NHKが起用したキャラクターに関する雑感

この件について書こうかなと思ってはいたもののなかなか上手くまとめられなかったのだが、以下の内容について大体意見が一致しているので、それに一ヵ月遅れで便乗した感じであげてみます。
なぜ千田有紀先生は穏当な話をしていたはずなのに炎上してしまったのかを振り返る

この問題については、太田弁護士の態度が一番問題で批判されるべきだと思っています。ろくに論点をまとめることもなく雑なツイートだけで次のツイートで通報を煽動していましたので、懲戒請求を煽った橋下弁護士と大した違いを見出せないんですよね。

千田氏については問題点を“女性が相槌ばかりの聞き役だという構図”に持っていこうとはしており、それはそれで納得できる点もありますので批判されているほどの問題は感じられませんでした。もちろん文章としての粗はたくさんありましたし、そのいくつかについて批判したいところもありますが、その辺は置いておきます。

その後、ちょいちょい見かけたのが“フェミニズムが誤解されている”とか“フェミニストが何を批判しているのか理解していない”とかいう類の擁護的なコメントで、確かにまあ、批判側と擁護側が論点がずれているような印象がありました。

が、そもそも最初の問題提起の時点で、もう少し丁寧に論点整理して訴えるべきだったと思いますよ。

性暴力やハラスメントを受けた被害当事者がやっとの思いで声をあげたというなら、丁寧な論点整理などできるわけも無いので聞く側に誠実に聞き取ろうとする努力が必要でしょうけど、この件は、NHKの起用キャラクターが適切かどうかという問題で、問題提起したのも論点整理もできないほど動揺している被害当事者ではなく弁護士や社会学者ですから、誤解されないように、何を批判しているのかわかるようにした上で問題提起することが求められてしかるべきでしょう。
その辺を疎かにしながら批判や通報を煽る行為を行ったわけですが、批判された側*1が“問答無用で攻撃をしかけられた”と感じるのはやむをえないところであろうと。


言及した記事について残念なのは、ここの最後の一言。

蛇足ですが。今回は千田先生の話をしたものの、他のフェミニストだって、オタクだって、ここまでひどくはないにせよ多かれ少なかれ似たようなことをしてると思う。話し合いのためにはお互いの信頼関係が必要になるはずなのに、どちらも信頼関係を築こうとはしてないというかむしろ積極的に破壊しようとしてる。もうお前らとは話合うことはないと言いながら、お互いを攻撃する発言ばっかりしてる。 韓国みたいになりたいならいいけど私は嫌だなぁ。

http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2018/10/23/132509

カジュアルな韓国ヘイトを入れ込んでいる点については全く賛同できません。

ちなみに今回の騒動に対する個人的な見解を簡単に述べておくと、こんな感じ。

(1)“女性が相槌ばかりの聞き役だという構図”という点については同感だが、その構図自体が否定されるべきではなく、その構図“ばかり”であれば批判されるべきであろうと思う。
(2)件のキャラクターの体型・服装については性的に過剰に強調されているとは思えず、公共放送上ふさわしくないとは思わない。排除しようという意見はキャラクターと同レベルの体型や服装をした現実の人たちに対する攻撃になりかねないので賛同できない。
(3)キャラクターの使い方については色々改善できる点はあったと思う。
(4)キャラクターの掲示を不快に感じる人がいることは理解できるが、同時にキャラクターに対する攻撃を不快に感じる人もいることは否定できない。すなわち、体型・服装などの性的要素に対する不快感を覚える人たちと、自身と同様の体型・服装のキャラクターが攻撃されることに対して不快感を覚える人たち*2、いずれの感情も尊重されるべきということで、公共の福祉の観点から権利の調整がなされるべきであろうと思う。


特に(4)、被害者は常に自分だけというわけではありません。
“痴漢撲滅運動が痴漢の権利を侵害する”なんてのは論外ですが、それが何故論外なのかと言えば、痴漢する権利よりも痴漢されない権利の方が比較の対象にもならないほど圧倒的に重要であり、痴漢する権利のために痴漢されない権利がいささかも侵害されるべきではないからです。
しかし、“性的に感じる絵を見たくないという権利”と“性的に感じる絵と同じような体型・服装であることを貶されない権利”というのは、どちらかが一方的に保護され、他方に一方的に譲歩を強いれる性質のものとは言えないでしょう。

その辺りの権利の衝突やそれをどのように調整すべきなのかといった話があまり膨らんでいないのは残念な感じです。



*1:それに共感する層含む

*2:キャラクターに対するファンなどオタクの感情ではなく、攻撃されているキャラクターと同様の体型・服装などをしている現実の人たちを指しています。服装に関しては伊藤和子氏がそのような配慮について言及していました。