「DV案件でも面会交流させています」ってのはどういう根拠に基づくんだろう?

千田氏がこんなことを言ってまして。

千田有紀‏@chitaponta
離婚後に子どもに会えずに長年辛い思いをされてきた方たちがいらっしゃり、これまでその思いを元に運動されてこられたことは素晴らしいことだと思うのですが、ここ数年は裁判所でむしろDV案件でも面会交流させています。いまは裁判所に申し立てれば、面会交流可能になると思います。
17:17 - 2016年10月29日

https://twitter.com/chitaponta/status/792520842517237760

少なくとも2012年の司法統計では面会交流事件8828件中、認容・成立した件数は5742件で65%程度にすぎません(養育費事件の場合は、18482件中14417件が認容・成立で78%)。
「ここ数年」というのが2012年を含まないとしても、2015年の「家事調停事件の受理、既済、未済手続別事件別件数」では、乙4事件中面会交流に関する調停で既済9173件中成立は5054件(55%)にすぎません*1。同年の審判事件の表でも既済総数1834件に対し、認容は874件(48%)に過ぎません*2 。養育費に関する審判だと既済総数3016件に対し、認容が1776件(59%)です。
これではとても「いまは裁判所に申し立てれば、面会交流可能になる」とは言えないでしょう。

また「DV案件でも」というのもよく分かりません。
子に対するDV・虐待が事実認定されているにも関わらず、面会交流が認められた事例なんてあるんでしょうか?
同居親がDVだと主張しているという事件ならたくさんあるでしょうが、そういう状況下で事実認定すらろくにせずに面会交流を認めない審判が下った事例も聞きますから「DV案件でも面会交流させています」というのは俄かには信じがたい話です。
なんといっても、2015年の面会交流調停の成立率が55%、面会交流審判での認容率が48%ですから、少なくとも統計上は「いまは裁判所に申し立てれば、面会交流可能になる」とは言えないでしょう。

さらに言うなら面会交流の中身も問題で、2012年の統計では面会交流が認容・成立された5742件中、宿泊面会が認められたのはわずか1196件(19%)に過ぎません。頻度は月1回の3564件(47%)が最も多く、月2回以上面会できるのは895件(12%)に過ぎません。
1970年代後半のアメリカを舞台にした「クレイマー、クレイマー」では、親権を失った父親テッドに認められたのは2週間に1度の週末訪問権でした*3。テッドと同程度の面会交流が認められるのは2012年の日本ではわずか12%足らずです。1970年代後半ですらアメリカでは2012年の日本よりも充実した面会交流が認められていたわけです。