だから判決文をまず読めと言ってるのに。

まだこんなブコメをつけてくるんですね。

判決の土台である併合の不法性は裁判官の間でも二分し、一票差で可決、裁判長は反対票に入れた、という韓国系新聞の報道からも韓国の裁判制度の独自性が見えています。土台が覆ればこの判決も覆る、という事です。
chuka123のコメント2019/02/27 02:00

http://b.hatena.ne.jp/entry/4665130260108514689/comment/chuka123

色々事実誤認があるんですが、一つずつ確認しましょう。

「判決の土台である併合の不法性は裁判官の間でも二分し、一票差で可決、裁判長は反対票に入れた」

間違いです。
裁判官の間で判断が割れたのは、1965年請求権協定によって原告らの訴訟による請求権行使が制限されるか否かです。「併合の不法性」で判断が割れたのではありません。
1965年請求権協定によって原告らの訴訟による請求権行使が制限されるかについて、大法院判決は、損害賠償は請求権協定の範囲外という理由で制限されないというものでした。
これに対して、李起宅、金昭英、李東遠、盧貞姫ら4人の大法官が“個別意見”をつけています。しかし、李起宅の個別意見は覊束力*1に関する補足意見であり、基本的に多数意見と同じです。他の金昭英、李東遠、盧貞姫ら3人の大法官は、多数意見と異なり本件の損害賠償も請求権協定の範囲内であるという意見をつけていますが、その上で請求権協定で消滅したのは外交保護権のみであり、個人請求権は消滅しておらず、その行使も正当であるとして、判決そのものに対しては支持しています。

(大法官金昭英、大法官李東遠、大法官盧貞姫の個別意見)
結局、原告らの被告に対する損害賠償請求権が請求権協定の対象に含まれていないとする多数意見の立場には同意することができないが、請求権協定にもかかわらず原告らが被告に対して強制動員被害に関する損害賠償請求権を行使することができるとする差戻し後の原審の結論は妥当である。そこにはこの部分の上告理由の主張に言うような請求権協定の効力、大韓民国国民の日本国民に対する個人請求権の行使の可能性に関する法理などを誤解した誤りはない。

http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo

chuka123氏のいう「一票差で可決」というのは、おそらく13人の大法官のうち、2人が反対意見、4人が個別意見をつけたことをもって合計6人が反対したという誤解を根拠に賛成7、反対6であったかのように言っているのでしょうけど、判決そのものに対しては賛成11、反対2 で「一票差で可決」ではありません。

多数意見 請求権協定の範囲外なので賠償責任あり 7票
個別意見 請求権協定の範囲外なので賠償責任あり 1票(李起宅)
個別意見 請求権協定の範囲内だが個人請求権は消滅しないので賠償責任あり 3票(金昭英、李東遠、盧貞姫)
反対意見 請求権協定の範囲内なので請求権行使もできず賠償責任なし 2票(権純一、趙載淵)

「裁判長は反対票に入れた」は間違い。金命洙大法院長は多数意見を支持

どの「韓国系新聞の報道」を見たのか知りませんが、例えば中央日報はこう報じています。

<韓国、徴用工判決>賛成11人、反対2人…反対の理由は?

2018年10月31日08時32分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
 金命洙(キム・ミョンス)大法院(最高裁)長をはじめとする最高裁の裁判官(13人、法院行政処長除く)からなる「日帝強制徴用損害賠償請求事件」全員合議体判決の最終結論は11対2だ。権純一(クォン・スンイル)裁判官、趙載淵(チョ・ジェヨン)裁判官の2人だけが「1965年の韓日請求権条約で原告(強制徴用被害者)の損害賠償請求権が消滅した」という反対意見を出した。ただ、損害賠償請求権を認めた裁判官(11人)の中でも論拠は3つに分かれた。
 まず、金大法院長を含む裁判官7人は「強制徴用被害者の慰謝料請求権は請求権協定の適用対象に含まれない」と判断した。今回の事件の主審の金昭英(キム・ソヨン)裁判官と李東遠(イ・ドンウォン)裁判官、盧貞姫(ノ・ジョンヒ)裁判官の3人は多数意見(7人)と同じ結論だが、論拠が違った。判決文の要旨によると、3人の裁判官は「原告の損害賠償訴訟請求権は請求権の対象に含まれると見るべき」としながらも「個人の請求権は請求権協定だけで当然消滅すると見ることはできない」と判断した。また「請求権条約に基づき原告個人の請求権が日本で消滅しても大韓民国政府がこれを保護することはできないが、強制徴用被害者が韓国で被告(新日鉄住金)を相手に訴訟を提起することができる」と明らかにした。
(略)

https://japanese.joins.com/article/619/246619.html

判決文を見ても金命洙大法院長が多数意見なのは明らかです。

「判決の土台である併合の不法性は裁判官の間でも二分」していない

「併合の不法性」に関して、大法院の裁判官内で意見の不一致なんかありません。

大法院判決に反対意見をつけた権純一、趙載淵らでさえ、反対意見の中でこう述べています。

(2) 日帝強占期に日本が不法な植民支配と侵略戦争遂行のために強制徴用被害者らに与えた苦痛に照らしてみると、大韓民国が被害者らに行った補償が非常に不十分なことは事実である。

http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo

「併合の不法性」についての意見というなら、13人の大法院裁判官全員一致というべきでしょうね。



*1:同一事件の手続内において、ある裁判所の判断した裁判の内容が、さまざまな要請から、他の裁判所を拘束すること。