従軍慰安婦高収入説は誤り・４ - 誰かの妄想・はてなブログ版

従軍慰安婦関係については、ネット上にデマが山ほどありますのでロクな知識のない人でも否定論をぶることが容易に出来ますが、ネット上のデマは実際には根拠にもならない古の時代に論破されたテンプレばかりですのでそれを持って突っ込んで来る人の末路は大体決まっています。

ハンドルをころころ変える今は「慰安婦の収入」を名乗る人もご他聞に漏れず、今はこの2点に縋っているのが精一杯な状態です。

1.送金したという5000円は朝鮮でもインフレによって（他の理由でもかまいませんよ）価値がなくなっていた。
2.ビルマでは慰安婦だけがハイパーインフレに見舞われて他のお金持ちはこの災難に合わなかった。よって【相対的に見て】低収入だった。
一般的にハイパーインフレ→デノミネーションで災難に合うのはお金持ちであり
お金持ちでない（むしろ貯蓄がない、借金抱えているような人）大きな災難に会わないんですよ？
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120325/1332693277#c

論点整理

さて、否定論者が貯金通帳の額を持って文玉珠氏を二次強姦するのは珍しいことではありません。一方で彼らの主張の根拠は既に破綻しています。

・文玉珠氏の通帳に記載された額（2万5000円程度）のほとんどは、ビルマ戦線が崩壊した1945年に入ってからの入金であり、その原資は売春の対価ではなくインフレで価値が下落した軍票を無償でもらった。

・文玉珠氏が強制された売春の対価として得た報酬は、インフレの進行していたビルマでは薄給だった。

以上の点で、文玉珠氏を根拠とした従軍慰安婦高収入説は否定されるわけですが、この点に関して「慰安婦の収入」氏は反論がありませんので、従軍慰安婦高収入説は誤りであることは争いのない事実ということになります。

最後の拠り所

で、従軍慰安婦高収入説は誤りであることを否定できなくなった「慰安婦の収入」氏の拠り所が前記した2点。

その１．5000円を送金したという話

文玉珠氏が5000円をタイから朝鮮の実家へ送金したという話です。
実際には円ではなく、ルピー軍票ですから、5000ルピーです。
1945年前半、ビルマのインフレは100倍以上になっており、タイのデータはありませんがほぼ同様だったと考えられますので*1、タイでも5000ルピーは1941年当時の日本での50円程度の価値しかありませんでした。
この時点で、文玉珠氏が高収入だったという説は破綻していますので、話はそれで終わっても構いませんが続けます。

さて、タイでは50円程度の価値しかなかった5000ルピーですが、公定為替レートが1円1ルピーでしたので、この為替レートで送金できれば、50円程度の価値の5000ルピーを5000円に換金することができます。
1945年前半の日本・朝鮮のインフレは1.3倍程度でしたので、それを考慮しても4000円程度の価値になったはずです。

では、この4000円の価値はどこから発生したのか、というと、慰安婦としての収入ではなく、公定為替レートを利用した為替差益です。
慰安婦でなくとも、ビルマ敗走時にだぶついていたルピー軍票を持っていれば誰でも出来た錬金術 *2ですので、慰安婦の収入とは全く関係のない話に過ぎません。

ちなみにこの5000円送金の話は文玉珠氏の証言に出てきますので、少なくとも送金しようとしたことは事実だと思われますが、実際に送金できたかどうかは非常に疑わしいと言えます。少なくとも5000円全額が送金できた可能性はかなり低いでしょう。
理由は単純です。外地でだぶついた軍票を円と等価交換するのを無制限に認めたら内地にもインフレが拡大するからです。当然、送金に関しては規制がかけられています。少なくとも1940年時点で、内地への送金は500円を限度としそれを超える額については大蔵省財務官の許可が必要とされていました（支那派遣軍経理部資料）*3。

先のエントリで、ビルマ敗走中の兵隊が軍票を燃やして処分している経理部から3万円分の軍票をポンと渡されたエピソードを紹介しましたが*4、こういった形で額面上は大金の紙切れが、簡単に内地に送金できたという話は聞きません。経理部や大蔵省官僚によほどのコネがあれば出来たかもしれませんが。