坂信弥の後継者

坂信弥は結構色んな逸話のある人で、まず鹿児島県警部長だった1936年に鹿屋基地航空隊用に慰安所を設置しています(おそらく当時は「慰安所」とは呼んでなかったと思いますが)。このとき坂は、町長を通じ業者集めをしています*1
その後、東京大空襲(1945/3/10)の時は警視総監でしたが、防空法の影響で多くの人が逃げずに消火しようとして焼け死んだことに対して、避難を優先するように求める声が上がります*2。しかし、坂警視総監は戦中は特に行動せず、戦後になってから「防火を放棄して逃げてくれればあれほどの死人は出なかっただろうに、長い間の防空訓練がかえってわざわいとなったのだ」と他人事のように述べています。
坂が最初に警視総監であった期間は1944年7月から1945年4月のわずかな期間ですが、東京大空襲の影響があるのかもしれません。しかし、坂のあとに町村金五は宮城事件で1945年8月に辞任し、再び坂が警視総監となります。
この時、近衛元首相の要望でRAA設置を推進し、貧しい日本人女性を人身御供として米軍に差出しています。内務官僚出身ですが、警察というより女衒の下締めと言った方が適切とも思えるほどです。

数多くの犠牲者を踏みつけて坂は公職追放となった後、大商証券社長などの企業人として戦後をぬくぬくと過ごし1991年に92歳の天寿を全うしています。他人の命を食い物にした分長生きしたのかもしれません。
その企業人時代に、坂は「名言」「格言」を残しており、その中に次のような言葉があります。

いかなる場合でも、あきらめずに最善を尽くしていれば、いずれは陽の目を見る。それを自分の力だけでそうなったのだと思ったら、その人間はすぐ奈落の底へ落ちてしまう。

http://systemincome.com/main/kakugen/tag/%E5%9D%82%E4%BF%A1%E5%BC%A5

坂氏が陽の目を見た陰で、多くの人間は奈落の底に突き落とされていたわけですから、何と言っていいのか・・・。


さて、この坂信弥の後継者は最近はまあ、掃いて棄てるほど見かけますが、直近ではこの人ですね。

橋下氏、米軍司令官に「風俗業活用を」 沖縄・普天間

 日本維新の会橋下徹共同代表は13日夕、今月初めに沖縄県の米軍普天間飛行場を訪問した際、司令官に「もっと風俗業を活用してほしい」と進言した、と明らかにした。大阪市役所で記者団に語った。
 橋下氏は13日午前、戦時中の旧日本軍の慰安婦について「猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」などと発言した。橋下氏は同日夕、こうした発言をめぐる質疑の中で「慰安婦制度じゃなくても風俗業は必要だと思う。(米軍の司令官には)『法律の範囲内で認められている中で、性的なエネルギーを合法的に解消できる場所は日本にあるわけだから、もっと真正面からそういう所(風俗業)を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをきちんとコントロールできないじゃないですか。建前論じゃなくて、もっと活用してほしい』と言った」と述べた。
 橋下氏によると、「司令官は凍り付いたように苦笑いになって『禁止している』と言った。『行くなと通達を出しているし、これ以上この話はやめよう』と打ち切られた」という。
 橋下氏は記者団に「兵士は自分の命を落とすかも分からない極限の状況まで追い込まれるような仕事。エネルギーはありあまっている。どこかで発散することはしっかり考えないといけない」と説明した。

http://www.asahi.com/politics/update/0513/OSK201305130050.html


救いがたいのは、このような人権無視の女衒思考が軍人・官僚からではなく、市民に選挙で選ばれた市長から出たという点です。


ちなみに米軍側の反応。

2013年5月14日1時1分
国防総省「ばかげている」 橋下氏の「風俗業」発言に

 橋下氏の「米軍も風俗業を活用すべきだ」との発言について、米国防総省の報道担当者は13日、朝日新聞の取材に対して「我々の方針や価値観、法律に反する。いかなる問題であれ、買春によって解決しようなどとは考えていない。ばかげている」と話した。

http://www.asahi.com/international/update/0514/TKY201305130521.html

建前であるにしても、公職にある者として理念・理想を擁護する立場を表明するのは当然ですが、日本では当然ではないようです。


橋下発言を支持・擁護する人は当然、海外派遣された自衛官慰安婦をあてがって構わないとか思ってるんでしょうね。

*1:従軍慰安婦 「兵備機密」にされた女たちの秘史」山田盟子、光人社NF文庫、P193-194

*2:http://www.asaho.com/jpn/bkno/1997/0310.html