安倍政権、独島(竹島)問題のICJ単独提訴先送り決定

まあ、単独提訴したところで実効性が全く無いため、当然と言えば当然です。野田政権下で竹島問題を煽っていたのは極右の石原都知事やそれに便乗した自民党でしたが、ICJ単独提訴が国内政局以外には、外交的に何ら寄与しないことは以前も指摘しました。
外交を国内政争の具に利用した自民党としては、政権を奪取した今となっては“ICJ単独提訴”という矛をさっさと納めてしまいたいところでしょう。

竹島領有権、当面提訴せず…日韓関係改善を優先
読売新聞 1月9日(水)14時33分配信
 日本政府は、島根県竹島の領有権問題をめぐる国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴を当面、行わない方針を固めた。
 安倍首相は、韓国の朴槿恵(パククネ)次期大統領との間で日韓関係の改善を目指しており、韓国の反発が予想される単独提訴は得策でないと判断した。
 政府は、2012年8月10日の李明博(イミョンバク)大統領による竹島上陸を受け、対抗措置の一環として、日韓両国によるICJへの共同付託を提案したが、韓国が拒否したため、単独提訴を目指して準備を進めてきた。
 安倍政権としては、ICJでの決着が望ましいとの立場は変えないものの、単独提訴は先送りし、韓国の対応を見極める方針だ。
 安倍首相は、民主主義や市場経済など価値観を共有する韓国との関係を重視している。2月25日に予定されている大統領就任式に合わせて訪韓し、日韓首脳会談を行い、関係改善を進めたい考えだ。関係を改善することで、沖縄県尖閣諸島をめぐり圧力を強める中国をけん制する狙いもある。
最終更新:1月9日(水)14時33分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130109-00000689-yom-pol

しかし、日本国内政争のとばっちりで散々Disられた韓国が、安倍・日本政府から「政権が変わりました。これから仲良くしましょう。」と言ってこられても容易に受け入れられるものでもないでしょう。心情的な話だけでなく、日韓通貨スワップ協定拡大措置打切りや歴史認識従軍慰安婦問題での日本政府の態度*1は当時の韓国政府に対しても政策の転換や具体的な対応を強いるものでした*2

これでも安倍政権は韓国に譲歩したつもりかもしれませんが、そもそも島根県竹島の日制定以来、煽りに煽ってきた今となってはこの程度の譲歩が譲歩として受け取られる可能性は低いのではないでしょうか。韓国からすれば、”独島(竹島)は韓国領なのだから日本が提訴しなくて当たり前であって、逆に「当面」とは何様のつもりか”と思うかもしれません。

言ってみれば自民党が政権奪回という政局のために外交を弄んだツケですが、手遅れ感は否めません。「韓国「日本より中国」…大使格下げ、放火犯引き渡し(産経新聞 1月9日(水)9時28分配信)」に見られるように韓国自体が対日関係より対中関係を重視する方向にシフトしつつあるようで、“俺に頼らなければ生活できまい”と高をくくって配偶者に暴力を振るっていた人が離婚届を突きつけられているかのような状況になるかもしれません。

ところで、2ヶ月前の産経新聞の社説はこんな感じでした。

【主張】
竹島問題 ICJへの提訴どうした
2012.11.2 03:24
 韓国による島根県竹島の不法占拠問題を、国際司法裁判所(ICJ)に単独でも提訴するという野田佳彦政権の決断は一体、何だったのか。
 李明博韓国大統領による8月の竹島上陸強行を受けて、この方針が打ち出されてから2カ月余、政府はいまだに実行に移していない。玄葉光一郎外相は、「韓国側の対応を注視している」と見送りともとれる発言さえした。野田政権の姿勢に強い疑念を抱かざるを得ない。
 竹島が日本固有の領土であることは明白だ。昭和27年、李承晩韓国大統領が境界線を一方的に設定して以来の不法占拠である。
 提訴をこれ以上先送りしては、日本の主張の本気度を疑われる。「方針は何一つ変わっていない」(藤村修官房長官)のであれば、速やかに提訴すべきだ。
 韓国側にも日本との緊張を緩和しようという動きはある。
 金星煥外交通商相は9月末の国連総会の演説で、「慰安婦」や「竹島」という言葉は使わず、日本を名指ししなかった。日韓外相会談も行われ、対北朝鮮で連携する方針を確認し、対立を表面化させなかった。
 李大統領は、天皇陛下訪韓に絡む謝罪要求発言について、10月に訪韓した麻生太郎元首相との会談では、「謝れなどと言ったことはない」と釈明したという。
 しかし、こと竹島問題に関しては、韓国側が軟化したとみるのは早計だ。韓国の国会議員15人は日本政府の中止要求を無視し、ヘリで竹島に上陸した。実効支配をアピールするため、今後も不法上陸は繰り返されるだろう。
 ICJに単独で提訴しても韓国が裁判を拒否すれば、審理は行われない。しかし、韓国には拒否理由を説明する義務が生じる。一連の手続きによって日本の竹島領有の正当性を国際社会に知らしめることに、大きな意義がある。
 10月に行われた国連安全保障理事会非常任理事国の改選で、日本が韓国に投票したことが明らかになった。北朝鮮の核問題などでの日米韓の連携や、日中関係が悪化する中での日韓関係の改善を優先する考えに立てば、やむを得ないとの意見もあるが、日本領土の不法占拠を認めたとの誤ったメッセージにもなりかねない。
 領土主権は外交判断などよりはるかに重いものである。日本は提訴をためらってはならない。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121102/plc12110203250005-n1.htm

安倍政権に対しても同じことを言うのか興味津々です。

*1:直近は民主党政権でしたが、否定論を煽っていたのが安倍氏などの現・自民党政権の中核にいる人物であることは当然に知られているでしょう。

*2:もし日本政府が従軍慰安婦に対して謝罪や補償に前向きな態度を示していれば、李政権は韓国内の反日世論を緩和させることができたかも知れません。