“核戦力は減少しつつも近代化が継続”という論点がNHKを通すと「全体では減少も中国は増加」に変わってしまう

SIPRIのサイトを見ると“中国の核兵器が増えた”とかにほとんど力点が置かれていません。

World nuclear forces—reductions and modernization continue

At the start of 2015, nine states—the United States, Russia, the United Kingdom, France, China, India, Pakistan, Israel and the Democratic People’s Republic of Korea (DPRK, or North Korea)—possessed approximately 15 850 nuclear weapons, of which 4300 were deployed with operational forces. Roughly 1800 of these weapons were kept in a state of high operational alert.

The total number of nuclear warheads in the world is declining, primarily due to the USA and Russia continuing to reduce their nuclear arsenals, albeit at slower pace compared with a decade ago. At the same time, both countries have extensive and expensive long-term modernization programmes under way for their remaining nuclear delivery systems, warheads and production.

The nuclear arsenals of the other nuclear-armed states are considerably smaller, but all are either developing or deploying new nuclear weapon systems or have announced their intention to do so. In the case of China, this may involve a modest increase in the size of its nuclear arsenal. India and Pakistan are both expanding their nuclear weapon production capabilities and developing new missile delivery systems. North Korea appears to be advancing its military nuclear programme, but its technical progress is difficult to assess based on open sources.

‘Despite renewed international interest in prioritizing nuclear disarmament, the modernization programmes under way in the nuclear weapon-possessing states suggests that none of them will give up their nuclear arsenals in the foreseeable future’, says SIPRI Senior Researcher Shannon Kile.

Country Deployed warheads Other warheads Total 2015 Total 2014
USA 2080 5180 7260 7300
Russia 1780 5720 7500 8000
UK 150 65 215 225
France 290 10 300 300
China 260 260 250
India 90-110 90-110 90-110
Pakistan 100-120 100-120 100-120
Israel 80 80 80
North Korea -- -- 6-8 6-8
Total 4300 11545 15850 16350
http://www.sipri.org/media/pressreleases/2015/yb-june-2015

“中国の核兵器が増加した”関連の件は、「the other nuclear-armed states」として「all are either developing or deploying new nuclear weapon systems or have announced their intention to do so. 」に関連して、「In the case of China, this may involve a modest increase in the size of its nuclear arsenal.」と書いている程度です。
「a modest increase」つまり「ささやかな増加」と評しているわけで、核装備の近代化の影響だろうと書いているに過ぎません。
実際、中国の核兵器は250から260に10個“も”増えましたけど、アメリカとロシアの核兵器保有数はそれぞれ7000発以上で比較するのも馬鹿らしくなるほどの差があります。イギリスは225から215に10個“も”減りましたけど、中国との保有数で大差ありませんし、フランスは300発と中国よりも持っています。
もちろん、10個だから増えてもいいわけじゃありませんけど、核問題として考えるなら、アメリカやロシアが「both countries have extensive and expensive long-term modernization programmes under way for their remaining nuclear delivery systems, warheads and production.」という状況であることの方が重要で、SIPRIはそう考えたからこそ、タイトルを「World nuclear forces—reductions and modernization continue」としたのでしょう。

ところが、籾井NHKにとっては、アメリカやロシアが核戦力を近代化していることは大した問題ではないようで、中国が増加した方が問題だとみなしているようです。まあ、中国敵視政策を推進する安倍政権と違う見解をNHKでは報じられませんので、まあしょうがないんでしょうね。

世界の核弾頭 全体では減少も中国は増加

6月16日 4時04分
世界の核保有国による核弾頭の数は合わせて1万5850発と推計され、アメリカとロシアの保有数が減少したことで、全体としては去年より減ったものの、中国では増加したなどとする分析をスウェーデンの研究機関が明らかにしました。
世界の軍事情勢を分析しているスウェーデンストックホルム国際平和研究所が15日発表した統計によりますと、世界の核弾頭の数はことし1月の時点で1万5850発と推計され、去年よりおよそ500発減少したということです。
これは、ロシアとアメリカの保有数が核弾頭などを削減する2国間の軍縮条約に基づいて減少したことが主な要因ですが、10年前と比べて減少のペースは遅くなっていると指摘しています。
また、NPT=核拡散防止条約に加盟するほかの核保有国のうち、イギリスでは10発減り、フランスは前年並みだった一方、中国では10発増えたとしています。
一方、NPTに加盟していないイスラエル、インド、パキスタンは80発から120発を保有して前年並みで、北朝鮮は6発から8発を保有していると推計しています。
ストックホルム国際平和研究所は「インドやパキスタンでは核物質の製造能力が拡大している一方で、中国は小型化により弾頭数が増えている。核保有国はこうした高度化も進めており、近い将来、核が放棄されることはないことを示している」とコメントしています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150616/k10010115721000.html

5大国の国別の保有数には言及せず、差分のみ報じるのも安倍忖度路線のNHKとしては当然でしょうね。