産経新聞はなぜ嘘をつくのか?(2013年8月5日「産経抄」)

産経新聞による日本軍性奴隷制度正当化キャンペーンは、河野談話の出された8月4日の翌日になっても続きます。
産経新聞では、下請けに枕営業に応じるアイドルを集めるよう求めて、どのような手段で集められようが、産経新聞記者らはそれに関係なく集めたアイドルに性の奉仕を強制させても構わない、という社内方針を立てているようです。少なくとも政治部あたりでは。

産経抄
8月5日
2013.8.5 03:34
 米ロサンゼルス近郊のグレンデール市で、慰安婦像が設置された。他の都市でも計画が進んでいる。連日の暑苦しさが倍増するような不愉快な出来事である。そんななか、先週末にワシントンの古森義久記者から送られてきた記事は、一服の清涼剤のようだった。地元の日本人社会の反対が、初めて全米に知られるようになったという。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130805/amr13080503360002-n1.htm

古森義久記者から送られてきた記事」とは、櫻井よしこ氏率いる極右団体・国家基本問題研究所が、つながりのある在米日本人を組織し設立した在米日本人極右団体「日本再生研究会」を通じて、反慰安婦反韓ロビー活動を行った成果を指します。「産経新聞はなぜ嘘をつくのか?・(2013年8月3日「緯度経度」)」でも取り上げています。

海外在住の日本人コミュニティ内部で右翼団体を組織するやり方は、戦前の上海でも見られます。日本青年同志会という右翼団体が、1932年に上海の中国人経営のタオル工場を焼討し、駆けつけた工部局警察の警官数名を殺傷し、容疑者は日本領事館に逃げ込んで保護してもらっています。他の同志会メンバーは虹口で、現在の在特会のようなデモ運動を行い、日本軍の“自衛出動”を求め、侵略戦争を煽っています。この時も工部局警察とトラブルになっています。これらの騒動の直後、第一次上海事変が勃発するわけです。青年同志会には、田中隆吉などを介して日本軍の機密費が流用され、一連のトラブルを起した、というのが通説です。
だとすると、在米右翼団体「日本再生研究会」にも安倍内閣の機密費が流れ込んでいるのかもしれませんね。

 ▼20年前の「河野談話」を奇貨として、日本のイメージ低下を狙う韓国系団体のロビー活動は着々と成果を挙げてきた。この間、日系社会から目立った反対運動は見られなかった。2007年に慰安婦問題をめぐる下院の対日非難決議案に対して、敢然と異を唱えた故ダニエル・イノウエ上院議員の硬骨ぶりが記憶に残るぐらいだ。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130805/amr13080503360002-n1.htm

産経新聞は綺麗さっぱり忘れているようですが、2006年にも慰安婦問題での対日非難決議案が審議されていました。しかし、日本は河野談話で責任を認めて謝罪しているし、アジア女性基金などで補償もしているのだから、と決議は成立しませんでした。不十分とは言え、曲りなりにも河野談話アジア女性基金という形で対応してきたことで、日本に対する非難のブレーキとなっていたのです。
それを2006年成立した安倍政権が歴史修正主義を前面に押し出し、慰安婦問題否認論を掲げた結果、日本は全く反省していないことがアメリカにばれてしまい、2007年の対日非難決議は成立してしまったわけです。それどころか、安倍首相自ら、ブッシュ大統領に対し慰安婦問題を認め、謝罪せざるを得なくなるという恥さらしでお粗末な結果に終わっています。
もちろん、安倍首相や産経新聞は得意の歴史修正技能を使って、2007年の安倍首相の愚行は無かったことにされています。まあ、安倍・産経信者以外は皆知ってますけど。

 ▼中西輝政・京大名誉教授によると、日本の文明は本質的に日本列島という土壌の上に成り立っている。ゆえに海外に住みついても、何代にもわたって本国とのネットワークを維持する中国人などと違って、同化してしまう(『日本文明の肖像』展転社)。
 ▼とりわけ米国の日系人には、戦争中「敵性国民」とみなされた特別な事情がある。「よきアメリカ人」として、事を荒立てたくないという気持ちが強いのかもしれない。そんな彼らの苦難の歴史が、日本で広く知られるようになったのは、最近のことだ。
 ▼米国への愛国心を示すために、血みどろの戦いを繰り広げた「日系部隊」を描いたドキュメンタリー映画に、衝撃を受けた人も少なくないだろう。五輪開催都市決定をひかえて、前回の東京五輪招致に尽力した日系実業家、フレッド和田勇の生涯が再び脚光を浴びている。
 ▼「遠い祖国」の名誉を守るために声を上げ始めた日系人と、ともに闘う日がようやくやってきた。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130805/amr13080503360002-n1.htm

中国人の場合、家族としての繋がりが強いので華僑の強固なネットワークを形成できますけど、日本の場合、移民はほとんど棄民扱いですからネットワークが出来にくいんですよね。「日本を捨てた奴ら」という蔑視も少なからずありますし、日本政府自体も冷たいと言えます。ですので、本国とのつながりは弱くなりますが、そうかと言って同化してしまうかというとちょっと違うでしょう。
日本の右翼は、海外に出て行った日本人を見下し見捨てておきながら、都合のいいときは同胞だからと協力を強いようとするわけで醜悪なことこの上ありません。多分、日本の右翼の辞書は「恥」という単語が落丁なのでしょう。

もっとも、櫻井よしこ氏のような恥知らずな極右団体の呼びかけに応えているのは、どうもアメリカに長年定着した日系人ではないようです。「米国生まれの日系米人はいない」*1と古森氏ですら認めています。
わざわざ海外まで行って裸踊りをするバカな日本人がいることは、ホントに恥ずかしいですね。