2012年2月22日のNYT記事の翻訳

河村名古屋市長の南京事件否定発言に関する海外報道」でのNYT記事を訳しました。Taiwan Newsは、NYTの記事をひいているようです(タイトルは違っていたようですが)。

日本人市長による大虐殺否定発言後、中国の姉妹都市が日本との交流を停止
By MARTIN FACKLER
2012年2月22日

(東京) - 名古屋市長が旧日本軍による1937年の南京大虐殺について実際に起きたのか疑っていると発言した後、名古屋の姉妹都市である南京市(中国)は、名古屋(日本)との姉妹都市関係を一時停止したことを、名古屋市役所が水曜日(2012/2/22)に名古屋シティ・ホールで発表しました。
この問題は、月曜日(2012/2/20)、名古屋市河村たかしが南京から訪れた中国共産党代表団に対し、旧日本軍が南京で中国市民を虐殺したことに疑問を呈したことで始まった。
ほとんどの歴史家は、南京事件を20世紀初期に日本軍が展開したアジア全域における多数の残虐行為の中で最も不名誉なもののひとつで、南京では少なくとも数万人以上の市民が日本軍に殺害されたとしています。

この問題は、日本と日本がかつて占領した国々との間で歴史認識に大きな隔たりがあることを如実に示しています。
このような否定論は河村たかしのような日本人保守派の間では一般的に共有されていますが、公式の場で、しかも中国の政府関係者に直接投げかけられることはめったにありません。
しかし、中国政府が宣伝のために南京大虐殺を利用している、という認識は日本では広く共有されています。

それにもかかわらず、日本政府は外交的に本格的な論争をさえぎり有耶無耶にした。日本の官房長官は、大虐殺は事実である、との日本の公式見解を再度述べました。
「これは、名古屋と南京の都市間で適切に解決されるべき問題です」と藤村修内閣官房長官が言いました。

日本中部の工業都市である名古屋市役所は、南京市政府から全ての交流を一時停止するとの短い簡潔な電子メールを水曜日(2012/2/22)朝に受け取ったことを発表しました。

その水曜日、河村市長は懲りずに、発言の撤回も謝罪もするつもりはないと言いました。そして、河村市長の父親が1945年の南京に兵士として滞在し住民から親切にされたことを話し、残虐事件が起きてからたった8年しか経っていない場所でそのようなことはありえないと言いました。

「いわゆる南京事件については多くの見解があります」と河村市長は、1937年12月の大量殺戮を表す日本語の言葉*1を用いて、記者に伝えました。「私は、南京の人々と討論をしたいと言った。」

このような日本と隣国との間の不和は、小泉純一郎首相(当時)が処刑戦犯を含む日本の戦争死者を顕彰する靖国神社に参拝して、中国や韓国を激怒させた2000年代前半以降、徐々に収まりつつありました。

しかし、歴史問題は未だに関係を悪化させる可能性があります。野田佳彦首相が12月に京都で、ソウルの日本大使館前に設置された第二次大戦時に日本軍のための売春を強制された従軍慰安婦の像の撤去を李明博韓国大統領に求めましたが、拒絶されました。韓国の指導者は、現在最高で80歳代の元従軍慰安婦生存者らのための補償の求めに答えたのです。日本は戦争関連の賠償は、第二次大戦後に韓国と外交関係を樹立したときに終了していると主張しています。


22日の時点でここまで書いていたというのは、日本国内のメディアと比べても充実しているように思います。歴史問題が近隣外交に及ぼす影響という視点で、韓国での従軍慰安婦像の話とも絡めています。日本の全国紙ではこういった視点は無かったように思います。
また、河村氏などの否定論に対して、以下のように明確に反論しています。

ほとんどの歴史家は南京事件を20世紀初期に日本軍が展開したアジア全域における多数の残虐行為の中で最も不名誉なもののひとつで、南京では少なくとも数万人以上の市民が日本軍に殺害されたとしています。

Most historians say that at a minimum, tens of thousands of civilians were slaughtered in Nanjing in one of the most infamous atrocities of Japan’s military expansion across Asia in the early 20th century.

さらに、日本の保守派*2の内向的な性格についても、鋭い分析を加えています。

このような否定論は河村たかしのような日本人保守派の間では一般的に共有されていますが、公式の場で、しかも中国の政府関係者に直接投げかけられることはめったにありません。
しかし、中国政府が宣伝のために南京大虐殺を利用している、という認識は日本では広く共有されています。

While such denials are common by Japanese conservatives like Mr. Kawamura, they are rarely raised in such a public manner, or directly to Chinese officials. But there is also a widely shared perception in Japan that China’s government plays up the massacre for its own propaganda purposes.

南京事件は中国のプロパガンダ」というネトウヨらの叫びは一顧だにされていません。
まあ、そりゃそうだろうな、とは思いますが。

*1:南京大虐殺に関して、”いわゆる南京事件”と表現していることを、英語表現上、"The Nanking Massacre"を "the so-called Nanjing incident"に置き換えていることを指していると思われます。MassacreをIncidentと軽い表現にすりかえているように解釈されているようです。

*2:右翼と呼んだほうが良いと思いますが