池田信夫にとって、1990年から2011年までの国会議事録を検索して山ほどひっかかる「立憲主義」という言葉は「聞き慣れない言葉」だったらしい

NHKにいて「立憲主義」という言葉が聞きなれなかったって、どんだけ不勉強なんだという話でしかありませんが。
まあ、平たく言えば、池田氏が嫌ってやまないリベラルを潰す行動に出たというだけの話でしょうから、真面目に取り合うだけバカバカしいのですけど、たかが池田信夫でも放置しておけば重大な人権侵害事案を引き起こす危険性があるということは、直近の事例による教訓でもありますからね。

「立憲主義」という欺瞞の終わり(2017年10月03日 06:10 池田 信夫)

その1

池田信夫の捏造は最初から全開です。

希望の党の公認を得られそうにない枝野幸男氏などの左派が「立憲民主党」を結成する。このネーミングは象徴的だ。彼らの最後のよりどころは「立憲主義」。左翼の衰退を象徴するスローガンである。戦後の「革新勢力」の最盛期には、憲法なんか争点になっていなかった。彼らのめざしたのは社会主義だった。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

再軍備が問題となった1950年代には既に護憲が争点になってたのは国会議事録を検索するだけでわかりますが?逆に「社会主義」なんか争点にすらなってません。

その2

それが冷戦の終了で使えなくなり、社会党土井たか子委員長のように「憲法を守れ」というだけの一国平和主義の党になったが、村山首相が自衛隊と安保条約を認め、そのコアもなくなって自滅した。それでも憲法改正に対する拒否感は国民に強かったので、2009年に民主党が政権を取ったときも憲法にはふれなかった。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

池田信夫は、社会党と言ったら土井たか子と村山元首相くらいしか知らないようです。それはともかく、上の2文の構成がめちゃくちゃです。池田説をそのまま解釈すると憲法が争点になったのは、冷戦が終結(1989年*1)してから村山首相が就任するまで*2のわずか5年足らず、ということになります。それがなぜか無くなったら「自滅」するほどの社会党「コア」だという認識もおかしいですよね。
「それでも憲法改正に対する拒否感は国民に強かったので、2009年に民主党が政権を取ったときも憲法にはふれなかった」というのも意味不明です。憲法改正を掲げていた自民党が結党以来50年以上も憲法に触れなかったことには何故か触れず、別に憲法改正を掲げてもいない民主党が政権に就いたときの話をするのは何なんでしょう?

そしてそもそも、民主党は政権を取った2009年のマニフェスト憲法に触れています。

国民の自由闊達な憲法論議
憲法とは公権力の行使を制限するために主権者が定める根本規範である」というのが近代立憲主義における憲法の定義です。決して一時の内閣が、その目指すべき社会像やみずからの重視する伝統・価値をうたったり、国民に道徳や義務を課すための規範ではありません。民主党は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という現行憲法の原理は国民の確信によりしっかりと支えられていると考えており、これらを大切にしながら、真に立憲主義を確立し「憲法は国民とともにある」という観点から、現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改めることを国民の皆さんに責任を持って提案していきます。民主党は2005年秋にまとめた「憲法提言」をもとに、今後も国民の皆さんとの自由闊達な憲法論議を各地で行ない、国民の多くの皆さんが改正を求め、かつ、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していきます。

http://archive.dpj.or.jp/special/manifesto2009/txt/manifesto2009.txt

「2009年に民主党が政権を取ったときも憲法にはふれなかった」というのは池田信夫のウソです。

その3

ところが2014年に安保法制が国会で審議されたころから、朝日新聞立憲主義という聞き慣れない言葉を使い始めた。これは具体的には1972年の集団的自衛権に関する内閣法制局見解を安倍首相が変えるのは「解釈改憲」で立憲主義に反するものだというのだが、法制局長官は首相の部下であり、内閣が行政を支配するのが立憲主義である。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

立憲主義」と言う言葉は、2011年以前から国会審議で何度も出てきますが、元NHK池田信夫には「聞き慣れない」んですか、そうですか。
「内閣が行政を支配するのが立憲主義である」というのも意味不明ですね。立憲主義の辞書的な意味は「憲法によって支配者の恣意的な権力を制限しようとする思想および制度」であって、内閣が勝手に憲法解釈して行政を支配することではありませんよ。*3
で、上でも引用した2009年の民主党マニフェストにも「真に立憲主義を確立し」と言ってますね。

その4

朝日も自衛隊を認めたので「憲法9条を守れ」とはいいにくくなり、今度は解釈改憲に反対して立憲か非立憲かという防衛線を張ったのだが、これはわかりにくい。野党も最初は歩み寄り、2014年の閣議決定はそれほど大きな騒ぎにはならなかった。

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わかりにくいのは池田信夫の頭の程度がお粗末なせいであって、安倍の解釈改憲立憲主義に反するなんて極めてわかりやすい話ですよ。
あと「2014年の閣議決定はそれほど大きな騒ぎにはならなかった」というのも嘘で、閣議決定当時にはかなり大規模なデモが起きています。
【集団的自衛権】官邸前で抗議デモ 閣議決定反対で深夜まで(動画・画像)( 2014年06月30日 23時26分 JST | 更新 2014年07月01日 00時10分 JST)
そもそも池田信夫本人が2014年当時に「国会で集団的自衛権がもめています」*4と言ってるんですよね。安倍晋三同様の二枚舌という他ありません。

その5

ところが2015年の憲法審査会で、自民党側の参考人として出席した長谷部恭男氏が「安保法制は憲法違反だ」と言ったため、安保関連法案が国会の争点になり、「強行採決」などの騒ぎになった。前年の閣議決定は認めたのに関連法案が憲法違反だというのは辻褄が合わないが、民主党はこれで内閣が倒せると思ったようだ。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

これもデタラメ。長谷部恭男氏が国会に出たのは2015年6月4日、安倍政権の戦争法案は前月に閣議決定され、その時点で既に違憲だという指摘があり国会の争点になっていました。だからこそ、6月4日に民主党参考人として小林節氏を推薦したわけです。2015年6月4日の憲法審査会が重要な転機になったのは、民主党推薦の小林氏、維新の党推薦の笹田栄司氏だけでなく、ほかならぬ自民党が推薦した長谷部氏でさえ自民党の戦争法案を違憲だと指摘したからです。
「前年の閣議決定は認めたのに」と言うのもウソで、民主党は2014年11月24日に、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を要求する公約を発表しています*5

その6

ところが朝鮮半島で不穏な動きが出始め、野党も日米同盟を否定するわけには行かないので、立憲主義という手続き論しかいえない。今まで政治の表舞台には出なかった憲法学者が、にわかに反政府運動の主役になって「閣議決定はクーデターだ」といった倒錯した論理を展開した。

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憲法に違反する閣議決定を強行するのは行政府によるクーデターですから論理的に筋道が通っています。建前上であれ、日本は国民主権の国であり、政府権力は憲法によって制約を受けるわけですから。
立憲主義が「手続き論」と言うのも意味不明。池田信夫立憲主義を全く理解できていません。
政府法案を違憲だと指摘したら「反政府運動」だと決めつける池田信夫の思考回路も異常です。政府のやることを一切チェックするなと言わんばかりです。

その7

――こういう脱線の連続で、立憲主義という無内容な言葉が左翼の最後の抵抗線になったが、これは民進党にとっては党内を分断する線だった。彼らの支持基盤はマスコミしかないので、護憲派がマスコミの多数派である限り、国会では立憲主義で戦うしかないが、そんな憲法論争では政権はとれない。民進党がこのジレンマを脱却するには、今回のようなギャンブルしかなかったともいえる。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

脱線しているのは池田信夫の脳みそだけです。池田信夫の脳内では立憲主義を掲げているのは「左翼」だけのようですが、だとすれば日本は憲法すら守らない無法な権力によって支配されていることにしかなりませんよね。民進党の「支持基盤はマスコミしかない」とかも頭おかしいとしか思えません。前身の民主党政権がどれほどマスコミに叩かれたか、野党に転落した後も、産経や池田信夫のような連中にどれほど誹謗中傷されたか。

その8

平和憲法は戦後日本の「表の国体」だが、緊迫する国際情勢のもとで、日米同盟という「裏の国体」が表に出てきた。立憲主義はその矛盾をおおい隠す「イチジクの葉」だった。立憲民主党は玉砕してすきま政党になるだろうが、これで戦後ずっと続いてきた左翼の欺瞞が終わるのは悪いことではない。真の政策論争は、そこから始まる。

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平和憲法は戦後日本の「表の国体」」というのは池田信夫の本音でしょうね。日本が掲げる平和主義なんて見せかけだけのウソであって、本性は軍事同盟万歳で戦争したくてしょうがない、人を殺したくてしょうがない殺人鬼だと、そう池田信夫は思っているようです。

まとめ

しかし、この池田信夫の記事、全編にわたって嘘ばかり、一行ごとに事実に反することが書かれているような状態です。
嘘の上に嘘を何度も積み重ねて、それを理由に他者を侮辱・罵倒する、これほどの【自主規制】野郎は、自民党産経新聞以外にはそうはいないでしょう。あ、維新にもいたか。