安倍政権を支持した理由の変遷について

2013年1月から2017年7月のJNN世論調査から作成。
JNN世論調査では、安倍政権を支持するかの質問に加えて、支持した場合はその理由を択一式で聞いています。
選択できる理由は「安倍総理に期待できる」「閣僚の顔ぶれがよい」「政策に期待できる」「自民党を中心とした内閣だから」「特に理由はない」となっています。
JNN世論調査のサイトでは、支持と答えた人を母数とした理由の割合を掲載していますので、その割合にその時点の支持率をかけて調査対象者全体に対する回答者の割合を算出して図示したのが以下です。薄いブルーの面は支持率を、オレンジの棒グラフはアベノミクスを評価すると答えた人の割合を示しています。


安倍政権を擁護する論者は、経済政策や外交政策、その成果を評価することが多いように思いますが、有権者の捉え方は必ずしもそのようになっていませんね。
支持する理由に「政策に期待できる」を選択した割合は、安倍政権発足当初の2013年前半は理由のトップになっていましたが、2014年に入ると15%以下に低迷し、2015年半ばには10%前後をうろうろするようになっています。
「閣僚の顔ぶれがよい」の割合は当初から高くありませんでしたが、2014年末あたりからさらに下がって低迷しています。

「経済は自民」とかアベノミクスを支持している論者もいますが、2013年6月頃には70%近くの有権者が評価していたものの、2014年初頭には評価するが半数程度に減り、2015年前半頃には評価する有権者は4割程度に落ち込んでいます。JNN世論調査ではそれ以降の調査結果がないようですが、2016年や2017年に調査していたとすれば、それより低い評価になっていたであろうと推測はできます(「政策に期待できる」の減少傾向から)。

しかしながら、政策への期待もしぼみ、閣僚もパッとしない状況でも、安倍政権は高い支持率を維持してきました。実際、戦争法強行採決で下がった支持率もすぐに上昇に転じています。しかし、安倍政権支持の中身は政策に期待されていた発足当初とは異なり、「安倍総理に期待できる」とか「自民党を中心とした内閣だから」とかの割合が増えています。

安倍総理に期待できる」という選択肢は、これとは別に「政策に期待できる」という選択肢があることを踏まえると、具体的な政策などに対する支持ではなく、人柄に対する支持と見るのが適切でしょう。
つまり、2016年あたりからは安倍政権を支持する理由が具体的な政策や成果に裏打ちされたものではなく、安倍首相個人に対する信仰や自民党支持だからといった党派性によっている傾向が見られます。
この傾向は2016年末あたりから特に顕著になってきて、支持する理由のトップが「安倍総理に期待できる」となり、政策や閣僚への期待が減っています。「自民党を中心とした内閣だから」という理由すら減少傾向を示し始め、安倍政権支持の中身が積極的な根拠を伴わない空虚なものに変質していることがわかります。

2016年末以降の政権支持率を支えた「安倍総理に期待できる」という個人信仰的な支持ですが、これが森友学園が浮上してきた3月あたりから揺らぎ、6月・7月で瓦解し始めました。
森友学園疑惑や加計学園疑惑は、安倍首相個人の疑惑ということもあり、「安倍総理に期待できる」という支持理由を直撃し、既にそれ以外の支持理由が空洞化していたことから、政権支持率の急速な低下を招いた、という感じですね。