中国の通貨スワップ外交と人民元の国際化
人民元主要通貨入り:IMF、お墨付き 欧州が後押し(毎日新聞 2015年11月15日 09時30分)
IMF 人民元を世界の主要な通貨に(11月14日 8時51分)
この件について何となく否定的な印象での報道が多いようですが、ここ数年ずっと人民元の国際化に向けた動きが進んでいたわけですから、日米、特に日本が事実上の反対をしたところで停められるようなものではありません。
人民元の国際化の手段として中国は各国との通貨スワップ協定を進めてきたわけですが、日本のネット民の反応は侮蔑・嘲笑のみで意味をちゃんと理解できているものはほとんどありませんでした。
“日本も通貨スワップ協定は結んでいる”的な反論をしてきた人もいましたが、中国の通貨スワップ協定は米ドルを介さず貿易決済に利用できる点で日本と異なっています。通貨スワップ協定の取極め額が事実上、外貨準備の上乗せとしての効果を持つわけです。
合意日 | 相手 | スワップ枠 | 期間 | 円相当額*2 |
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2008年12月12日 | 韓国 | 1800億元/38兆ウォン | 3年 | 3.42兆円 |
2009年1月20日 | 香港 | 2000億元/2270億香港ドル | 3年 | 3.80兆円 |
2009年2月8日 | マレーシア | 800億元/400億リンギット | 3年 | 1.52兆円 |
2009年3月11日 | ベラルーシ | 200億元 | 3年 | 3800億円 |
2009年3月23日 | インドネシア | 1000億元/175兆インドネシアルピア | 3年 | 1.90兆円 |
2009年4月2日 | アルゼンチン | 700億元/380億アルゼンチンペソ | 3年 | 1.33兆円 |
2009年4月20日 | 韓国(延長) | 1800億元/38兆ウォン | 3年 | 3.42兆円 |
2010年6月9日 | アイスランド | 35億元/660億アイスランドクローナ | 3年 | 665億円 |
2010年7月23日 | シンガポール | 1500億元/300億シンガポールドル | 3年 | 2.85兆円 |
2011年4月18日 | ニュージーランド | 250億元/50億ニュージーランドドル | 3年 | 4750億円 |
2011年4月19日 | ウズベキスタン | 7億元/1670億スム | 3年 | 133億円 |
2011年5月6日 | モンゴル | 50億元/1兆トゥグルク | 3年 | 950億円 |
2011年6月13日 | カザフスタン | 70億元/1500億テンゲ | 3年 | 1330億円 |
2011年10月26日 | 韓国(拡大) | 3600億元/64兆ウォン | 3年 | 6.84兆円 |
2011年11月22日 | 香港(拡大) | 4000億元/4900億香港ドル | 3年 | 7.60兆円 |
2011年12月22日 | タイ | 700億元/3200億バーツ | 3年 | 1.33兆円 |
2011年12月23日 | パキスタン | 100億元/1400億パキスタンルピー | 3年 | 1900億円 |
2012年1月17日 | UAE | 350億元/200億ディルハム | 3年 | 6650億円 |
2012年2月8日 | マレーシア(拡大) | 1800億元/900億リンギット | 3年 | 3.42兆円 |
2012年2月21日 | トルコ | 100億元/30億トルコリラ | 3年 | 1900億円 |
2012年3月20日 | モンゴル(拡大) | 100億元/2兆トゥグルグ | 3年 | 1900億円 |
2012年3月22日 | オーストラリア | 2000億元/300億豪ドル | 3年 | 3.80兆円 |
2012年6月26日 | ウクライナ | 150億元/190億グリブナ | 3年 | 2850億円 |
2013年3月7日 | シンガポール(拡大) | 3000億元/600億シンガポールドル | 3年 | 5.70兆円 |
2013年3月26日 | ブラジル | 1900億元/600億レアル | 3年 | 3.61兆円 |
2013年6月22日 | イギリス | 2000億元/200億ポンド | 3年 | 3.80兆円 |
2013年6月27日 | 韓国(延長) | 3600億元/64兆ウォン | 3年 | 6.84兆円 |
2013年9月9日 | ハンガリー | 100億元/3750億フォリント | 3年 | 1900億円 |
2013年9月11日 | アイスランド(延長) | 35億元/660億アイスランドクローナ | 3年 | 665億円 |
2013年9月12日 | アルバニア | 20億元/358億レク | 3年 | 380億円 |
2013年10月1日 | インドネシア(延長) | 1000億元/175兆インドネシアルピア | 3年 | 1.90兆円 |
2013年10月10日 | ECB | 3500億元/450億ユーロ | 3年 | 6.65兆円 |
2014年4月25日 | ニュージーランド(延長) | 250億元/50億ニュージーランドドル | 3年 | 4750億円 |
2014年7月21日 | スイス | 1500億元/210億スイスフラン | 3年 | 2.85兆円 |
2014年8月21日 | モンゴル(拡大) | 150億元/4.5兆トゥグルグ | 3年 | 2850億円 |
2014年9月16日 | スリランカ | 100億元/2250億スリランカルピー | 3年 | 1900億円 |
2014年10月11日 | 韓国(延長) | 3600億元/64兆ウォン | 3年 | 6.84兆円 |
2014年10月13日 | ロシア | 1500億元/8150億ルーブル*3 | 3年 | 2.85兆円 |
2014年11月3日 | カタール | 350億元/208億カタールリヤル | 3年 | 6650億円 |
2014年11月8日 | カナダ | 2000億元/300億カナダドル | 3年 | 3.80兆円 |
2014年11月22日 | 香港(延長) | 4000億元/5050億香港ドル | 3年 | 7.60兆円 |
2014年12月14日 | カザフスタン(延長) | 70億元/2000億テンゲ | 3年 | 1330億円 |
2014年12月22日 | タイ(延長) | 700億元/3700億バーツ | 3年 | 1.33兆円 |
2014年12月23日 | パキスタン(延長) | 100億元/1650億パキスタンルピー | 3年 | 1900億円 |
前回の「中国の通貨スワップ外交(2013年6月)」からも結構状況が進んでいますね。
2013年以降、イギリスやEU、スイスとも協定を締結しています。
面白いのはウクライナとロシア双方と結んでいる点ですが、昨今のウクライナ問題以降どうなっているのかはよくわかりません。
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=26474アジア・マンスリー 2015年4月号人民元の国際化と東京市場の国際金融センター化
2015年04月01日 清水聡
人民元の国際化に関しては、当面、着実な進展が続くものと考えられる。東京市場が国際金融センター化を目指すためには、人民元オフショア・センターとしての整備を図ることが不可欠であろう。■人民元の国際化の進展
中国は、世界金融危機以降、基軸通貨である米ドルへの不信感を基本的な動機として、人民元の国際化戦略を推進している。戦略の柱は、第1に、貿易における人民元建て決済の拡大である。これは2009年7月に本格的に開始され、人民元建て決済額は2009年の36億元から2014年には6兆5,500億元に拡大した。貿易における人民元建て決済の比率は、約25%に達している。そのほとんどは香港経由で行われており、香港の人民元建て預金残高は2014年末に1兆元を突破した。また、取引の利便性を高めるために人民元と各国通貨の直接交換取引が開始されており、その数は2014年末現在、香港ドル、韓国ウォン、日本円など11通貨に達している。
第2に、人民元の流動性供給を目的とする通貨スワップ協定の締結である。現在、28カ国・地域との間で、計3兆元を超える協定が締結されている。
http://jp.wsj.com/articles/SB12706435818283254423204580213102427236006中国とロシアの通貨スワップ協定、エコノミストはこうみる
中国の李克強首相とロシアのメドベージェフ首相 Zuma Press .By
CHIARA ALBANESE 2014 年 10 月 14 日 10:09 JST
ウクライナの政情不安が続き大半の国がロシアと距離を置くなか、中国がロシアに接近している。
中国人民銀行(中央銀行)とロシア中央銀行は13日、1500億元(約2兆5700億円)の通貨スワップ協定に調印した。人民元の海外での使用を促進すると同時に、ロシアのドルへの依存を軽減する狙いがある。これは両国政府が同日締結したエネルギー、金融、技術などに関する約40の協定の一部だ。
ルネッサンス・キャピタルのエコノミスト、オレグ・コウズミン氏は「これは良い協定だ。おそらく(中国とロシアは)二国間で締結したガス協定に関する決済基盤を整えようとしているのだろう」と述べた。
中ロ政府は長期間の協議を経て今年5月、ロシア産天然ガスの中国への供給について巨額の契約を締結した。
通貨スワップの期限はまず3年とするが、延長の可能性もある。スワップ協定の導入で両国企業は人民元・ルーブルの直接取引が可能になり、ロシア企業の米ドル依存軽減につながる。
コウズミン氏は「ドルを使わない貿易決済の推進という政策面でも、中ロ間の協調深化という面でも、望ましい協定だ」と述べた。
協定締結には中ロの貿易・経済関係強化の狙いがあり、人民元の国際化にも貢献するとみられる。
HSBCの中国・人民元事業開発部門責任者、霍蓉蓉氏は「人民銀行との通貨スワップ協定調印は、流動性を支える『保険』として機能するだけでなく、人民元が中銀レベルでの世界的な準備通貨となった場合の確かな備えにもなっている」と述べた。
同氏によれば、中国とロシアは特にエネルギー面での貿易のつながりが強いため、通貨スワップ協定の締結は理にかなうもので、二国間の全体的な元建て取引の活発化につながるだろう。
マッコーリーのストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏は「これは他の新興国との間で既に実施中の取り組みの一環だ。中国政府はこうした措置を通じて人民元の国際化を推し進めたい構えだ。2〜5年での達成を目指している」と語った。
中国は人民元をドルやユーロなどと同等の主要通貨に育てたい考えで、英イングランド銀行や欧州中央銀行(ECB)など、20以上の中央銀行とすでに同様の協定を締結した。