近藤大介氏の往生際の悪さ

この件。
朝鮮労働党幹部が明かした「金正恩異変説」の真相(5/12(火) 7:01配信 現代ビジネス)

ここで近藤氏はこう弁解しています。

 さて、私は4月24日にこのコラムで、中国の医療関係者の証言として、「植物人間説」を紹介した。それは、今年に入って新型コロナウイルスの問題でいろんな話を提供してくれた中国の医療関係者からもたらされたものだった。私は「にわかには信じがたい話」という自分のコメントも記事に添えた上で掲載したのだが、各方面から叩かれた。
 もとより、結果的に金正恩委員長が姿を見せたのだから、コラムの読者諸氏に誤解を与えた点があったとすれば、そこのところはお詫び申し上げたい。その後、その医療関係者に追加で話も聞いてきたが、「中国が医師団を北朝鮮に急遽、派遣したこと」及び「金正恩委員長が北朝鮮医師の手によって、心臓疾患の手術を受けたこと」は間違いないと、いまでも主張している。いずれにしても今後、さらに情報を精査し、記事を提供していく所存である。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e1803fb3393d9cafd05a4a0b35f41a5f47240153?page=1

「植物人間説」は、あくまでも「中国の医療関係者の証言」として紹介しただけで、自分は「にわかには信じがたい話」だとコメントしているという言い訳です。

しかしながら近藤氏が「植物人間説」を述べた記事のタイトルは「金正恩は「植物状態」に…? 関係者らが明かした「重病説」最新情報 じつは年始から「異変」はあった 」です。
要するに「にわかには信じがたい話」“だが”思い起こせば「じつは年始から「異変」はあった」として、「植物人間説」を強く支持するタイトルになっています。

記事中の記載も「ある中国の医療関係者」から聞いた話として極めて具体的なものです。

だが、「爆弾証言」が入ってきた。金正恩委員長は、手術を受けて「植物人間化した」というのだ。
ある中国の医療関係者は、私に次のような詳細な経緯を明かした。

金正恩委員長は、地方視察に出かけている最中、突然心臓に手を当てて倒れた。同行していた医師団は、慌てて心臓マッサージを施しながら、近くの救急病院に搬送した。
同時に、中国に、『すぐに医療団を北京から派遣してほしい』と緊急要請した。中国は、北京にある中国医学院阜外医院国家心血管病中心と人民解放軍301医院の医師らを中心に、器材なども含めて50人近い派遣団を組み、特別機で平壌へ向かった。
ところが、中国の医師団を待っていては助からないと見た北朝鮮の医師団は、緊急の心臓ステント手術を行うことにした。執刀に当たったのは、中国で長年研修を積んだ北朝鮮の心臓外科医だった。
心臓ステント手術は、それほど難易度の高い手術ではない。最も重要な血管にステントを入れる施術自体は、1分くらいの時間で済ませられる。
ところが、執刀した外科医は、ものすごく緊張して、手が震えてしまった。かつ、金正恩ほどの肥満体を執刀した経験がなかった。それで、ステントを入れるのに、8分ほどもかかってしまったのだ。
その間に、金正恩委員長は、植物人間と化してしまった。中国の医師団が到着して診察したが、もはや手の施しようがなかった」

にわかには信じがたい話だが、この中国の医療関係者の証言が事実だとするなら、独裁者の「政治的生命」の最期は、かくもあっけないものだったのだ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72122

ここで近藤氏は「にわかには信じがたい話」としているものの、その後に「たしかに、「異変」はあった。」として「太陽宮殿の参拝を欠席」「他にも「異変」はあった。私は平壌のある旧知の外交官に連絡を取った。」「その後、3月初頭にも、平壌で「異変」が起こる。この外交官が続ける。」「他にも平壌で「異変」が起こり始めていた。」「思えば、祖父の金日成主席、父親の金正日総書記も、「突然死」している。」と述べ、果ては近藤氏が占い師に聞いた「顔に出ていた「悲劇を迎える相」」まで「植物人間説」を支持する情報として記載している。

極めつけは文末の内容です。

2020年1月下旬、北朝鮮新型コロナウイルス流入を防ぐため、中国との国境を封鎖した。国連の経済制裁に加えて、貿易の9割以上を担う中朝国境を封鎖したことで、北朝鮮経済はいよいよ崩壊に向けてカウントダウンとなっていった。
それとともに、金正恩委員長のストレスも、かつてないほどに強まっていったのだろう。暴飲暴食がたたり、デビューした頃は推定80kgだったのが、130kgを超える巨漢となった。そして健康を害していったのである。
今後、金与正体制が順風満帆に行くなどと考える世界の北朝鮮ウオッチャーは、おそらく皆無だろう。中朝国境の町・丹東の関係者が語る。

「すでに4月27日から5月20日までの丹東と大連を結ぶ高速鉄道は、すべて運行停止になった。緊急事態を発令して人民解放軍が中朝国境に増派されるという噂が立っている」

新たな北朝鮮動乱の始まりである。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72122

この部分では近藤氏は既に「植物人間説」を全く疑っていない体です。断定的に「健康を害していったのである」と書き、最後は「新たな北朝鮮動乱の始まりである」と締めくくています。

この記事構成で発信しておきながら“自分はあくまでも「植物人間説」を「中国の医療関係者の証言」として紹介しただけ”なんて言い訳は通用しませんね。



雑感

検察庁法改正の件

韓国の文政権が検察改革をやろうとした時に独裁だとかなんとか言って文政権を非難していた連中は、安倍政権が検事総長の任期を恣意的に延ばせる法改正をしようとしていることについてどう言ってるのかな?

韓国「元慰安婦会見」めぐる議論、6つのポイント(徐台教 | ソウル在住ジャーナリスト。「ニュースタンス」編集長 5/14(木) 16:30)

日本語圏で唯一見つけたまともな論考。日本の主要メディアでこういう見解を示すところがないのが、日本の言論界の偏狭さを物語ってもいそう。

CIA:中国はWHOに圧力をかけて世界中のマスクや防護服を買い漁った?(5/14(木) 18:06配信 ニューズウィーク日本版)

BNDの件もそうだけど西側各国の情報機関が流す中国関連情報は、そもそも中国に対して反共的・民族的・反権威主義的偏見を有している西側メディアよりもさらに反共的な傾向が強いので、そっち方向のバイアスがかかっていると見るべきなんだよね。
典型的なのは中国陰謀論やWHO買収論に言及する際に米トランプ政権の言動を根拠に使うやり方なんだけど、大統領選を控えCOVID-19対応に失敗したトランプ大統領が、有権者の不満の矛先を中国やWHOに向けようとしている政治的思惑の存在をまるっと無視してることが多い。

中国の思惑を決めつけるだけの想像力が、欧米に対しては全く働かない時点でダブスタなんだよね。



赤石晋一郎氏はどこで取材したのか、という話

赤石晋一郎氏名義でこんな記事が出ていました。
「韓国民に謝罪しろ」「水曜集会はやめろ」有名元慰安婦の告発で大混乱の現場を取材した(5/14(木) 17:30配信 文春オンライン)

内容はさておき(いや内容はひどいものですが・・・)、こういう記述があります。

 私は拙著 「韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」 で崔氏に取材した経緯があり、顔見知りでもあった。挺対協ら市民団体に支配された歴史問題を、被害者の手に取り戻したいという思いを何度も聞いてきた。 
 李容洙氏会見の黒幕説は本当なのか。大使館前で崔氏に話を聞いた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b13856e82ce75dc69e85c93c97d85124c5cea2cc

赤石氏は「韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」の著者ですが、上記の文脈で読む限り、赤石氏が直接「大使館前で崔氏に話を聞いた」としか読めません。つまり、5月13日に赤石氏は韓国の日本大使館前にいたか、少なくとも李容洙氏会見の5月7日以降に韓国にいたことになります。

これを疑問に思った徐台教氏がこんなツイートをしています。

赤石氏は5月1日時点で日本にいるとツイートしており、その後に渡韓したのであれば、入国後14日間の隔離を守っていないことになるという指摘です。
それに対する文春の最初の回答がこれ。

文春は「取材は著者と現地記者による特別取材班で行い、その旨記事に追記いたしました。誤解を招く表現で失礼いたしました。」とツイートし、実際に記事末尾に次の一文を追加しています。

※新型コロナ対応のため、取材は著者の赤石晋一郎氏と現地記者による特別取材班で行いました。読者より「誤解を招く表現がある」との指摘を受けましたので、お詫びして訂正申し上げます。2020/05/14/21:20

https://news.yahoo.co.jp/articles/b13856e82ce75dc69e85c93c97d85124c5cea2cc

しかしこの訂正では、赤石氏が現地に行ったのかどうかが不明瞭です。
そのため、徐氏は再度次のツイートをしています。

「少し分かりづらいのですが、赤石さんは水曜集会の現地にいらっしゃったということですよね?現場で赤石さんを見かけた記者もいますが...。明確な説明をお願いします。」

それに対する文春の回答がこれ。

「赤石晋一郎氏が日本で周辺取材を、現地班が現地で当日の様子の取材を担当しています。赤石氏は日本外務省方針に従い渡航を自粛しており、当日現地におりません。」ということで、では「現場で赤石さんを見かけた記者もいます」という話はどうなったかというと・・・

徐氏は「見かけたという方も勘違いだったようですね」と訂正しています。
これに対して赤石氏もツイートして、現地取材はしていない、と明言しています。

まあ、赤石氏と文春が虚偽を述べている可能性もありますが、現地の写真に写っているなど明確な証拠でも出てこない限り証明できるものでもないでしょう。
ただ、だとしたら記事中の以下の表現はやはり読者を誤解させるものであり不適切としか言いようがありません。

(再掲)
 私は拙著 「韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」 で崔氏に取材した経緯があり、顔見知りでもあった。挺対協ら市民団体に支配された歴史問題を、被害者の手に取り戻したいという思いを何度も聞いてきた。 
 李容洙氏会見の黒幕説は本当なのか。大使館前で崔氏に話を聞いた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b13856e82ce75dc69e85c93c97d85124c5cea2cc

普通に読めば、赤石氏が「大使館前で崔氏に話を聞いた」としか読めません。

 しばらくすると挺対協の水曜集会がスタートした。疑惑の渦中ということもあって、100人近くの韓国メディアが周囲を取り囲む。
 新型コロナウイルス対策のため、中学生や高校生、大学生の動員はされず、集会はオンラインで生中継されることになった。
 大使館前には挺対協の主要メンバーや与党議員が顔を揃えていた。尹美香氏は姿を表さなかった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b13856e82ce75dc69e85c93c97d85124c5cea2cc

 水曜集会で音楽に合わせてダンスが始まった。韓国では選挙でもデモでも歌や踊りが定番となっている。傍らには日本政府を糾弾する「公式謝罪」、「法的賠償」という日本語のプラカードが掲げられていた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b13856e82ce75dc69e85c93c97d85124c5cea2cc

これも伝聞である旨の記載が一切なく、赤石氏が直接見聞きしたとしか読めない文章です。

そもそも文春の説明通り「現地班が現地で当日の様子の取材を担当して」いるのであれば、現地取材を担当した記者の名前も併記すべきでしょう。まるで全て赤石氏が取材したかのような文章で赤石氏の名前のみ書かれているのは、他人の取材内容を横取りしたようにも読めてしまいます。

「赤石晋一郎氏が日本で周辺取材を、現地班が現地で当日の様子の取材を担当しています。赤石氏は日本外務省方針に従い渡航を自粛しており、当日現地におりません。」という情報を記事に追記するのではなく、徐氏あてのツイートだけで済ませるのはおかしいと思います。

先進国が防疫失敗の責任の擦り付け合いをしているうちに途上国では人が死ぬ

この件。
トランプ氏、中国との断交示唆 習氏と対話望まず(5/15(金) 3:59配信 AFP=時事)

COVID-19が最初に報告された国が中国であることは間違いありません。
しかしそれは原因ウイルスであるSARS-CoV2の起源が中国であることを意味するわけではありません。
ウイルスの起源を調査することは重要ではありますが、起源が不明のままでは防疫ができないわけでもありません。

防疫に失敗した先進国が最初に疾患を報告した国を非難し責任を押し付けようとする行為は、既に防疫ではなく政治でしかありません。それも多くの場合、防疫に失敗した国の政策責任者が自らの失敗の責任を他に転嫁しようとするものに他なりません。

 米中は、新型ウイルスの起源をめぐり非難の応酬を繰り広げており、両国間の緊張が高まっている。中国・武漢(Wuhan)で昨年12月に発生した新型ウイルス感染症について、トランプ氏は「中国から来た疫病」と称している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f5c6964127b44bb4a3a1360a6df93dbdef87c79b

こういう風に先進各国が“あいつのせいだ”を連呼して、貿易戦争の再開を示唆するなどして緊張が高まれば、経済的に弱い途上国は経済面でも打撃を受け、防疫対策もまともにできず、その結果、多くの犠牲者を出すことになります。

まあ、トランプ大統領にとっては、途上国の何十万人もの命よりも自身の再選の方が重要なのでしょうけどね。



雑感

検察庁法改正

検察庁法改正反対です。

それはそれとして、日本にも韓国と同様の人事聴聞会の制度を入れるべきではないですかね*1
韓国では2003年以降、検事総長の任命に先だって国会で聴聞会を開くことが求められています(国会同意人事ではない)。

黒川氏が何故安倍政権下での与党議員の不祥事を不起訴にしてきたのか、国会で逐一聞いてもらいたいので。
まあ、どうせ嘘つくんでしょうけど。

【外信コラム】中国の責任、国連の場で求めるべき(5/12(火) 8:00配信 産経新聞)

防疫に失敗した国が国民の怒りの矛先を中国やWHOに向けようとする政治的思惑。感染症に直面して国境が防護壁となると信じるが故のナショナリズムの高揚。感染症そのものよりも怒りをぶつけやすい人物・国家に責任を問いたくなる心理。
そんな感じのものに乗っかって、世界中のあちこちで良識が失われつつあり、医学的な感染よりも大きな被害を生み出しそうな状況になりつつあります。

先進国が中国やWHOを政治目的で叩いている間に、途上国では大勢の市民がWHO等の支援を受けられず感染症に無防備なまま、多くの犠牲者を出すでしょうにね。

WHOへの資金を止めたトランプ大統領は、自らの選挙のためなら途上国で何人死のうが構わないとか思ってるというか、そもそもそんなことに興味すらなさそうですが。
まあ、そういうことに興味がないのは、日本社会も同じですけどね。

さて、産経はSARS-CoV2の蔓延に対する責任を中国に問えとか言ってます。米国などでも産経レベルで中国に対する損害賠償とか提起しています。
正直、アホかとしか思えません。

仮に強制力のある判決が出せたとしても、その場合、中国という国家そのものを潰したい、潰しても構わない、10億人以上の市民がどうなろうが知ったことではない、という心境になれるのでしょうか?
特に日本はアジア太平洋戦争の敗戦国ですがサンフランシスコ平和条約では各連合国から賠償放棄してもらった立場ですよね。第一次世界大戦後のベルサイユ条約の例によれば、日本に対しても莫大な賠償を求められても文句の言えない立場でしたよね。
しかも、当の中華人民共和国からも日中共同声明*2で賠償放棄してもらってますよね?

そもそもそれ以前に、SARS-CoV2が最初に発見され同感染症の流行が最初に確認されたのは確かに中国ですが、だからと言って「発生源」であるかどうかは現時点ではわからないんですよね。

また、未知の疾病が発生した国は他国から損害賠償を求められる前例なんか作ろうものなら、今後、疾病発生国の政府はWHO等に発生の報告をしなくなるんじゃないですかね。だって、下手に報告して、その後感染が海外に拡大したら他国から莫大な損害賠償を求められるわけですから。そういうリスクを避けたいと思う国の政府は、未知の疾病にかかった患者を全員抹殺するなりして、疾病発生の事実そのものを隠蔽するでしょうよ。その後、海外でその疾病が発生しても、自分の国が発生源ではないと白を切ればいい。
結果、国の面子のために、弱い立場の市民が大勢死ぬ社会になっていくと。

三浦瑠麗氏「第二次補正案は限界値も見えてる。正直、私は政府の危機感が足りないと思う」(5/12(火) 9:18配信 スポーツ報知)

「政府の危機感が足りない」とか誰でも知っとるわ、とか。
中身が無さすぎだろ・・・



雑感

新型コロナウイルス関連の主な出入国制限(Last Update: 5/6 15:00 (JST))

これを見ると、全ての外国人を入国禁止対象にしている国も少なくない中、入国禁止対象を中国湖北省だけに絞っている韓国の対応が際立つ感(全ての外国人を入国後14日間、隔離対象にはしている*1)。
これでちゃんと感染拡大を抑えているわけなので、体制をちゃんと整えておけば国境封鎖みたいな措置は不要だということを示しているようにも思う。

「後援金流用疑惑」尹美香氏の捜査依頼はソウル西部地検が担当(5/12(火) 20:23配信)

これは詳細がわからないので様子見。慰安婦問題が日本軍政府による戦時性暴力問題であり、日本政府に責任があることに変わりはないけど。
捜査依頼を出したのが「右派民族市民団体「活貧団」のホン・ジョンシク代表」とのことで、この団体の背後関係も知りたいところではある。

韓国、月内の解決案要求 日本の輸出厳格化めぐり(5/12(火) 19:14配信 時事通信)

当然の要求なんだけど、コアの支持層である嫌韓ウヨ層の支持を失いたくない安倍政権が応じるとも思えないんだよなぁ。
日本による輸出規制強化3品目 韓国政府「供給安定した」(5/11(月) 11:35配信)」とあるので、日本は国内の輸出企業の首を絞めただけで終わるのは、小人・安倍のちっぽけなプライドが許さないだろうし。



領海内で他国の漁船が操業してたら領海主張している国としては取り締まって当たり前なんだが

この件。
「日本漁船が中国領海内で違法操業」中国、尖閣問題で逆抗議 ベトナムにも反発(5/11(月) 19:45配信毎日新聞)
尖閣追跡で中国報道官「騒ぎ起こすな」 日本に責任転嫁(5/11(月) 23:23配信 産経新聞)
中国船、尖閣周辺の領海侵入継続 3日連続、今年10日目(5/10(日) 11:52配信共同通信)

これ、経緯としては、まず尖閣諸島(釣魚群島・釣魚台列嶼)の領海内で日本漁船が操業し、それを取り締まる形で中国海警局の公船が、領海内に進入・日本漁船の追尾を行い、日本の海上保安庁の巡視船が日本漁船を護衛する形をとっている、というものです。

中国は尖閣(釣魚)の領有権を主張しているわけですから、その領海内で日本漁船が操業することを傍観するわけにはいきません。
それは日本も同様で、尖閣(釣魚)領海内で中国漁船が操業していたら、当然追い出しにかかるわけです。

現状で中国が取っている対応は、領有権紛争のある当事国として当然の対応に過ぎません。

もっとも、その当然のことも“尖閣(釣魚)領有権に関する日本政府の主張は100%正しい”と思い込んでいる人たちには理解不能でしょうけど。

日本政府の公式見解通り、“尖閣(釣魚)は日本固有の領土であり、領有権紛争は存在しない”という認識に疑いを持たない人たちから見れば、“中国、許すまじ”的な感情になるのも当然です。あるいは、“中国の挑発は安倍政権を助けている”みたいにも見えるかも知れませんね。

相手国はどのような主張をしており、相手国からはどう見えるか、という基本的な考察に欠けている意見ばかり見かけるのも、もう正直うんざりですね。

個人的には、わざわざこの時期に、好んで尖閣(釣魚)領海内で操業しようという日本漁船の思惑の方が気になります。実際、示威目的で尖閣(釣魚)領海内に行きたがる右翼活動家は少なくありませんからね。
さらに言うなら、一般的にもめごとを避けたがる海上保安庁等の日本当局が、当該日本漁船が尖閣(釣魚)領海内まで行くの黙過したのにも何らかの思惑があるのかもなぁ、とか思ってます。


さて、中国側の主張を踏まえて考察すると次の展開はおそらく、中国漁船が尖閣(釣魚)領海内で操業し、それを取り締まろうとする日本の巡視船を中国海警船が妨害して、中国漁船をエスコートするような事件が近いうちに起きるんじゃないのかな、と推測できます。
で、“中国漁船は海上民兵だ”とか“領海侵犯だ。撃沈すべき”とか言い出すバカが量産されるのであろうと。

日中両政府外交当局の会見

2020年5月11日 中国外交部発言人 記者会見

  法新社记者:两艘中国海警船上周在钓鱼岛海域驱逐一艘日本渔船,日方已就此向中方提出交涉。你对此有何评论?中方是否已向日方进行解释或道歉?

  赵立坚:据了解,近日,中国海警在钓鱼岛海域例行巡航时,发现一艘日本渔船在中国领海内非法作业。中国海警船依法对其实施跟踪监控,要求其立即停止有关活动,退出相关海域,并坚决应对了日本海保厅船只在现场的非法干扰。中方已通过外交渠道就此向日方提出严正交涉,敦促日方立即停止侵权行为。

  我要强调的是,钓鱼岛及其附属岛屿是中国固有领土,在钓鱼岛海域开展巡航执法是中方固有权利。我们要求日方恪守四点原则共识精神,避免在钓鱼岛问题上制造新的事端,以实际行动维护东海局势稳定。

https://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/t1777931.shtml

2020年5月12日 日本外務省 外相記者会見

中国公船による尖閣諸島周辺での日本漁船追尾

テレビ朝日 大石記者】尖閣諸島周辺の領海に,中国の公船が3日連続で侵入しましたが,中国による度重なるこうした行為の受け止めと,あと,中国外務省の副報道局長が「日本側による違法な干渉だ」などと主張したようですが,これも含めて受け止めをお願いします。

【茂木外務大臣】ご指摘の事案については,東京と北京の双方におきまして,局長,公使レベルで中国側に対して累次にわたり厳重に抗議をし,日本漁船の接近,追尾を直ちに止め,速やかに我が国の領海から退去するよう強く求めたところであります。
 新型コロナ,この問題で様々な国の協調,連携が必要と,こういう状況でありまして,中国側にはこの問題についても前向きな対応を強く求めたいと,こんなふうに思っています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000956.html#topic6

中国側が言及している「四点原则」とは多分、これ。

日中関係の改善に向けた話合い

平成26年11月7日
 日中関係の改善に向け,これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが,今般,以下の諸点につき意見の一致をみた。

1 双方は,日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2 双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3 双方は,尖閣諸島東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4 双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page4_000789.html

上記の3について、「異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐ」という観点からすると、日本政府は日本漁船が尖閣(釣魚)領海内で操業しないように自粛を求めるべきでしょうね。もちろん、それは中国漁船に対しても言えることですが。

大仁田厚氏の主張

こんなことを言っていたようです。

大仁田厚「許してはいけない」「領土は国民の財産」尖閣周辺への中国船侵入に抗議

2020年5月11日 16時36分 デイリースポーツ
 プロレスラーで元参議院議員大仁田厚が11日、自身のツイッターを更新。ハッシュタグ「#尖閣周辺への中国船侵入に抗議します」を付けて思いを述べた。
 「以前から思っていたことだが中国の領海侵犯は許してはいけない問題だ 南シナ海の問題もそうだし 香港!台湾にも中国は政治的圧力を強めているのだ! もし日本の漁船が中国の領海を侵犯したら? 拿捕されたり攻撃を受けるだろう 領土は国民の財産なのだ」とつづった。

https://news.livedoor.com/article/detail/18244050/

大仁田氏の言う「もし日本の漁船が中国の領海を侵犯したら?」というのが、中国にとってはまさに今起きていることなわけなんですよね。
「拿捕されたり攻撃を受けるだろう」とも言ってますが、いきなりそんなレベルのことをせず、漁船を領海外に退去させようとしているのが現状です。

自分たちの視点でしか考えられない。
相手側の視点を想像することもできない。

何とも情けない社会になったものですねぇ。