スカボロー礁でのフィリピンの漁業を認めた点については中国が仲裁裁判所の判決に従ったということなんだけどそういう評価はしないんだね

この件。

中国「友好のよしみ」 比への対応変更認める

11月1日 1時11分
南シナ海スカボロー礁周辺を実効支配する中国の艦船が、このところフィリピンの漁船に妨害行為を行っていないことについて、中国外務省の報道官は、「友好のよしみから適切な対応を打ち出した」と述べ、対応を変えたことを認めました。
中国は、実効支配している南シナ海スカボロー礁に艦船を派遣して、漁をしようとするフィリピンの漁船に対して妨害行為を行い、近づかせないようにしていました。
しかし、フィリピン政府は先週、中国の艦船が今月25日以降、妨害行為を行っていないことを明らかにし、今月中旬からのドゥテルテ大統領の中国訪問で、両国が関係を改善することで合意したことを受けた対応ではないかという見方が広がっています。
これについて、中国外務省の華春瑩報道官は31日の定例の記者会見で、「中国が、一貫してスカボロー礁を管轄している状況に変わりはなく、変わることもない」と述べ、実効支配の継続を強調しました。
その一方で、「大統領の訪中で、両国の関係は全面的に改善した。この状況の下、大統領が非常に重視する問題について、中国側は、友好のよしみから適切な対応を打ち出した」と述べ、フィリピンの漁船に対する対応を変えたことを認めました。
中国は、南シナ海の問題をめぐって、日本などがフィリピンとの連携を強化することを警戒していて、今回の対応は、先んじてフィリピンとの関係改善を進める狙いがあると見られています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161031/k10010751191000.html

仲裁裁判所判決は「フィリピン漁民には(中国漁民と同様に)スカボロー礁での伝統的な漁業権がある」と結論付けています。

(プレスリリース)
The Tribunal also held that fishermen from the Philippines (like those from China) had traditional fishing rights at Scarborough Shoal and that China had interfered with these rights in restricting access. The Tribunal further held that Chinese law enforcement vessels had unlawfully created a serious risk of collision when they physically obstructed Philippine vessels.

http://thediplomat.com/wp-content/uploads/2016/07/thediplomat_2016-07-12_09-15-37.pdf
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20160715/1468509298

中国側がフィリピン漁船に対してスカボロー礁への接近を容認したというのは、行動として仲裁裁判所判決に従ったと言えます。
以前指摘したように「“無視と宣言しつつ無視した行動は取らない”」という対応を中国側はとっています。仲裁裁判所判決を支持した人たちは本来なら行動として判決を尊重した中国の対応を評価すべきだと思うんですが、「先んじてフィリピンとの関係改善を進める狙いがある」とかしか言えないってのはさすがにどうかと思いますね。
一応言っておきますが、仲裁裁判所判決はスカボロー礁の領有権については判断していませんので、中国側がスカボロー礁の実効支配を続けること自体は判決に抵触しません。