂議員の質疑には重要な意味があったことがわかります。

事の発端

2018年5月4日、訪問先のマニラでの記者会見にて麻生財務相が「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などと発言したことが発端となっています。
これについては、朝日新聞共同通信Buzzfeedなどが報じています。

朝日新聞 2018年5月4日22時54分)麻生財務相「セクハラ罪という罪はない、殺人とは違う」

 しかし、麻生氏はセクハラの認定については「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などと発言。「(福田氏)本人が否定している以上は裁判になったり、話し合いになったりということになる。ここから先はご本人の話だ」とした。

https://www.asahi.com/articles/ASL547FDDL54ULFA00P.html

共同通信 2018.5.5 00:17)麻生財務相「セクハラ罪という罪はない」 減給理由は「役所に迷惑」

 セクハラ行為を認定した上で減給とした財務省の対応とは食い違う説明になる。麻生氏は「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」とも発言した。

https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/180505/plt18050500170003-n1.html

麻生財務相「セクハラ罪という罪はない」。識者ら「何から何までおかしい」と批判や戸惑い(5/5(土) 14:47配信 BuzzFeed Japan)

そして「セクハラ罪っていう罪はないですよね。殺人とか強制わいせつとは違いますから」と発言した。財務省は4月27日、福田氏のセクハラを認定して減給処分をしているが、その点には触れなかった。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180505-00010002-bfj-pol

文脈を見れば、“セクハラは殺人とか強わいと違って罪にならない”と主張していることが明白です。

逢坂議員の質疑は、そこをついたものです。

平成三十年五月八日提出 質問第二七五号
セクハラ罪という罪に関する質問主意書 提出者  逢坂誠二

 平成三十年五月四日、訪問先のフィリピンで麻生太郎財務大臣は記者会見し、福田淳一前財務事務次官のセクハラ行為の認定について、「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」(「本発言」という。)などと発言した。
 消費者庁のホームページでは、「職場でのパワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントに関する通報は本法の「公益通報」(本法第二条第一項)に当たりますか」との例示に対し、「パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントについても、そのパワー・ハラスメントが暴行・脅迫などの犯罪行為に当たる場合や、そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と示している。
 本発言について疑義があるので、以下質問する。

一 現行法令では、「セクハラ罪っていう罪はない」という理解でよいか。
二 消費者庁のホームページ上では、「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と例示しているが、セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することはあるのではないか。政府の見解如何。
三 二に関連して、セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することがあるのであれば、それが「セクハラ罪」という呼称を持たないものの、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事法上の罪に該当するのではないか。政府の見解如何。
四 「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という麻生大臣の発言は、「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と例示しているセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当し得るという見解に反するのではないか。政府の見解如何。
五 本発言を鑑みると、麻生大臣は「セクハラなんて大した問題ではない」と考えているのではないか。政府の見解如何。
六 本発言の「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などの発言は不適切ではないか。女性への性的な暴力は「魂の殺人」とも指摘され、それが実際に強制的な性的行為の有無にかかわらず、被害者女性の心の中での受け止め方次第であり、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」というのは乱暴極まりないものである。麻生大臣は本発言を撤回し、真摯に謝罪を行うべきではないか。政府の見解如何。

 右質問する。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a196275.htm

1は法律上セクハラ罪という罪が無いことの確認で、2でセクハラの概念が強制わいせつなどの犯罪行為を包含していることを確認しています。3では、セクハラが強制わいせつなどの犯罪行為を包含しているならば、強制わいせつなどの刑法に抵触するセクハラ行為があるということを確認しています。
この1~3は前提条件の確認で、本旨は4以降になります。

“セクハラと強制わいせつは違う”発言は、“セクハラの中には強制わいせつなどの犯罪行為に該当するものがある”とする見解と矛盾する

4では、セクハラは「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」と述べた麻生発言に対して、セクハラが強制わいせつを包含しているという消費者庁サイト上に明記された定義と矛盾していることを指摘しています。
これは重要な指摘です。
「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と書かれているにも関わらず、“セクハラと強制わいせつは違う”と閣僚が発言するようでは、セクハラ被害者は「公益通報」に躊躇せざるを得なくなるからです。

坂東記事はこの点を全く無視しています。

5では、麻生発言全体から受ける一般的な認識として「麻生大臣は「セクハラなんて大した問題ではない」と考えているのではないか」と質問しています。この問題の経緯を踏まえれば当然の質問で、改めて確認しておく必要のあると言えます。
6も同様、麻生発言全体の不適切性を指摘するものです。

5と6は、公的立場にある者が、セクハラなどの反倫理的行為に対して現行法に抵触するか否かではなく、強く批判的な立場を示して世間に範を垂れるべきだという当然の要望です。

これを「質問主意書そのものが無駄であった」などと評するのは、はっきり言って不適切ですし、そういうスタンスであるなら、教師や警官、与野党政治家、宗教家、芸能人、皇族などが、不倫や法に抵触しない範囲のセクハラを繰り返しても一切問題視しないと宣言してほしいものです。

答弁書を書いた政府は、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という発言をまずいと思っていた

実は、政府側は「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」発言に対してはまずかったと認識していた節があります。
政府は、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という麻生発言を否定しているからです。

平成三十年五月十八日受領 答弁第二七五号
内閣衆質一九六第二七五号 平成三十年五月十八日
内閣総理大臣 安倍晋三
(略)
四から六までについて
 平成三十年五月四日の記者会見において、麻生国務大臣は御指摘の「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」とは述べておらず、「殺人とか傷害とは違います」と述べたところである。(略)

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b196275.htm

しかし上で述べたとおり、自民党に友好的なフジ系列の報道も含めて各種報道は「殺人とか強わいとは違う」と聞き取っています(ちなみに私が下記リンク先の動画で聞いても「しょうがい」ではなく「きょうわい」と言っているようにしか聞こえませんでした。)。
www.fnn.jp

麻生財務相は「『セクハラ罪』っていう罪はないですよね。殺人とか、強わい(強制わいせつ)とは違いますから。福田前事務次官は、やったことはないと言っているわけですから。そうすると、福田前事務次官の立場、言い分等々、向こうの人と両方でやらないと、公平さを欠く」と述べた。

https://www.fnn.jp/posts/00391294CX

どうもネット上の擁護論(「強わい」ではなく「傷害」と言ったと主張しているもの)に乗っかって逃げたというのが正確でしょう。

答弁書は上記引用部に続いてこう述べています。(質疑4~6に対応する回答として)

また、セクシュアル・ハラスメントに対する同大臣の考えについては、同大臣が同年四月二十四日の閣議後記者会見において、「セクハラ疑惑につきましては、セクハラは、被害女性の尊厳や人権を侵害する行為なので決して許される話ではないということは、報道が事実だとすれば、セクハラに該当するという意味でアウト、これは最初から申し上げたとおりです」と述べたとおりである。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b196275.htm

「セクハラは、被害女性の尊厳や人権を侵害する行為なので決して許される話ではない」と答弁していますが、それならば、セクハラが事実かどうかの調査を打ち切ったことや財務省としてセクハラを認定したに触れないのは不適切だと言わざるを得ませんね。

調査を打ち切ることについて「いくら(調査結果が)正確であったとしても偏った調査じゃないかと言われるわけですから。被害者保護の観点から(調査に)時間をかけるのは、かなり問題がある」などと説明。処分の理由については国会審議への影響のほか、「役所に対しての迷惑とか、品位を傷つけたとか、そういった意味で処分をさせて頂いた」とし、財務省としてセクハラを認定したことは挙げなかった。

https://www.asahi.com/articles/ASL547FDDL54ULFA00P.html

坂東氏は質問趣意書が増える傾向にあることを問題視しているようですが、メディアが上で示したような内容をろくに踏まえることもなく「質問主意書そのものが無駄であった」ような論調で答弁側を擁護するような機能不全を起こしている以上、野党としてはメディアの機能不全部分を補う形で質疑する以外ないですよね。

どんな答弁をすべきだったか

“バカバカしい答弁閣議決定はバカバカしい質問のせい”みたいな主張がまかり通っていますが、そんなことはありません。政府に誠実に答える意思があればバカバカしい答弁になどなりません。
今回の逢坂議員の質問趣意書に対するならば、以下のような内容を踏まえればバカバカしくはならないはずです。

・いわゆるセクハラを包括的に罪に問える法令は存在しないが、セクハラのうち特に悪質な行為に対しては強制わいせつなどの現行法に抵触する。
・強制わいせつやストーカー規制などの現行法に抵触する行為には、一般的にセクハラと解釈される行為に含まれるものがあると認識しており、法的な正確性を要求されない一般的な表現において、それらを指して「セクハラ罪」と呼びうることは承知している。
・5月4日の財務大臣発言は、セクハラ全般を財務省として許容し問題視しないかのような表現であったため訂正し、以後同様の発言が出ないよう全閣僚に対して周知した。
・政府としてはセクハラ行為全般に対し、現行法令に抵触するか否かに関わらず問題視しており、政府・公的機関内のセクハラ行為が根絶されるべく努力していく所存である。
・なお、財務省としては福田淳一前財務事務次官の発言がセクハラに相当すると認定し処分を行っている。

本来なら、以上のような内容を答弁書で述べるべきであり、安倍政権が出した言い逃れと責任回避に終始するような答弁書を「涙が出るほど当たり前の答え」と容認するメディアや論者の態度が安倍政権を甘やかし、答弁から誠実さを失わせてる誘因になっていることを自覚すべきだと思います。



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トランプ大統領が米朝会談中止を表明した理由として、思いつくのは二つ。

一つは、相手より優位に立つための交渉戦術の一環として中止を宣言してみせたという一種のパフォーマンス。トランプ大統領のこれまでの言動からすれば可能性としては十分考えられると思います。この場合、今度は突如として会談実施路線に切り替える可能性もあります。発言に一貫性が無いのは、この手のポピュリスト政治家にはよくある話ですので、可能性としては少なくないでしょう。
この可能性を示唆する根拠としては、そもそも今回中止にした理由とされる事実が中止がもたらす事態の重要性に比べてあまりにも卑小すぎる点が挙げられます。北朝鮮の高官が米国高官を罵ったとか、実務者協議をドタキャンされたとかでは、理由としては感情的過ぎます。
北朝鮮側が強い態度に出たのも、自国の安全・体制を保証する核武装と引き換えにできるのは、自国の安全・体制を保証する外交的環境であるという当然の要求に基づくものです。取引・交渉という視点で、それを理解できないほどトランプ大統領が無能とも思えません。
そうすると自国の安全・体制保証を求める北朝鮮に対して、体制保証をできる限り高く売りつけるために中止を“ちらつかせた”という可能性が説得力を持ちます。

もう一つは、自分が北朝鮮や中国に騙されているのでは、と本気で思い込みそれを避けるために中止した可能性。
巷間よく言われる“北朝鮮は核を放棄するつもりはない”という先入観を前提視して、現状の北朝鮮の言動を経済支援などをただ取りするための交渉戦術と判断した可能性です。政治理念を廃した取引の名手ならば、そのような判断はしないと思いますが、西側世界に蔓延している北朝鮮像を真に受ければ、そういう疑心暗鬼に陥ることもあるでしょう。
疑心暗鬼になってるので、中国や韓国から現状を好機と説明されればされるほど疑ってしまう悪循環です。対等の立場での交渉に不安を覚え、自分が圧倒的に有利な位置から降伏を申し出る相手との交渉しか受け付けない心理状態です。中止声明内の自らの核戦力を誇示してみせる記述などは、そういった心理を暗示しているようにも読めます。前任者は騙されたが自分は騙されないという自負もそういった心理状態に陥りやすくしているかもしれません。

まあ、他にも可能性が無いではないです。北朝鮮との交渉が自分の利益に結びつかないと判断したとか。外交交渉を成功させるには何らかの形で北朝鮮の体制保証をしなければならないのにそれをすると強い批判が想定され、そうかと言って軍事的に解決することも出来ないので先送りする意味で中止した場合がそれです。
ただ、北朝鮮の体制保証をした場合に想定される批判は北朝鮮の人権問題に関わっている勢力からですが、トランプ大統領がそれを気にしそうな感じはあまりしないんですよね*1

というわけで1週間くらいは様子見が必要かなと考えています*2
1番目の可能性が正しければ、近いうちに交渉は再開するでしょうが、2番目の可能性が正しければ再開は絶望的です。

しかしまあ、「「米朝首脳会談 まだ12日もありえる」トランプ大統領(5月25日 22時45分)」とか見ると、どうも1番目の可能性っぽいですねぇ。



"朝鮮は日本の植民地では無かった”説に対しては反論が出ていたので、“イギリスはインドに大学を作ったのか”に対して回答

友利新氏が日本に併合され植民地となった朝鮮を「植民地にしたわけじゃない」とか言ったようです。
さすがにあちこちで指摘されてますが、当時の公文書から植民地扱いしてましたからねぇ。
それはともかく、朝鮮植民地否定論に拘泥する友利氏がその流れで「イギリスはインドに大学を作りましたか?」とか言い出し、動画見てると菅野氏がそれに反論しようとしてはいたようですが、友利氏の発言に遮られ明確に反論が示されなかったので、そっちの件について書いておきます。

インドは言うまでもなくイギリスの植民地とされていたわけですが、そのインドに大学が設置されたのは1857年のことです。
ムンバイ大学、コルカタ大学、マドラス大学はインド最古の三大学として知られています。

ムンバイ大学(ボンベイ大学)

The profile of this University carved out in 161 years of its functioning attests to its manifold achievements as the intellectual and moral powerhouse of the society. The University has always given its best to the country in general and to the city of Mumbai in particular by enthusiastically shouldering an ever-growing load of social values and opportunities.

Initially, the University concentrated its efforts on controlling teaching at the undergraduate level and in conducting examinations. Later on it took up research and the task of imparting instructions at the Post-Graduate level. This resulted in the establishment of the University Departments beginning with the School of Sociology and Civics & Politics. The independence of the country led to the re-organization of the functions and powers of the University with the passing of the Bombay University Act of 1953.

http://mu.ac.in/portal/about-us/

コルカタ大学(カルカッタ大学)

Foundation of the University of Calcutta

The Court of Directors of the East India Company sent a despatch in July, 1854 to the Governor-General of India in Council, suggesting the establishment of the Universities of Calcutta, Madras and Bombay.
In pursuance of that despatch, the University of Calcutta was founded on JANUARY 24, 1857.
The University adopted in the first instance, the pattern of the University of London and gradually introduced modifications in its constitution

http://www.caluniv.ac.in/about/about.html

カルカッタ大学の一つであるカルカッタ医科大学は1835年に設立されています。
また、アジアで最初の女性の大学であるベスーン大学(Bethune College)もカルカッタ大学の一つで、1879年に設立されています。

マドラス大学

The Public Petition dated 11-11-1839 initiated the establishment of Madras University. It was in January 1840 with Mr.George Norton as its President, that the University Board was constituted. In 1854 after a lapse of 14 years, the Government of India formulated a systematic educational policy for India and as a sequel to this on 5th September 1857 by an Act of Legislative Council of India, the University was established. The University was organised in the model of London University.

Madras University is the mother of almost all the old Universities of south India. The University area of jurisdiction has been confined to three districts of Tamil Nadu in recent years. This is consequent to establishment of various universities in the State and demarcation of the University territories. This University has been growing from strength to strength while widening its teaching and research activities.

http://www.unom.ac.in/index.php?route=university/university

それ以外にもこんな感じで、植民地に大学が設置されています。

英領インドでは、1857年にボンベイ大学、カルカッタ大学マドラス大学が設置されています。ボンベイ大学とカルカッタ大学の設立はロンドン大学の提案により1854年には設置が認められ、1857年1月24日にはカルカッタ大学法が施行されています。マドラス大学は少し遅れて1857年9月に設置法が成立しています。大学設置の請願は1840年頃からありました。
その他、マイソール大学(1916年)、オスマニア大学(1918年)、アーンドラ大学(1926年)、アンナマライ大学(1929年)、トラヴァンコール大学(1937年)などが設立されています。
1801年にイギリスに併合されたアイルランドでも、1845年にはベルファスト、ゴールウェイ、コークに王立大学が設置されていますし、イギリスの保護国だったエジプトでも1908年にはカイロ大学が設立されています。
フランスが仏領インドシナインドシナ大学を設置したのは1906年、アルジェリアにアルジェ大学を設置したのは1909年*2、アメリカがフィリピンにフィリピン大学を作ったのが1908年です。

日本が植民地朝鮮に京城帝国大学を作ったのは1924年、植民地台湾に台北帝国大学を作ったのは1928年です。

[http://scopedog.hatenablog.com/entry/20130708/1373297324