韓国の通貨スワップ外交

韓国の通貨スワップ協定関連記事。

インドネシア、韓国・中国と通貨スワップ協定締結へ=産業相
2013年 09月 24日 16:59 JST
ジャカルタ 24日 ロイター] - インドネシア中央銀行は、韓国との通貨スワップ協定締結を目指している。ヒダヤット産業相が明らかにした。
産業相によると、中国とも来週、同様の協定を締結する予定。ルピア防衛措置の一環となる。日本との通貨スワップ協定に関しても、現在の120億ドルから増額を目指している。
ただ、韓国銀行(中央銀行)の国際局長は合意はされていないとした。インドネシア中銀の広報担当者はコメントを控えた。
ヒダヤット産業相は「中国は恐らく、(習近平国家主席が10月2─3日にインドネシア訪問の際、協定に署名するだろう」と語った。規模については150億ドルになるという見方を示した。
中国とインドネシアは2009年に1000億元(163億4000万ドル)の2カ国間通貨スワップ協定を結んだが、昨年失効した。
産業相は、韓国中銀との協定の規模は100億ドル程度になるとした。

http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPL4N0HK1LX20130924

韓国、豪など資源国との通貨スワップ協定を検討
2013年 10月 21日 18:36 JST
[ソウル 21日 ロイター] - 韓国はドルへの依存度を減らすため、オーストラリアなどの資源国との通貨スワップ協定を検討している。玄オ錫(ヒョン・オソク)副首相兼企画財政相が21日、明らかにした。
記者団との昼食会で同相は「協議はまだあまり進んでいないと思う」と述べた。オーストラリア以外の国の名前は挙げなかった。
韓国銀行(中央銀行)は今月、アラブ首長国連邦インドネシア、マレーシアと201億ドル相当の二国間通貨スワップ協定を結んでいる。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0IB2A920131021

マレーシアと韓国、通貨スワップ協定を締結
2013年10月21日(月) 20時00分
中央銀行バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)と韓国銀行は20日、通貨スワップ協定を締結したと発表した。ザ・サンが報じた。
通貨スワップの規模は5兆ウォン(150億リンギ)で、相互の通貨を融通しあう。マレーシアと韓国の間の二国間貿易における両国通貨の使用促進及び金融面での協力強化を目指す。期間は3年間で、両国の中央銀行の合意により延長が可能となる。
BNMのゼティ・アクタル総裁は「域内では統合が進んでおり、通貨スワップを行うことでマレーシアと韓国の経済・金融面での協力関係構築に繋がることを期待する」と述べた。
《千田真理子》

http://response.jp/article/2013/10/21/209026.html

記事入力 : 2013/10/22 07:59
韓国、豪州など資源国との通貨スワップ推進
 韓国が、オーストラリアなどアジア・太平洋地域の資源国2−3カ国との通貨スワップ協定締結を推進している。ヒョン・オソク経済副首相兼企画財政部(省に相当)長官が21日、全羅北道群山市で行われた化学大手OCIの熱併給発電所起工式を訪れた席で、オーストラリアなどと協定の締結に向けた議論を進めていることを明らかにした。
 通貨スワップとは、2カ国が互いの通貨を融通し合うことを約束する協定だ。急に外貨が必要になったとき、自国の通貨を協定相手国に預け入れるのと引き換えに相手国の通貨を借り入れ、外貨を確保することができる。
 韓国は先ごろ、資源が豊富なインドネシアアラブ首長国連邦UAE)、マレーシアと相次ぎ通貨スワップ協定を結んだ。政府は「貿易関係が深い資源国との金融協力を強化するため」と説明しているが、金融業界では、韓国が外貨流動性を安定的に管理するための手段として通貨スワップを選択したとの見方が強い。
 ある政府高官は「一連の通貨スワップ協定締結には、韓国の外貨流動性ネットワークを広げ、金融市場の危機に備えセーフティーネットを強化する狙いがある」と説明した。また「協定によって韓国が相手国に流動性を支援する可能性が高いケース、反対に韓国が支援を受ける公算が高いケースがあるが、全体として見るとわれわれにとって利益になる」と話した。例えば、インドネシアとの通貨スワップは韓国が流動性を支援するという性格が強いが、オーストラリアやUAEなど対外的な信認度が高い国との通貨スワップは、主に韓国がさらなる外貨流動性を確保するためのものだということだ。
 オーストラリアドルは世界の外国為替市場で5番目によく使われる通貨で、国際金融市場で米ドル、ユーロなどと共に通用する。
キム・テグン記者
朝鮮日報朝鮮日報日本語版

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/10/22/2013102200377.html

尊大で排外主義に染まった自意識を持つ日本極右は、“通貨スワップ協定とは日本から相手国に対する施しであり恩恵”という中華思想に引けをとらない八紘一宇的思考に捕らわれています。そういった知能では通貨スワップの意味を理解できません。朝鮮日報記事の「例えば、インドネシアとの通貨スワップは韓国が流動性を支援するという性格が強いが、オーストラリアやUAEなど対外的な信認度が高い国との通貨スワップは、主に韓国がさらなる外貨流動性を確保するためのものだということだ。」と言う記述は、通貨スワップの性質を的確に表現していますが、排外フィルタを通してしかモノを見れないレイシストは曲解しかしないでしょう。
韓国が急速に進めている通貨スワップ外交は、米ドルの一極支配の硬直性と脆弱性を回避・緩和するという点において中国と似ているように思えます。韓国にとって二国間協定の相手として日本がいるに越したことはありませんが必須条件でもありませんので、嫌韓外交を進める安倍政権に妥協してまで締結を求めるようなことはしないでしょうね。また、日本の方でも自民党が野党時代に散々煽った“日韓通貨スワップ協定=韓国への施し”というプロパガンダの残滓は簡単に拭えないでしょうから、日本側から持ちかける場合には国内批判による政治力低下という代償を払うことになり、事実上再開不可能と言っていい状態です*1

さて、既出ですが、経済評論家と称する事実上のレイシストである三橋貴明氏は以下のように述べています。

 中国自体が「影の銀行(シャドーバンキング)」「理財商品」などの問題で、金融が混乱に陥りつつあるのに加え、そもそも、人民元はハードカレンシー(=国際決済通貨)ですらない。国際市場で他国通貨と容易に両替することができないローカル通貨と通貨スワップを締結して、韓国にとって何の意味があるのかさっぱりわからない。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130803/frn1308031128003-n2.htm

三橋氏は自らの差別意識で目が曇って理解力を失ったのか、そもそも理解力自体が無かったのかはわかりませんが、「国際市場で他国通貨と容易に両替することができないローカル通貨と通貨スワップを締結」する意味が理解できないようです。まあ、それ以前に人民元を「ローカル通貨」と断言する無知さに呆れますが。

例1:韓国・マレーシアの貿易決済

例えば、韓国・マレーシア間の貿易での決済にあたって決済通貨をどうするかという問題を考えてみます。
ごく単純に考えると、韓国ウォンとマレーシア・リンギだけを用いて為替相場に応じて直接交換すれば良いとなりますが、貿易額が多額になると決済時点で必要な相手国通貨の準備がない場合があります。それに備えて外貨準備を行うわけですが、双方とも貿易相手国は他にもたくさんありますので、それぞれの国の通貨別に準備することは膨大な資金を要し、また遊休状態の資金を作ることになります。そのため、多くの国相手で利用できる通貨を決済通貨とするわけですが、これに多く利用されてきたのが米ドルです。韓国もマレーシアも米ドルが流通する国ではないにも関わらず、米ドルを主とする外貨準備を行い、貿易決済では米ドルを使うことで決済時に不履行を生じさせないようにしてきたわけです。しかし、この米ドルを介する決済の場合、通貨交換を2回行う必要があるため、その分手数料が余分にかかり、また米ドルの相場自体の影響による損失リスクが避けられませんでした。
そこで韓国・マレーシア間で貿易決済に利用できる通貨スワップ協定を結んだとします*2
これで韓国の外貨としてマレーシア・リンギが不足すれば、協定を発動して韓国はウォンと引き換えにリンギを調達できます。逆にマレーシアで韓国ウォンが不足すれば、協定を発動してマレーシアはリンギと引き換えにウォンを調達できます。これにより、韓国にマレーシア・リンギ建の外貨準備なく、マレーシアに韓国ウォン建の外貨準備がなくとも、韓国ウォンとマレーシア・リンギ間での直接やり取りが可能になります。その結果、為替手数料は1回分で済み、米ドル相場の変動の影響を受けなくなります。通貨スワップ枠を事実上の外貨準備として利用するやり方で、中国によって広範に用いられています。

これが韓国ウォンとマレーシア・リンギという「ローカル通貨」同士の通貨スワップ協定のメリットですが、三橋氏は「経済評論家」を自称しながら、この程度のことすら理解できないようです。

ところで、通貨スワップ枠を事実上の外貨準備とするやり方には弱点もあります。貿易額に不均衡が生じた場合に相殺できず、一方的に通貨スワップ枠を利用することになり金利負担が発生する点と二国間の為替相場変動が大きくなると利用しにくくなると言う点です。中韓通貨スワップ協定ではこの影響が出ているようで、さほど利用されてはいませんが、それ自体が致命的な欠陥というには至っていません。

例2:中国・韓国・マレーシアの貿易決済

上記例の発展型として、中国の存在を踏まえてみます。
韓国・マレーシア間の貿易で不均衡が生じ、マレーシアが一方的に韓国スワップを利用している状況を想定します。マレーシアは利用したウォン・スワップ枠を返済するためにウォンを調達する必要がありますが、ここでマレーシアが対中国貿易では利益を出していて人民元建の外貨に余裕があったとし、逆に韓国は対中国貿易で損失を出し人民元建の外貨に余裕がなかったとすると、韓国・マレーシア双方に決済通貨を人民元にするメリットが生じます。ウォンとリンギの間に人民元を挟むことで為替手数料が二重になる可能性は、韓国・マレーシアが双方とも中国と通貨スワップ協定を結んでいることで排除できます。
この結果、中国・韓国・マレーシア間で人民元が決済通貨として流通するようになっていきます。これは人民元の国際化と言えます。

現実には様々な要素が絡むので確実とは言えませんが、中国が進めてきた通貨スワップ網と中国の経済力によって人民元の国際化が進む可能性は高いとは言えるでしょう。自称経済評論家のレイシスト・三橋氏にはこういった認識は皆無のようで、ために人民元を「ローカル通貨」と断言するような軽率さをいかんなく発揮しているのでしょうね。

*1:無知無能な嫌韓バカは喜ぶでしょうが、連盟脱退に歓喜したのと同レベルの愚かさと言う他ありません。

*2:今回の協定が貿易決済に利用できるかは未確認