韓国の人事聴聞会法に関する話

こういう記事がありまして。

青木理氏、チョ・グク氏の法相就任で日韓の政治の違い指摘「どっちがいいか悪いかって言えば、僕は答えは明かだと思う」

9/10(火) 10:30配信 スポーツ報知
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 チョ氏が法相に就任したことに、コメンテーターでジャーナリストの青木理氏(53)は「韓国っていう今の国のありようっていうのが映し出された」とし、「10時間記者会見したんですよ。14時間、聴聞会やったんですよ。ある種の手続きとか建前っていうのは、きちんと尽くすんだと。それこそが正義なんであるというような、民主主義のありようとか政治のありように対する、正義のありようっていうものに対する、こだわりっていうのが強いんですよね」とコメント。
 一方「日本はどうかと言えば、森友学園加計学園の問題でも証人喚問は出来るだけしないように、しても何も言わないように。あるいは口利き疑惑が起きても入院して会見もしないで、いつの間にかうやむやにしちゃうのが日本の政治」と指摘し、「どっちがいいか悪いかって言えば、僕は答えは明かだと思うんだけれども」とした。
(略)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190910-00000022-sph-soci

折りしも日本では内閣改造が行われていますが、組閣人事は与党幹部が密室内で決めており、任命前に国民の代表による適性調査などが行われるわけではありません。
これに対して、曺国氏の法務部長官任命に関して日本メディアが異常な熱心さで報じたおかげで、韓国には任命に先立って人事聴聞会が行われる制度があることが知られたはずです*1

韓国における人事聴聞会の歴史はさほど古いものではなく、2000年2月の国会法改正*2と同年6月の人事聴聞会法の制定によります。趣旨としては、公選によらない任命職の公職者について任命前に国会で検証するというものです。

2000年時点での人事聴聞対象は、大韓民国憲法で任命に国会同意が必要とされる国務総理(憲法86条)、監査院*3長(憲法98条)、大法院長と他の13人の大法官(憲法104条)、憲法裁判所長官(憲法111条)、国会で選出する憲法裁判所裁判官(3名・憲法111条)、国会で選出する中央選挙管理委員(3名・憲法114条)の21名でした。
2003年の法改正で、新たに、国家情報院長、検事総長警察庁長官国税庁長の4名が対象に追加されます。

対象者はその後も追加され、現行法では、大統領が任命する国務委員、放送通信委員会委員長、公正取引委員会委員長、金融委員会委員長、国家人権委員会委員長、合同参謀議長、韓国銀行総裁、特別監察官、韓国放送公社社長が含まれています(国会法65条の2)。

各行政部長官は国務委員から任命されますので、曺国氏に対する人事聴聞会も法律上は国務委員任命に対するものということかと思います。法務部長官任命を前提とした国務委員任命のため、法務部長官としての適性などが調査されたのでしょうけど。



参考:韓国:人事聴聞会法
人事聴聞会法
国会法
韓国憲法

*1:そこには興味ないというなら、病的です。

*2:46条の3に人事聴聞特別委員会に関する規定が追加

*3:会計検査院に相当