これ、中国政府が資金拠出を拒否するのは当たり前だと思うんだけど・・・

この件*1

2016年3月26日 18時06分

中国、植林基金へ資金拠出拒否 政府、単独で90億円出資へ

 故小渕恵三元首相が提唱し、中国での植林活動を支援する「日中緑化交流基金」に関し、日本政府が事業を継続するため中国政府に資金の拠出を要請したが、拒否されていたことが分かった。外交筋が26日、明らかにした。日本政府は「友好促進のため、事業を続ける必要がある」(関係者)として、2015年度補正予算で3月末までに約90億円を出資する。
 事業は事実上の対中支援として、日本単独で行っていた。中国の経済大国化を受け、共同で取り組むのが望ましいとの判断から、中国側に出資を働き掛けた。安倍首相に近い閣僚経験者は予算執行に反対。「無償援助に等しい」と疑問視する声も出ている。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016032601001720.html

この記事だとまるで、中国支援のための日中共同事業に対して、日本だけが資金を出して中国は拒否した、としか読めませんよね。当然、読者は中国に対する反感とか蔑視を募らせることになるでしょうが、調べて見ると、この記事は説明が明らかに足りていないんですよね。

「日中緑化交流基金」が助成金を出している相手は日本の民間団体

日中緑化交流基金の説明。

助成の対象となる事業

中国において植林緑化活動(産業目的の植林を除く)を行う我が国の民間団体等が、中国のカウンターパートとともに共同して行う次の森林造成活動に対し助成します。

http://www.green.or.jp/nichu/kikin.html

外務省の説明。

2 資金助成の仕組み

(3)中国の民間団体等とペアになって中国で植林緑化事業を行おうとする日本の民間団体等(地方公共団体を含む。)が,助成を申請することができる。事務局は,毎年公募期間を一定期間設け,この間に応募のあった事業に対する審査を経て助成対象事業を決定し,日本側の事業主体団体(申請団体)に対し助成金を支払う。日本側団体はこれを受けて,中国側パートナー団体と共に植林緑化事業を行い,事務局に対し事業報告を提出することになっている(助成の仕組みについては日中民間緑化協力委員会による助成システムを参照(その1 / その2))。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/green.html

要するに、日本の民間団体に対して助成金を出す為の基金なんですよね。そして中国側には植林緑化活動をやっている団体があります。
ですから、日本側が「中国の経済大国化を受け」て「中国側に出資を働き掛け」るくらいなら、日本政府が単純に日本の民間団体に対する助成する額を減らせば済む話です。それでも中国側が実際に中国での植林緑化事業に関わっている日本の民間団体に協力を求めたいのなら中国側が費用を負担してでも招請するでしょう。

中国側としては植林緑化事業をするためには林業局に予算をつけるのが基本で、日本側に技術指導を求めたいなら林業局などから直接日本の民間団体に有償で依頼することもできるでしょう。わざわざ中国政府が日本国内の基金を経由して日本の民間団体に拠出する必要があるとも思えません。

例えば、中国が日本の震災復興のための基金を設立したとして

仮に、中国政府が日本の震災復興を支援する中国国内の民間団体に助成金を出す基金を設立したとしましょう。日本は経済大国だから、日本政府は中国国内の基金に資金を拠出しろ、と言われたら、ハイ分かりましたと言って出すんでしょうか?
まず出さないと思うんですけどね。そこに出すよりは、国内の関連団体に出すでしょうし。
中国だって同じ事情だと思うんですがね。

設置の経緯

1 設置の経緯

(1)1999年7月の小渕総理(当時)訪中時に,1998年の大洪水を教訓として全国規模の植林緑化運動に取り組んでいる中国に対する民間団体等による協力を支援するため,100億円規模の基金の設立を小渕総理が提案。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/green.html

こういう経緯の基金に対して「日本政府が事業を継続するため中国政府に資金の拠出を要請」ってどうなんでしょうねぇ。