白燐弾は焼夷兵器ではないの?(その2)

続いてしまった。

白燐弾が焼夷兵器制限条約で規制されていない事と、この条約の意義について : 週刊オブイェクト
を見てみよう。

第2回



白燐弾の問題点は焼夷効果のみ?

この手の情報が出回るようになり、白燐の燃焼で発生する煙は強い毒性のガスなどでは無いことが理解され、煙を吸ったら一巻の終わりだ等というデマが平然と流されていたファルージャの時と比べ、白燐弾の問題点は焼夷効果について絞られてきたと言えるでしょう。「白燐弾化学兵器とは見なされておらず、明確に国際的に禁止された兵器でもない」と朝日新聞毎日新聞も報じているくらいです。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

いやいやいや、白燐による火傷の犠牲者についてかなり報道されてますけど、通常の火傷とは異なる点が強調されてますよね?

朝日新聞
イスラエル軍白リン弾」使用か ガザの死者885人に 2009年1月11日23時19分
(略)
だが、高熱を発するためやけどだけでは済まず、体に深刻なダメージを与えることもあり「非人道兵器」との指摘も多い。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)も10日、ガザのような人口密集地での使用は国際人道法に違反すると訴えた。
(略)

http://www.asahi.com/international/update/0111/TKY200901110133.html?ref=reca

毎日新聞
ガザ侵攻:イスラエル軍が「白リン弾」使用…人権団体指摘 2009年1月11日 20時27分 更新:1月12日 2時27分
(略)
だが、皮膚に触れると骨を溶かすほど激しく燃焼し続け、人体に深刻な被害をもたらすのが特徴だ。第二次大戦の空爆などにも使用され、消火が難しいことからその非人道性が指摘された。
(略)

http://mainichi.jp/select/today/news/20090112k0000m030064000c.html

単純に焼夷効果に絞っているようには見えませんけど?2009年1月11日の報道では古いですかね?

実際、白燐による火傷は化学火傷と言って、通常の熱による一般的な火傷に比べて重症化しやすいんですよね。

【化学熱傷の特徴】

  • 損傷の持続時間:

 高熱による熱傷では接触開始とともに破壊が始まり、除去されると停止するが、化学熱傷では化学反応とともに進行し、除去されても内部に浸透した薬物が不活化されるまで進行する。

  • 初期に深度が評価できない:

 初期に深達度を正確に評価できない。IIsの深度であっても水疱を形成しないことがある。皮膚の色調が変化してしまうため、色調による深度の評価ができない。

  • 他臓器の毒性:

 薬物により腎毒性、肝毒性を来すものがある。

  • Burn Wound Sepsis:

 二週間以内では細菌が検出されることは少なく、Burn Wound Sepsisは少ないと言われている。

http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~dangan/MANUAL/Burn/Chemical/chemicalburn.htm

参考
http://www.jsprs.or.jp/sikkan/3-1/3-1-4.htm
やけど - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版
Chemical Burn


でも、まあ今回は焼夷効果について。
化学兵器扱いに関しては既に指摘済みだし。

特定通常兵器使用禁止条約解釈

それでも国際法に違反している"疑いがある"と主張するグループが居ます。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチHRW)は「白燐弾は特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の焼夷兵器の使用禁止または制限に関する議定書(第3議定書)に違反している"疑いがある"」としています。ですが、この条約をそのまま解釈した場合、白燐弾は定義の時点で除外される対象になっています。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html


"疑いがある"を強調している理由がわかりませんが、HRW白燐弾を焼夷兵器とみなしてますよね?
その上で、人口密集地での使用などといった違反の”疑いがある”と言っているだけで。

えーと、毎日新聞を見てみると・・・

イスラエル:ガザ侵攻 白リン弾使用か 国際法違反疑い−−人権団体指摘
エルサレム高橋宗男】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は10日、イスラエル軍パレスチナ自治区ガザ地区侵攻で、「非人道性」が指摘されている「白リン弾」を使用している可能性が高いと指摘した。

 HRWは、世界で最も人口密度が高い地域の一つであるガザ地区での白リン弾使用は、国際法に違反する可能性があるとし、イスラエル軍に同弾の使用停止を求めている。
(中略)
HRWは、白リン弾を焼夷(しょうい)弾と位置付け、人口密集地にある軍事目標や、民間人を焼夷兵器で攻撃することを禁じた「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)第3議定書」に違反する疑いがあるとした。
(略)
毎日新聞 2009年1月12日 東京朝刊

http://mainichi.jp/select/world/news/20090112ddm007030106000c.html

やっぱり、「白リン弾使用”は、国際法に違反する可能性がある」と言ってますね。HRW白燐弾を疑いなく焼夷弾とみなしています。JSF氏は一体どのニュースを参照して「白燐弾は条約に違反している"疑いがある"」と書いたのでしょうか?プチ整形?



さてさて、では、特定通常兵器使用禁止条約では、白燐弾は焼夷兵器の定義から除外されるのでしょうか?


焼夷兵器の定義

1 「焼夷兵器」とは、目標に投射された物質の化学反応によって生ずる火炎、熱又はこれらの複合作用により、物に火炎を生じさせ又は人に火傷を負わせることを第一義的な目的として設計された武器又は弾薬類をいう。
(a) 焼夷兵器は、例えば、火炎発射機、火炎瓶、砲弾、ロケット弾、擲弾{擲=てきとルビ}、地雷、爆弾及び焼夷物質を入れることのできるその他の容器の形態をとることができる。
(b) 焼夷兵器には、次のものを含めない。
(i) 焼夷効果が付随的である弾薬類。例えば、照明弾、曳光弾{曳=えいとルビ}、発煙弾又は信号弾
(ii) 貫通、爆風又は破片による効果と付加的な焼夷効果とが複合するように設計された弾薬類。例えば、徹甲弾、破片弾、炸薬爆弾{炸=さくとルビ}その他これらと同様の複合的効果を有する弾薬類であって、焼夷効果により人に火傷を負わせることを特に目的としておらず、装甲車両、航空機、構築物その他の施設のような軍事目的に対して使用されるもの

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T4J.html


はっきり言って、空気中で簡単に発火し容易に消火できない物質である白燐を投射している時点で、「目標に投射された物質の化学反応によって生ずる火炎、熱又はこれらの複合作用により、物に火炎を生じさせ又は人に火傷を負わせること」を目的としていると言われて当然です。

例えば、黄燐を人ごみの中に投げ込んで、大火傷を負った死傷者が出ても、「いや煙を出すつもりで、傷害の意図はなかった」と言えば、過失傷害とか過失致死と判断されるのか?ということです。常識的に考えて、どんなに弁護士が頑張っても”未必の故意”扱いでしょう。

条約の文言を見てみると「第一義的な目的として設計された」という条件になってますが、別に「第一義的」と書かれているからといって主要な目的をひとつに絞る必要はありません。多目的な兵器なんて、ざらにあるわけですから。
なので、設計段階で、焼夷効果があることを設計者が理解していれば*1、焼夷が第一義的な目的のひとつであると言えますね。

古い白燐弾では焼夷効果をうたっているものもありますから焼夷兵器とみなしてよいですし、M825では焼夷効果の誇示を避けているようですが焼夷効果は否定できず、かつ設計者がそれを知らないとは考えられないので、これも焼夷兵器とみなしてよいでしょう。


さて、”白燐弾は焼夷兵器じゃねーよ!”派は、条約の第1条1(b)を根拠に、M825は発煙弾なので定義から除外される、と考えているようですが*2、(i)で「焼夷効果が付随的である弾薬類。例えば、照明弾、曳光弾、発煙弾又は信号弾 」と発煙弾という文言が明示的に出ているのは、あくまでも「例えば」に過ぎず、かつ「発煙弾」なるものの定義を挙げているわけでもありません。
なので、「発煙弾」と名乗っても、除外されるわけじゃありません。そもそも燃えれば煙を発する物質なんて山ほどありますから、煙を出すからと言って発煙弾扱いすればほとんどの焼夷弾は「発煙弾」と名乗れるでしょう。

この第1条1(b)(i)で重要なのは、「焼夷効果が付随的である」という点で、その例として「照明弾、曳光弾、発煙弾又は信号弾」が挙げられているわけです。その逆、つまり、”発煙弾だから焼夷効果が付随的である”と言ってるわけじゃないんですね。

一般的に、照明弾にしても、曳光弾にしても、信号弾にしても、その焼夷効果は極めて限定的で、燃焼中の弾そのものと接触しない限り火災を引き起こすことはないですし、弾自体も白燐弾のような空中炸裂して飛び散るようなことはないでしょう*3。発煙弾はその煙幕効果を高めるために飛び散るような設計をすることはありますが*4、発煙物質を充填した缶体が飛び散るというのが一般的な認識ではないでしょうか*5
発煙物質を充填した缶体にも焼夷効果はあるにはあるでしょうが、イメージとしては車に積んでいる発炎筒と同レベルの焼夷効果しかないと思えますねえ。

つまり、第1条1(b)(i)が言っている「付随的である」焼夷効果というのは、この程度の焼夷効果を指しているわけで、それがわかるようにわざわざ、「例えば」で例を示しているわけですね。



なので、白燐弾、特にM825が発煙弾だと主張したいなら、その焼夷効果、殺傷力を、榴弾や専用焼夷弾と比較しても全く意味がありません。

比較すべきは、第1条1(b)(i)に例として示された「照明弾、曳光弾、発煙弾*6又は信号弾」なんですね。


ですが、そのような比較は誰もしていないようです。

白燐弾が他の一般的な「照明弾、曳光弾、発煙弾又は信号弾」と比べて、高い焼夷効果・殺傷力を持つなら、第1条1(b)(i)に基づく除外はできません。なぜなら「付随的」として示した例から外れるからです。

またこの条約は例外規定が多く、その為に単なる「禁止条約」ではなく「使用禁止又は制限条約」というまどろっこしい題名となっています。照明弾や発煙弾、信号弾が除外されるのは勿論、複合弾薬も許可されており、徹甲焼夷弾なども除外される事になります。つまり劣化ウラン弾には副次的な焼夷効果がありますが、除外されます。また一部のクラスター爆弾には炸薬とは別に発火性の高いジルコニウムが内蔵されていて焼夷効果を狙っていますが、これもオマケ的に追加された副次的な効果である為に焼夷兵器扱いにはなりません。

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T4J.html

複合弾薬については、第1条1(b)(ii)の規定によりますが、ここで重要なのは「副次的な焼夷効果」ではなく、「焼夷効果により人に火傷を負わせることを特に目的として」いないこと、「装甲車両、航空機、構築物その他の施設のような軍事目的に対して使用されるもの」という点です。なので、「貫通、爆風又は破片による効果と付加的な焼夷効果」と表現されています。別に焼夷効果は副次的なわけじゃなく、付加的なんですね。要するに貫通や爆風などと焼夷効果を合わせることによって破壊力の強化を目的としているわけです。その性質上、主として装甲車両の破壊を目的とし、対人(特に民間人)殺傷を目的とした兵器ではありませんから、除外されているに過ぎません。

徹甲焼夷弾などの除外が、「焼夷効果が付随的である」からでないことは、項目がわざわざ第1条1(b)(i)と第1条1(b)(ii)に分けられていることを見ても自明でしょう。

焼夷効果のある「一部のクラスター爆弾」についてですが、第1条1(a)の定義上、焼夷兵器扱いして構わないはずです。「これもオマケ的に追加された副次的な効果である為に焼夷兵器扱いにはなりません。」というのがどういう根拠に基づくのか不明です。
実際問題としては、クラスター爆弾全体に対する規制が求められていたわけですから、それがクローズアップされなかっただけでしょう。


結論として、条約の定義上、白燐弾が焼夷兵器でない、という主張は根拠を持ちません。

条約第2条部分

まず1の「いかなる状況の下においても、文民たる住民全体、個々の文民又は民用物を焼夷兵器による攻撃の対象とすることは禁止する。」という部分はあまり意味の無い前置き部分です。というのも、民間人や民間施設を"故意に狙って"攻撃してはいけないという事は、特に焼夷兵器に限った事ではなく、全ての兵器について指定されている事だからです。ですからこの部分は枕詞みたいなもので、読み飛ばしても構いません。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

まあ、白燐弾関連の話では読み飛ばしても構わないとは思いますが、焼夷兵器は「無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器」なわけで、条約成立の少し前には、ベトナムで派手に戦略爆撃されていたことを考慮すれば、民間人や民間施設を巻き込むような使用方法を禁止する「いかなる状況の下においても」という表現を明文化するのはそれなりに意味はあるでしょう。(それに文民の保護を明文化したジュネーヴ条約第一追加議定書が作成されたのは、1977年のことで、この条約の3年前に過ぎません。)

とにかく、これで焼夷弾を使った絨毯爆撃は禁止されるわけです。

じゃあ、ピンポイントならいいのか、というと、そうではない、と言うことが次の部分。

重要なのは2です。「いかなる状況の下においても、人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する焼夷兵器による攻撃の対象とすることは禁止する。」とはどういう事なのか。これは軍事目標であろうと人口周密地域にあるものを、焼夷兵器による空中投射による攻撃を行ってはならないとしています。実は基本的に人口周密地域であろうと軍事目標に対しては攻撃しても国際法に違反しません。それを焼夷兵器に関しては使用を禁止しようというのが、この条約の主旨です。

つまりこの条約は「焼夷兵器は残虐な負傷を伴うから禁止しよう」という主旨のもの"では無い"のです。もしそういう主旨ならばダムダム弾のように兵士に対しても使用を全面禁止するはずです。しかしそうではない、禁止対象は「人口周密地域」での使用という広い範囲である・・・これで理解できると思います。焼夷兵器は『延焼性』がある為に、仮に軍事目標だけを狙った攻撃が成功しても火災が発生し、周囲の民間施設を巻き添えにする可能性が高いから、使用を規制しようというのがこの条約の主旨なのです。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

まあ、ここでJSF氏の言っていることは特に間違ってはいません。
そもそも特定兵器禁止条約の日本語正式名称は、

過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T1J.html

であって、3つの議定書はそれぞれ

検出不可能な破片を利用する兵器に関する議定書(議定書I)
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T2J.html

地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書II)
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T3J.html

焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T4J.html

となってます。焼夷兵器はこの場合「無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器」と見てよいと思います。ただし明言されてないので別解釈もあり得ます。

しかし、「つまりこの条約は「焼夷兵器は残虐な負傷を伴うから禁止しよう」という主旨のもの"では無い"のです。」の一文は意味がないですね。
「焼夷兵器は残虐な負傷を伴うから禁止しよう」と言うのは、白燐弾禁止を求める人たちの動機ではあっても、条約に「残虐な負傷を伴うから」と書いてあると解釈していることを示しているわけじゃありません。

それに主旨というなら、条約前文の

敵対行為の及ぼす影響から文民たる住民を保護するという一般原則を想起し、

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T1J.html

という記述も無視できないでしょう。焼夷効果のある白燐弾が定義から除外されると言う解釈自体、条約の主旨に沿っていないと言えます。


そこで3の部分です。空中からの投射ではなく、地上からの投射であっても、基本的に人口周密地域での焼夷兵器の使用は禁止されていますが、軍事目標が人口周密地域と分離され、民間人を巻き添えにしないように十分な予防処置が取られている場合なら、使用が可能となっています。つまり市街地の中であっても明確に分離された塹壕陣地内などであるならば、「焼夷兵器」である火炎放射器や焼夷手榴弾を投げ込んで敵兵を焼き殺しても合法扱いになる可能性が残されています。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

可能性というか、現時点では合法ですよね*7

そして2と3に共通する事ですが、この条約の条項だけでは野戦において敵軍に対して焼夷兵器を用いても違法となりません。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html


そうですね。だから人権団体は”人口密集地”で使用したことに対して非難しているわけです。

また4ですが、森林などの植物群落を無闇に焼き払う事を禁止していますが、敵が身を隠す目的で使っているなら焼き払っても構わないと許可されています。禁止する意味が無い文面に思えます。そして植物群落自体が軍事目標ならば許可されていますが、要するにケシ畑などを焼き払うのに焼夷兵器を使っても構わない、と言う事です。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

住民などを追い出すために耕作地を焼き払ったりして生活手段を奪うことを禁止しているわけですね。意味がないわけではありません。



ではこの条約をよく読んだ上で、M825A1白燐弾の話に戻ります。以前に「白燐弾が通常榴弾より殺傷力が劣る理由」で書きましたが、M825A1白燐弾は発煙弾(煙幕弾)として設計されて居る為に、「有効範囲と散布密度」及び「焼夷能力と貫通力」とう点で全般的に殺傷力に劣る兵器となっています。通常榴弾に対し破片密度で何十分の一という差を付けられており、対人殺傷という観点からは全く比較にならず、建造物に対する焼夷効果についても、専用設計の焼夷弾が建造物を貫通してから延焼させるのに対し、M825A1の白燐欠片は素のままで貫通力が全く無い為、ガザ侵攻中に火災が頻繁に発生したという事例も聞きません。一部では白燐弾による火災が発生しましたが、通常爆弾による火災(弾薬庫直撃による大炎上)も確認されており、白燐弾を使ったから火災がよく発生した、という事は、少なくとも現時点では言えそうにありません。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

上でも書きましたが、白燐弾が焼夷兵器でないと主張するなら、比較すべきは「照明弾、曳光弾、発煙弾*8又は信号弾」です。榴弾や専用焼夷弾と比較しても意味がありません。
うん、なるほど、それで?
ってだけのお話です。



もしイスラエル国防軍(IDF)が人口周密地域を火災で焼き払おうとしていたなら、CCWの焼夷兵器に関する議定書の主旨に反していると言えます。しかし本気で焼き払う気なら空中炸裂など行わずに着発モードで建造物内部に突入させてから起爆させた方が、より確実に火災を発生させる事が出来た筈です。そして煙幕弾を煙幕として使っていただけなら、違法性はありません。

http://obiekt.seesaa.net/article/113362000.html

これも既述ですが、議定書の主旨というなら「敵対行為の及ぼす影響から文民たる住民を保護するという一般原則を想起し、」を念頭に置くべきでしょう。
”効果の低い焼夷弾なんだから認めてやれよ”、と言いたいわけでもないでしょうに。

白燐弾焼夷弾とみなす限り、「人口周密地域を火災で焼き払おうとしていた」かどうかに関わりなく、予防措置が不十分な状態で人口周密地域に白燐弾で攻撃すれば明確に違法です。

これは第2条3の内容を”字句通り”解釈すれば、容易に理解できます。

3 人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する方法以外の方法により焼夷兵器による攻撃の対象とすることも、禁止する。ただし、軍事目標が人口周密の地域から明確に分離され、焼夷効果を軍事目標に限定し並びに巻添えによる文民の死亡、文民の傷害及び民用物の損傷を防止し、また、少なくともこれらを最小限にとどめるため実行可能なすべての予防措置をとる場合を除く。

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19801010.T4J.html


今回のガザ侵攻にあたって、イスラエル軍白燐弾を煙幕として使っていたかどうか、は現状では不明です。人権団体はそれを疑ってますが、イスラエル軍は否定するでしょう*9

しかし、世の中、容疑者の自己弁護だけを信じるほど、お人好しばかりではありません。

別に、白軍オタがお人好しばかりだとしても、それはそれで構いませんけどね。

ただまあ、もう少し疑うことを覚えた方がいいんじゃないでしょうか?

*1:まあ、常識的に考えて理解してないはずはないでしょう

*2:そもそも、M825の設計仕様書やマニュアルなど実際に手に入れて確認したのだろうか?

*3:例外はあるかもしれませんが、「例えば」なので一般的な話として

*4:http://www.j-tokkyo.com/2007/F42B/JP2007-205587.shtml

*5:http://www.j-tokkyo.com/2000/C06D/JP2000-264769.shtml

*6:もちろん、白燐弾以外の

*7:まあ、投降を認めず追い込んだ場合とかは別ですが

*8:もちろん、白燐弾以外の

*9:実際、国際法で許容されている使用法とか言ってますね。