防衛省公開映像に映っている漁船は遭難した漁船とは別物

以前、以下のように記載しました。

映像に映っている漁船は1トン未満にして大きすぎない?

遭難した漁船については、こう報じられています。

日本哨戒機接近し撮影用光学カメラ稼働 ビーム放射はせず=韓国軍

12/23(日) 17:14配信
 一方、韓国の艦艇が救助した北朝鮮漁船は1トン未満の木船で、韓国政府は21日、乗組員3人と遺体1体を北朝鮮側に引き渡した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181223-00000027-yonh-kr

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防衛省公開映像
映像には韓国海警察庁所属5001号(삼봉호; 三峰号)と漁船が映っていますが、三峰号は全長145m *1ですので、漁船は少なくとも10m以上はありそうです。
「1トン未満の木船」で10m以上というのは少し大きすぎる気がします。

http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/12/30/070000

同じ防衛省公開の映像を見た別の人も漁船のサイズを「全長10数m〜20mくらい」と判断しています。

現場の海上には、「971 広開土大王(クァンゲト・デワン(광개토 대왕))」駆逐艦の他、約1000mの距離に海洋警察庁の5000トン級警備救難艦「5001 参峰号(サンボンギョ(삼봉호))」とその搭載艇(推定)2隻、そして漁船1隻が写っている。

漁船は、北朝鮮の木造のイカ釣り漁船とよく似ている。
「5001 サンボンギョ」の搭載艇(左下)と比較すると、漁船は全長10数m〜20mくらい。

https://pelicanmemo.hatenablog.com/entry/2018/12/30/193000

しかしながら、やはり「1トン未満の木船」で全長10m以上というのは大きすぎます。
警察用船舶の資料ですが、軽合金製またはFRP製の全長10mの船舶の総トン数は4.9トンです*2。同じ全長だと木造船の方が重くなります。もちろん全幅など排水量を左右する条件は全長だけではありませんが、それでも「1トン未満の木船」が10m以上の全長であると言う可能性は極めて低いでしょう。

ちなみに2011年に脱北してきた5トン規模の北朝鮮木造船がこれです。

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http://japanese.donga.com/List/3/all/27/412402/1

背後に映っている人の大きさから見て全長は10mもなさそうですが、これで5トンです。

また、ヤマハ発動機のサイトにある1.1トンの和船だと全長7.5m、全幅2m程度です。

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https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/j-boat/w20-25/

木造船だともう少し小さくなるくらいでしょうか。
とすると防衛省公開の映像に映っている漁船は少なくとも、報道で報じられた「1トン未満の木船」である「韓国の艦艇が救助した北朝鮮漁船」とは別の船ということになりそうですね。

ちなみに

こうした「1トン未満の木船」は日本海沿岸に漂着していることで日本では知られています。


こんな感じの船か、これよりもう少し小さいくらいでしょうか。
漂着漁船には船員の遺体が載っていることもありますが、今回韓国側に救助された北朝鮮漁船も、もし救助されなかったら遺体を載せた状態で日本に漂着したかもしれません。
漁船員の人命のかかった事件であったことを認識している日本人は多分ほとんどいないのでしょうけどね。