ハーグ条約初の運用

まずは日本から母親が連れ去った子どもを日本に返還するよう命令が出たようです。
文面からは日本人と外国人の国際結婚ではなく、日本人同士の夫婦らしいです。

ハーグ条約>7歳児 日本に戻すよう初の返還命令

毎日新聞 7月29日(火)11時58分配信
 国境を越えて連れ去られた子の扱いを取り決めたハーグ条約に基づき、母親とともに英国に滞在していた日本人の子を日本に戻すよう、英国の裁判所が命じていたことが関係者への取材で分かった。日本では、今年4月に同条約が発効。外務省によると、日本の子の返還命令が出されたのは初めて。
 関係者によると、日本へ戻すよう命じられたのは別居中だった日本人夫婦の7歳の子。母親が今年3月末、子を連れて英国に渡り、5月になっても戻ってこなかったため、父親が同条約に基づいて子の返還を求めていた。父親からの返還の援助申請に対し、英国政府が5月末に援助を決定。ロンドンの裁判所が今月22日、「出国後に母親が父親と約束した期間を超え、5月以降も子を英国に滞在させていることは、ハーグ条約上は違法な状態に当たる」と判断。今月30日に子を日本へ戻すよう命じた。日本の家裁では現在、母親側から離婚調停と、どちらが子を養う「監護親」となるかを決める審判が申し立てられている。
 父親側の代理人の本多広高弁護士は「日本でハーグ条約が発効していなければ、母親の意向で今後の子の扱いが決まっていたと思われる。子を速やかに元の国に戻した上で、話し合いや裁判が進められることになり、適切な判断が出されたと評価している」と話す。
 一方、母親は関係者を通じ「子を英国に連れて行ったのは仕事上の都合であり、違法に連れ去る意図は全くなく、今回の司法判断にかかわらず、7月末に子をいったん帰国させることを決めていた。子は4月以降、通っていたイギリスの学校を気にいっていた」と語った。【伊藤一郎】
 ◇ハーグ条約
 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」の通称。国境を越えて一方の親に連れ出された16歳未満の子の扱いを規定する。主に国際結婚の破綻ケースが想定されているが、同じ国籍の夫婦にも適用される。残された方の親が子の返還を求めた場合、相手国の裁判所が元の国に戻すかどうか判断する。また、海外に連れ出された子との面会を求めた場合、相手国の支援を受けられる。今年5月時点の加盟国は92カ国。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140729-00000033-mai-soci

子ども(7歳)は3月末に母親によって連れ去られ、5月に父親ハーグ条約に基づく返還を要求し、英国政府は5月末には援助を決定し、7月22日に英国の裁判所が判断を下し、7月30日には子どもを日本に帰国させるように命令しています。日本の裁判所での調停や審判の流れに比べるとわずか3ヶ月での決定は極めて早いと言え、ほぼ児童虐待事案と同様の迅速な対応をしていることがわかります。
母親側は「違法に連れ去る意図は全くなく、今回の司法判断にかかわらず、7月末に子をいったん帰国させることを決めていた」と言っていますが、さすがに苦しい言い訳です。しかも「いったん帰国」なので「子は4月以降、通っていたイギリスの学校を気にいっていた」ことを理由になし崩しに親権を奪取して父親から引き離す意図だったと思われて当然の状況です。
もっとも国境を越えた連れ去りは防止できても、問題は「日本の家裁では現在、母親側から離婚調停と、どちらが子を養う「監護親」となるかを決める審判が申し立てられている」の部分です。
母親が子どもの身柄を抑えた状態で、日本で監護者指定の審判*1をやれば、母親が圧倒的に有利であり、結局は子どもは父親から引き離される可能性が高いといえる状況です。
父親側は当然、連れ去りをやるような母親の監護者不適格という線で責めるでしょうが、見通しはあまり明るくありません。その後の親権の帰趨はおそらく報道されることはないでしょうが、いずれにしても子どもが双方の親と交流できるような結末を迎えて欲しいものです。

*1:監護者に指定されれば、ほぼ自動的に親権者となります。