身代金要求してくる相手と交渉中に演説して“真意が伝わらない”とか言い訳しているのはさすがにどうかと思うよ

 北朝鮮の難民・避難民支援、韓国、台湾への支援をするのは、日本がもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、日本と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。

中国がこういう声明を出したら、日本人は“民生支援だから問題ない”などと思わないでしょうにね。
自分たちの発言が相手にどうとらえられるかくらい考えて当たり前のことですが、圧倒的な議席数を持ち、度重なるメディア弾圧の結果、政府批判するメディアを弱体化させることに成功した安倍政権はどんな適当な放言をしても国内では「真意を誤解された」と強弁すれば批判を黙らせることができるため、言葉の使い方の杜撰さに拍車がかかっているようですね。
ほとんどのメディアもそれを指摘できないくらい、民主主義社会としての腐敗が進んでいます。
安倍政権を批判する声に対しては、ネット民兵が大人数で襲い掛かり、産経・読売・文春などの安倍政権翼賛メディアがネット民兵による私刑を助長する情報を垂れ流し、そうでないメディアは弾圧を恐れて沈黙する。困ったものです。一般人としては打つ手なしですね。

さて、イスラム国による人質脅迫事件の公表のきっかけとなった2015年1月17日の安倍首相演説ですが。

安倍総理大臣の中東政策スピーチ

(中庸が最善:活力に満ち安定した中東へ 新たなページめくる日本とエジプト) 2015年1月17日 於・日エジプト経済合同委員会
平成27年1月18日

4.日本の約束

 ご列席の皆様、私たちが築いてきた友情の物語に、新たなページを加えるときがきました。
 エジプトが安定すれば、中東は大きく発展し、繁栄するでしょう。私は日本からご一緒いただいたビジネス・リーダーの皆様に、ぜひこの精神にたって、エジプトへの関わりを増やしていただきたいと願っています。
 日本政府は、その下支えに力を惜しみません。
 E-Justにとって便利で、有望な産業立地とも近いボルグ・エル・アラブ(Borg El-Arab)国際空港の拡張を、お手伝いします。電力網の整備とあわせ、3億6000万ドルの円借款を提供します。
 カイロ地下鉄など交通インフラや、再生可能エネルギー、火力発電に、日本は最先端の、環境に優しい技術を提供します。エジプト発展の、一助となるため、ひいては、中東全体に安定の基礎を広げていくためです。
 その目的のため、私が明日からしようとしていることをお聞き下さい。
 まず私はアンマンで、激動する情勢の最前線に立つヨルダン政府に対し、変わらぬ支援を表明します。国王アブドゥッラー二世には、宗教間の融和に対するご努力に、心から敬意を表すつもりです。
 パレスチナでは、保健医療、水道整備や西岸とガザの難民支援など、民生安定に役立つ施策を明らかにします。
 イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。
 イラクでは、全党派を含む、国民融和内閣による安定的な統治が絶対に必要です。日本は、そのための努力を支援し続けます。地域から暴力の芽を摘むには、たとえ時間がかかっても、民生を安定させ、中間層を育てる以外、早道はありません。「中庸が最善(ハイルル・ウムーリ・アウサトハー)」。日本はそこに、果たすべき大いなる役割があると考えています。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/eg/page24_000392.html

脅迫事件が公表された後になって必死に言い訳したところで、これイスラム国側から見ればどう見ても敵対行動の表明ですよ。英訳の問題とかでもなくて、元の日本語の時点で既に駄目でしょう。
「支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるため」「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」って言ってますからねぇ。軍事支援は含まず人道支援だけなのだって、そんな好意的な解釈をイスラム国側がすると思ったのなら間が抜けているにもほどがあります。
「地道な人材開発、インフラ整備」と明言している、という反論もあるんでしょうけど、「を含め」とも言ってますから、軍事支援を除外する言い方になってませんしね。

We are going to provide assistance for refugees and displaced persons from Iraq and Syria.
We are also going to support Turkey and Lebanon. All that, we shall do to help curb the threat ISIL poses. I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars for those countries contending with ISIL, to help build their human capacities, infrastructure, and so on.

http://www.mofa.go.jp/me_a/me1/eg/page24e_000067.html

外務省の英文を見ても、日本語文と大して違いはありません。
“挑発ではない”と主張するのも結構ですが、この時既に日本政府はイスラム国側と水面下で人質解放交渉をしていたわけですから、不注意にもほどがあるでしょうね。
人質をとって身代金要求してくるような相手が、安倍演説を好意的に解釈してくれると思ってたなら無能という他ありません。