朝鮮学校排除を認めた広島地裁判決はどこがおかしいか

朝鮮学校無償化除外に関する大阪地裁判決に関する雑感のコメント欄で国側の主張について教えていただきました。
民族教育の歴史に正面から向き合った画期的な判決文」によれば、争点は2010年11月5月の文部科学大臣決定「公立高等学校に係る授業料 の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第 1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」の第13条だったようです。

(適正な学校運営)
第 13条 前条に規定するもののほか、指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/11/__icsFiles/afieldfile/2010/11/10/1299000_01_1.pdf

これについては前回も書いたとおりです。

支援金を授業料に充当する義務を課している条文ですが、もちろん無償化対象となった後に、支援金を授業料以外に流用していることが発覚した場合に無償化対象から除外できる根拠条文であって、最初から無償化対象から除外することを正当化できる条文ではありませんね。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20170730/1501348113

広島地裁判決はこの規定13条に基づく不指定を容認したようですが、指定申請に対して“お前は適正に運営しない恐れがある”として申請を却下するのは、いくらなんでも横暴で、生活保護の申請者に対して“お前は不正流用する恐れがある”と言って申請却下するようなものです。
もし仮に申請者側の体制が不正を防止するのに不十分な場合でも、通常なら対策を講じた後に再申請を受け付けるべきですが、この場合は不指定と同時の2013年2月20日の省令改正で朝鮮学校の申請資格を消滅させたわけですから、行政側の措置は著しく不誠実と言う他ありません。それも行政手続き上生じた陥穽ではなく、安倍政権が朝鮮学校を狙い撃ちにすると宣言した状態で行われた意図的な排除ですからなおさらです。

広島地裁判決は、そのような朝鮮学校排除が大した問題ではないというロジックを作るために、「小西裁判長は判決で「除外によっても教育を受ける権利は何ら制限されない」と指摘」*1したように思えます。教育の権利と言う問題であることを認めれば、朝鮮学校排除の論理が不当であることを認めざるを得ないため、無償化対象の指定の有無は教育の権利に関わらない些細な問題であるかのように扱ったのでしょう。

しかしながら、高校無償化法の第1条で「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする」と書かれている以上、「除外によっても教育を受ける権利は何ら制限されない」という広島地裁判決は法の趣旨に反していると言わざるを得ません。

経済的負担を軽減し教育の機会均等を図るための無償化から除外されても、教育の機会が何ら制限されないということはありえません。