都知事選雑感3、鳥越氏の敗因分析よりも小池氏の勝因分析をする方が前向きだと思う

反省とか自己批判とかもいいけど再起を視野に入れた前向きなものであってほしいという思い。
リベラル内部で戦犯探しに躍起になるようではお話になりません。それこそ一番喜ぶのは安倍政権であり、日本会議ですよ。
実際、リベラル内部での内紛を煽っている連中には、安倍支持者や日本会議系右翼が少なからずいるでしょうしね(宇都宮氏が立候補したときアカ呼ばわりして侮辱してたくせに辞退した途端、手のひらを返したように宇都宮氏を“高評価”し始めた連中がかなりいたような感じです)。
まあ、負けたのは残念ですし敗因分析は必要なことですが、それは次の選挙でより勝てる見込みを増すための分析でなければ意味がありません。
その意味では戦犯探しや吊し上げはむしろ逆効果でしょう。

都知事選の敗因

一言で言えば準備不足で、これには候補者選定、野党間政策調整、ネガキャン対策、選挙戦略全て含まれます。
以下、素人の適当な考えです。

候補者選定

候補者選定については、宇都宮氏が指摘するように公開討論などで選ぶという手法もあるでしょうし、その方が透明性を増し最終的な候補の知名度を上げるという効果も期待できたでしょうが、今回は舛添前知事の突然の辞任から降って沸いた都知事選でしたから時間的に難しかったとも言えます。
しかし、首都圏では栃木県知事選が今年ですし、来年は千葉・茨城県知事選や都議選が控えてますから、それらに向けた統一候補選定のための公開討論などは有効かも知れません。

野党間政策調整

参院選からの流れで都知事選でも野党共闘が成立しましたが準備不足の観は否めません。特に民進党内部では不満が強かったようで国と地方では対立構造が異なることも踏まえると辛うじてでも野党共闘をまとめ上げた岡田代表の手腕は評価されて良いと思います。しかし、もっと野党間の調整に時間をかける余裕があれば、より良い候補者と政策協定を練り上げることが出来たかも知れません。野党共闘を効果的に機能させるためには、選挙戦に突入するずっと前から野党間の意志の疎通を図り、候補者選びと政策協定の素地を作っておくことが必要と思います。
政策協定などは地方であれば地方の事情を踏まえた政策調整を討論や座談会を通じて、議員だけでなく野党共闘に協力する識者・市民も交えて行うと良いように思います。地方であれば、発信力の弱い個々の市民が抱える問題についても取り上げることが出来るでしょうし、政党や支援団体を通して全国的な問題として訴えるべき問題もすくい上げることができるでしょう。
野党の変容に伴い声を挙げれなかった市民の声が拾われるのであれば、野党にとっても市民にとっても有益のはずです。

ネガキャン対策

これは候補者の身体検査が大事ですね。特に野党は現在攻撃されやすい社会状況です。小池氏が差別団体と親密であったとしてもそれはスキャンダルにならず選挙にも影響せず、鳥越氏の女性問題は致命傷になっています。ダメコンの技術も重要ですが事案によってはダメコンでどうにかできるレベルを容易に超えますから、その辺を見極める必要があります。これも選挙前から討論会や意見交換を行っていれば候補者候補の身上をある程度測れると思います。

なお、女性問題以外の反鳥越キャンペーンもかなり広範に展開されています。
・がん病歴に関するもの(小池百合子池田信夫小林よしのりら)*1
・年齢に関するもの(八幡和郎ら)*2
認知症呼ばわり(高須、渡瀬裕哉ら)
・学歴に関するもの(netgeek
・空襲経験に関するもの(山本弘ら)*3
・怨恨(東国原英夫ら)
・因縁(橋下徹ら)
病歴、年齢、認知症呼ばわり、学歴、空襲経験に関するネガキャンについては候補者と支援側が緊密で意思の疎通がスムーズであれば効果的な反論が出来たはずだと思います。上手く用いれば“理不尽な攻撃を受けている”というイメージを訴えることも出来たでしょう(今回は女性問題があったので難しかったでしょうが)。

選挙戦略

女性問題が鳥越氏の致命的なイメージ低下につながったのに対し、小池氏は極めて効果的にイメージ戦略を打っています。自民党議員のまま、自民党と対立している姿勢を偽装した“小泉劇場メソッド”の使用を皮切りに自民党色とタカ派イメージを封印して、女性候補であることの利用やイメージカラーを使った庶民アピールは上手かったと思います。
緑をイメージカラーにして緑のものなら何でも良いからと呼びかけたあたりなどは素晴らしいですね。買い物帰りの人の野菜などを指して“ありがとうございます”とかは、テレビ的にも使いやすい庶民アピールでしたし、意図して緑色のものを持ち寄った聴衆もいたでしょうが意図せず偶然緑っぽいものを持っていた人も巻き込むことで好意的な印象を有権者に与えたと言えます(故意か偶然か、増田氏ののぼりやたすきのネームも緑色だったりして、増田氏自身が小池氏の応援しているようにも見えたり)。
小池氏の政策や政治傾向を知らない人に対して、極めて有効にアピールできる手法だったと思います。

増田氏の存在は小池氏の自民臭を隠すための効果的な消臭剤だったと言えます。もし増田氏が出馬していなければ、小池氏は自民党代表とみなされ組織票は得たでしょうが無党派層の票は今回ほどは得られなかったでしょう。その意味では、与党分裂が必ずしも野党側に有利に働いたわけではありません。小池氏は、増田氏・鳥越氏に既成政党のレッテルを貼ることでうまうまと無所属を偽装することが出来たわけです。
ただ、これは野党側が使える手段ではありません。強力な組織票とカジュアル右派な空気があり、保守・リベラルで分ければ票が2対1の比率になる状況であることから与党のみが使える手段です。野党側の対抗手段は、組織票の強化と共に無党派層をいかに取り込むかにかかっています。それには小池氏のような与党色を消した与党候補にいかに対抗するかという問題を解決する必要性があります。
なお、無党派層の空気がリベラルに寄っている時に与党側が使う戦略としては、与党本命の他に偽装リベラル候補を仕立ててリベラル側の票を分散させるという手段があります。これら無所属偽装、リベラル偽装に対抗する有効な手段はちょっと思いつきません。せいぜい思いつくのは、今回小池氏が用いたようなイメージ戦略ですね。

まとめ

以上はまあ所詮、選挙の素人が考えたものに過ぎませんので実際に選挙に関わっている人からすれば取るに足らない話ではあるでしょうけど。

いずれにしても野党側としては共闘しなければ、今後も勝てる見込みがほとんどないのは確かでしょうから、いかに有効に機能する共闘の枠組みを作るかという視点が必要で、排除の論理や戦犯探しはほどほどにしてほしいという思いです。