野党統一候補の存在意義がわからない人に連立与党の存在意義はわかるのだろうか?

こんなブログがあったので。
野党統一候補の存在意義を誰か教えて

で、こんなことが書いてある。

野党統一議員の政策と政治理念は?

でも、それで当選して議員さんになった候補者がいるとして、その人の政策はどうなってるの?って思うんですよね。
政党ってのは、それぞれの政策があるからこそ分かれていると思ってるんですけど、だとしたら、彼らは参議院の席に座ってなにするのでしょう。
だって、各政党の政策は違うはずでしょう。いっしょなら合併して大きな野党になればいいのにそれをしないんですから。
細かい政策で野党の動きが割れたとき、その野党統一議員の人はどう動くんです?それぞれ元の所属政党の支持で動く?それって統一だからって票をくれた別の野党の支持者に不義理になるんじゃないの?それともそのときどきで自分の信念で動く?え?じゃあそもそもなんでその所属政党にいるの?選挙の時が無所属だったら選挙後にどっかの政党に属すの?え?じゃあそもそもその候補者には政治理念なんてないの?
考えれば考えるほどわからない。

https://www.cobalog.com/entry/yatoutouitsukouho

ここ30年間、ほとんどの期間で日本は連立政権だったわけですし今も自民党公明党の連立政権なわけですが、野党統一候補の存在意義がわからないという人は連立政権については疑問に思わなかったんでしょうか?

上記の言い回しを用いるなら、こんな感じになりますよね。

政党ってのは、それぞれの政策があるからこそ分かれていると思ってるんですけど、だとしたら、彼らは参議院の席に座ってなにするのでしょう。
だって、自民党公明党の政策は違うはずでしょう。いっしょなら合併して大きな与党になればいいのにそれをしないんですから。
細かい政策で自民党公明党の動きが割れたとき、与党議員の人はどう動くんです?それぞれ元の所属政党の支持で動く?それって「選挙区は自民、比例は公明」で票をくれた別の与党の支持者に不義理になるんじゃないの?それともそのときどきで自分の信念で動く?え?じゃあそもそもなんでその所属政党にいるの?

でも連立与党の自公政権に対しては「政策モンスターか、まったく政治理念がないか」とも「“賛成”のみにお仕事」とも言わない。
自民党公明党候補者に対して「政策と政治理念を持ってない与党に“賛成”するだけの人」とも言わない。
不思議ですね。

自民党比例で当選した山田太郎氏は表現の自由を訴えていますが、自公政権表現規制法案を提出したら抵抗せずに賛成票を投じるべきでしょうか?
抵抗しないなら表現規制反対に期待して投票した有権者への裏切りですが、さりとて抵抗すると今度は自民党だからという理由で投票した有権者への裏切りになりますね。

こういう矛盾を避けるには、候補者はこう主張しなければいけません。
「党の決定にすべて従います。私自身の主張はありません」と。

でも、そんな候補者まずいませんよね。
それを不思議に思ったことはないですかね。

それを不思議に思ったこともないのなら、なぜ野党統一候補の存在意義だけが気になったんでしょうね。

選択的懐疑主義という奴ですかね。

一応、答えてみると

個々の有権者と全てにおいて全く同じ主張の候補者や政党なんてまずありません。

Aという政策には賛成だけど、Bという政策には賛成できない。でも問題の重みを考えるとAの方が比較的重要だから、この政党・候補者に投票しよう、ってのがまあ、普通でしょうよ。
実際、自民党に投票する連中はよくそういう言い訳してますよね。“安倍政権のやり方の全てに賛成するわけではないけど野党に入れたくないから消去法で自民党”とか“消費税には反対だけど、自民党”とか。

野党統一候補に投票する方も、“この候補者の全てに賛成ではないけど自民党に反対だから消去法で統一候補”という認識でしょう。
安倍自公政権がやろうとしている政策のうち、どうしても賛成できないものについては連携して反対に回ってくれるという点で野党統一候補には意味があります。

反対のみのお仕事?

どうも野党は何でも反対するとか思ってそうですが、以前調べたところでは民進党時代の第193回国会で内閣提出法案に反対したのは、民進党は全体の19%、社民党は33.3%、共産党ですら66.7%といった状況で、第196会国会でも似たような傾向です。
ガンガン対案を出す共産党を例外とすれば、基本的に半数以上か7割以上の内閣提出法案に賛成することが多いんですよね。

つまり、それぞれの野党が是々非々で判断して賛否の態度を決めるのが普通なわけで、国会で各野党で政治的主張が割れた場合、野党統一候補が政党に所属しているのであれば、まず党の判断に従うことが多いでしょうし、無所属であれば個々の判断で賛否決めるでしょうね。

政策によって判断が割れるのは当たり前の話。

野党統一候補って、全ての政策を一致させることを約した候補ではありませんからね。

でも以下のようなことを言うってことは、おそらくそれも知らないんでしょうね。

野党が政策をこえてひとつになるのはきっと与党に反対するときでしょう。それが野党の存在意義のひとつですから。
そのための統一候補?それだけ?
じゃあ国会での政治的主張が各野党割れたときに、その野党統一議員は何の役には立たなくなっちゃいます。割れないっていうなら先ほども書いたとおり連合して大野党になるべきだし、そうしないってことは政策によっては割れるんでしょ。
そうなると、やっぱり与党に反対するだけのお仕事としか思えない。
でもそれだったら「アベヤメロー」「ナニイッテンダー」「ハナシニナラナイー」とか繰り返しスピーカーで流す人形でも座らせとけって話になっちゃいますから、きっとぼくのようなアホにはわからない何か大きな仕事があるんでしょう。
それが何なのか、何をどう考えてもわからないんですけど。

https://www.cobalog.com/entry/yatoutouitsukouho

考える以前にちゃんと調べたのか疑問なんですけど・・・。

こういう記事があります。
5/29(水)4野党1会派と市民連合による政策協定調印式のご報告

野党統一候補の根拠となる政策協定ですね。
個々の選挙区には固有の事情もありますから、これだけで全てとは言えませんが、基本的にはこの協定の範囲内において各野党は共通した政策を採るということになります。

有権者から見れば、野党統一候補はどの政党の所属だろうと無所属だろうと、この政策協定に書かれている内容に沿った活動を期待できるので、それに賛同するなら投票するということになります。
逆に言えば、ここに書かれていないことについては、候補者に委ねるということでもあります。


ああ、ちなみにこういった政策協定って別に野党だけがやってるわけじゃありません。連立政権を組んでいる自民党公明党だって当然のようにやっています。
事例1:<参院選2019>自民と公明が選挙協力協定 共通基本政策に7項目(5/29 7:00、佐賀新聞)
事例2:自由民主党・公明党連立政権合意(PDF)



政党が違えば政策も違うけど、あらゆる政策が全て異なるわけでもなく他党と共通する政策もある。それぞれの優先度・重要度を鑑みて共通する政策を軸に各党で調整して協力する。
そんなにわかりにくい話じゃないですよね。



離婚後共同親権制度と離婚後単独親権制度のメリット・デメリットの整理

私自身は離婚後共同親権を公約にしている*1からといって維新に投票するつもりはないのですが*2、離婚後共同親権については賛成です。
ちなみに同じく離婚後共同親権を主張している嘉田由紀子氏には投票したい気持ちはありますね。嘉田氏の場合、離婚後共同親権については昨日今日主張したものではなく、以前から主張されてもいますしね*3

しかしながら、どうにも一般的にはリベラルと目されそうな面々から離婚後共同親権に反対する声が上がっています。まあ、反対なら反対でもいいのですが、根拠がデタラメだったりするのがちょっとあんまりなので一応書いておきます。

大前提として、離婚後共同親権はほとんどの先進国で採用されています。アメリカのカリフォルニア州共同親権法を可決したのは1979年のことです。韓国や中国でも共同親権が認められていますし、イギリス、ドイツ、フランスも同様です。
離婚後共同親権にしたからといって離婚後の問題が全て解消するわけもなく、問題も生じていますが、だからといって離婚後単独親権に戻した国は私の知る限り、一つもありません。また、離婚後共同親権になったからといって別居親たちが満足したわけでもなく、現在もなお養育に関われる時間を増やしてほしいという運動を続けています。

さらに国連の子どもの権利委員会は今年2019年2月に日本に対する総括所見として、離婚後共同親権を認める法改正を行うよう勧告しています*4。この勧告には、朝鮮学校の授業料無償化や体罰禁止の法改正などが含まれており、これらについては報道もされましたから勧告の存在自体は知っている人が多いはずです。
しかし、同じ勧告内に離婚後共同親権を認める法改正があることは一般にはあまり知られていませんし、知っているはずの人たちも無視する傾向が見て取れます。

勧告の内容は以下の通りです。

Family environment

27. The Committee recommends that the State party take all necessary measures, supported with adequate human, technical and financial resources to:
(抜粋)
(b) Revise the legislation regulating parent-child relations after divorce in order to allow for shared custody of children when it is in the child’s best interests, including for foreign parents, and ensure that the right of the child to maintain personal relations and direct contact with his or her non-resident parent can be exercised on a regular basis;

家庭環境

27.委員会は、締約国が、以下のことを目的として、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられたあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
(抜粋)
•(b) 子どもの最善の利益に合致する場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正するとともに、非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できることを確保すること。

https://www26.atwiki.jp/childrights/sp/pages/319.html
https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRC%2fC%2fJPN%2fCO%2f4-5&Lang=en

ざっとネットを見る限りでは、離婚後共同親権に反対しているのは、千田有紀氏、駒崎弘樹氏、大貫憲介弁護士、高橋雄一郎弁護士、木村草太氏等で、リベラル系の言論人が多く反対している印象を受けます。
ただ、これらの人たちが、上記の国連勧告をどのようにとらえているのは良くわかりませんでした。

離婚後共同親権制度と離婚後単独親権制度のメリット・デメリット

とりあえず思いつくものを列挙してみます。

離婚後共同親権制度のメリット

・父母が離婚した後も、子が双方の親と交流することが容易になる。
・上記に関連して、子が同居親親族、別居親親族のそれぞれとの関係を維持することが容易になる
・同居親が病気や怪我などを負った場合に別居親が子の監護を代行することが容易になる
・別居親も親権を持ち続けることで子の親である意識を抱きやすく養育費を含む子の監護の協力に積極的になることが期待できる。
・子に興味の無い親にも養育の責任を自覚させることが期待できる。
・“親権を失った方の親には問題がある”といった社会的偏見の改善が期待できる。日本のように特に母親が子育てすべきといったジェンダーロール意識の強い社会では、親権を失った母親は強い偏見にさらされるが、そのような偏見は相当程度改善されることが見込まれる。
・上記に関連して、母親が子育てすべきといったジェンダーロール意識自体の改善も見込まれる。
・離婚時の親権争いが無くなり、紛争を通じた離婚後の父母の関係悪化を回避できることが見込まれる。離婚後の父母の関係が悪化していないことは子の精神的負担を緩和させる。

離婚後共同親権制度のデメリット

・離婚後も父母間で子に関する協議が必要となり、まとまらない場合は家裁の判断が必要となる。
・上記のうち、同居親が子を連れて転居する際には、別居親の同意や家裁の判断が必要な上に、転居後の面会交流についても協議する必要が生じる。
・父母間の葛藤が高い場合は離婚後も長期にわたって紛争が継続するおそれがある
・DV*5が継続するおそれがある
・子に対する虐待が継続するおそれがある
・父母双方とも子に興味がない場合、監護を相手に押し付けあい、子の福祉が損なわれるおそれがある。

離婚後単独親権制度のメリット

・単独親権者が子に関する事項を全て自分だけで裁定できる。
・DV被害者が単独親権者となった場合、DV加害者を排除することができる。
・子に対する虐待加害者が非親権者となった場合、それ以上の子に対する虐待を防止することができる。

離婚後単独親権制度のデメリット

・DV加害者が単独親権者となった場合、子との面会を望む非親権親に対する支配が継続するおそれがある
・子に対する虐待加害者が単独親権者となった場合、子に対する虐待が継続するおそれがある。
・上記の場合でも非親権親の介入が非常に困難で、虐待の発見が遅れるおそれがある。
・親権者の一存で子が非親権親と交流できなくなる。
・上記に関連して、子と非親権親の親族との関係も失われる可能性が高くなる
・非親権親から親である意識が損なわれ、養育費を含む子の監護に消極的になるおそれがある。
・単独親権者が怪我や病気になった場合に、非親権親に子の監護を頼みにくく、また非親権者が親権を持たないことでできることに制約が生じる。
・非親権親は“親権を失った方の親には問題がある”といった社会的偏見にさらされる。
・母親が子育てすべきといったジェンダーロール意識と相互に連関して母親が親権となる事例が増え、旧いジェンダーロール意識が継続すると同時に父親が子の監護から排除される傾向が維持される。
・離婚時の親権争いを激化させる。子の連れ去りや配偶者を追い出すなどして子を抱え込み、不要な葛藤と対立を招くおそれがある。離婚後も父母間の対立が継続することは子の成長に悪影響を与える。
・子の監護責任が全て単独親権者にのしかかり、育児負担が過大となるおそれがある。

離婚後単独親権制度の評価

それぞれのメリット・デメリットは、だいたいこんな感じですかね。

はっきり言って、離婚後単独親権制度のメリットは単独親権者の排他的決定権以外は現行制度に固執しなくても維持できるものなんですよね。
子の関する事項について父母双方が協議して決めることを認めない理由は、一方がDV加害者や虐待加害者でもない限り、ありません。虐待もDVもない親を進学や病気治療などの重要事項の決定から排除しながら、その親に養育費だけ要求するというのは、人倫に悖ります。

DV加害者の排除や虐待加害者の排除については、現状既にDV防止法に基づく保護命令*6児童虐待防止法児童福祉法に基づく虐待認定と親権停止・喪失という制度があり、単独親権制度でなければDV・虐待加害者を排除できないわけではありません。
そもそも離婚後単独親権制度による親権喪失は、民法819条の規定によるもので、DV・虐待加害者であるという理由で親権を失うわけではありません。逆に言うと、DV・虐待加害者が単独親権者になることも許容する制度だということです。

離婚後共同親権反対派の論者は、DV・虐待加害者が単独親権者になる恐れを全く無視しています。
この離婚後単独親権制度のデメリットは無視できません。

子を虐待している親が単独親権者になった場合、現行の単独親権制度下では非親権親に取れる手段がありません。
誰の目にも明らかな身体的暴力の痕やネグレクト、性的虐待の痕跡がない限り、単独親権者と子の家庭内という密室に介入することは実質的に困難です。子を監護している親は、子に対して強い影響力がありますから、子は親権親に言いなりになることが多く、野田市10歳児虐待死事件では、子ども自身に児童相談所に対して虐待の事を否定する手紙を書かされたりしています*7
非親権親が面会交流を通じて子と密に交流しているならば、非親権親が虐待の事実を察知し、司法に訴え子を救うことができるかも知れませんが、虐待している単独親権者が虐待の事実が露見しかねない面会交流を認める可能性はほとんど皆無でしょう。
木村草太氏が別居親には面会交流権があると主張するなど、家庭裁判所に訴えれば面会交流は認められるという意見はよく見かけますが、2016年度に実際に家裁に申し立てられた面会交流事件11402件中、認容ないし調停成立した件数は7952件、そのうち「長期休暇中」「4~6ヶ月に1回以上」で面会交流が認められた件数は、6159件(約54%)に過ぎません。

大阪2児遺棄致死事件のケースを考慮すると、子の虐待の徴候を見つけるには最低でも1ヵ月に1度は面会交流できないと難しいでしょうが、2016年度に家裁で1ヵ月に1度以上の面会交流が認められたのは、わずか 4574件(約40%)で申立て件数の半数を割ります。

また、現行単独親権制度では、児童相談所が単独親権者による子の虐待を察知しても親権を持たない非親権親には連絡されません。非親権親は我が子が児童相談所が介入するレベルの虐待に遭っていても知ることもできず、虐待死にいたって初めてテレビのニュースで我が子が死んだことを知るような状況です。
虐待死は当の子にとっては言うまでも無く悲劇ですが、子に会いたいと願いながら単独親権者によって拒まれ、ある日、我が子が虐待で殺されたことを報道で知る非親権親にとってもまぎれも無い悲劇です。

こうして見ると、現行の離婚後単独親権制度はメリットよりもデメリットの方が遥かに大きいことがわかります。

離婚後共同親権制度の評価

では離婚後共同親権はどうなのか考えてみましょう。

共同親権反対派からよく反対の根拠とされているのは、離婚後の子の重要事項で父母間の協議が必要になることとDVや虐待が離婚後も継続する懸念です。
ただ、離婚後もDVや虐待が継続する懸念というのは上記単独親権制度の評価でも述べたとおり、現行既にDV防止法、児童虐待防止法児童福祉法があり、虐待がある場合は民法834条及び834条の2で親権喪失・親権停止の規定が適用できますので、単独親権制度か共同親権制度かに関係なく、危険な親を排除できるようになっていますので、これを離婚後共同親権のデメリットとは制度的には言いがたいですね*8

離婚後の子の重要事項で父母間の協議が必要になるという点はデメリットと言えばデメリットですが、親である以上背負うべき責務としか言いようがありません。もちろん協議がまとまらない場合は家裁での裁定が必要になりますから、家裁のリソースという問題は発生します。しかし、これも家裁に予算をつけることで解決できる問題に過ぎません。

また、父母間の葛藤が高い場合は離婚後も長期にわたって紛争が継続するおそれがあるという点については、介入・仲介できる第三者機関を強化・拡充するなどの対策が必要ですが、これも予算の問題ですね。

あまり注目されない問題として、父母双方が子を相手に押し付けようとする子にとってはもっとも悲劇的な事態も起こりえます。これを避けるためには、子のいる夫婦の離婚に際しては全て家裁が関与するようにして、離婚後も子の福祉が損なわれないような体制があるかを確認する責務を家裁が負うようにする必要があるでしょう。現状、9割が家裁を介さない協議離婚であることを考えると、家裁の業務が一気に増加する可能性がありますので、この辺については十分な対策が必要ですね。

しかしながら、離婚後共同親権のデメリットというのは基本的に予算・人員などの拡充で対応できるものばかりですから、子の福祉、子の最善の利益という視点で考えるならばメリットの方がデメリットよりも遥かに大きいといえます。

DV・虐待対策

共同親権反対派は非親権親による親権親に対するDVや非親権親による子の虐待については殊更懸念する一方で、親権親による非親権親に対するDVや親権親による子の虐待については懸念している様子が伺えません。

もちろん、DV・虐待対策は現状でもなお不十分な点があり改善の余地がありますが、それは離婚後単独親権であろうと離婚後共同親権であろうと関係の無い話です。
むしろ、離婚後単独親権制度では、非親権親による親権親に対するDVや非親権親による子の虐待にしか対応できず、親権親による非親権親に対するDVや親権親による子の虐待には対応できないという点を踏まえると、離婚後共同親権制度下で機能するDV・虐待対策を構築する方が、被害者を減らすことができるでしょう。

具体的に考えられるのは、DVも虐待もそのリスクをチェックシートを用いて定量的に評価し、リスクスコアに応じた介入方法を全国レベルで統一運用することですね。属人的な評価に依拠した結果、他の児童相談所の管轄に移ってリスクが受け継がれずに虐待が深刻化した目黒事件のような悲劇を回避する上で最低限必要でしょう。
もちろん、チェックシートは万能ではありませんから、不備があれば随時更新して、同じような不備を繰り返さない努力は必要ですが。

DVも同様で、一方的な身体的暴力による傷害・殺人のリスクが非常に高い状況と双方が激しく口論しているような状況ではリスクの度合いが異なりますから、当然すべき対応も変わるべきです。
具体的な対応案としては、DV関連情報をまず警察に集約しリスク評価を行い、離婚や子の監護などの家事事件対応が必要な事案については家裁に情報とリスクスコアを伝え、離婚や子の監護などについては家裁が判断を下し、それを根拠として警察・行政が対応するようにするのが必要でしょう。対応も、現状のように単純な被害者保護を漫然と行うのではなく、被害者保護は緊急避難として一時的なものとし、DV内容が刑事事件に相当する場合は、加害者に対する処罰を求めて司法に委ね、刑事事件に相当しないがDVとして問題がある場合は、加害者を更生させ、被害者が安全な状態で安定した関係性になるよう支援するプログラムにつなげ、DVとして問題がない場合も家裁等の関与の下で関係調整を行い、適切な関係性になるよう支援する、というリスクに応じた対応が必要でしょう。
また、当初のDV評価が実態とは乖離していた場合は、当初の評価を前提とした対応の見直しが必要です。例えば、身体的暴力やその恐れが全く無かったにもかかわらず、被害者が身体的暴力の恐れを訴えてDV被害者支援が稼動し、それを前提として、離婚や子の監護に関する決定が下された場合、その決定は実態としてのリスク評価に基づき見直されるべきです。
これは、前者(当初のリスク評価を前提とした決定)を仮処分として取り扱うことで対応できるはずです。

2018年5月に名古屋地裁が虚偽DVを認定した判決を出しています*9が、現行のDV防止法でのDV支援が不適切に使用されるおそれがあることは否定できず、子のいる夫婦間では相手を排除するためにDV防止法が利用されるおそれが常につきまといます。これを回避するためには、DVの訴えがあり支援措置が開始された場合は全て、事後的にDVのリスク評価を行い、支援措置が必要だったかどうかをチェックする必要があります。

なお、2018年5月の名古屋地裁判決(平成28(ワ)3409)は原告の訴えを一部認めたものの2019年1月の名古屋高裁判決(平成30(ネ)453)では、その全てが棄却されたため、“虚偽DVではなく実際にDVがあったと高裁が認めた”という主張もあります。ですが、名古屋高裁判決でも、別居後に身体的暴力やその恐れはなかったと認めており、名古屋地裁での虚偽または誇張という評価は覆ったとは言い難いところです*10

名古屋高裁判決(平成30(ネ)453)(抜粋)
イ この点,本件においては,1審被告A及びBが別居した後,本件支援措置申出がなされるまでの約3年3か月の間,1審原告は,1審被告Aに対して身体的な暴力に及んだり,身体的な暴力を振るおうとしたことはなく,D市内の1審被告A及びBの別居先を具体的に把握した後も,その別居先を直接訪問したりすることはなかったことが認められる。そうすると,本件支援措置申出の当時,1審被告Aにおいて,1審原告からの身体に対する暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれはなかったといえる。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/543/088543_hanrei.pdf

DVや虐待の被害者のなかには即座に保護しないと危険な人たちがいますから、被害者の訴えのみ支援措置が開始されること自体は問題ではありません。
ですが、加害者扱いされた人にとって不利益な措置が講じられ、それが恒常化する場合は、被害者の訴えのみを根拠とすべきではなく、加害者扱いされた人の反論はもちろん、客観的な証拠によって被害の事実やリスクの存在を評価する必要があります。
一方当事者の訴えのみによって他方当事者に不利益を強い、訴えの内容が事実かどうか対応が適切かどうかを評価する機会すらないという制度は、法治国家としては放置すべきではないでしょう。

まとめ

今の日本で、離婚後共同親権を導入しない理由は特に存在しません。
現状、DV・虐待対策に不十分な点はありますが、それは離婚後共同親権の是非とは関係なく改善すべきであって、それを理由に共同親権に反対するのは的外れです。なぜならば、現状の不十分なDV・虐待対策による被害は離婚後単独親権下でも起こっているからです。

離婚後共同親権で起こる“かもしれない”被害をもって、離婚後単独親権下で起きている被害を無視するのは不適切です。
DV加害者がDV被害者を追い出し単独親権者となる事例や非親権親を排除して面会交流も行われないまま単独親権者が子を虐待する事例もあります。それらは離婚後単独親権制度であるからこそ起こっている被害であり、起こる“かもしれない”被害ではなく、実際に起きている被害です。
そういった被害の存在を無視するのは、誠実ではありませんし、何より“人権派”の名に値しないでしょう。
人権を重視するのであれば、共同親権を導入できない理由を挙げるのではなく、共同親権を導入するためにどんな施策が必要なのか挙げ、積極的に検討すべきです。



*1:https://o-ishin.jp/news/2019/images/6860febe42b42f0a5eb56dd331612ad8ea34820a.pdf

*2:正直言って、維新として誠実に離婚後共同親権に取り組む意図があるとも思えず、野党支持層を分断するのにちょうどいい材料だから飛びついたと見ていますし、実質的な閣外与党勢力とも見ていますので。

*3:例えば2016年の講演(https://www.murc.jp/assets/img/pdf/quarterly_201601/pdf_011.pdf)や滋賀県知事だった2010年の知事会見の際(https://web.archive.org/web/20120525171951/http://www.pref.shiga.jp/chiji/kaiken/files/20100824.html)に離婚後共同親権について言及しています。

*4:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2019/02/11/080000

*5:ここでは配偶者・元配偶者に対する暴力のみをDVとし、子に対する虐待とは区別しています

*6:10. ドメスティックバイオレンス(DV)(配偶者暴力等に関する保護命令申立て)

*7:野田市虐待死事件 心愛さんが父親に書かされた手紙全文「児童相談所の人には会いたくない…」

*8:離婚事件で弁護士が虐待要件を必要とする民法834条での親権剥奪ではなく、虐待要件を必要としない民法819条をお手軽な親権剥奪手段として利用している現状があり、結果として民法834条での親権喪失事件の実績が少ないという問題があると言えばあります。

*9:http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/10/25/080000

*10:高裁判決は、明示的には否定しているものの、実質的に面会交流を阻止する目的でのDV支援措置利用を認めており身体的暴力やその恐れが無くとも構わないという論理をとっていますが、その論理は相当違和感を覚えるものです。名古屋高裁判決の論理を敷衍すると、例えば同居親が子どものために別居親に対して子どもと面会交流してほしいと求めたが別居親は子どもに会いたくなかった場合、別居親は同居親の面会交流要求を精神的DVとみなして住所秘匿のDV支援措置をとって面会交流拒否をすることをも認めることになります。

韓国政府が輸出管理を行っている公開済みの証拠を【独自】とつけて不正輸出の証拠にでっち上げる産経式のやり方に騙される日本社会

この件。
【独自】韓国から戦略物資の不正輸出 4年で156件 韓国政府資料入手で“実態”判明(2019年7月10日 水曜 午前11:45)

いや、さすがにこれに踊らされるようでは、レベル低すぎだよと思ったけど、今の日本メディアに自浄作用なんか無いからなぁ・・・。

まず、これFNNの【独自】でも何でもなく、朝鮮日報が5月に報じている内容です。
大量破壊兵器に転用可能な戦略物資、韓国からの違法輸出が急増(記事入力 : 2019/05/17 10:02)
で、さらにこの朝鮮日報記事自体が非常に偏っていて、単純な摘発件数の推移を「韓国からの違法輸出が急増」と曲解している記事になっています。

さらにさらに、朝鮮日報の記事も別に特ダネとかでも無く、基本的に韓国政府が毎年公表している統計情報で、何のこともない公開情報です。
根拠法は대외무역법(対外貿易法)のようで、行政処分として수출제한(輸出制限:31条)、교육명령(改善命令:49条)、경고(警告)の3種類があります。
で、FNNの嫌韓煽動プロパガンダに対する韓国政府の反論がこれ(カッコ内は機械翻訳)。

“日 후지TV 보도, 한국 수출통제 제도 효과·투명 운영 반증”(「日フジTVの報道は、韓国の輸出統制制度の効果・透明運営反証」)

산업통상자원부 2019.07.10(産業通商資源部 2019.07.10)

[보도 내용]([報道内容])

□ 한국에서 지난 4년간 무기로 전용 가능한 전략물자의 밀수출이 156차례나 적발
(□韓国では、過去4年間の武器でのみ可能な戦略物資の密輸出が156回も摘発)

□ 일본 관계자는 “수출규제 위반사건이 이 같이 많이 적발됐는데 한국 정부가 지금까지 공표하지 않은 것에 놀랐으며, 한국을 화이트국으로 대우하기는 어렵다”고 논평
(□日本の関係者は、「輸出規制違反事件がこのように多くの摘発されたが、韓国政府がこれまでに公表していないことに驚きし、韓国をホワイト国に扱うことは難しい」とコメント)

[산업부 설명]([産業省の説明])

□ (자료의 출처) 同자료는 우리나라 사법당국이 전략물자 무허가 수출을 적발한 실적에 관한 것으로서, ‘19.5월 조원진 국회의원실의 연도별 전략물자 무허가수출 적발 및 조치현황 요구에 따라 제출된 것임
(□(資料の出所)同資料は、韓国の司法当局が戦略物資無許可輸出を摘発した実績に関するものであり、2019年5月ジョウォンジン国会議員室の年度別戦略物資無許可輸出摘発及び措置の現状のニーズに応じて提出されたものである)

f:id:scopedog:20190710183746j:plain
무허가 수출 적발 및 조치 현황(건수)(無許可輸出摘発及び措置の現状(件数))

□ (자료 공개의 투명성) 산업통사자원부는 산하 전략물자관리원의 「연례보고서」를 통해 전략물자 무허가 수출 적발 및 조치 현황을 매년 투명하게 공개하고 있고 있으며,
(□(資料公開の透明性)、産業通史部は傘下の戦略物資管理院の「年次報告書」を使用して戦略物資無許可輸出摘発と措置の現状を毎年透明に公開しており、)
ㅇ 아울러, 국정감사 등을 통해 상세 내역을 수시로 국회에 제출하고 있고, 금번 보도된 자료도 조원진 국회의원실에 ‘19.5월 제출된 자료임
(併せて、国政監査などを通じて詳細を頻繁に国会に提出しており、今回報道された資料もジョウォンジン国会議員室に2019年5月提出された資料である)
ㅇ 이는 우리나라 전략물자 수출관리제도가 효과적이고 투명하게 운영되고 있다는 반증임
(これは韓国の戦略物資の輸出管理制度が効果的かつ透明に運営されているという反証である)

□ (외국 사례) 전략물자 수출통제 선진국인 미국은 무허가 수출 적발실적 및 주요 사례를 공개하고 있음
(□(外国の事例)戦略物資輸出統制先進国である米国は、無許可の輸出摘発実績と主な事例を公開している)

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불법 수출 처벌 현황(美상무부 산업안보국)(不法輸出処罰の現状(美商務省産業安全保障局))


ㅇ 일본은 우리나라와는 달리 총 적발건수도 공개하지 않고 있으며, 일부 적발사례만을 선별하여 공개하고 있음 (www.cistec.or.jp)
(日本は韓国とは異なり、全摘発件数も公開しておらず、いくつかの摘発事例だけを選別して公開している(www.cistec.or.jp))

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일본 적발 사례 (발췌) (日本の摘発事例(抜粋) )

□ (불화수소 관련) 일본측의 일본산 불화수소의 북한 반출 의혹 제기에 따라 7.9(화) 산업부 장관이 발표한 바와 같이, 최근 일본에서 수입한 불화수소가 북한으로 유출된 어떠한 증거도 발견하지 못했으며,
(□(フッ化水素関連)日本側の日本産フッ化水素北朝鮮搬出疑惑提起に基づいて7.9(火)産業部長官が発表したように、最近日本から輸入したフッ化水素北朝鮮に流出したいかなる証拠も発見していないし、)
ㅇ 기사에 언급된 적발 리스트에 포함된 불화가스 관련 무허가 수출사례는 일부 국내업체가 UN 안보리결의 제재대상국이 아닌 UAE, 베트남, 말레이시아로 관련 제품을 허가 없이 수출한 것을 우리 정부가 적발한 사례여서 일본산 불화수소를 사용한 것이 아님
(記事に記載された摘発リストに含まれているフッ化ガス関連無許可輸出事例は、いくつかの国内企業がUN安保理決議の制裁対象国ではなく、UAEベトナム、マレーシアでの関連製品を許可なく輸出したことを、私たちの政府が摘発した事例であって、日本産フッ化水素を使用したものではない)

https://www.gov.kr/portal/ntnadmNews/1926106

要するに韓国政府が輸出管理をしていて不正事案に対して摘発を行っているからこそ、摘発統計があり透明性確保のためにその統計も戦略物資管理院が「연례보고서(年例報告書)」で公表されている、と。
同様の統計はアメリカも不法輸出処罰の統計として集計しており、2015年から2017年までの3年間で、刑事罰94件、行政処罰134件と公表されている、と。2015年から2019年3月までの4年3か月間で、行政処罰156件(輸出制限:48件、改善命令:87件、警告:21件)の韓国が特段に多くも無く、年平均で見れば、行政処罰に限ってもアメリカよりも少ないんですよね(アメリカ:44.7件/年、韓国:36.7件/年)。
むしろ、日本の方こそ摘発事例の全件数を公表しておらず、一部の事例だけを抽出して公開しているだけで透明性に欠けている、と指摘してます。

日本産フッ化水素北朝鮮に搬出された疑惑については7月9日に韓国の産業部長官が発表した通り、その証拠は発見されていない、と。
FNNが報じた記事にあるフッ化ガス関連無許可輸出事例は、韓国国内メーカーが関連製品をUAEベトナム、マレーシア等制裁対象国以外の国に無許可で輸出したのを韓国政府が摘発した事例であって、日本産フッ化水素が無許可輸出された事例ではない、と反論しています。

この上ないくらいガッツリと反論しています。

FNNのやり口は、例えるなら犯罪統計を取り上げて日本は犯罪天国だと主張するようなもので、嫌韓煽動以外の何物でもない極めて悪質なプロパガンダです。
こんなレベルのことからいちいち説明しないといけないとか、大丈夫なんですか、この国。

あまりにもひどい内容なので、ここも指摘しておきます。

国連安保理北朝鮮制裁委員会のパネル委員だった古川勝久氏は「大量破壊兵器関連の規制品をめぐる輸出規制違反事件がこれほど摘発されていたのに、韓国政府がこれまで公表していなかったことに驚いている」、「この情報を見るかぎり、韓国をホワイト国として扱うのは難しいのではないか」とコメントしている。

https://www.fnn.jp/posts/00420563CX/201907101145_CX_CX

古川勝久氏は国連安保理北朝鮮制裁委員会のパネル委員だったくせに、韓国政府が毎年公表している輸出管理の統計すら知らないってどんだけ無能なんですかね?

あと関連記事を挙げておきます。
www.newsis.com
news.joins.com

2つ目の中央日報記事の笑える部分をピックアップしておきます。

산업통상자원부는 10일 일본 후지TV가 ‘한국에서 지난 4년간 무기로 전용 가능한 전략물자를 밀수출한 사례가 156차례 적발된 것으로 드러났다’고 보도한 것에 대해 “이는 우리나라 사법당국이 전략물자 무허가 수출을 적발한 실적이며 공개된 자료”라며 “우리나라 수출 통제 제도가 효과적이고 투명하게 운영되고 있는 반증”이라고 반박했다. 후지TV는 극우·반한(反韓) 성향을 띤 산케이신문 계열 방송사다.
(産業通商資源部は10日、日本のフジTVが「韓国では、過去4年間の武器でのみ可能な戦略物資を密輸出た事例が156回摘発されたことが分かった」と報道したことについて、「これは韓国の司法当局が戦略物資無許可輸出を摘発した実績であり、公開された資料」と「韓国の輸出統制制度が効果的かつ透明に運営されている反証」と反論した。フジTVは極右・惚れ(反韓)性向を帯びた産経新聞系列放送会社だ。

https://news.joins.com/article/23521378

よくわかってらっしゃる。



性犯罪関連の現行刑法には改正の余地があると思うが、当事者団体が要求している要件にも賛同できないので、個人的な対案を出してみる

こんな記事がありましたので。

●「相手からの不同意のみを要件に」
性犯罪をめぐる刑法の規定は2017年、110年ぶりに大幅に改正された。その際の附則で、施行後3年をめどに、必要がある場合には実態に即して見直しをすることが盛り込まれた。
「3年後見直し」が来年に迫る中、署名では以下の要件を盛り込んだ新たな改正案を2020年の国会に提出することを求めた。

・強制性交等罪における暴行脅迫、心身喪失、抗拒不能の要件を撤廃し、相手からの「不同意」のみを要件として性犯罪が成立するよう刑法を改正する
・監護者性交等罪の適用範囲を18歳以上に拡大し、処罰を重くする
・親族、指導的立場にある者(教師・施設職員等)や上司など地位や関係性を利用した性行為に対する処罰類型を設ける
・性交同意年齢を引き上げ、抜本的に見直す

https://www.bengo4.com/c_1009/n_9801/

まず、「強制性交等罪における暴行脅迫、心身喪失、抗拒不能の要件を撤廃」は不要で、これとは別の条文として不同意性交罪を新設すべきだと思います。
例えば、不同意なのに性交を求められて激しく抵抗したら相手が諦めた場合と激しく抵抗しているのに相手が諦めず性交を強いられた場合を同等に扱うのは違和感ありますよね。

「監護者性交等罪の適用範囲を18歳以上に拡大し、処罰を重くする」については前半は賛成、後半は反対。監護者わいせつ罪の法定刑は「六月以上十年以下の懲役」、監護者性交罪は「五年以上の有期懲役」で、既に十分に重い刑罰になっています。

例えば傷害致死は「三年以上の有期懲役」で監護者性交罪よりも軽く、未成年者略取誘拐は「三月以上七年以下の懲役」で監護者わいせつ罪よりも軽い状況です。殺人罪と比べても監護者性交罪には無期と死刑が無いだけで、これ以上厳罰化するなら、無期や死刑を導入せよという主張としか思えません。
ちなみに監護者わいせつでも致死傷がつくと「無期又は三年以上の懲役」、監護者性交に致死傷がつくと「無期又は六年以上の懲役」となりますので、この状況で厳罰化せよというのは、法定刑に死刑を入れよという主張としか思えません。

「親族、指導的立場にある者(教師・施設職員等)や上司など地位や関係性を利用した性行為に対する処罰類型を設ける」は原則的に賛成ですが、被害者が成人してて、かつ、本人が明確に性交に同意した場合は違法性が阻却される必要があると思います*1

「性交同意年齢を引き上げ、抜本的に見直す」には反対。中学生や高校生カップルに純潔教育するみたいですごく嫌。むしろ同意や避妊の重要性や健康状態に配慮できるように性教育をちゃんとやるべきだし、万一、不同意性交や妊娠、性病感染などが起きた場合に迅速に相談対処できるようにすべき。高校生カップルが同意の上で性交した結果、妊娠してしまった場合、強制性交罪で逮捕されるリスクを回避するために危険な堕胎行為を行うかもしれないし、人知れず出産して新生児を殺してなかったことにするかもしれません。そういった諸々を考えると性交同意年齢の引き上げには賛同できませんね。

というわけで対案。

・現行の強制わいせつ・強制性交罪、準強制わいせつ・強制性交罪についてはそのまま残す。
・上記とは別個に、一方の当事者が不同意を表明した場合または同意を推定できない関係性にある当事者の一方が他方の明確な同意を得ないまま性交を求め性交に及んだ場合を不同意性交罪として新設し、法定刑は強制わいせつ・強制性交罪、準強制わいせつ・強制性交罪よりも軽い刑罰(1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金程度くらい)を規定する。また、起訴するためには当事者の告訴を必要とする。
・監護者性交罪については、被監護者*2の生活に著しい影響を与えうる権限を有する者全般を監護者とみなすように範囲を広げる。被害者の年齢要件は撤廃すると同時に、被害者が成人しており、監護者との関係性を理解した上で明確に性交に同意した場合は違法性を阻却するように変更する。

ちなみに、同意については明確な同意が無くとも、過去から継続して性交を交わす関係にあり、かつ、性交を拒否する事情を当事者双方が認識していない場合は、暗黙の同意があるものとみなす必要があると思います。要するに夫婦やカップルなどこれまで普通に暗黙の同意の下で性交に及ぶ関係性にある場合は、浮気や喧嘩などそれまでとは違って性交を拒否する特段の事情が存在しない限り、明確な同意が無くとも暗黙の同意があったとみなし、違法性を問わないという意図です。
また、不同意性交罪については親告罪とするべきです。そうでなければ、妊娠した夫婦に対して性交の際に同意があったのかを司法当局が確認することを容認することになりますから。

個人的には、性暴力関連の刑法について、前述したとおり監護者性交罪の要件見直しや不同意性交罪の新設が必要だと思っています。ですが、それを主張している側のやり方には同意できない点が多いのも確かです。
2019年3月の無罪判決批判なども疑問を感じる点が多々ありましたし、今の厳罰化要求もそうです。

繰り返しになりますが、現行刑法でも性暴力関連の法定刑は十分に重いですよ。
・強制わいせつ(刑法176):六月以上十年以下の懲役
・準強制わいせつ(刑法178):六月以上十年以下の懲役
・監護者わいせつ(刑法179):六月以上十年以下の懲役

・強制性交(刑法177):五年以上の有期懲役
・準強制性交(刑法178):五年以上の有期懲役
・監護者性交(刑法179):五年以上の有期懲役

・強制わいせつ・準強制わいせつ・監護者わいせつ致死傷(刑法181):無期又は三年以上の懲役
・強制性交・準強制性交・監護者性交致死傷(刑法181):無期又は六年以上の懲役

・強制性交・準強制性交+強盗(刑法241):無期又は七年以上の懲役
・強制性交・準強制性交+強盗致死(刑法241):死刑又は無期懲役


比較のために他の犯罪での法定刑を示します・
・殺人(刑法199):死刑又は無期若しくは五年以上の懲役
傷害致死(刑法205):三年以上の有期懲役
危険運転致死(自動車運転死傷行為処罰法2):一年以上の有期懲役
酒気帯び運転致死(自動車運転死傷行為処罰法3):十五年以下の懲役
危険運転致傷(自動車運転死傷行為処罰法2):十五年以下の懲役
酒気帯び運転致傷(自動車運転死傷行為処罰法3):十二年以下の懲役
・営利目的等略取及び誘拐(刑法225):一年以上十年以下の懲役
・未成年者略取及び誘拐(刑法224):三月以上七年以下の懲役


性暴力関連の法定刑はいずれも未成年者略取及び誘拐よりも重く、傷害致死よりも軽いのは致死傷のない強制・準強制・監護者わいせつ等だけです。つまり、強制・準強制・監護者性交の法定刑は、殺すつもりは無かったけど意図的に暴行して傷害を負わせた結果死なせてしまった傷害致死よりも重いんですよね。もちろん、法定刑が一年以上の有期懲役である危険運転致死よりも重いです。
いくら強姦が“魂の殺人”だからといっても、実際に被害者が死んでいる傷害致死危険運転致死よりも重い法定刑が既に規定されていて、殺人罪との法定刑の違いでさえ無期と死刑の有無だけです。しかも致死傷がつけば、強制・準強制・監護者わいせつ等であっても無期もありえる法定刑になっています。

これでも軽すぎるとか思うのなら、その感覚は私には到底理解できません。



*1:その関係が継続している場合は、暗黙の同意を適用する必要もありそうです

*2:誤記訂正

続きを読む

性暴力事件に関する2019年3月の4つの無罪判決と1つの有罪判決について

以下の無罪判決4つ。

2019年3月、性犯罪事件について、立て続けに4つの無罪判決があった。

福岡地裁久留米支部判決(3月12日/準強制性交=無罪)*1
静岡地裁浜松支部(3月19日/強制性交致傷=無罪)*2
静岡地裁判決(3月28日/強制性交、児童買春・児童ポルノ禁止法違反のうち、強制性交につき無罪、後者につき罰金10万円)*3
名古屋地裁岡崎支部判決(3月26日/準強制性交=無罪)※報道は4月5日*4

https://note.mu/hechimasokosoko/n/nf3c2a5513255

これらの無罪判決に関する報道をきっかけに司法に対する批判が行われました。
判決に対して、その判決が導き出されたロジックや証拠採用の妥当性を批判するのであれば、賛否はともかく批判の仕方としては適切であったろうとは思いますけどね。このうち判決が公表されているのは、名古屋地裁岡崎支部の2019年3月26日判決だけかと思います。
あるいはこれらの事件が公判中から注目されていて、大方の事実関係について報道を通じて熟知しているとかなら、判決そのものを見なくてもある程度の意見は言えるでしょう*5

さて、上記の判決に対してなしうる批判としては次の2種類でしょうか。

1 “裁判官が偏向しているから有罪になるべき事件が無罪になった。→裁判官を批判”
2 “有罪になるべき事件だが法律の要件を満たさないので無罪になった。→刑法の不備を批判”

今回の無罪判決批判で気になったのは、1のパターンですね。
はっきりいって初期報道だけでは、裁判官が偏向していたから無罪になったという判断はおろか、そもそも有罪になるべき事件だったのかすら判断が難しかった、というよりほぼ不可能だったはずです。

2のパターンでの批判であれば同意できるところも多いんですけどね。
何度か言及していますが、個人的には監護者性交罪の年齢要件の撤廃と不同意性交の処罰化は必要であろうと思っています*6。ただ、その方向で刑法改正されたとしても、同意の有無や任意性については裁判で争われるでしょうし、その結果、同意が無かったとはいえないとか同意を得たと誤信しうる状況にあったとして無罪になる可能性はあるでしょうけどね。
それはさておき。

2のパターンの無罪判決批判でもおかしなものは見受けられました。これらが有罪にならないのは現行刑法が不備だからだという主張です。しかし、名古屋地裁岡崎支部の2019年3月26日判決の事件では「被告人は、被害者A(実娘)が中学2年生の頃からAに対して性交等を行うようになり、それはAが高校を卒業するまでの間、週に1~2回の頻度で行われていた。」*7という事実認定がされています。

父親が中学2年生の娘と性交したという事実がある場合、現行刑法179条1項の監護者性交罪に問われます。名古屋地裁岡崎支部の2019年3月26日判決が無罪になったのは、監護者性交罪が新設・施行された2017年の時点で被害者が19歳であり、現行刑法の監護者性交罪が適用される18歳未満の条件を満たさず、被害者が18歳未満の時に受けていた被害に対しては、2017年施行の刑法を遡及適用することができないため、監護者性交罪で訴えることが出来なかったことによります。
ですから、岡崎の事件と同様の被害を監護者から現に受けている18歳未満の被害者(あるいは2017年以降の18歳未満であったときに被害を受けた被害者)がいる場合、それは現行刑法で有罪にできます。

例えば無罪判決批判の記事としてこんなものがありました。

父の性暴力、家族のために沈黙する娘「抵抗なんて無理」

中塚久美子 2019年5月5日10時40分
 父親から娘への性暴力をめぐる裁判で、無罪判決が続いている。「抵抗が著しく困難だったとは言えない」などの理由だ。被害経験がある女性らは、「親子の力関係は対等じゃない。怖くて抵抗なんかできるわけない」。実態と、司法の判断のギャップに打ちひしがれている。
 大阪府内の女性(19)は、「抵抗できる」ことを前提にした判決にショックを受けた。「抵抗したらいいって言うけど、そんなの無理。分かってほしい」
 小学2年の時だった。休日、昼寝中に義父から性暴力を受けた。「静かにしろ」。怖くて指示に従うしかなかった。「トイレに行きたいと、その場を離れるのが精いっぱいの勇気だった」
 トイレから出て、居間にいた母に泣きながら打ち明けた。味方になってもらえず、「3人の秘密だ」と口止めされた。
 その後、妹や姉も義父に「(体を)触られた」と口にしたことはあったが、詳しく聞けなかった。姉が義父に反抗するとハンガーで殴られ、真冬に家から閉め出されるのを見た。自分は率先して食器を洗うなど、親を怒らせないよう常に機嫌をうかがった。義父にされたことを話せば、家族がバラバラになると思って沈黙を守った。
 高校生になり、中学時代の担任と話す機会があった。妹が、義父に殴られるなど虐待を受けていることを相談する中で、自らの被害も明かした。児童相談所に通報され、保護施設に入った。学校や家庭での日常を失い、生きる意味が分からなくなって薬を大量に飲んだ。入院し、単位が足りなくなって高校を中退した。現在は家族と離れて暮らす。
(略)

https://www.asahi.com/articles/ASM4N7R9HM4NPTFC00C.html

冒頭無料部分に記載された被害は深刻なものですが、刑法上の要件から言えば、小学2年の時に受けた被害については、明らかに13歳未満ですから現行刑法176条や177条で暴行・脅迫が無くとも有罪にできる事件です。
被害者が13歳未満であれば抵抗の有無は関係ありませんから、「「抵抗できる」ことを前提にした判決にショックを受けた」という記載は誤解を招く恐れがあり、新聞記事として不適切であろうと思います。
また、13歳以上になってからの被害についても監護者からの加害であれば、抵抗の有無に関係なく刑法179条の監護者性交罪が適用できます。
なお、この朝日新聞記事ですが、有料部分も含め、監護者性交罪に関する言及は一切ありません。

現に監護者からの性的虐待に抵抗できず苦しむ18歳未満の被害者がこの朝日記事を読んだ場合、自分の受けている被害は法的に罪に問うことはできないと誤解する恐れがあり、非常に不適切だと言えます。
2017年以降かつ18歳未満の時に監護者から性交を強いられた被害者に、抵抗の有無に関係なく加害者を監護者性交罪に問うことができると伝えるのがメディアの役目ではないですかね。
その上で、現行の監護者性交罪には年齢要件があるため、18歳以上で監護者から性交を強いられている被害者*8は、暴行や脅迫、抗拒不能が立証されない限り加害者を罪に問うことが出来ないので、その点の刑法改正が必要だと訴えるべきでしょう。

ちなみに、2019年3月28日の静岡地裁判決の事件では、そもそも性交の事実が否定されていますので、刑法の要件とは関係がありません。その事実認定が正しいのかどうかという批判は可能ですが、それこそ判決や証拠などを調べないと何とも判断できないでしょう。

「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜を罰するなかれ」という法格言は、刑事手続において最も重視されなければならない言葉です。

https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/q12.html

この法格言*9を踏まえても尚、性交の事実があったといえるだけの証拠があったのか、そこが重要です。
なお、もし本件での性交が事実であったなら、被害者の年齢は12歳でしたから、監護者性交罪以前に暴行・脅迫要件を不要とする13歳未満に対する強姦に該当します。要するに事実であれば、現行刑法で十分処罰できる事件です。


さて、改めて4つの無罪判決を見てみると、なすべき批判としては、まず「① 福岡地裁久留米支部判決(3月12日/準強制性交=無罪)」と「② 静岡地裁浜松支部(3月19日/強制性交致傷=無罪)」については、いずれも拒絶していないと誤信する状況が問題でしたから、不同意性交を処罰できるように刑法改正すれば良いということになります。
「④ 名古屋地裁岡崎支部判決(3月26日/準強制性交=無罪)」については、監護者性交罪の年齢要件を見直すことで対応できるでしょう。
「③ 静岡地裁判決(3月28日/強制性交、児童買春・児童ポルノ禁止法違反のうち、強制性交につき無罪、後者につき罰金10万円)」については、刑法改正でどうにかできる問題じゃなく、批判するにしても詳細が不明で何ともいえません。

最後に別の事件を紹介します。

娘から性的虐待を告発された父が拘置所で病死、夫の無実を信じる妻の独白(5/29(水) 5:00配信 )」

2018年4月10日に、14歳の娘が父親に性的虐待されたと教師に訴え、即日児童相談所に保護され、5月2日に父親が監護者わいせつ罪で起訴された事件です。母親や兄弟など家族全員が否定したものの娘の証言が採用され、2019年3月29日に静岡地裁浜松支部で懲役9年の実刑判決が下されています。
判決以外は2019年3月28日の静岡地裁判決の事件と似たような構成です。

父親は控訴しましたがその準備中の2019年4月27日、拘置所内で急性心疾患により亡くなり、被告人死亡による公訴棄却とされました。

この事件も“藪の中”の一つです。
被害者である娘の証言が正しく、父親は娘に対して性的虐待を行っており、母親や2人の兄弟はその事実を知りながら口裏を合わせて否定したのか、あるいは実際に気づかなかったのかも知れません。
しかし、被害者の証言が誤っていたり誘導されたりしたもので、実際には性的虐待の事実は無かったかもしれません。

この記事だけで事実がどうだったかを判定することは出来ません。むしろ巻き込まれた家族の側の視点で書かれている分、冤罪だという認識を抱くことの方が多いでしょう。
同様に、2019年3月28日の静岡地裁判決の事件に関する報道記事だけで事実がどうだったかを判断することもできません。そしてその報道は無罪判決を批判する視点で書かれている分、不当判決だという認識を抱くことの方が多いでしょう。

もし、上記の容疑者である父親が拘置所で病死した事件について冤罪かも知れないと思えるのであれば、今回の無罪判決批判が同じような冤罪判決を増やす恐れがあることに想像をめぐらしてほしいものです。
性暴力被害者に寄り添い被害者証言を信じることは確かに重要なことです。しかし、もし冤罪だった場合、冤罪被害者にはどれほどの被害が生じるのか、性暴力被害当事者にはそれを考える余裕も義務も無いでしょうが、新聞記事程度の情報だけで事件を知った人たちにはそれを知っておいてほしいと思います。



*1:詳細は、https://note.mu/hechimasokosoko/n/nb21bc07eb6b8?magazine_key=mc875a594d4a3

*2:詳細は、https://note.mu/hechimasokosoko/n/n193a10c27071

*3:詳細は、https://note.mu/hechimasokosoko/n/n43ee78b62097

*4:判決内容は、http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2019/05/09/071729

*5:それでも報道が偏っている可能性は否定できないのですが

*6:一部の粘着バカには、これでもミソジニー呼ばわりされるんですけどね。

*7:https://news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi/20190515-00126022/

*8:特に2017年以前から継続的に性的虐待を受け続け抵抗の気力を失っている被害者の場合、刑法改正の陥穽に落ち込み救済されていないという不公平があります。

*9:冤罪問題などに一家言ある人でさえ、性犯罪やDV・虐待事案になるとこの原則を忘れ去ってしまうことがあるんですよね。

박미향(パク・ミヒャン)の出自情報

石丸次郎の情報

モランボン楽団にいた若い娘」「張成沢が関係した人間の孫」
(「<北朝鮮>張氏親族また銃殺か 行政職員が伝える」2014.03.31、「「粛清の嵐」吹かせる金正恩(2)張成沢親族と関連者の処刑続く 有名俳優も」2015.05.26)

高英起の情報

「前駐スウェーデン大使のパク・クァンチョル氏」の「息子の嫁」「北朝鮮映画『ある女学生の日記』に主演した「清純派女優」」「夫の父である前駐スウェーデン大使のパク・クァンチョル氏が、張成沢氏と近しい間柄だった」
(「金正恩氏はなぜ「清純派」美人女優を抹殺したのか (1/2ページ)」2018.10.7、「北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された」2018/12/15(土) 11:06 )

中央日報の情報

「처벌 이유는 박미향이 화폐 계혁 당시 숙청당한 박남기 전 노동당 계획재정부장의 친척이라는 이유라고 전해졌다. 」
(「[출처: 중앙일보] '한 여학생의 일기' 北 유명 여배우 사라진 이유가…」2013.08.17 17:39 )

「박남기 전 노동당 계획재정부장의 친척(박남기(パク・ナムギ、朴南基)労働党計画財政部長の親戚)」

北朝鮮駐英公使・太永浩(태영호)の情報

2016年に韓国に亡命した太永浩(태영호)はブログで박미향(パク・ミヒャン)が박광철(パク・クァンチョル・朴光哲)の娘(息子の妻)だと述べています。

박광철은 2013년 12월 초 북한으로 끌려가 외무성에서 추방되어 현재 평양시 서성구역 인민 위원회에서 일하고 있다.
박광철의 딸은 세계적으로도 유명한 북한 영화 ‘한 녀학생의 수기’의 주역배우 박미향이다.
이 영화는 국제 영화제에서도 상영되었다.
박미향은 시아버지가 처형된 후 남편과 어린 아들과 함꼐 수용소로 끌려 갔다.

バクグァンチョルは2013年12月初め、北朝鮮に連れて行かれ外務省から追放され、現在、平壌市西城区域の人民委員会で働いている。
バクグァンチョルの娘は、世界的にも有名な北朝鮮映画「た女生徒の手記」の主役俳優パク・ミヒャンある。
この映画は、国際映画祭でも上映された。
パク・ミヒャンは義父が処刑された後、夫と幼い息子に同収容所に連れて行かれた。

https://thaeyongho.com/2017/01/29/%EC%9E%A5%EC%84%B1%ED%83%9D%EC%88%99%EC%B2%AD%EC%82%AC%EA%B1%B4%EC%9D%B4-%EB%B6%81%ED%95%9C%EC%82%AC%ED%9A%8C%EC%97%90-%EB%AF%B8%EC%B9%9C-%EC%98%81%ED%96%A5/

話を総合すると・・・

박미향(パク・ミヒャン)はモランボン牡丹峰)楽団に所属し、カンヌで上映された2007年北朝鮮映画「ある女学生の日記」の主演女優で、2013年12月に北朝鮮に召喚された駐スウェーデン大使の박광철(パク・クァンチョル・朴光哲)の息子の妻で、金正日時代の2010年に失脚したとされる박남기(パク・ナムギ、朴南基)朝鮮労働党計画財政部長の親戚であり、「張成沢が関係した人間の孫」であるということになります。

しかし、まず駐スウェーデン大使の박광철(パク・クァンチョル・朴光哲)が張成沢と関係の深い人物であることは公開情報から明らかであるので、박미향(パク・ミヒャン)が박광철(パク・クァンチョル・朴光哲)の義理の娘であるならば、石丸情報の「張成沢が関係した人間の孫」という表現はおかしいですね。
また、音楽ユニットであるモランボン牡丹峰)楽団にカンヌ映画の主演女優が所属しているというのも、北朝鮮の芸能界の情報をよく知らないので何とも言えないものの違和感が残ります。

そもそも박미향(パク・ミヒャン)が粛清された時期も2012年8月なのか12月以降なのかわかりません。
박남기(パク・ナムギ、朴南基)に連座したのであれば、2012年まで無事だった理由がわかりません、박광철(パク・クァンチョル・朴光哲)に連座したのであれば粛清は12月以降でないと整合しません。

はっきり言えば、박미향(パク・ミヒャン)が粛清されたという情報自体、検証されているとは言えず、伝聞のつぎはぎを裏も取らず整合も取れないまま垂れ流されたもののように思えます。

実際、北朝鮮関連の報道では、현송월(玄松月・ヒョン・ソンウォル)のように銃殺されたと報じられながら*1後日健在が確認*2されたような事例もあります。
北朝鮮報道についてはそういうレベルの信頼度だと思っておく必要がありそうです。

参考:북한의 숙청과 처형에 관련된 보도를 모조리 믿어서는 안 되는 이유(2015/05/19、Nick Robins-EarlyThe Huffington )



*1:2013年8月

*2:2014年5月

2014年に韓国の強制連行被害者が韓国政府を提訴した話

「文在寅大統領は徴用工にお金を渡せ!」被害者団体の訴えが韓国社会で黙殺されている ルポ・徴用工裁判「その不都合な真実」赤石 晋一郎」の件。

韓国の強制連行被害者等が韓国政府に補償を求めて提訴した件です。原告1000人規模となったことで日本でも嘲笑交じりで報じられよく知られている事件です。
日本の右翼歴史修正主義者らは“ブーメラン”だと大喜びしていましたね。

ただ、同趣旨の訴訟は2014年11月にも提訴されており、2015年9月に請求棄却の判決が下っています*1
このときの提訴内容は2001年の東京地裁判決を根拠に日韓請求権協定で韓国政府に補償責任があるという主張でした。
ソウル中央地裁の判断は、韓国併合による植民地支配を合法とみなす前提で成立する東京地裁判決は大韓民国憲法の核心価値と衝突するため認められない、というもので、2018年11月30日の大法院判決の論理と軌を一にしています。というか、2018年11月30日大法院判決自体が2012年判決を踏まえていますから当たり前で、ソウル中央地裁も2012年判決を踏まえているといえます。
判決はさらに、日韓請求権協定で個人請求権が消滅したわけではないと指摘し原告には日本に対して直接損害賠償請求を提起する権利があるとしました。これも2012年判決を踏まえたもので、かつ、日本の各種判決と同様に、1965年日韓請求権協定で個人請求権は消滅しないという論理です。

さて、今回の訴訟でも主張されている“1965年日韓請求権協定で供与された3億ドルの無償援助等は本来、強制連行被害者等に渡すべきだった”という論理ですが、これも2014年の訴訟で出ています。

明石氏がこう書いている内容ですが、日本の歴史修正主義者が大好きな部分ですね。

韓国政府は補償資金をインフラ投資等に回した

「日本の外相は日韓基本条約に基づいて韓国政府が払うべきと話しています。だから日本政府には条約の交渉記録を明かして欲しいと文書を送っています。補償金額が明らかになれば、それに基づいて韓国政府は相応の金額を被害者や遺族に渡すべきだと要求することができる。このデモは2018年にスタートして、今回が57回目です。しかし未だに韓国政府からは正式回答がありません」
 日本と韓国政府は1965年、日韓基本条約を結んだ。そのときに協議した日韓請求権協定に基づき、日本政府は無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドル(当時のレートで約1800億円)を韓国政府に提供している。
 条文には〈日韓両国とその国民の財産、権利並びに請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたことを確認する〉とあり、植民地時代の賠償問題はこれで解決したとされた。韓国政府はこの補償資金をインフラ投資等に回し、“漢江の奇跡”と呼ばれる経済発展を遂げたことは周知の事実だ。

https://bunshun.jp/articles/-/12078

何度も言ってますけど*2、日韓請求権協定で供与された援助は現金でわたされたわけではなく、「等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務」*3で提供されており、協定では「供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。」と明記されており、韓国政府が自由に使えるものでもありませんでした。日本の歴史修正主義者がその辺の事情を常に無視しますけどね。
で、2014年訴訟では「韓国政府が日韓請求権協定で受け取った資金を経済発展事業等に使用して被害者に支給しなかったのは違法である」と訴えられていますが、これに対してソウル中央地裁は「韓国政府が経済発展に資する事業に資金を使ったのは法律に基づくもので違法とみることは出来ない」という判断を下しています。
当の1965年請求権協定に「供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない」と明記されている以上、違法だという判断が下るのはまず考えられないところですから、そこはやむをえないでしょう。

今回の訴訟でも同じロジックで攻めるのなら、高い確率で請求棄却になると思います。特に求めるのが賠償であるなら、2018年大法院判決に基づき日本企業に請求するのが筋ということになるでしょう。
但し、一点だけ望みうることがあります。

2014年訴訟の判決において、原告による「国が被害者のための法律を作成する義務を果たさなかった」という主張に対して、判決では「今後の予算確保などの諸条件が満たされて、国民的共感が形成された後に国会の立法を通じて解決すべき問題」だとして、不作為責任を認めませんでした。
その判決から4年近く経っていることを考慮して、かつ、2018年大法院判決などを経て国民的共感が形成されたと判断しうる事情があれば、国会での立法不作為の責任が認められる可能性はあるかもしれません。

実際、こういう動きもあるようですからね。

元徴用工救済へ新財団、韓国が検討 膠着状態の打開狙い

5/23(木) 21:59配信 朝日新聞デジタル
 韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決に絡み、韓国政府が、訴訟を続ける原告らについて、新たな財団を設けて経済的に救済し、法廷外で解決する案を検討していることが日韓関係筋の話でわかった。大法院の確定判決に被告企業が従うことを前提にするという。ただ、日本政府はこの案を受け入れない考えだ。
 関係筋によると、検討案は、韓日議員連盟文在寅(ムンジェイン)政権に示した提案がもとになっている。被告の日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業が、確定判決を得た原告32人に利子を含む約27億ウォン(約2億5千万円)を賠償するのが前提だ。係争中の他の原告926人や提訴に至っていない一部の元徴用工らに対しては、韓国政府が財団を設けて経済面で支援。裁判によらない解決を模索するという。
 一連の元徴用工訴訟では今後も、大法院判決に沿って日本企業を敗訴とする判決が続くことが想定されている。さらに、日本政府が外交協議による解決を困難と判断し、1965年の日韓請求権協定に基づく第三国を交えた仲裁手続きに入ることを韓国に要請するなど事態が深刻化している。
 文政権は今回の検討案で、係争中の原告らへの対応を分離することによって日本企業の負担を限定し、司法判断に従うよう促す狙いがあるとみられる。この方針には、原告側も一定の理解を示しているという。
朝日新聞社

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190523-00000103-asahi-pol

こういう全体像が見えない連中は“ブーメラン”だとはしゃぎ、自らの嫌韓差別の正当化に利用するんですよねぇ。



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