人は「血縁」の奴隷か、「国籍」の奴隷か

韓国人は韓国系米国人=韓国の国益を最優先すると考えるのね。だから日系米国人=日本の国益を再優先すると思うのだ。現実は日系も韓国系も米国人である以上米国の国益を優先する。そして韓国の外交を懸念するのだ。

http://b.hatena.ne.jp/entry/255439974/comment/the_sun_also_rises

このコメントを見て思い出したことがあります。

以前書いた記事ですが、産経文化人である八木秀次氏の以下の発言。

 八木教授は永住外国人に投票資格を与えたことについて、こう指摘する。
 「外国人は国籍を有する国への国防と忠誠の義務を負っており、いわば外国の潜在的兵士だ。日本の防衛にかかわる陸自配備の住民投票に参加させることは大きな矛盾をはらんでいる」

http://www.sankei.com/politics/news/150215/plt1502150006-n3.html

八木氏が在籍する麗澤大学は学生の2割が外国人留学生ですが、八木氏は彼らを「外国の潜在的兵士」だという目で見ているわけです。

もうひとつは、やはり産経新聞から、松浦肇編集委員による記事(2015年4月6日「【視線】慰安婦問題で横やり許す日系米国人の劣勢…情報を取れなければ「インテリジェンス大国」は無理」)の一節。

 血縁に勝る国境を越えた連帯は見当たらない。国家中央情報局なるものができたならば、まず日系人が情報員候補となるが、母集団そのものが減っては話にならない。

http://www.sankei.com/world/news/150406/wor1504060006-n1.html

こちらは、日系人であれば日本の情報員になって当然と考えているようです。この松浦氏は同じ記事内で戦時中の米国による日系人強制収容に言及しています。

 米国の日系人第二次世界大戦中に強制収容されたが、88年に当時のレーガン大統領が謝罪し、「市民の自由法(通称、日系米国人補償法)」に署名した。米政府は強制収容された日系人に補償金を支払ったうえ、日系人に対する差別をなくす教育基金をつくった。

http://www.sankei.com/world/news/150406/wor1504060006-n1.html

ですが、松浦氏のように「国家中央情報局なるものができたならば、まず日系人が情報員候補となる」などという思考回路の持ち主が日本で一般的だとすれば、米国の強制収容を正当化するだけなんですけどね。

冒頭の自称保守の嫌韓厨は「韓国人」に対して差別的な一般化を行ってますが、言っている内容は“松浦肇説ではなく八木秀次説が正しい”と言っている程度ですね。


そもそも「個人として尊重される」(憲法第13条)ということは、血縁とか国籍とかで縛り付けられることなく、個人として何が正しいかを自分で判断し個人の判断に従って行動する権利を持つということだと私は思いますがね。

何が「国益」で、何が「国益」でないか、は自分で考え判断することであって、必ずしも他者と一致するとは限りませんし、まして他人から教えてもらうことでもありません。場合によっては「国益」よりも優先すべきことだってあるでしょう。
国があってそれに所属する個人があるのではなく、主体的な意志をもつ個人が集まって国が形成される、という考え方を取る限り、当然の話でしかありませんが。

2015.4.6 10:30更新
【視線】

慰安婦問題で横やり許す日系米国人の劣勢…情報を取れなければ「インテリジェンス大国」は無理 ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇

 「日本政府も情報機関をつくるべきだ」との意見が機会あるごとに噴出するが、あえて必要条件を指摘するなら2つある。日系人社会支援と外国語教育の強化である。
 情報産業に所属する人間として、世界に散らばる日系人の存在はありがたい。政府関係者だろうが、企業人だろうが、「同じ日本から来た」というだけで、地元社会に組み込まれている人物から「ナマ」の情報を取りやすくなるからだ。そんな頼りになる日系米国人から、先だってニューヨークで起きた事件のあらましを聞いた。
 米国内の日系人団体が、慰安婦問題に関する討論会を開こうとした。幅広い人材を招致して多角的な意見を取り込むという、日系人らしい公平を期した設定である。
 ところが、である。事前に察知した韓国系米国人らが討論会に合わせて抗議デモを開こうとした。デモが会場付近のテナントに予告されると、「面倒はご免こうむりたい」とビルのオーナーからの申し入れがあり、討論会は見送りが決まった。
 「圧力に屈するな」と日系人団体を非難するのは、酷である。多勢に無勢ではかなわない。
 米調査団体のピュー・リサーチ・センターによると、2010年時点で日系米国人の数は80万人。一方の韓国系米国人の数は、140万人もいる。ちなみに、中国系米国人は350万人だった。
 増加率をみると、格差は如実である。1990年と比較すると、韓国系米国人は約7割増、中国系米国人だとほぼ倍増なのだが、日系人は1割を超える減少だ。
 米国の日系人第二次世界大戦中に強制収容されたが、88年に当時のレーガン大統領が謝罪し、「市民の自由法(通称、日系米国人補償法)」に署名した。米政府は強制収容された日系人に補償金を支払ったうえ、日系人に対する差別をなくす教育基金をつくった。
 やっと平等権を獲得したのに、日系人が減るのはなぜなのか? 米国全体の人口は「市民の自由法」が成立した時点から約3割増えており、日系人社会の縮小は時代の流れに逆行しているようにみえる。
 理由を聞くと、「日本は二重国籍の取得が厳しいから」と返ってきた。「日系人の家族に生まれた子供が日本国籍を諦める割合は他の民族に比べて多く、国勢調査のようなものにも『日系人』と申告しなくなる」ためだという。
 血縁に勝る国境を越えた連帯は見当たらない。国家中央情報局なるものができたならば、まず日系人が情報員候補となるが、母集団そのものが減っては話にならない。
 「東京から来たボスとの意思疎通がうまくいかない」。大手邦銀のニューヨーク事務所で働く米国人が吐露していた。原因は「ボス」の英語力にあるというが、こんな告白は数え切れないくらい聞いた。
 将来のネットワークを構築できる米国の有力大学では、日本企業が派遣する社員の数が激減し、韓国や中国勢に圧倒されている。若者が留学そのものに関心を失ってきたこともあるが、関係者によると最大の理由は英語試験による門前払いである。
 外交官ですら英語をはじめとする外国語力に改善余地がある。情報活動は概して、「収集→編集→判断」という3つの流れがあるが、語学力が拙ければ、最初の段階でつまずいてしまう。
 文部科学省が、高校生の英語力が政府目標に届いていない調査を最近発表した。米国留学に必要な英語運用能力テストにおいて、日本人学生の成績はアジアにおいて下位にあり、韓国、中国をも下回る。
 「インテリジェンス立国を目指せ」という目標設定はいいが、情報を取れなければ何も始まらない。(まつうら はじめ)

http://www.sankei.com/world/news/150406/wor1504060006-n1.html