「自分がネトウヨなのは、サヨクのせい」といった感じのばかげた話

少し古い記事ですが、ネトウヨの自己正当化的なばかげた理屈なので取り上げておきます。
なぜネットでは左翼でなく右翼に極端化するのか 専門家解説

 メディア研究では「ネット世論は過激化しやすい」という考え方が一般的である。フラットなコミュニケーションなので、上下関係や権力関係のないところで自由な議論ができ、かつ匿名性が高く、議論の責任を取る必要性もないからだ。そのような状況でフレーミング(炎上)も発生する。

 またそれは集団極性化現象(グループ・ポラリゼーション)というモデルからも説明できる。ネットでの集団の議論の中で、平等性が高まり、匿名性が高まっていくと、自由に発言しやすい状況ができ、意思決定が極性化(極端化)するという考え方だ。

http://www.news-postseven.com/archives/20120815_136773.html

まあ、この辺はある程度、同意できる箇所です。

付言するなら、匿名化され、肩書きが通用しないネットの世界で自己の存在感を示すには、平凡な常識的な発言では不十分なため、手っ取り早い手段として反社会的、反倫理的な過激なコメントが用いられている、という点でしょう。
もちろん、本来なら常識的なことに潜む問題を問う倫理的な発言で衆目を集めるのが理想でしょう。しかし、そのような発言をするには社会問題に対する洞察や知識が必要です。

 では、なぜネットで左翼的方向ではなく右翼の方に極端化するのか。こうした傾向は日本だけでなく中国でも韓国でもネオナチの問題を抱えているドイツでも同様だ。多くの国でナショナリズムと結びついて右翼化するという側面がネットの世界にはある。

http://www.news-postseven.com/archives/20120815_136773.html

この現象こそが、社会問題に対する洞察や知識なしに衆目を集める手っ取り早い手段として「右翼」的な反社会的、反倫理的発言が多用されていることの証左でしょう。

ネトウヨは決して右翼ではありません。
ネトウヨはネット上での一方的な罵倒で感じる快楽を追及するだけの底の浅い欲深い人間に過ぎません。

洞察も知識もないにもかかわらず、高みに居るかのようにネット上で相手を一方的に罵倒するためには、現状肯定が一番早く、それはすなわち現状での権力者、権威構造に迎合し、自らを同一視した上での批判者罵倒となります。

右翼思想の根幹は、国家であれ宗教であれ中心となる特別な存在があり、その下で民衆がいるという構造にあり、民衆は主に忠誠と敬意を示し、主は民衆に庇護と平和を授けるといった感じでしょうか。
自らを権威に同一化し他者を見下すネトウヨは、構造としては右翼の世界観に似通っています。ためにネトウヨは「右翼」と同じように見られることがありますが、実態としては異なっています。

ネット世論が「ナショナリズムと結びついて右翼化する」のは、洞察も知識もない論者がネットで衆目を集めるために擬似的右翼になるのが簡単だからであり、そういったお手軽論客が「フラットなコミュニケーション」内では多数発生するからです。

ですので、

 その理由を一括りにして語ることはできないが、日本では戦後民主主義の下でナショナリズム愛国主義がタブー化され、自由に発言できない時代が長く続いた。さらにマスメディアが左翼的、人権派的に体制化されていたことから、中国や東アジアに対する批判はタブーとなり、「有事」や「危機管理」という言葉も使うことがためらわれた。

http://www.news-postseven.com/archives/20120815_136773.html

というのは全く的外れです。
戦後日本でナショナリズム愛国主義が「タブー化」されたのは、単純に日本人だけで300万人もの死者を出し、国土を焦土にされた記憶が鮮烈だったからに過ぎません。一九五〇年代、60年代は、愛国主義ナショナリズムに煽られて戦場に行かされ、あるいは夫や父を戦場で失い、苦しみを味わった人が30代、40代で、社会の中核を担っていました。
悲惨な戦争の記憶を持つ人々が、「ナショナリズム愛国主義」を何の批判もなしに受け入れる方がおかしいのです。権力によって「タブー化」されたのではなく、民衆自身から拒絶されたに過ぎません。
実際、「自由に発言できない時代が長く続いた」などと言うのはデタラメで、反共右翼を中心に「ナショナリズム愛国主義」を煽る発言はいくらでもありましたし、別段それが取り締まられもしませんでした。ただ、民衆から受け入れられなかっただけです。

「マスメディアが左翼的、人権派的に体制化」などと言うのは陰謀論に過ぎず、中華人民共和国と国交正常化するまで中共敵視は珍しくありませんでした*1し、冷戦時代の反ソ的態度も激しかったと言えます。

「中国や東アジアに対する批判はタブーとなり」というのも嘘で、むしろ韓国軍事政権に対する批判の方がタブー視されていたと言えると思います。

結局のところ、この記事は「今までの日本が左過ぎた」などというネトウヨの自己弁護、自己正当化と同レベルの下らないものに過ぎません。

*1:例えば、産経新聞は、台湾側の視点で中共を敵視した内容の「蒋介石秘録」を出版しています。