2016年6月8日〜9日にかけての尖閣諸島(釣魚島)接続水域への日中双方の軍艦侵入事案に関して、もう少し注目されるべき点

日経で以下のような記事があります。

「狙いは日本艦排除」 中国軍艦、尖閣進入の深刻さ

編集委員 中沢克二
(略)
 6月8日午後9時50分、ロシア艦3隻が南から接続水域に入り、北に向かっていた。監視していた海上自衛隊護衛艦「はたかぜ」がこれを追尾する。当然、すぐに接続水域に入った。ロシア艦の動きに目を奪われているが、中国側が注視していたのは実は日本の「はたかぜ」の動きだ。
 やや離れた尖閣北方海域にいた中国艦は直ちに反応した。そして一目散に接続水域を目指す。尖閣北方で監視中だった別の海自護衛艦「せとぎり」は危機感を抱き、中国艦の動きを追い始めた。このままでは接続水域に入るのは必至だ。強く警告したが、中国艦は応じない。
 この時、「はたかぜ」は接続水域内を北東に向けて航行中だ。これを知る中国艦が動きを止めるはずはない。ついに久場島の北東の接続水域に進入した。これを監視する「せとぎり」も接続水域内を航行し、今度は中国艦が万が一にも領海に侵入することがないよう警告・監視しながら追尾する。
 日中ロ3カ国の艦船6隻が至近距離で入り乱れながら並走――。大正島北西の接続水域内では、かつてない危険な事態が出現した。だが最後はロシア艦が接続水域を抜け、日中の艦船も外に出る。ひとまず危機は去った。
(略)
(強調引用者)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO03559330T10C16A6000000/

この経緯を見る限り、日本と中国のうち、先に尖閣諸島(釣魚島)の接続水域に進入したのは、日本側の護衛艦「はたかぜ」です。
尖閣諸島(釣魚島)は日中双方が領有権を主張している係争地域です。

中国側から見れば、中国が領有権を主張している島の接続海域に日本の軍艦が侵入したわけですから中国側も軍艦を乗り入れて対抗せざるを得ません。

日本側護衛艦が先に接続海域に入ったことがあまり明らかになっていない時点で「中国が軍艦を入れたなら、日本も軍艦を入れないといけない」と主張している人もいますが、これは考え方としては正しいと言えます。実際、領有権を争っている当事国にとっては互いに相手国の実効支配実績を積み上げさせないことが「ゲームのルール」です(中国側が「黙契」と呼んでいるのはこのこと)。
とすれば、中国艦の尖閣諸島(釣魚島)接続水域進入を誘発したのは、日本艦の尖閣諸島(釣魚島)接続水域進入であったと言えます。

今回、中国側が軍艦を尖閣諸島(釣魚島)接続水域に進入させたことに対して大騒ぎしている人たちは、日本護衛艦が先に尖閣諸島(釣魚島)接続水域に進入したことに対して、あまりにも無関心すぎるように思いますね。