裁判所の靖国合祀容認と同じロジックで不本意に合祀された遺族を慰撫する方法を提案してみる

法華狼さんが、「靖国神社という霊言機関」という記事で以下のように述べています。

もちろん靖国神社は、ただ故人を追悼しているわけでも慰霊しているわけでもない。
顕彰することで死者を美化し、美化した死者の権威を利用して自らを高める。
そうして死者を利用する循環がおこなわれている。
だから本人や遺族の意向は無視する。
それが靖国という機関なのだ。

http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20131024/1382626838

記事の主旨についても、靖国神社幸福の科学の類似性についても、概ね同意です。
ただ、訴訟内容について考えるなら、今回の裁判所の判断に反対する気にはあまりなれません。死者だけでなく、生存している人も合祀されたことに対して当人の拒絶を優先すべきなのかという批判もあるのは理解できます。
さて今回の訴訟ではありませんが、過去の類似の訴訟の判決についてはここで読めます。その判決の中で「靖国神社にとっては、戦没者をできる限り広範に合祀することこそが、まさにその宗教活動そのもの」と指摘し、それゆえに遺族らの権利を侵害しない場合はもちろん、宗教的人格権の侵害があったとしても、その侵害の程度は靖国神社の宗教行為を制限するに足る理由とまでは言えない、という立場を取っています。
法華狼さんが引用している部分でも「原告は神社の宗教的行為で感情を害されたことを問題にしているが、他者の信教の自由には寛容であることが求められる」との判決理由が述べられています。
靖国神社が拒否の意思表示をしている生存者までも合祀していることに対する批判は理解できますが、靖国神社は合祀者を広範に流布しているわけではなく遺族に通知が送られる程度であって、当事者が不愉快に感じることはあっても法的に名誉毀損や侮辱にあたるかと言えばそうとは言えないと思います。

念のため言っておきますが、私は靖国神社のやり方に賛同するつもりは全くなく、批判されるべきトンデモなカルト宗教だと思っています。その意味で幸福の科学との類似を示した法華狼さんの記事は楽しく読ませてもらいました。ただし、裁判所が法的な強制力をもって宗教行為に介入することには否定的に考えていますので、今回の判決は止むを得ないと思っています。


もちろん、靖国神社が安倍首相のような右翼政治家との関係を持ち、国家主義的・歴史修正主義的な思想を持った政治団体の象徴であることは確かですが、それは裁判で考慮すべき事情ではないでしょう。もっとも、靖国神社が国営化されたり、首相の公式参拝が既成事実化して国家との特別な関係が誰の目にも明らかである状態であれば、考慮すべきと思いますが。今のところ、合祀者遺族とトラブルと起こし遺族の心情を害しているようなカルト宗教団体に、大臣・政治家が肩入れしているかのように見られる参拝やその類似行為に対して批判するのが正当であろうと思います。

さてさて、いくら国営化されているわけではないとは言っても、靖国神社が特別な地位にあるかのように流布されているのは事実ですし、異常な歴史修正主義歴史観として敗戦前日本賛美の思想を持つ靖国神社に意に反して一方的に祭神にされるのが、遺族にとって納得できず悔しいのは当然です。法的に対処できないのは当然と言って看過するような行為は、慰安婦に同情していると言いつつ賠償できないことを正当化してニヤニヤしている安倍首相やその取巻きの嫌韓バカと変わりません。

宗教行為として対抗してみる案

意に反して合祀された人の魂を救済するために身代わりの人形を祭る神社を建立する案

つまり、人形を祭ることで、靖国神社に囚われた人の魂と入替り、その人の魂を遺族の元に返してあげる、という宗教儀式を行う宗教団体を設立してはどうだろうか、という案。靖国神社の宗教行為が法的に保護されるように、こういう宗教行為だって法的に保護されるので靖国神社右翼団体側から何か文句を言われるいわれはありませんし、おそらく裁判所も法的には守ってくれるでしょう(右翼の非合法な恫喝はありうるでしょうけど)。
ちなみに別に神社である必要はありませんし、日本国内で容認されないなら海外に作ったって構わないでしょう。

一歩進んで

日本を敗戦に導き多数の日本人やアジアの多くの民衆を苦しめたA級戦犯などの当時の政治・軍事指導者たちの魂が地獄での償いを全うできるように祈る、という宗教儀式を行う宗教団体を設立するのもよいかも知れません。
もちろん誰を祀ろうが、広範に公表しなければ*1法的に問題はありませんし、その団体独自の歴史観を表現した史料館を作っても問題ありませんね。外国から日本軍の戦争犯罪被害者を招待して祈祷を行っても無問題、もちろん日本の国会議員や大臣が参拝しても、個人の自由でしょう。

さて

まあ、対抗宗教団体を作る案は半分冗談です。本来なら、遺族の思いを踏みにじってでも自らの宗教行為を優先するような身勝手な神社は民間の一宗教団体としてのみ存在が許されるに過ぎず、そのようなカルト宗教に対して親和的な発言・行為を行うような政治家をこそ批判すべきなのでしょう。

*1:遺族には通知しても構わないはずですね。靖国神社判例から判断する限り。