これは事実として父子関係があったかどうかで判断すべきで血縁の有無とか関係ない

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<DNA鑑定>最高裁で弁論…法律上の父子関係取り消せるか
Yahooコメント欄がバカな指摘であふれるのは見慣れた光景ですが、誰が悪いかとか不倫に罰則をとかバカ丸出しなのや、DNA鑑定優先ありきのコメントとか、これは家裁事件ですので、基本的に子の福祉優先で判断される事件です。誰が悪いかとか、この裁判で決める内容ではありません。子どもの意見をとかいうコメントもありましたが、1歳半の時に引き離された現在5歳の子どもの意見を子ども自身の法的身分の確定の根拠にするのはさすがに問題ありすぎでしょう*1

結論から言えば、平穏かつ公然と父子関係を維持した事実があるのであれば血縁上の父子関係の有無に関係なく離婚による親権喪失等にかかわりなく父子関係は認められるべきです。ですので、最高裁が一審・二審の判決を覆すことを期待します。

親子関係の取り消しめぐる裁判 最高裁が双方の主張を聞く弁論

フジテレビ系(FNN) 6月9日(月)18時59分配信

ある夫婦の間に生まれてきた子ども。通常通り、役所へ出生届を出し、子どもの名前は夫がつけた。
ただ、この子ども、母親と別の交際相手との間にできた子どもで、DNA鑑定の結果、血縁関係が認められた。
法律で認められた父と子、血縁上の父と子、どちらの親子関係が優先されるのか。
元夫は、手記の中で「わたしは子どもの父であり、わたしだって子どもを愛しているのです」とつづっている。
生まれてから1年半育てた、子どもへの思い。
重視されるべきは、法律上の親子関係か、それとも血縁関係なのか。
北海道の元夫婦は、妻側が、父親と子どもの関係の取り消しを求めていて、夫側は、関係を保ちたいと反論している。
2009年、北海道・旭川市に住む夫婦に、子どもが誕生した。
しかし、この妻は、夫以外の別の男性とも交際していて、DNA鑑定の結果、子どもは、この別の男性と99.99%の血縁関係があることがわかった。
その後、夫婦は離婚。
妻は、子どもの代理人となり、子どもと血のつながりのない元夫に対し、父と子の関係の取り消しを求める訴えを起こした。
そして、旭川家庭裁判所は、DNA型鑑定の結果から、父親と子どもの関係を取り消し、高裁も、これを支持した。
裁判では、1審・2審ともに、血縁関係を重視。
妻側の訴えを認め、元夫と子どもの親子関係を取り消す判決を下した。
自分が名前をつけ、1年半の間、育ててきた子どもとの親子関係を取り消された元夫。
元夫は、手記の中で「お風呂はわたしの役目であり、楽しみのひとつであった。子どもにどれほど愛情を注いできたか。わたしの気持ちが本当にわかるだろうか」とつづっている。
元夫側は、「父と子の関係は取り消せない」と、最高裁判所に上告した。
同様の親子関係の取り消しをめぐる裁判は、大阪府でも起こされていて、9日、最高裁は、2つの訴訟について、それぞれ双方の主張を聞くための弁論を開いた。
最高裁での弁論は、2審の結論を変更する場合などに開かれることから、判断が見直される可能性がある。
弁論の終了後、元夫側の代理人・小林史人弁護士は「戸籍上の父親と、生物学上の父親、両方いてよろしいんじゃないかと。戸籍上の父親の地位を剥奪することは、子どもにとっても、不利益であるというふうに考えます」と話した。
一方、元妻側の代理人は、取材に対し、「DNAという、血縁関係がわかるものも出ているし、育ってきた経過や実情を反映させることが、子どもの利益だと思っている。実の父親でないとわかったときに、本当の父親に戻せる手段を認めてほしい」と主張した。
元妻は、すでに子どもの血縁上の父親の男性と生活していて、長期化する裁判に、「早く決まればありがたい」と話しているという。
現行の民法では、「妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する」と定めているが、この規定ができたのは、明治時代。
現在のように、DNA鑑定などで血縁関係を確認するケースは、想定されていなかった。
判決は、7月17日で、最高裁の判断が注目される。
最終更新:6月9日(月)18時59分

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20140609-00000237-fnn-soci

ざっと確認した中で一番詳しかったのが、この記事でした。
「父と子の関係の取り消しを求める訴え」というのは多分、親子関係不存在確認の調停・審判*2のことで調停で合意に至らず審判となり、不存在確認の審判決が出たのだと思います。記事にもあるとおり、一審は家庭裁判所で行われましたが、家族問題の専門機関である家裁で下された判断が上級審で覆ることは稀です。実際、高裁は家裁の判断を支持しました。
もちろん、DNA鑑定で生物学的親子関係が否定されているわけですから、家裁がいい加減な判断をしたとは言えません。記事から類推するに調停・審判は2011年頃に開かれていますから、最高裁に来るまで3年近くかかっていることになり、おそらく多くは家裁での調停・審判で費やされた期間だと思われます。

弁論の終了後、元夫側の代理人・小林史人弁護士は「戸籍上の父親と、生物学上の父親、両方いてよろしいんじゃないかと。戸籍上の父親の地位を剥奪することは、子どもにとっても、不利益であるというふうに考えます」と話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20140609-00000237-fnn-soci

という父親側代理人のコメントが紹介されています。実際、子の戸籍に子が生まれてから1年以上父として育ててくれた人物の名前が載っていることそれ自体が子の福祉を害するとはちょっと考えられません。戸籍上の父親と生物学上の父親の両方がいること自体は子連れ離婚の場合で良くある話で、これが子の福祉を害するとは思えません。むしろ、親子関係不存在とすることで、子は現在の戸籍上の父親に対する養育費請求権を失うことになるでしょうから、その点においては子に不利とも言えます。

なぜ母親は親子関係不存在確認を求めたのか?

記事中には書かれていませんが、おそらく元夫との関係を完全に断ち切りたかったのでしょうね。養育費などいらないから“私の人生”から消えてくれ、と。元夫が戸籍上の父親である限り、離婚後も子との面会交流や養育費などで元夫との関係を維持せざるを得ません。多分、それが母親には嫌だったのでしょう。しかし、だとすれば徹頭徹尾“大人の事情”でしかなく、子の福祉に関係ありません。生物学上の血縁の有無に関係なく、実の父子とお互い信じて過ごした1年半は全く価値のないものであり、配慮の必要がないものであり、子と戸籍上の父親との関係を示す公的記録を一切消滅させ、子と戸籍上の父親を一生引き離すことを正当化できるか、というと少なくとも人道上は認められるべきではないでしょうね。
日本には独立した家族法制は存在せず、ために少なくない部分で裁判官の判断に委ねられ、そこには人道や良識などが反映されます。もちろん、判例に従うという部分も大きいのですが、この事件のように判例が見出しにくい場合は、その時点での人道や良識が判断基準になります。もちろん近い事例の判例も参照されますが*3

家裁・高裁判断は間違いか

というとそうも言えません。DNA鑑定によって生物学的親子関係が否定される以上、「推定の及ばない子」として戸籍上の親子関係を消滅させるのが間違いとは言えないからです。実際、1998年の福岡高裁判決(福岡高判平10・5・14 判タ977号228頁)では、生物学的親子関係にない23歳の息子に対して親子関係不存在確認を求めていた父親の主張を認める判断が下されています。この裁判は訴えを起こしているのが父親と母親という違いはあるものの、生物学的な親子関係にないことを知らずに育てたこと*4、夫婦の離婚の際の紛争から波及して親子関係不存在確認の争いに至ったことなど、引用記事の事件と類似する点が少なくありません。
その意味ではこの事件には判例があると言えるわけで、「法律で認められた父と子、血縁上の父と子、どちらの親子関係が優先されるのか。」などと言った報道の煽り方には疑問があります。
それはともかく、実態としての父子関係が20年も継続していたにも関わらず、生物学的な親子関係の不存在を根拠に親子関係不存在を認めた高裁判断が判例として存在している以上、それに倣って引用事件での家裁や高裁が親子関係不存在を認めたのは間違いとまでは言えないでしょう。

最高裁は何を見るか

引用記事ではこう書かれています。

現行の民法では、「妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する」と定めているが、この規定ができたのは、明治時代。
現在のように、DNA鑑定などで血縁関係を確認するケースは、想定されていなかった。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20140609-00000237-fnn-soci

他のメディアも概ね同様の認識のようで、要するに嫡出推定の現行民法の規定が古臭く、それを型どおりに適用するやり方は、DNA鑑定などの科学技術が発展した現在にそぐわない、と言った認識です。その上で、それに対する賛否はあるようですが、そもそも前段の認識が既にずれています。
つまり、DNA鑑定結果を基に親子関係不存在を認めた家裁・高裁判断は民法規定に則ったものであり、別にそれに反した判断を下したわけではないのです。

どうも、古臭い現行民法による嫡出推定とDNA鑑定などを使った科学的な親子関係判断、という架空の対立図式が作られているようですが、元々の民法でも「推定の及ばない子」という嫡出推定の例外が認められており、DNA鑑定は新しくその手段の一つに加わっただけです。

 妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定する根拠は,夫婦の間には性交渉があることである。しかも,妻には貞操義務があるから,夫の子である蓋然性が高いという経験則に基づいている。だから,推定の根拠となる性交渉が夫婦の間にない場合には,この経験則が働かないので,妻が懐胎した子を夫の子と推定することができないし,また推定する意味がない。このような子については,嫡出否認の訴えによる必要はなく,一般的な親子関係不存在確認の訴えでその父子関係を争うことができる。つまり嫡出推定が働かないので,推定を前提にした嫡出否認の訴えを用いることができず,かつその必要がない。学説は,このような子を「推定の及ばない子」と表現する。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/07-6/ninomiya.pdf

この事件で問題なのは、事実として父子関係が存在し父側に父子関係継続の意思があるにも関わらず、母親からの訴えで親子関係不存在を認めるべきかと言う点です。DNA鑑定云々は生物学的な親子関係判断の根拠になるだけで最終的な裁判所の判断上は重要な要素ではありません。最高裁が本腰を入れて審議するのは、どちらが子の利益になるかという視点で杓子定規な法や判例の適用を見直す必要の有無を判断するためです。実は上であげた福岡高裁の事例ですが、高裁前の地裁での判断では親子関係不存在を認めていません(大分地判平9・11・12 判タ970号225頁 *5

子の利益

父親側の主張)

弁論の終了後、元夫側の代理人・小林史人弁護士は「戸籍上の父親と、生物学上の父親、両方いてよろしいんじゃないかと。戸籍上の父親の地位を剥奪することは、子どもにとっても、不利益であるというふうに考えます」と話した。

(母親側の主張)

一方、元妻側の代理人は、取材に対し、「DNAという、血縁関係がわかるものも出ているし、育ってきた経過や実情を反映させることが、子どもの利益だと思っている。実の父親でないとわかったときに、本当の父親に戻せる手段を認めてほしい」と主張した。

争点となっている戸籍上の父子関係ですが、子連れ離婚後の再婚の場合や養子縁組の場合などで実際に監護する親と戸籍上の親が別々に存在すること自体珍しいことではなく、母親側の主張である父子関係の維持が子の利益に反するというのは無理があります。もちろん、戸籍上の父が全く育児に関与せず、事実上も父子関係になかったのであれば、そもそも維持すべき父子関係が存在しないため、戸籍上の父子関係の解消という判断はありえます*6が、本事件では最高裁が動いているということからそういう事情ではないことが窺えます。
この事件において重要なのは、DNA鑑定での結果と言った生物学的親子関係ではなく、事実上の親子関係があったかどうかであり、裁判所が生物学的親子関係にない親子の法律的な関係をどう評価するかという点です。これまでの傾向として裁判所はこうした場合の親子関係不存在を容認していましたが、徐々に変わりつつあり、それが最高裁により明確化されるのか。また、これまでの親子関係不存在確認の訴えが父親側からの提起が多かったにもかかわらず、この事件では母親側からの提起であるという事情*7をどう考慮するか。
この2点がポイントと言えるでしょう。
報道ではこういった点がまるで留意されていないようでとても残念です。

DNA鑑定補足

現行民法はイエ制度の名残が結構残っており、性差別的なものも少なくありません。女性に対する差別になっている規定も多くありますが、本質的にイエを基本とした家族内の権利関係を定めるためのものであり差別を目的としているわけではなく、家族構成員の役割分担を旧来的な思想の下で定めていると言えます。その想定している家族構成員の役割分担の思考が古く、多様化した家族のあり方に対応できず、それが女性に対する差別として機能しているわけです。そしてそれは時として、女性だけでなく、男性にとっても差別的に機能することもあります。例えばこういうことも起こるわけです。

事実上離婚や出征,収監など懐胎時における夫と妻の別居という客観的な事実が存在したり,すでに血液型の不一致などが判明している場合を除けば,嫡出否認の訴えで父子関係を否定することはそう簡単ではない。訴訟では,夫と子の間に自然血縁関係が存在していないことを証明しなければならない。その証明方法は,血液鑑定やDNA 鑑定になるが,現行制度では,妻が鑑定を拒否した場合に,これを強制する手段がない。鑑定が許否されれば,真偽不明の状態になり,証明責任の原則から,否認権を行使している夫が敗訴する。したがって,訴訟に前置される家事調停において,妻を説得して鑑定を実施してもらわなければならない。結果的には,妻の合意を得て初めて嫡出否認の訴えで,父子関係を否定することができるのである。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/07-6/ninomiya.pdf

母親側は自由自在に望む時にDNA鑑定の結果を突きつけ親子関係不存在を訴えることが出来るのに対し、父親側にはそれができません*8

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父子関係、DNA鑑定で取り消されるか 最高裁で弁論

西山貴章 井上恵一朗
2014年6月10日09時36分
 DNA型鑑定をしたところ、父と子に血縁関係がなかった。その父子関係は取り消されるのか。最高裁第一小法廷が9日、そんな争点の2件の訴訟で当事者から意見を聞く弁論を開いた。妻側は父子関係の取り消しを求め、夫側は「子に対しては父親としての愛情がある」として関係を維持するように訴えた。
 最高裁が結論を変える際に必要な弁論を開いたことで、父子関係を取り消した一、二審の判断が見直される公算が大きい。
 争っているのは、北海道の元夫婦と近畿地方の夫婦。ともに妻が夫とは別の男性と交際。出産した子と交際男性との間でDNA型鑑定をしたところ、生物学上の父子関係が「99・99%」との結果が出た。これを受けて妻が子を原告として、夫とは親子ではないことの確認を求めて訴えた。
 一、二審はいずれも「鑑定は親子関係を覆す究極の事実」などと、父子関係を取り消す判決を出した。ともに夫側が上告した。
 「1歳2カ月の可愛い盛りのわが子を手放さなければならなかった私の胸中など、元妻には理解できないはずです」
 北海道の元夫婦は子の誕生から1年3カ月後に離婚。元夫はその直前まで子と暮らした。弁論があったこの日、思いをつづった文書をマスコミに公開した。
 「DNA型鑑定が事実であれば、私の主張が理解されにくいことも十分に分かっています。しかし、子への愛情をなかったことになどできません」。わが子として命名したこと、風呂に入れたときのこと、「パパ」と呼んでもらったこと。「楽しくて仕方ありませんでした」と振り返った。別れる朝、子にバイバイをすると、子はそれまで見たこともない、笑ったような、泣きそうな顔で手をクルクルと振ったという。
 弁論では「血縁がないことを理由に親子関係を否定すれば、養子縁組制度なども否定することになる」とも主張した。
 一方、元妻の代理人は弁論で「元夫と子との関係が認められれば、終生、真実に反する親子関係が強制される」と主張した。

http://www.asahi.com/articles/ASG695F3LG69UTIL03N.html

<DNA鑑定>最高裁で弁論…法律上の父子関係取り消せるか

毎日新聞 6月9日(月)20時42分配信
 DNA型鑑定で血縁関係がないと証明されれば法律上の父子関係を取り消せるかが争われた2件の訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は9日、夫側と妻側の双方から意見を聞く弁論を開いた。夫側はいずれも「取り消せない」と訴え、妻側が「取り消せる」と反論して結審した。判決は7月17日に指定された。
 DNA型鑑定という科学的な証拠に基づいて夫と子との血縁関係が否定された場合に、民法772条の「妻が結婚中に妊娠した子は夫の子と推定する」(嫡出推定)規定の例外となるかが争点。いずれも1、2審は鑑定結果を根拠に「法律上の父子関係を取り消せる」と判断した。最高裁は2審の結論を変更する際に弁論を開くことから、判断が見直される見通しとなった。
 争っているのは、近畿地方の夫婦と北海道の元夫婦。いずれも妻が夫と結婚中に別の男性との子を出産。子は法律上は夫の子とされたが、DNA型鑑定の結果、生物学上は夫以外の男性が父親である確率が「99.99%」と判定された。妻側が子供を引き取り、別居している法律上の父との親子関係が存在しないことの確認を求めた。
 弁論で近畿地方の夫側の弁護士は「民法は子の権利を確保させるために、血縁関係がない場合でも、法律上の父子関係を認めることを許容している」と指摘。DNA型鑑定で法律上の父子関係が取り消されるなら「妻がいつでも自由に父子関係を否定できてしまい、子の身分が安定しない」と主張した。
 一方、妻側の弁護士は「夫が血縁上の父でないのに、父子関係を取り消さないのは不自然。今では血縁上の父が実の子と一緒に暮らしており、訴訟に勝てば認知する意向も持っている」と反論。「幼い子に真実の父と法律上の父が異なる運命を背負わせるのは、過酷だ」と強調した。【川名壮志】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140609-00000081-mai-soci

「父子関係」否定見直しか 鑑定技術向上 民法規定の想定外、どう判断

産経新聞 6月10日(火)7時55分配信
 最高裁で弁論が開かれた父子関係取り消し訴訟は、DNA型などの鑑定技術の急速な向上により、民法が想定しなかった事態が起きていることを示している。最高裁が来月17日に示す判断によっては、同種事案に影響を与えそうだ。
 今回の2訴訟で最大の争点は「民法の嫡出推定をDNA型鑑定で破ることができるかどうか」だ。
 民法は772条で嫡出推定を規定する一方、嫡出推定を覆す手段として嫡出否認の訴えを定めている。ただし、訴えを起こせるのは夫だけで、提訴期間も「子の出生を知った時から1年以内」に限られる。
 判例では、夫が遠隔地で暮らしているなど明らかに夫婦関係がない場合などには例外的に「推定が及ばない子」として扱われるケースもあったが、2訴訟ではこうした事情はなかった。
 関西訴訟は、夫が単身赴任中に妻が妊娠。お宮参りや保育園行事などに家族として参加していたが、妻が別の男性と交際していることが発覚した。妻が子を連れて家を出ていき、今は交際相手とともに生活しているという。
 北海道訴訟では、結婚約10年後に妻が出産し、夫の子として出生届を出したが、その後、離婚が成立した。
 DNA型鑑定という客観的なデータで生物学上の血縁関係が明らかになる一方、鑑定だけで父子関係が覆されれば「子が法律的に不安定な状態に置かれる」との懸念もあり、最高裁の判断が注目される。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140610-00000102-san-soci

*1:ネット上ではそういう想像力がない人ばかりな気がします。父親や母親を子どもの今後の人生から一切消し去ってしまう判断を5歳の子どもに委ねること自体、どれほど残酷なことかわかってほしいものです。幼稚園児に“どくさいスイッチ”を持たせるようなものですよ。

*2:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_16/

*3:「親子関係否定の法理の解釈論的検討 - 立命館大学http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/07-6/ninomiya.pdf に詳しい。

*4:ただし、福岡高裁での事案では、父親の子ではないかもしれない旨が子の出生当時に母親から知らされている点で異なります。

*5:「長期間父子として生活してきたこと,Y(子)の意思などを考慮し,DNA 鑑定の結果は100パーセントの信頼をおけるものではないとして,X(父)の訴えを棄却した。」これが家裁ではなく地裁であるのは、それ以前に損害賠償請求事件があり、そこからの派生だったからかも知れません。通常は親子関係不存在の訴えは家裁で判断するはずです。

*6:例えば、特別養子縁組を成立させるには、原則として実親による虐待があるかまたは実親の同意が必要ですが、実親が全く関与しようとしなかったという事実上の親子関係の不存在を理由として家裁が特別養子縁組を認めた事例があります。

*7:養育費などの問題から、母親(監護親)側から親子関係不存在を訴えることに本来実益がないにもかかわらず訴えているという事情。子の利益よりも元夫との関係を完全に断ち切りたいという母親個人の願望が優先されているのではないかという懸念が考えられます。

*8:嫡出否認と親子関係不存在では違いもあると思いますが