マスコミ・メディアの問題とも言えない

これまで“マスコミは事実だけ伝えろ、意見を言うな”的に叩いておいて、消費税の場合だけ“マスコミはなぜ反対を報じない”と問うのはあまりにも虫が良すぎるんじゃないかな。
各野党が消費増税・軽減税率に反対・批判の立場を示していることを取り立てて報じないのも、これまで国会以外の場での野党の批判をどれほど報じてきたと言えるか考えれば、“消費税だけ黙っている”なんて評価にもならないと思います。

そして特にネット民について言えることですが、各野党がどういう立場でどういう根拠でどのように批判・反対しているか、なんて別にマスコミが報じるかどうかに関係なく調べられますよね?積極的に野党の主張を紹介すれば良いんじゃないですかね。ネットで話題になってくれば、そのうちマスコミも取り上げるようになるでしょうし。
マスコミが報じるまでただ待ってちゃだめだと思うんですよね。

黙っていると、影響力あるブロガーが「野党はなぜ消費税増税や軽減税率の不合理を騒がないのだろう」とかデマをまき散らして状況が余計悪化していくわけですし。

まあ、それはそれとして。

ネット民は各野党の公式サイトに党の談話などを自分で見に行くことができます。
同時に、各メディアがどのような意見を持っているかを見に行くこともできます。

新聞の場合は社説という形で社の意見を述べています。

東京新聞

消費増税表明 無駄遣いをまず止めよ(2018年10月16日)

(略)
 税の原則は、公平・中立・簡素である。公平という観点から、消費税に問題があることは言をまたない。
(略)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018101602000167.html

東京新聞は消費増税を廃止しろとは言っていないものの、かなり強めに批判しています。

朝日新聞

(社説)消費増税対策 何でもありは許されぬ(2018年10月16日05時00分)

(略)
 防災や減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策もとるというが、消費税対策として実施するのは筋違いではないか。
 対策の目的を見失い、何でもありのばらまきの道へ進むことは許されない。
 また、今回は食品などの税率は8%に据え置く軽減税率を入れるため、初めて消費税率が2種類になる。
 買う人にも、お店で売る人にもわかりやすいしくみにできなければ、限られた財源を削って入れる措置が、かえって混乱を招くことになりかねない。
(略)

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13724874.html

朝日も消費増税を廃止しろとは言っていないものの、対策名目の無駄遣いに対する批判や軽減税率に対する懸念などを示しています。

毎日新聞

首相が増税準備を指示 過剰な景気対策は禁物だ(毎日新聞2018年10月16日)

(略)
 消費税は高齢化で増え続ける社会保障費の安定財源である。今は多くを借金に頼り、将来世代につけ回ししている。これに歯止めを掛けるため増税は避けて通れないものだ。
 そうした観点から増税を予定通り行うのは妥当だ。問題は年内に決める景気対策の規模と中身である。
(略)
 ばらまきに陥りそうなものも目立つ。需要喚起のため公共事業費を積み増す案があるが、相次ぐ災害に便乗して非効率な事業が紛れ込む恐れがある。自動車や住宅の減税は需要の先食いに終わりかねない。
(略)

https://mainichi.jp/articles/20181016/ddm/005/070/035000c

毎日は増税そのものは容認していますが、景気対策に対する懸念を示している点は朝日と同じです。

読売新聞

消費税10%表明 実施へ首相の覚悟が問われる(2018年10月16日 06時06分)

(略)
 景気は緩やかながら、息の長い回復を続けている。首相が予定通り消費税10%を実施する方針を示したことは評価できる。
 高齢化で増大する社会保障費を支えるには、景気に左右されにくい消費税の税率引き上げが避けられない。子育て支援など、若年層向けの社会保障を充実させるためにも、新たな財源が要る。
 米中の貿易摩擦新興国経済の変調など、先行きの懸念材料はある。だが、今後、リーマン・ショック級の深刻な景気悪化が起きない限り、確実に消費増税を実現しなければならない。
(略)

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20181015-OYT1T50163.html

読売は明確に増税歓迎のスタンスで、もっと景気対策を求める姿勢で、せいぜい準備不足を懸念している程度でそれも、それを理由に中止・延期を主張するのではなく、準備を急がせるべきだと主張している有様です。

日経新聞

消費増税、反動減対策の歳出は厳選せよ (2018/10/16付)

(略)
自然災害への対応などは財政が機動的に対応すべき分野だ。真に必要なお金をきちんと出せるように、消費増税対策に名を借りたバラマキは慎むべきだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO36520030V11C18A0EA1000/

日経は増税そのものは容認しつつも、景気対策に対して懸念を表明するというスタンス。

産経新聞

【主張】消費税率10% 混乱回避へ万全な対策を(2018.10.16 05:00)

(略)
 安倍首相は景気などに配慮し、2度にわたって増税を延期した。だが消費税は少子高齢化を背景に急増する社会保障費を支えるための重要財源である。将来世代に対する無責任なつけ回しを防ぐためにも、現在の世代が一定の負担増を受け入れるのは避けられまい。
(略)

https://www.sankei.com/column/news/181016/clm1810160002-n1.html

産経も日経と似たスタンスで増税は容認あるいは歓迎で、景気対策に対して懸念を表明し、読売同様準備を急がせるべきだと主張しています。

全国紙+東京新聞

読売・日経・産経が増税容認・歓迎、少なくとも肯定的立場を示しており、東京・朝日・毎日がどちらかと言えば否定的な立場を示しています。マスコミが、特定の問題に対して世論喚起するには、意見だけを述べるようなことはしません。その問題に関わる具体的な事実やそれに対する世間の反応などを報じるというやり方を取ります。
野党を含む各政党の意見を報じることもないではありませんが、主でもありません。

森友問題にしても、具体的な土地売却価格の問題から始まり、様々な事実が明るみに出るたびにそれを報じて世論喚起につながったわけです。

消費増税・軽減税率について言うなら、軽減税率による混乱や増税対策としての現金配布案などを報じること*1でそれに対する否定的な世論が形成され、とても増税できる状態じゃないという世論にまで至れば、増税反対というムーブメントが出来上がります。
マスコミによる世論喚起というのは、そういうものでしょうよ。

消費増税に反対ならば、マスコミが何故反対しないのか、という前に、自ら反対の声をあげるべきですし、あげている政党・政治家を支援し盛り上げるべきで、その結果マスコミが取り上げたくなる状況を作るのが本来の在り方ではないかなと思いますよ。