カリフォルニア州高等裁判所「慰安婦への人権侵害は「米下院議会決議だけでなく、日本政府も認めている」と述べ」たものの実は日本政府が乱訴の黒幕だったという冗談みたいな事実

在外日本人右翼団体が起こしているグレンデール歴史修正主義訴訟の件です。

米国:ロスの慰安婦像訴訟、訴え棄却方針 加州高裁

毎日新聞 2015年02月24日 20時46分(最終更新 02月24日 23時50分)
 【ロサンゼルス堀山明子】米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊グレンデール市に設置された旧日本軍の従軍慰安婦を象徴する少女像を巡り、在米日本人団体「歴史の真実を求める世界連合会」が設置は州憲法に違反するとして市を訴えた訴訟で、ロサンゼルスの州高裁は23日、原告の主張は言論の自由を脅かすものだとして、訴えを棄却する方針を原告、被告双方に伝えた。3月24日に正式決定する。
 高裁は方針を説明する文書で、原告に対し「像設置によって日本人が受けた不利益の立証がない」と指摘。また、慰安婦への人権侵害は「米下院議会決議だけでなく、日本政府も認めている」と述べ、本件訴訟は法的争いの余地がないとの認識を示した。
 原告は「慰安婦像設置は日本人や日系アメリカ人に対する差別的行為で、州憲法に違反する」と主張。市側は「言論の自由を脅かす乱訴にあたる」として審理開始前に棄却する反スラップ法の特別動議を求めていた。
 反スラップ法の特別動議は、米国憲法が保障する言論の自由に関わる訴訟に限って一部の州で認められている規定だ。
 原告代表の目良浩一・南カリフォルニア大元教授は「正式決定までに、どんな抗議が可能か検討する」と上訴を示唆。一方、在米韓国人団体「加州韓米フォーラム」のフィリス・キム幹事は「事実上の勝訴だ」と歓迎している。
 グレンデール市の像を巡っては昨年8月、連邦地裁が原告の訴えを棄却。原告は外交問題を争う連邦高裁への控訴とは別に、差別問題を争点に高裁に訴えていた。

http://mainichi.jp/select/news/20150225k0000m030061000c.html

グレンデール歴史修正主義訴訟ですが、右翼政治家・団体が共謀して設立させた「歴史の真実を求める世界連合会」(2014年2月8日設立)が主体となって、産経新聞が募金集めのプロパガンダ記事を流してまで起こした乱訴で、2014年2月20日にグレンデール市を相手取って提訴されています*1
乱訴を起こした右翼団体は国会内で自民党議員らと懇談し、アメリカの小自治体に訴訟費用で圧迫することを目的としています。
訴訟理由があまりにも異常であったため、弁護を請け負ったメイヤー・ブラウン事務所はアメリカ社会から非難され、2014年4月におりています。

目良浩一ら右翼団体が起こした訴訟は2014年8月4日に棄却されたものの、9月3日には上訴しています。訴訟には6億円かかると言われ、右翼団体の資金源には安倍政権から税金が投入されているのではと疑惑がありましたが、2015年2月25日、菅官房長官がこの右翼団体によるSLAPPに政府が連携・関与していることを認めました。

慰安婦像相いれず原告と連携」官房長官

2月25日 13時30分 K10057286911_1502251510_1502251518.mp4
官房長官は午前の記者会見で、アメリカに住む日本人らが、いわゆる従軍慰安婦の問題を象徴する銅像の撤去を裁判で求めていることについて、「像の設置はわが国の立場と相いれない」として、原告の関係者らと緊密に連携を取って対応していることを明らかにしました。
この中で、菅官房長官は、アメリカ・ロサンゼルス近郊の市に住む日本人らが、公園に設置された、いわゆる従軍慰安婦の問題を象徴する銅像を撤去するよう裁判で求めていることについて、「政府として個別具体的なコメントは控えるべきだと思うが、慰安婦像などの設置は、わが国政府の立場やこれまでの取り組みと全く相いれないものであり、極めて残念なことと受け止めている」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「アメリカは多様な民族、文化的バックグラウンドを持った住民が平和と調和のなかで共生する社会になっており、そういうなかで慰安婦を巡るような出身国によって意見の全く異なる案件を持ち込むことは適切でない。原告の関係者を含む在留邦人とは、わが国の総領事館幹部を通じて緊密に連携を取っている」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150225/k10015728691000.html

まあ、2014年9月には、右翼団体の上訴とタイミングを同じくして、在米日本大使館が「歴史問題に端を発する邦人の方の被害に関する情報提供」を求めるHPをアップしており、安倍政権がこのSLAPP行為に関わっていることはバレバレでしたけどね。
2014年9月5日に私は以下のように書いています。

するとタイミング的には、在米右翼団体による慰安婦像撤去訴訟の訴え棄却(8月4日)→在米大使館による「被害に関する情報提供」呼びかけ(8月下旬)→在米右翼団体による上訴(9月3日)、となります。まるで在米日本大使館が、在米右翼団体によるSLAPPに協力しているかのようなタイミングです。
大使館に寄せられた情報は、いかに些細なもの、怪しいものであっても、訴訟に利用されるのはほぼ間違いないでしょうね。さすがに大使館から直接右翼団体というのは難しいにしても、首相が在米右翼団体と通じているような状況ですから、大使館→政府→櫻井よしこ→在米右翼団体、とか、大使館→政府→公表→産経新聞報道→在米右翼団体、とかいくらでもルートはあります。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140905/1409937403

ただ、今回の菅官房長官の堂々の右翼団体によるSLAPPに安倍政権が協力している、というより黒幕であることの暴露を見ると、情報は大使館から右翼団体に直接流されていると見ていいかも知れませんね。

まとめ

グレンデール歴史修正主義訴訟は、在米日本人右翼により起こされたSLAPPであり、原告のあまりに異常な主張に弁護士事務所が訴訟途中で降りるという異常事態になったあげく、裁判所からは、「「像設置によって日本人が受けた不利益の立証がない」と指摘。また、慰安婦への人権侵害は「米下院議会決議だけでなく、日本政府も認めている」と述べ、本件訴訟は法的争いの余地がないとの認識」を示されています。
しかし、アメリカ高等裁判所が「慰安婦への人権侵害は「米下院議会決議だけでなく、日本政府も認めている」」としたにもかかわらず、そのSLAPPを起こしている右翼団体の黒幕が日本政府そのものでした。

安倍政権の異常さを如実に物語る冗談のような事実です。

ちなみに

官房長官は「慰安婦を巡るような出身国によって意見の全く異なる案件」と述べていますが、アメリカの日系人団体はグレンデール慰安婦像設置に協力していますので、「出身国によって意見の全く異なる」というのは、菅官房長官のデマです。首相がデマばかりついていると、官房長官もデマばかり言うようになるんですね。


参考:「グレンデールの慰安婦碑設置には日系団体も協力しているんですけどね