慰安婦以前の“当時の価値観”

当時は公娼制度が、的な主張で、従軍慰安婦という性奴隷制を擁護する人が多いわけですが、実際の“当時の価値観”は公娼制度を当然視していなかったというのは、研究者にはよく知られた話と言えるでしょう。

遊廓のストライキ: 女性たちの二十世紀・序説

(P23)
当時、日本政府が売春を公認していたことが、制度化された戦時性暴力の免罪符になるかのような主張が近年盛んに行なわれている。しかし、それはまったくの誤りである。当時の国際連盟を中心とした世界レベルでの女性の人身売買禁止に関する議論においても、日本の大新聞の社説においてさえ、公娼制度は非人道的な搾取制度としてその廃止が強く主張されていた。結果的にみれば当時の廃娼運動(公娼制度の廃止を求める社会運動)や社会的な議論は公娼制度の廃止を達成することができなかったが、だからといって社会的なコンセンサスが女性からの性的搾取の肯定にあったということではない。加えて、当事者である遊郭のなかの女性たちも含めて、戦後になるまで日本の女性には選挙権もなく、公娼制度をめぐる政治的な決定過程からは完全に除外されていた。そのように蚊帳の外におかれていた女性たちが、はじめて歴史のなかで公娼制度や遊郭における搾取に団結して抗議を始めたのが一九二〇年代のことであり、ここではそういった女性たちの行動を、それを後押しした社会的な議論とあわせて提示したい。

この本は、廃娼運動における娼妓らの自立の見方についても色んな角度から考察していて結構興味深い内容になっています。
余裕があれば、その辺を紹介したい所ですが。