鳥越氏に対して年齢や病気にするデマを交えた誹謗中傷が広まっているのが今の日本のレベル

いずれもアゴラ。

まず、池田信夫

野党は人命より党利党略が大事なのか --- 池田 信夫(アゴラ 7月19日(火)16時40分配信 )

大腸癌の手術は2005年、肝臓癌は2009年ということになる。ステージ4というのは末期癌である。その後3ヶ所に転移したのであれば、癌がさらに進行しているわけだ。手術後の生存率については、国立がん研究センターhttp://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160120.html)の図のようなデータがある。
これによれば、大腸癌を切除した場合は10年生存率は69.8%とかなり高いが、肝臓癌の場合は10年生存率は15.3%。つまり肝臓癌の手術から7年後の鳥越氏が知事の任期4年をまっとうできる確率は15%以下である。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160719-00010010-agora-pol

まず、基本的な医学知識の誤りがあります。
確かに鳥越氏は肝臓にもがんを発症してますけど、これは肝臓に転移した“大腸がん”(転移性肝癌)であって、肝臓がんではありません。

がん患者鳥越俊太郎 2011 内容
2005年9月、内視鏡検査で大腸がんを「目撃」。腹腔鏡下手術を受け、仕事に復帰するも、肺と肝臓への転移を繰り返し、これまでに4回の手術を受ける。大腸がんのステージは「4」。告知、手術、抗がん剤治療、転移、終わらぬ戦い―そのとき鳥越は、家族は、医者は何を考え、どう動いたか。事実を追い詰めることを職業としている「取材者・鳥越」が、「がん患者・鳥越」を徹底的に観察し、記録した、がん患者の“心”と“体”の全記録。

転移性肝癌と原発性肝癌では性質が異なりますので、原発性肝癌のデータをもって転移性肝癌の予後を語るのは間違っています。

國土典宏教授の「肝がん治療の誤解を解く」(2) 原発性と転移性の違いは?

転移性肝がんも原発性肝がんと同じように肝臓にしこりを作るわけですが、腫瘍としての性質は肝細胞がんと大きく異なり、原発巣の性質を持ちます。実際に顕微鏡で観察しても、原発巣と同じがん細胞の形をしています。例えば、大腸がんの肝転移(転移性肝がん)は大腸にある原発巣(大腸がん)と同じ細胞でできており、がんとしての性質も大腸がんと同じで肝細胞がん(原発性肝がん)とは違うのです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201010/100527.html

池田信夫氏が参照しているがんセンターのサイトで示されている生存率は、第1癌を算定対象としています*1ので、鳥越氏の転移性肝癌について、肝臓がん*2の生存率を当てはめても意味がありません。要するに池田氏は、性質の違う癌の生存率を勝手に当てはめて、的外れな誹謗中傷をしているに過ぎません。

また、肝臓がんの生存率の見方も誤っています。
「肝臓癌の場合は10年生存率は15.3%。つまり肝臓癌の手術から7年後の鳥越氏が知事の任期4年をまっとうできる確率は15%以下」と池田氏は言っていますが、生存率は診断日や入院日を起算日としていて、その時点で生存している患者を対象としています。既に7年経過しているのであれば、7年経過した時点において生存している患者集団を改めて100%とした上で計算しなおす必要があります。
簡単に言えば、池田氏は過去7年以内に肝臓がんで既に死亡した患者も含めた集団を分母として、3年後の生存率は15%だと言っているわけです。鳥越氏は7年経った現在生存しているわけですから、起算日から7年以内に死亡することはありえません。
強いて計算するなら、肝臓がんの7年生存率25%を用いて、7年時点で生存している患者が3年後の10年時点でも生存している確率を計算すると言う方法があります。極簡単に計算するなら、7年生存率25%を分母、10年生存率15%を分子として、約60%となります。
仮に鳥越氏が、2009年に原発性肝癌の手術を受けていたとしても、「鳥越氏が知事の任期4年をまっとうできる確率は15%以下」という池田信夫説はデタラメということです。

実際には鳥越氏の肝癌は転移性肝癌であって原発巣は大腸がんですから、用いるなら大腸がんの生存率を使うべきです。
大腸がんの生存率は、5年経過以降はほぼ70%から変わらず、肝転移切除後の生存率も5年で51%、10年で35%という報告*3もあり、術後5年生存していれば、その後のリスクは大きく減ることがわかっています。
鳥越氏の場合、最後の手術から7年再発がないのですから、既に癌再発のリスクを懸念するような状況とは言えないと思いますね。

池田信夫氏の主張は要するに、“癌治療歴のある人は責任ある地位につけるな”、というがんサバイバーに対する差別の煽動に過ぎません。


次は八幡和郎。

鳥越氏の超高齢立候補は美談でなく究極の無責任 --- 八幡 和郎(アゴラ 7月19日(火)16時30分配信 )

任期全うできない可能性が大きい
癌をおして史上最高齢の知事に立候補する元気があるのは感動ものだ。しかし、議員ならまだしも知事という大きな組織の長で、任期が全うできなければ数十億円かけて再選挙をしなくてはならない仕事に就こうというのは、美談でなく醜悪なスキャンダルだと思う。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160719-00010004-agora-pol&pos=3

要するに高齢だから都知事にすべきではないという主張です。
しかしそもそも、2011年の都知事選で立候補していた石原慎太郎氏は、今の鳥越氏より2歳上の78歳だったはずです(都知事選2011年4月、石原慎太郎1932年9月生)。2012年の都知事選では、77歳の笹川堯氏が立候補していますし、2014年の都知事選では76歳の細川護熙氏が出ています。いずれの選挙にも80歳超のドクター中松が出てたりもします。
いずれも年齢が問題にされたとは聞きません。
今回の鳥越氏に対して“だけ”年齢を理由に批判するのであれば、ためにする批判としか言いようがありませんね。

当選して、さっそくリオデジャネイロ五輪閉会式にファーストクラス使わずに行って、遅延などいろいろのハプニングも予想されるなかで、無事に五輪旗を受け取り帰ってくることを無事できるか怪しいものだ。
また、副知事の選任は少数与党の場合には、議会の同意が必要だから、だいたいもめるのが普通だ。しばらく三人の副知事がまったく空席で、その助けなしに一人で仕事をしなくてはならない可能性もかなり高い。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160719-00010004-agora-pol&pos=3

これなんかは要するに、鳥越氏が都知事になった場合、都議会自民党などは鳥越氏を殺すつもりでこういった妨害行為を行うということですよね。
八幡氏の言っていることは、都議会多数派による高齢都知事に対するパラハラの煽動としか言いようがありません。
醜悪なのはどっちなのか、と言いたいですね。


鳥越俊太郎氏は知事の座より命を大事に --- 池田 信夫(アゴラ 7月15日(金)16時40分配信)」はもっとひどかった。

ステージ4というのは末期癌で、大腸癌の場合は5年生存率は15%、手術しても17.9%とされている。鳥越氏が手術したのは11年前だというから、この17.9%の中に入っているわけだが、他に3ヶ所も転移しており、5年生存率は肺癌が11.6%、肝臓癌が19.9%である。この積をとると、鳥越氏の生存率は0.3%という奇蹟的な数字だ。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160715-00010012-agora-pol

池田信夫は真性のバカだなぁ・・・。

*1:http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/sisin.html

*2:第1癌が肝臓がんですから、基本的に原発性肝癌を指す。

*3:Suzuki S, Sakaguchi T, Yokoi Y, et al: Impact of repeat hepatectomy on recurrent colorec tal liver metastases. Surgery 2001; 129: 421−428