高橋洋一は1000人以上の日本人を見捨ててでも安倍政権に忠誠を尽くす

この件。
新型コロナで「安倍政権の支持率急落」か…対応のマズさを検証する 決断があまりにも遅かった (髙橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授)

直近の支持率低下の原因が「消費増税がもたらした景気への悪影響」とするのは非論理的

桜を見る会」のせいではなく

安倍政権の支持率が急落している。
時事通信が6-9日に実施した世論調査で、内閣支持率は前月比1.8ポイント減の38.6%、共同通信が15、16両日に実施した世論調査では、前月比8.3ポイント減の41.0%だった。
これについて一部マスコミは、「桜を見る会」などに対する安倍首相の国会対応を原因だとしている。しかし、筆者の見立てはそうでない。消費増税がもたらした景気への悪影響や、新型肺炎への対応が後手後手に回ったことが原因だ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70481

高橋氏は内閣支持率の低下を「消費増税がもたらした景気への悪影響」のせいにしようとしていますが、さすがにそれでは「前月比8.3ポイント減の41.0%」を説明できないでしょう。
ANNの世論調査では、桜を見る会に関する質問もしていて、「安倍総理大臣が十分に説明を行ったかについては、77%の人が「思わない」と答えています」という結果を踏まえれば、「「桜を見る会」などに対する安倍首相の国会対応」が原因の一つであることは否定できません。

 調査は15日と16日に行われました。それによりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は39.8%と先月から5.6ポイント下落しました。一方、「支持しない」と答えた人は42.2%で、1年2カ月ぶりに「支持する」を上回りました。「桜を見る会」を巡る疑惑について安倍総理大臣が十分に説明を行ったかについては、77%の人が「思わない」と答えています。安倍内閣東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長を決めたことについて、「納得しない」とした人は半数を超えています。安倍内閣新型コロナウイルス対策について「評価する」とした人は46%、「評価しない」とした人は50%と割れました。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20200217-00000033-ann-pol

まあ、日本の世論調査は基本的に1か月に1回しかやらないので、時事との関連を精度よく調べるのが難しいのですけどね*1

「安倍政権は、これまで危機対応に関してはそれなりに上手くやってきた。例えば、災害や北朝鮮のミサイル発射への対応は迅速だった。」?

高橋氏は2013年からこれまでずっと寝てたんでしょうか?

例えば、2014年8月の広島土砂災害の時、別荘にいた安倍首相は数時間だけ都内に出てきただけですぐに別荘に戻ってましたよね*2。そして、平成天皇が静養取りやめを発表したら慌てて別荘から戻ってくるという体たらくでした。
他にも2014年2月の豪雪被害では非常災害対策本部の設置が遅れ問題視されました*3
2016年4月の熊本地震では震度7地震が2回も起きたにも関わらず、激甚災害指定まで10日かかっています*4。そして激甚災害指定するよりも、“緊急事態条項が必要だ”とかの改憲プロパガンダにいそしむ始末でしたね。
2018年7月の西日本豪雨の際には気象庁が厳重警戒を呼び掛けてるさなかに、赤坂自民亭と称する酒宴に安倍首相らが参加していましたよね。さらに災害対策本部の設置も土砂災害・河川氾濫発生から30時間以上かかっており、2011年の台風12号の時よりも遅れています*5

安倍政権のやった「北朝鮮のミサイル発射への対応」も“空襲警報ごっこで国民の不安を煽った”だけですよね。


安倍政権の対応を批判している風を装っているがことごとく的外れな高橋記事

高橋氏はこんなことを言っています。

ただし今回の新型肺炎は、そうではない。(略)
このとき筆者は、日本政府の初動である「指定感染症」指定に潜む問題を取り上げた。1月28日に閣議決定、即日公布されたにもかかわらず、施行が2月7日となった対応の遅さ、また隔離・停留・検査・無症状病原体保有者への適用ができない2類指定となったことの緩さなどだ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70481

言及している高橋氏自身の過去記事では「政府は1月28日、新型肺炎感染症法上の指定感染症に指定する政令閣議決定し、公布した。ここまではよかったが、その政令の施行日は2月7日だった。これには流石に驚いた。」とあり、1月28日時点での閣議決定までは問題ないとしているわけです。

しかし、そもそも国内で感染者が発生したのは1月16日ですから、政令公布が1月28日だというのはいかにも遅いという他ありません*6。さらに高橋氏は政令の施行日が当初2月7日だったことを批判していますが、それも指定感染症ではなく新感染症として扱うことにすれば政令自体不要でしたから、安倍政権の判断ミスだったと言えますが、高橋氏にはその視点が皆無です。

「隔離・停留・検査・無症状病原体保有者への適用ができない2類指定となったこと」というのは意味不明です。

まず、「無症状病原体保有者への適用ができない」というのが間違いです。感染症法15条は「一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者又は当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者」を対象としていますが、これは指定感染症の場合にも準用されます(7条及び政令)。
ですから当然、無症状病原体保有者に対する検査もできます。

隔離・停留は検疫法15条、16条に規定されており、これは検疫法2条の1号と2号のみを対象としていますが、検疫法34条では検疫法2条1号・2号で指定している感染症以外でも政令で指定して準用することができることになっています。ただ、安倍政権は1月28日の政令では検疫法34条に基づく指定をしていないようですので、その点は高橋氏の言う通り、安倍政権の落ち度ですね。
ただそれを「2類指定」というのかどうかはよくわかりません。

無理くり擁護

あまりにも後手後手

中国政府による感染症の正式な公表は1月20日だったので、対応もその後から始めざるを得なかったのは仕方ないだろう。中国政府は初期段階で病気の拡大を隠蔽したので、責任は大きい。最近になって、習近平主席がもっと以前から肺炎対策を要求していたという信じがたい話も出てきている(https://www.asahi.com/articles/ASN2H7GZPN2HUHBI01N.html)が、これは中国共産党内での責任のなすりつけ合いだろう。
しかしこうしたことを踏まえても、日本政府の対応もあまりに後手後手で褒められたものでない。
今となっては悔やまれるが、もしも新型コロナウイルスが1月28日に1類指定感染症に指定され、即日施行されていたならばどうなっていたかを思考実験してみよう。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70481

中国非難を織り交ぜて安倍政権擁護していますが、朝日記事の言うように習近平主席が1月7日に知っていて対策を指示したという話を別に疑う根拠もないんですよね。「中国政府の専門家グループが新型コロナウイルスを検出したのは、1月7日。」であって、その報告を受けていれば、“よきにはからえ”程度の指示はするでしょうから。

で、高橋氏は「もしも新型コロナウイルスが1月28日に1類指定感染症に指定され」とか言ってますけど、感染症法6条2項に定義されている「一類感染症」のことであれば、これは法改正しないと変更できません。政令で指定できるのは、感染症法6条8項の「指定感染症」であって、1類も2類もありません。1月28日の政令でも「新型コロナウイルス感染症を(感染症法)第6条第8項の指定感染症として定める」と書いてあります。
高橋氏はどうも感染症法第6条9項の「新感染症」と勘違いしているように思われます。

ちなみに、SARSに対しては2003年4月3日に「新感染症」として扱い*7、後に指定感染症に切り替えています。なぜ今回、安倍政権がSARSの時と同じ対応を取らなかったのはよくわかりません。

意味のない思考実験

高橋氏はこんな思考実験(笑)を行っています。

今となっては悔やまれるが、もしも新型コロナウイルスが1月28日に1類指定感染症に指定され、即日施行されていたならばどうなっていたかを思考実験してみよう。
各国は1月末から、中国からの移動制限を実施している。例えば1月29日には英国の航空会社が中国発着便を全便欠航し、オーストラリア政府も武漢からの帰国者を隔離した。アメリカは1月31日、中国への渡航経験のある外国人の入国を禁止した。こうした措置はオーストラリア、イスラエルニュージーランドシンガポール、マレーシア、フィリピンなどでもとられた。
さらに1月29日にネパールが、1月30日にロシアが、中国との国境を閉鎖した。同じ措置はモンゴルやカザフスタンでもとられた。
こうした移動制限とともに、多くの国で中国に対するビザの制限も実施された。
当然のこととして、中国と地理的に近い日本でも、上記のような移動制限措置がとられてもよかった。指定感染症として閣議決定をしていれば、当然それを根拠に移動制限ができたはずだ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70481

この思考実験が無意味なのは、日本国内での感染拡大を抑止しえたかどうかの実験になっていない点です。
高橋氏は起点を政令公布の1月28日時点としていますが、この時点ですでに日本国内での感染者が確認されており、感染が確認されていない潜伏期間中の感染者が既に入国していることも現時点ではわかっています。
つまり、1月28日を起点とした時点で、日本国内での感染拡大は既定となっており「移動制限措置」等は何の役にも立たないということで、ゆえに意味のない思考実験なのです。

では何故、高橋氏はこの思考実験をやっているかというと、高橋氏の言う「移動制限措置」が1月28日時点で発動していれば、ダイヤモンドプリンセス号を追い返すことができ、同船内で発生する患者については日本政府の責任を回避できるという意図でやっているわけです。

要するに、いかに感染者を減らすかという視点ではなく、発生する感染者に対していかに日本政府の責任を回避するかという視点で高橋氏は思考実験をしているわけです。一言で言うなら、“病気に罹るなら、日本以外で罹れ”というもので、日本政府の責任さえ回避できれば感染者の命などどうでもいいというのが、高橋氏の思考回路だと言えます。

はっきり言って、恥知らず、ですね。

しかし当初は、指定感染症に関する政令の施行が2月7日と10日後の見通しで、それまで身動きが取れなかった。結局はWHOの非常事態宣言を受けて、施行は2月1日に前倒しになったが、強力な移動制限措置はとられていない。2月1日に湖北省に滞在した外国人の入国拒否を決め、2月13日に同じく浙江省滞在者も入国拒否とした程度だ。
この対応の遅さによる実害が、ダイヤモンドプリンセス号での船内感染だろう。もし1月28日に1類指定感染症に指定され、感染の疑いがある人の入国を拒否できていれば、ダイヤモンドプリンセス号の横浜入港も拒否できていた可能性が高い。
というのも、ダイヤモンドプリンセス号は1月20日に横浜を出発し、25日に香港で下船した乗客が新型肺炎に感染していることがわかった。その後横浜に戻ったのが2月3日なので、拒否できたのだ。
実際、感染者が乗船しているとされたクルーズ船ウエステルダム号は、日本やタイ、フィリピンなどで入港を拒否され、最終的にカンボジアに入港している。
こう指摘すると、人道的に問題があると言われるかもしれないが、これが国際社会の現実だ。ダイヤモンドプリンセス号は、船籍はイギリス、運営会社はアメリカなので、日本に寄港させなくても日本が非難を受ける立場ではなかったのだ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70481

「もし1月28日に1類指定感染症に指定され」の下りは、上記の通り高橋氏の感染症法の理解の誤りですので、何度も指摘しませんが、高橋氏が「ダイヤモンドプリンセス号の横浜入港も拒否できていた可能性が高い」と訴えていることだけはよくわかります。
エステルダム号では、そうできたじゃないかと主張しています。

しかし、ウエステルダム号に乗船していた日本人は5人、それに対してダイヤモンドプリンセス号に乗船していた日本人は1000人以上います。
乗客のほとんどが日本人のダイヤモンドプリンセス号の入港を日本政府が拒否していたら、日本は国際社会から非難されなかったのかと言えるのでしょうか?

個人的な意見としては、ウエステルダム号の入港拒否もどうかと思っています。
感染症が発生した東アジアを周航するクルーズ船が、東アジアで最も医療設備・技術が整っているであろう日本で受け入れを拒絶され、カンボジアが受け入れるという状況を、政府の責任をいかに回避するかだけで判断すること自体が異常です。

まあ、日本の医療技術や医療設備など所詮は見掛け倒しで、実態はお粗末極まるものであって、カンボジアで対応するのと大した違いはないというなら構いませんが。ダイヤモンドプリンセス号での検疫状況を見る限り、実際その通りだったようですしね。

1月28日に入国制限やっていても何も変わらない

そうした観点からみると、安倍政権、とりわけ加藤勝信厚労大臣の決断のなさは痛かった。1月28日に感染症指定政令の施行、2類指定、入国制限を行っていれば、事態は大きく変わっていたに違いない。
加藤大臣は、安倍首相も次期首相候補として名前を挙げる政治家だ。元大蔵官僚であり筆者もよく知っているが、必要なときに適切な判断ができなかったのは、きわめて残念だ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70481

と高橋氏は言っています。「2類指定」とかが感染症法の理解不足による誤りであることはもういいです。
上でも言いましたが、1月28日に入国制限をやっていたとしても、既に潜伏期間中の感染者は入国していますから、国内での感染拡大を防ぐことにはならず、基本的に無意味です。
高橋氏の主張は、1月28日に入国制限をやっていれば、1000人以上の日本人乗客を乗せたクルーズ船を拒否して日本国外に追い返すことができ、日本政府の責任を回避できたというもの過ぎません。その思考回路からは、クルーズ船上の1000人以上の日本人の健康とか人権とかは一切抜け落ちており、日本政府のメンツさえ保てれば、1000人以上の日本人の命など問題ではないという国家主義的思考が強くうかがわれます。