「自衛隊予算の大半は人件費」というのはデマ

こんなブコメ

自衛隊予算の大半は人件費なんですけどね。GDP比で言えば世界でも低いレベル。自衛隊の労働待遇は非常に悪くて、むしろ上げないと人権レベルに引っ掛かるくらいなんだが、軍事費がーといえば馬鹿になれるって素敵だね
poko_penのコメント2017/12/15 06:32

http://b.hatena.ne.jp/entry/351808893/comment/poko_pen

自衛隊予算の大半は人件費」とか言ってるわけですが、一般的に「大半」と言ったら半分以上というニュアンスですよね*1

f:id:scopedog:20171218101546p:plain

http://www.mod.go.jp/j/yosan/2016/yosan.pdf

2016年度防衛費4兆8607億円のうち、人件・糧食費*2は2兆1473億円ですから割合にして44.2%、半分以下ですから「大半」とは言えないでしょうね。

まあ、自衛隊の軍事費に対する人件費の割合が他国より高いというのであればわかりますけどね。
例えば米軍の場合は、人件費の割合は約27%*3、英軍では、約31%です(約174億ドル)。

f:id:scopedog:20171218101538p:plain

http://www.sjac.or.jp/common/pdf/kaihou/201503/20150303.pdf

f:id:scopedog:20171218101557p:plain

https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/561135/UK_Defence_in_Numbers_2016-revised.pdf

中国軍の場合は、ちょっと古い情報ですが約34%が人件費(1685億人民元*4

f:id:scopedog:20171218101552p:plain

http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2011-09/23/content_23477394_12.htm

ただ、日本の防衛費も兵員数も他国に遜色なく人件費の割合だけが高いのならば、隊員一人あたりの費用は他国より高くなるはずですから「自衛隊の労働待遇は非常に悪くて」なんてことにはなりません。

実際、ザクっと計算するとこうなります。

米軍:一人あたり約8.4万ドル*5
英軍:一人あたり約10万ドル*6
中国軍:一人あたり約7.3万人民元*7
自衛隊:一人あたり約1000万円*8

1ドル100円、1人民元17円で計算すると、米軍:840万円、英軍:1000万円、中国軍:289万円 となりますね。
少なくとも一人あたりの人件費を見る限り、「自衛隊の労働待遇は非常に悪」いとはちょっと思えません。

まあ、冒頭の引用ブコメは単にテキトー言ってるだけなのは間違いないですね。



*1:辞書的には「全体の半数を超えていること。半分以上。過半。大部分。副詞的にも用いる。「出席者の大半は初心者だ」「構想は大半でき上がっている」(出典:デジタル大辞泉小学館))」副詞的用法であれば、必ずしも量的に半分以上を意味するわけではないとも言えるでしょうが、予算についての話であれば量的に半分以上を示唆してると見るべきでしょうね。

*2:糧食費はだいたい300億円程度なのでほぼ人件費とみなせる。https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia261008/04.pdf

*3:FY2015の合計4961億ドルに対して、人件費1350億ドル。http://www.sjac.or.jp/common/pdf/kaihou/201503/20150303.pdf

*4:その後、兵士の給与を増額するなどしている。https://www.tkfd.or.jp/research/china/sod9pg

*5:人件費約1350億ドルに対して、兵員数160万人で計算

*6:人件費約170億ドルに対して、兵員数17万人で計算

*7:人件費約1685億人民元に対して、兵員数230万人で計算

*8:人件費約2兆円に対して、兵員数20万人で計算