北朝鮮情勢に関する最悪の場合を予測しておく

米朝間ではなお交渉が続いているようですが北朝鮮の予告どおりなら交渉の可否は年内に判明するはずです。
良い方向に動くことを望みますが、残念ながら可能性は低そうな感じです。

北朝鮮の交渉方針は至極単純なもので、“自国と体制の安全が確立された上での核廃棄には応じるが、米国に降伏する形での核廃棄には応じない”といったものです。
北朝鮮の核・ミサイル開発に対しては各種の国連決議が出ていますが、何しろ38度線の南側で、いつでも北朝鮮を攻撃できる態勢を整えているのが“国連軍”なわけですから、北朝鮮から見れば、銃を突きつけての武装解除要求でしかありません。

トランプ政権は史上初の米朝首脳会談に応じ平和的解決に意欲があるのかとも思われましたが、実態としては自らの任期中に核・ミサイル実験がモラトリアムされれば良い、くらいの認識のようです。
北朝鮮もそれに気づいたのか、大統領選に合わせて期限を切ってきた感じです。確かにこの時期を逃せば、少なくともさらに4年米朝交渉は引き伸ばしを食らう可能性がありますし、次もトランプ政権が続くとは限らないわけですし。
欧米の一般的世論は国連決議違反や人権問題などから北朝鮮への譲歩に否定的ですので、トランプ政権が続かない場合は朝鮮半島情勢は2017年以前に戻る可能性が高くなります。

まあ、北朝鮮国内の人権侵害を問題視すること自体は間違いではありませんが、その結果として戦争以外の選択肢を失わせるようでは戦争という最悪の人権侵害を招くことにもなりうるわけで、個人的にはそちらの方をより重視すべきだとは思うのですけどね。

さて。

北朝鮮が予告通り年内で米朝交渉を打ち切った場合、北朝鮮としては核・ミサイル実験を停止しておく理由が無くなります。北朝鮮に言わせれば、米国は北朝鮮を敵とみなしている国連軍を解消せず朝鮮戦争終結も拒否して経済制裁を続ける意向であり、北朝鮮に対して一方的な武装放棄を要求していることになるわけで、その態度が変わらないのなら、抗戦準備をするのは当然ということになりますから。

実際にいきなり実験再開するかどうかはともかく、最悪のケースとしては年明け早々に核実験やICBM発射実験を行うこともありえるとは言えます。
その場合、トランプ政権としては交渉上目をつぶってきた短距離ミサイルやロケット弾実験と違い、何らかの対応をせざるを得なくなります。大統領再選を目指すなら尚のこと、弱気な態度は示せません。これも最悪のケースとして、米軍による軍事行動が考えられます。

北朝鮮弾道ミサイルの基地を先制攻撃で破壊するという感じですね。

現状の北朝鮮が有する米国を直接攻撃できる手段は実質的に皆無でしょうから、米国が直接被害を受ける可能性は低いのですが、在韓米軍基地や在日米軍基地を狙うことはありえます。少なくとも韓国に対する攻撃には躊躇しないでしょうね。南北間でいかに終戦宣言がなされたとは言っても、韓国政府と韓国軍が明示的に米朝戦争不介入を宣言でもしない限り、北朝鮮にとって韓国が深刻な脅威であることに変わりありませんから。

韓国文政権には既に米朝戦争不介入を宣言できるほどの政治力は残っていないでしょうし、仮に宣言したとしても北朝鮮にとって韓国軍が潜在的な脅威であることに変わりはなく、38度線付近の北朝鮮軍の士気を維持するために交戦状態を作り出す可能性も否定はできません。
南北間で戦端が開かれた場合、よほどの幸運がない限り、ソウルを初め38度線付近で大きな被害を受けるでしょう。

日本に対する攻撃があるかどうかは何とも言えません。日本に直接攻撃をしない限り、憲法自衛隊が攻撃に加わる可能性は低いと見て攻撃を控える可能性もありますし、直接攻撃に加わらずとも米軍の後方支援を日本海でやることは間違いなく、それに対する報復として攻撃する可能性もあります。あるいは、自衛隊朝鮮半島派兵を誘発させ、韓国内での反日意識を煽動することも考えるかも知れません。
仮に日本が攻撃対象となったとしても、散発的な弾道ミサイル攻撃程度でしょうから、韓国で生じる被害の比ではないでしょう。

言うまでも無く米軍の反撃を受ける北朝鮮国内では最大規模の被害が発生するでしょうね。
米朝戦争の後に残るのは、膨大な人的・物的被害と大量の難民、民族間の不信と国際社会に対する不信です。

2017年に米朝戦争の危機があったにもかかわらず、2018年以降の南北融和に協力せず、むしろ紛争を煽った国際社会とりわけ主体となった米国とあからさまに妨害し朝鮮半島統一は国益に反するという社会認識を醸成した日本に対する不信感は避けられないでしょうね。

以上はまあ、最悪の想定ですから、そうはならずにできるだけ人権侵害の少ない形で収束することを望みたいところですが。