蓮舫氏の台湾籍を巡る排外差別の現在の事例について

香山リカ氏の「蓮舫代表のいわゆる“国籍問題”に関する民進党への申し入れ(2017/7/18 13:34)」という記事についたブコメから。

“戸籍の公開要求が差別ではない”という差別行為

現時点の国籍云々はどうでもいいんだよ。昨年の二転三転した蓮舫代表の説明に嘘がないのかが問題なので。あと、戸籍の開示の何が差別なのかわからない。この人達は、知人から国籍や出身地を聞かれても答えないの?
seirotenのコメント 2017/07/18 16:47

http://b.hatena.ne.jp/entry/342008562/comment/seiroten

「戸籍の開示の何が差別なのかわからない」とか言って差別性を否定していますが、蓮舫氏の場合、行政上・法律上必要な機関(この場合は選管)には戸籍を開示済みです。それでも開示せよと要求している人たちは、要するに不特定多数の一般人に対して公開せよと迫っているわけです。
それを「知人から国籍や出身地を聞かれても」とすりかえるのが差別主義者のやり方です。

そもそもお前は蓮舫氏の「知人」じゃねーだろ、としか言えませんね。

で、「二転三転した蓮舫代表の説明」の原因は、日本政府の台湾籍の取り扱いにあることは当該記事を読めばわかるんですけどね*1

二重国籍は法違反」「努力義務だから守らなくても問題ないという理屈ならヘイトスピーチもOKか?」

例の差別主義者のブコメ

二重国籍は法違反だ。努力義務だから守らなくても問題ないという理屈ならヘイトスピーチ規制法も努力義務にすぎないので守らなくてよくなってしまう。ダブルスタンダードはよくない。両方とも法は守るべきものだ。
the_sun_also_risesのコメント 2017/07/18 17:15

http://b.hatena.ne.jp/entry/342008562/comment/the_sun_also_rises

そもそも「そもそも、本当に「二重国籍」なのか、という点をまず問われなければなりません。」と書かれている記事に対して、“二重国籍”と決め付けたブコメをつける時点で差別全開ですね。
日本政府は台湾当局の発行した国籍喪失届を受理しませんでした。つまり、台湾籍を国籍とは認めていないわけで、日本政府の解釈上、蓮舫氏はそもそも“二重国籍”ではなかったと解釈するのが妥当です。

もちろん、the_sun_also_rises氏は、自民党支持者で蓮舫氏が民進党代表であった方が好都合だと公言している人ですから、上記のことはわかった上で差別的な攻撃材料として利用しているのでしょうけどね。

もう一点、「努力義務だから守らなくても問題ないという理屈」の件。元記事にはこう書かれています。

仮に「二重国籍」であることを前提としても、国籍選択については、あくまでも法的拘束力のない「努力義務」にとどめており、これまで法務省自身が催告を行ったことがないことを認めています。

https://lineblog.me/kayamarika/archives/9289347.html

法務省自身が催告を行ったことがない」という点を暗黒太陽氏は無視していますね。
ここは結構重要で、個人に対して「努力義務」が問題になるためには当人に義務があることが認知されている必要があります。つまり、“あなたにはこれを行う義務がありますよ”と当人に適切に通知されている必要があるわけです。
差別主義者である暗黒太陽氏が、引き合いに出しているヘイトスピーチ解消法ですが、国民に対して努力義務を課す(1条)と同時に、国等に教育や啓発などの義務を課しています(6条、7条)。国がヘイトスピーチを解消するための教育・啓発を怠っている状況で、暗黒太陽氏のようにヘイトスピーチを行う国民が蔓延していても、それはまず教育や啓発の不足が問われるべきで国民に努力義務違反を問うたりはしないのが普通です。

国籍選択の場合、所管する法務大臣には催告の義務がなく(国籍法第15条)、結果として国籍選択の義務がある当人に対して義務があることの通知がまず行われていません(蓮舫氏に対して「法務省自身が催告を行ったことがない」とありますね。)。この場合、当人に法違反を問えるかどうか自体が疑問です。
せいぜい住民票の異動の遅延とか住所変更忘れによる自動車税の滞納とかのレベルです。こういうものっていざ必要な時に思い出して手続きしても、よほどのことがない限り法違反を問われたりしませんよね。

要するに、努力義務違反を問うためには、努力義務であることを当人に適切に通知されていなければならないという前提条件があるわけですよ。

この辺を無視して差別行為の正当化をはかる人たちが多いんですよねぇ。

日本の国籍法はかつて父系血統主義を取っていたため、台湾籍の父を持つ蓮舫代表は出生時において選択の余地もなく台湾籍を持つことになりました。ところが、その後、1972年の日中国交正常化により、日本政府は中華人民共和国政府のみを唯一の政府であると認め、今日まで台湾(中華民国)政府を承認していません。そのため、蓮舫代表も中国籍とされたのです。その後、1985年に国籍法が改正され、蓮舫代表は経過措置による届け出により日本国籍を取得しました。日本政府の、中華人民共和国を正式な唯一の中国政府とする立場からすれば、日本国籍を取得した時点で中国の国籍法により自動的に中国国籍が喪失されることになります。すると、蓮舫代表についてそもそも二重国籍という問題は生じないことになります。
他方で、台湾の国籍法は外国籍の取得に伴う台湾国籍の自動的喪失を認めないため、国籍の得喪につき台湾の国籍法を適用すれば、二重国籍の問題が生じえます。ただ、台湾当局において台湾国籍の喪失手続きを行ったとしても、その喪失の効果を認めるか否かは日本政府の行政運用の問題であって、蓮舫代表個人の問題ではありません。
日本政府は、蓮舫代表の台湾籍の国籍喪失届を不受理にする一方で、台湾籍の放棄を宣言することによって行う国籍選択を行政指導したといいます(注1)。それ自体、矛盾した態度であると言わざるを得ません。(略)

https://lineblog.me/kayamarika/archives/9289347.html

*1:台湾当局において台湾国籍の喪失手続きを行ったとしても、その喪失の効果を認めるか否かは日本政府の行政運用の問題であって、蓮舫代表個人の問題ではありません」