嫌韓とは差別助長の思想


今さらですが、差別と言うのは、本来区別すべき基準と何ら因果関係のない基準をもって待遇に差を設けることを指します。

日本、韓国、北朝鮮は、いずれも国家である以上、評価すべき点もあれば批判される点もあります。
あるいは、日本人、朝鮮人は、単なる民族のくくりでしかない以上、その中には善人もいれば、悪人もいるし、有能な人もいれば、無能な人もいる。
まあ、当然のことですね。
そもそも同一人に対する評価さえ、ある面においては評価できるが、別の面においては批判されるべき、ということも往々にしてあります。
要は、国家や民族、個人についてすら、多様性があるということです。

嫌韓の問題は、そういう多様性を無視した上で、韓国や韓国人といった大きなくくりで嫌悪するだけでなく、その嫌悪感を公言する際に捏造を含めた根拠を用いて差別を煽っている点にあります。


さて、本題。
このブログ(アメブロ版含む)では、嫌韓とかネトウヨの主張に対して、その誤りを指摘することが多いのですが、そういうことをしているとこういうコメントがきたりします。

ネトウヨの言うことは全て間違っているのか?」
蒼雲 2008-08-11 21:59:03

http://ameblo.jp/scopedog/entry-10121527906.html

嫌韓の主張はすべて出鱈目か?」
家賃0円 2008-06-17 15:20:23

http://ameblo.jp/scopedog/entry-10106774094.html

「すべて」というのは、典型的なひっかけであって、昔センター試験を受けた時、誤っている記述を選択する問題で「すべて」などという記述があったら気をつけるように注意されたことを思い出します。

端的に言うと、ネトウヨ嫌韓が根拠に用いる資料そのものは事実であるという場合は、確かにありますが*1、それを根拠とした結論が差別主張になっている場合がほとんどであって、その意味では「嫌韓の主張」(ネトウヨも)は「出鱈目」と言っていいでしょう。

ひとつの例として、以前挙げたエントリ「嫌韓サイトの旅・在日認定?」(http://ameblo.jp/scopedog/entry-10139828130.html)があります。


また、別の例として、以下を検討してみたいと思います。



嫌韓の主張のうち、デタラメではないと家賃0円が保証した内容です。

そうだな、例えば・・・

1.日本海(東海)表記問題に関して、日本の働きかけで“日本海”という呼称になったのではないし、いまさらこれを変更する必然性も無いという主張
2.CoreaがKoreaになったのは日本の嫉妬によるという奇妙な言い掛かりに対しての反論
3.剣道、柔道、茶道、華道、折り紙etc.が韓国起源という、いわゆる“起源捏造”に対する反論
4.竹島(独島)の帰属は、国際機関に付託して“話し合い”で決着すべき
5.他国の教科書内容に干渉すべきではない

すべての嫌韓が同じというわけではないが、これらの主張(反論)の内容は、ほぼ一貫している。
俺は少なくとも、これらの主張がデタラメとは思えないね。
というより、日本人として至極真っ当な意見じゃないか?

家賃0円 2008-06-23 09:48:56

http://ameblo.jp/scopedog/entry-10106774094.html

厳密に言えば、主張に対してデタラメとかどうとか言うのはおかしいわけで、主張の根拠になっている事実に対して言うべきことです。

いずれにせよこれらは、韓国や韓国人を差別する根拠になるかと言えば、なりません。
まあ、一つずつ見て行きましょう。

日本海表記問題

1.日本海(東海)表記問題に関して、日本の働きかけで“日本海”という呼称になったのではないし、いまさらこれを変更する必然性も無いという主張

挙げた5点中、最もまともに近い言い分ですが、嫌韓主張はほぼ常に情報不足なので鵜呑みに出来ません。
この問題は、おそらく1990年代後半くらいから拗れたように感じますが、それ以降はともかく言い出した当初はそれほど日韓両国のウヨクが騒ぐような話でもなかったのではないかな?
拗れた以降の韓国メディア*2やウヨクの主張は論外なのが多いのは確かでしょう。でも最初はどうだったのか?


この日本海呼称問題が生じたのは1992年の第6回国連地名標準化会議から。

日本外務省が次のようにHPで述べていますが、政府レベルでの主張は1992年からのようです。

1.近年になって突然、日本海の単独呼称にごく一部の国から異議が唱えられ始めました。
 韓国等が日本海の名称に異議を唱え初めたのは、1992年の第6回国連地名標準化会議が最初です。それまでは、二国間でも、国際会議の場でも、日本海の名称に異議が唱えられたことはありませんでしたが、突然、韓国等は日本海の表記を「東海(East Sea)」と単独に表記するか、あるいは日本海と「東海」を併記すべきであると主張してきたのです。

http://www.mofa.go.jp/Mofaj/area/nihonkai_k/index.html

ちなみに国連地名標準化会議は、1967年から5年ごとに開催されているのですが、別に韓国が第5回までは容認していたのに第6回の会議で突然持ち出した、というわけじゃありません。第5回会議に参加していたのは韓国モントリオール総領事のWon Hwa PARK氏だけでしたが、第6回会議にはByung Yong SOH国連副大使の他3人の随員が参加しています。

年月日 開催地
第1回 1967/9/4-22 ジュネーブ Geneva
第2回 1972/5/10-31 ロンドン London
第3回 1977/8/17-9/7 アテネ Athens
第4回 1982/8/24-9/14 ジュネーブ Geneva
第5回 1987/8/18-31 モントリオール Montreal
第6回 1992/8/25-9/3 ニューヨーク New York
第7回 1998/1/13-22 ニューヨーク New York
第8回 2002/8/27-9/5 ベルリン Berlin
第9回 2007/8/21-30 ニューヨーク New York

http://unstats.un.org/unsd/geoinfo/uncsgnreports.htm

1987年の第5回会議から1992年の第6回会議で韓国代表が増えた理由としては、1991年9月17日の韓国国連加盟がひとつの理由と言えます。
とは言え、それだけにしては参加者4人は多すぎます。

この辺は韓国政治の動きにそれほど明るくないので想像になりますが、1992年と言えば韓国民主化後最初の大統領である盧泰愚政権の末期にあたり、巨大与党・民自党を作ったものの政権の求心力が弱く野党の攻勢により、前政権批判や光州事件(1980)の検証などを余儀なくされている状況です。外交面で何らかの成果を出したいという考えがあったのかも知れません*3
そういった国威発揚的な目的もあったのかも知れませんけど、むしろ韓国籍船舶数の増加に伴う実務上の問題かも知れません。実際、パナマ船籍を別格とすれば韓国船籍は世界的にも有数の船数を誇ります。
これら韓国船籍で”東海”表示の海図を使っている(1990年代当時に使っていた)とすれば、表記問題は実務的に割と(国威などより)深刻な問題と言えます*4


そもそも、韓国がそれほど強硬な主張をしていたのかどうかがよくわからない。
で、第6回国連地名標準化会議の報告書を確認してみたところ、下記のように記載されていた。

報告書P21(PDF上ではP26)

151. The representative of the Republic of Korea made a statement concerning the history of the naming of the sea to the east of his country. It was known in Korea as Tong-Hae (East Sea), but was often referred to by others as the Sea of Japan. He requested that a name or names acceptable to the parties concerned be determined through consultation, in accordance with relevant resolutions of the Conferences. The representative of the Democratic People's Republic of Korea expressed his country's willingness to consult and negotiate on this matter with other parties concerned. The representative of Japan said that the name "Sea of Japan" had already been accepted world wide and that the introduction of other names would cause confusion and would not be in line with the aim of standardization. It was suggested that the relevant parties consult each other.

http://unstats.un.org/unsd/geoinfo/UNCSGN-Reports/6-UNCSGN-Rpt-en.pdf

ここを読む限りでは、韓国の主張は「韓国では歴史的に”東海”と読んでいたので、”東海”か”日本海・東海”併記に出来ないか」という程度のものに過ぎません。これに対して日本は「既に”日本海”として知られているのだから、別の名前を紹介するのは混乱を巻き起こす」と主張しています。会議では関係国で話し合ってくれ、という結論になっています。

さて、韓国船籍で”東海”表示の海図を使っていたという仮定が正しいなら、日本の態度は度量が狭いようにも思えますね。韓国側としては最初から「併記でも可」という態度なのに対して、日本は併記すら認めないわけですから*5
そして、実務上の問題だったのに、いつの間にか国威の問題にすりかえられた、のかも知れません。

まあ、想像なので断言は出来ませんけど。



ただ、言えるのは日本海表記問題に関して過剰に反応したのは、日本も韓国と同様だということ。

嫌韓バカの言う、

1.日本海(東海)表記問題に関して、日本の働きかけで“日本海”という呼称になったのではないし、いまさらこれを変更する必然性も無いという主張

にしたところで、「いまさらこれを変更する必然性も無い」*6と言うのなら、併記にしてはいけないとする必然性も無いわけです。
ところが、嫌韓バカは併記も認めない立場なわけです*7

「併記も認めるな」というのは過剰反応としか言いようがありません。そういう意味で、嫌韓バカは火病ってるといえますね。何をそんなに熱くなってるんだか、というのが私の感想です。

日本にも韓国にも、しょーもないことで熱くなってるバカがいるな、ということは言えますけど、別に日本人が韓国全体を嫌う理由にはなりませんな。

日本人としても「韓国では”日本海”のことを”東海”と呼ぶのか」と理解すればよいだけの話。タタール海峡を日本では”間宮海峡”と呼ぶのと同じことです。


CoreaとKorea

次は、嫌韓の理由としては挙げるのもばかばかしい話。

2.CoreaがKoreaになったのは日本の嫉妬によるという奇妙な言い掛かりに対しての反論

これって、韓国のネトウヨが広めた都市伝説にすぎず、韓国人自身から否定されています。
http://members.at.infoseek.co.jp/koreawatcher/docs/corea.htm

それとも、ごく一部のバカが妄想を振りまいたら、その責任を民族全体、国民全体が負わねばならないのでしょうか*8

もしそうなら、2008年11月くらいから広まった国籍法改正によって中国人によって日本が乗っ取られるという都市伝説の責任を日本人全体が負わなければならないでしょうね。為に日本人が差別されても甘受しろということでしょうか?正直言って冗談じゃありません。そういうバカを野放しにしていることに忸怩たる思いは感じますけど、それを差別の正当化に使われたらたまらない*9


そもそも、「CoreaがKoreaになったのは日本の嫉妬によるという奇妙な言い掛かり」を具体的に誰がしているというのでしょうか*10

嫌韓バカのやり方は、こういった基本的事実を押えず、誰とも知れない一韓国人(と思しき人を含む)の言動の責任を韓国人全体に押し付ける、という無茶苦茶なものです。

だから、私は嫌韓主張をしている奴をバカと呼んでいるわけですよ。
その言動を行った直接的な主体である特定の個人、団体に対する指摘や批判、追及なら、それは真っ当な主張であって、バカとは呼びません。

ちなみに、http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/921861.htmlでは、「KoreaとCoreaの決定的な違いは、最初の1文字だけです。にもかかわらず、どうして彼らはそんなにも改変したがるのでしょうか。」という記事を紹介していますが、日本の読みにも「にほん」と「にっぽん」がありながら、対外的には「にっぽん」を使いたがるこだわりがあるので、韓国の例が特別におかしいわけじゃありません。

嫌韓特性の一例

・・・日本を憎むために嘘をでっち上げて、でっち上げた嘘によって日本に対する憎しみをますます強くする。本当にあの国の人々は救いがたい国民性です。

ちなみに、韓国の知識人たちは、流石にこんな俗説を信じていないようです。

http://blog.goo.ne.jp/wikiediter/e/60ce40c38e66f6900d7d39ecff6a7169

この2文を続けて書けるとは驚きです。韓国の知識人たちは信じていないと書きながら、「本当にあの国の人々は救いがたい国民性です」などと韓国人差別を平然と行えるわけですから。
救いようが無いほど韓国人に対する差別感情に染まっていて、自分の書いた文章すらろくに読めていないのでしょうねぇ。



起源捏造?

3.剣道、柔道、茶道、華道、折り紙etc.が韓国起源という、いわゆる“起源捏造”に対する反論

これも上記と同じですね。
「剣道、柔道、茶道、華道、折り紙etc.が韓国起源という」主張を具体的に誰がしているのか?それは韓国人一般の理解と同じなのか?
そういう基本を全く押えていない。

例えば、剣道について韓国人は韓国起源などと主張しているのだろうか?
大韓剣道会のサイトでは剣道の歴史について以下のように書いている。

こんにちの剣道競技の原形は撃剣である。
中国の〈史記〉や〈漢書〉では、撃剣が相手と一対一で競う武術だと説明されている。 我が国でも、君子国の例から見て、早くからこの撃剣が行われていたであろうが、それに関する記録はない。 だが、我々が世界に誇らしく掲げられることが、まさに新羅花郎たちが撃剣を修練していたという事実だ。 〈三国遺事〉の金庾信の条に見られる「剣術を錬磨して国仙になった。」という内容から、撃剣が得意できなければ最高の花郎である「国仙」や「風月主」に上がれなかったことが分かるし、〈三国史記〉や〈花郎世紀〉では、花郎たちが月庭のような一定の修練場所に集まって体系的に撃剣を修練していただけでなく、個人的に深い山岳や洞窟に入って克己訓練や心霊訓練まで受けていたことが記録されている。 当時の剣器もやはり、熾烈な戦争をしながら、三国すべてが東洋最高の水準に上っていた。

こうした刀剣の機能と技器が後代に日本に伝わってこんにちの剣道の母胎になったのだが、これは誰も否認できない歴史的事実だ。 確かに近代の数百年間、我々の物をきちんと守れないまま、武を敬遠して刀剣に関して蔑ろにしながら自愧に陥っていたが、中国の〈武備志〉に紹介された唯一の剣法である〈朝鮮勢法〉と現存する世界最古の剣法である〈本国剣法〉は世界剣道史に大きな光になっているのだ。

http://koreawatcher.at.infoseek.co.jp/docs/d-kumdo1-4.htm

これが、「剣道が韓国起源だと韓国人が言っている」説の根拠となりそうな部分であるが、「こんにちの剣道競技の原形は撃剣」であり、新羅時代の花郎たちが撃剣を行っていたことの記載にすぎません。「刀剣の機能と技器が後代に日本に伝わってこんにちの剣道の母胎になった」についても、現実に東アジア内での交流を通じて、技術の往来があったことは否定できません。

全日本剣道連盟にしても、

剣の形態やその操法も、幾多の戦いの中で時の流れと共に、変化していきました。そもそも、各地域にある文化とは、人類の移動、交流とともにお互いに影響しあい、発展をとげていったものです。そして次第に人種、国境を超えた世界人類の文化となっていくものです。

http://www.kendo.or.jp/kendo/opinion.html

と言っており、日本刀の鎬についての独自性の他は、別に外国からの影響を排除していません*11
その上で、

剣を扱う技術は世界の各地で生まれ、確立されてきました。しかし、その中で、われわれが行っている剣道とは、「剣道の歴史」にも記されているような、日本で育った歴史的背景をもった剣道を指しています。

http://www.kendo.or.jp/kendo/opinion.html

と述べています。
「日本で育った歴史的背景をもった剣道」とは、次のように説明されています。

一方、戦国時代から江戸時代初期にかけて、剣の操法としての剣術に多くの流派が生まれ、江戸中期には、剣道具が開発されました。この結果、竹刀によって行う剣術の稽古(竹刀打ち込み稽古)が定着し、道場における剣術の試合も幕末にかけて急速に広まり、明治維新を経て大正初期には、撃剣・剣術という語を「剣道」と改め、これが日本の武士の精神に基づく「武道」であると説きました。

剣道は、このように日本の歴史の中で生まれ育ってきたのです。つまり「剣道」とは他のいずれの地で生まれたものでもなく、このような経過とともに発展してきた剣道のことなのです。

http://www.kendo.or.jp/kendo/opinion.html

現在、競技としての「剣道」と言えば、この日本の剣道を指しますが、競技としての「剣道」が日本で生まれたことを韓国は否定しているでしょうか?

ある者は剣道が日本の物だと考えて、白眼視したり忌避しようとするが、これは誤った考えだ。
日本が剣道をスポーツとして開発したことは彼らの自慢であり、その根が我が国にあることは我々の誇りである。

http://koreawatcher.at.infoseek.co.jp/docs/d-kumdo1-4.htm

「竹刀によって行う剣術の稽古(竹刀打ち込み稽古)」=「スポーツ」であるとするなら、大韓剣道会は競技としての「剣道」が日本で生まれたことを否定していないことが明らかだろう。

「その根が我が国にある」とは、「競技としての「剣道」」以前の撃剣が、新羅時代に行われていたことを指すに過ぎない。

このようなことで”起源捏造”だと騒ぎ立てる嫌韓バカは、ナイーブなのか、井の中の蛙なのか。まあ、多分ただの差別バカなのだろう。


竹島問題

4.竹島(独島)の帰属は、国際機関に付託して“話し合い”で決着すべき

もちろん、”話し合い”で決着すべきなのは当然ですが、「すべての嫌韓が同じというわけではないが、これらの主張(反論)の内容は、ほぼ一貫している。」というのはどうでしょうか?嫌韓バカの主張には、「韓国は竹島を武力で占拠している。日本も対抗して武力行使すべき。」というのが多いようですが?

例えば、こういう嫌韓ブログがあります。

すいか泥棒 日曜版 : 「島が返るまでが竹島の日です」とか。
(前略)
4.領土回復の為の武力行使自衛権の範囲内であって現行憲法に抵触しない。
(中略)
最終的には武力なくして竹島問題の解決はあり得ないと考えています。無論これは「日本側が武力行使も辞さない姿勢を示さない限り韓国側が外交的手段を通じての問題解決に応じる可能性はゼロである」という意味に於いてであって、対韓武力行使という事態が実際に生じるかどうかについては「あくまで韓国の出方次第」という態度でいなくてはなりません。

http://subakdoduk.exblog.jp/5160434

ご丁寧にも”もし武力行使に至っても、それは韓国のせい、日本悪くない”という言い訳つきです。

他にも似たような嫌韓サイトは多数ありますね。
武力行使すべきなのに、自衛隊は軍隊じゃないのでできないのが残念”みたいな態度とか。それにからめて社民党非難とか、そんなんばっかりです。

「“話し合い”で決着すべき」なんてことを言ってる嫌韓なんてほとんど見ません。


見るとすれば、「国際機関に付託して」と条件付けした場合のみ。
その場合すら、”どうせ国際機関に付託することなんてないだろう”と見込んで言っているのがありありと感じられる書き方ばかりです。家賃0円も例外ではなさそうですが。
例えば、こんなとこ。
「韓国よ逃げるな!竹島紛争を国際司法裁判所で決着つけよう!」
www.issuikai.jp/katudou_file/katudou20tusima.html


ちなみにここで言う「国際機関」とは国際司法裁判所のことですが、嫌韓バカがこれをやたら持ち出したがるのは、日本は竹島問題について国際司法裁判所に付託することを提案したことがあるからにすぎません。

以下は嫌韓ではありませんが、興味深い記事です。
3/4 日本と韓国、竹島問題の基礎知識 [社会ニュース] All About
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3/4 日本と韓国、竹島問題の基礎知識 [社会ニュース] All About
3/4 日本と韓国、竹島問題の基礎知識 [社会ニュース] All About

しかしながら、

「だったら、北方領土尖閣諸島も裁判で」という声もあるかと思いますが、それはちょっと・・・

ロシアも中国も安保理常任理事国なので、拒否権があります。それによって彼らは制裁を回避できるわけですから、判決に従わないおそれが濃厚なので、それだったら今は両国とも政治的に過渡期だし、しばらく待とうか、というところだと思います。

こういうのはダブルスタンダードと言えるでしょう。その直前で「先進国も途上国も、いろいろな国が、この国際司法裁判所で国境紛争を平和的に解決してきました。アメリカとカナダだってそうしたことがあります。」とまで言っているのですから、常任理事国かどうかが問題というのはおかしな話です。


で、竹島問題に戻りますが、嫌韓バカが依拠している日本による国際司法裁判所への付託提案ですが、これがいつの話か?

外務省のサイトでは以下のように書かれています。

1.我が国は、韓国による「李承晩ライン」の設定以降、韓国側が行う竹島の領有権の主張、漁業従事、巡視船に対する射撃、構築物の設置等につき、累次にわたり抗議を積み重ねました。そして、この問題の平和的手段による解決を図るべく、1954(昭和29)年9月、口上書をもって竹島の領有権問題を国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案しましたが、同年10月、韓国はこの提案を拒否しました。また、1962(昭和37)年3月の日韓外相会談の際にも、小坂善太郎外務大臣より崔徳新韓国外務部長官に対し、本件問題を国際司法裁判所に付託することを提案しましたが、韓国はこれを受け入れず、現在に至っています。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/g_teiso.html

1954年9月と1962年3月のほとんど半世紀前の2回に過ぎず、いずれも日韓基本条約締結前、つまり日韓国交が成立していない時期です。
言い換えると、日韓の国交成立以降、日本政府は一度も竹島問題の国際司法裁判所への付託を提案していないと言うことです。

「韓国よ逃げるな!竹島紛争を国際司法裁判所で決着つけよう!」とか言う以前に、日本は追っかけてすらいない*12わけです。本気で日本政府が考えていたなら、1965年の国交成立後でも、1987年の韓国民主化後でもできましたし、1988年のソウルオリンピックに合わせて提案することもできたはずですが、それをやっていません。外交・経済交流上の問題を避けようとしたのか、裁判になると日本に不利な事実が出ると踏んだのか*13、あるいは他の理由があるのか。少なくとも1993年から1994年のごく短い期間を除いて全て自民党が与党だったにも関わらず、国際司法裁判所への付託の提案は行われてはいません。

したがって、

4.竹島(独島)の帰属は、国際機関に付託して“話し合い”で決着すべき

などという主張は先ず現在の自民党政権に訴えるべきなのですが、嫌韓バカが「自民党竹島問題を国際司法裁判所に提訴しろ」という意見がほとんど言い出さないのが不思議です。まあ、単に不勉強かつ、韓国に対する差別感情先にありき、だからでしょうけど。


私の意見は、国際司法裁判所に付託しようがすまいが、“話し合い”で決着すべきというものです。国際機関にこだわる必要は特にないでしょう。


教科書に干渉?

5.他国の教科書内容に干渉すべきではない

あー、はいはい、具体的には、旧大日本帝国の侵略を正当化・隠蔽・改竄するような教科書の書き換えに対する抗議ね。
http://www.jca.apc.org/~itagaki/history/
別に中国・韓国だけが抗議しているわけでもなく、日本国内からも抗議されているわけだし、そもそも本来なら日本国民自身でそういう侵略を正当化する書き換えに対し抗議していくべきなわけ。

嫌韓バカは、中国韓国が日本の教科書内容に抗議するのは許さないが、日本が中国韓国の教育内容を反日教育と非難するのは構わない、と考えているらしい。

そもそも、実際に侵略された国の国民が侵略した国の教科書を気にするのが不自然とは思わないのだが。まして侵略を正当化するような論調の教科書であれば文句をつけるのは当たり前、むしろ原爆投下を正当化する米国高官(古くはトルーマン(1958)、最近ではシーファー大使(2008*14))に対して、国民レベルでの非難にも関わらず政府レベルで抗議しない日本のほうが異常だろう。


侵略を正当化する教科書書き換えに対し、中国・韓国などからの抗議は干渉だと言い、国内日本人からの抗議は「中韓の手先」だとか「在日」だとかレッテル貼るようなやり方をするから、嫌韓バカと(俺から)呼ばれるのだよ。



まとめ

さて、例として挙げた5つの嫌韓の主張を、事実部分と主張部分に分けてまとめます。

   事実部分 主張部分 評価
1.日本海表記問題 日本の働きかけで“日本海”という呼称になったのではない 日本海から変更してはならない、併記も認めない 事実ではあるが併記してはなならない理由も特にない
2.CoreaとKorea CoreaがKoreaになったのは日本の嫉妬によるという奇妙な言い掛かり 言いがかりの否定 韓国人自身が否定してるので嫌韓の根拠にならない
3.起源捏造? 剣道、柔道、茶道、華道、折り紙etc.が韓国起源という、いわゆる“起源捏造” 捏造という反論 一般的な事実ではない。ごく一部の極論をおおげさにとらえすぎ
4.竹島問題 - 竹島(独島)の帰属は、国際機関に付託して“話し合い”で決着すべき 主張のみ。嫌韓はむしろ武力行使の主張が多いのでは?
5.教科書に干渉? - 日本の歴史教科書で侵略を正当化する内容に書き換えてもに干渉するな 主張のみ。侵略を正当化する書き換えは非難されて当然。


「1.日本海表記問題」については、韓国が併記案を示していることを無視している点で事実の曲解と言えるだろう。
「2.CoreaとKorea」「3.起源捏造?」について言えば、韓国人一般の考えとは言えず、まあ嫌韓バカのデタラメと言ってよいだろう。
「4.竹島問題」「5.教科書に干渉?」は、単に嫌韓の主張を示しただけでデタラメとか評価するところではないが、「4.竹島問題」については嫌韓一般の主張とは言えないし、「5.教科書に干渉?」について言えば、そのような主張には同意できないとしか言えないし、そもそも韓国の教育内容を”反日教育”だと言って非難している嫌韓バカにそんなことを言う資格はなかろう。



嫌韓バカの主張と言うのは、韓国政府の具体的な政策に対する論理的批判でもなければ、問題行動を起した特定の韓国人・団体に対する非難でもなく、ごく一部の極論や的外れな内容で韓国人全体に一般化した非難、誹謗、中傷を行っているにすぎません。

そのような言いがかりに値する言動をとっていない大多数の韓国人にとって、嫌韓バカのいう罵倒や誹謗中傷は全く正当性のない差別行為に他なりません。のみならず、ネットなどで公開される嫌韓バカの差別言動は、ネトウヨとは異なる一般のネット利用者にも差別感情を植えつけるという悪影響を生じます。嫌韓バカのやっていることは人として最低の行為です。

*1:ここは十分に気をつけるべき点。実際、嫌韓バカのデタラメ指摘をやっていると「議論に勝つこと」が目的化してしまうことがあり、つい「嫌韓バカの言う事は何でも否定」という陥穽に陥ることがあります。デタラメを広めるのはバカでもできますし何の注意力も必要としませんが、デタラメを指摘するにはそれなりの知識と注意力を必要とします。これはデマとの戦いにおける非対称性とも言えます。

*2:全部追っている訳ではないので断言できないが、保守・右翼メディアだけだったりして。日本で言えば産経みたいな。

*3:中国・ソ連との国交回復など成果は少なくないが、国内保守派を満足させるためだったとか、まあ想像に過ぎませんけど

*4:もちろん韓国船側で書き換えなどの対応を行うという手もありますが、コスト的に馬鹿にならないでしょうね。

*5:そういえば、ネトウヨの中には南京事件などの歴史問題で両論併記を主張するのがいたように思いますが・・・

*6:日本側にとってはそうでしょうし、おそらく韓国の船舶でも実務上の問題があるのなら日本海表示の海図に変更しているでしょうから、それなりに正しい話ではある。

*7:認めるなら、そもそも問題にならなかった

*8:そういう風潮を放置している責任くらいはあるかも知れないが、民族差別を甘受しなければならないような内容では全く無い。

*9:もっとも日本国内で、日本人が差別されること自体、まずありえませんが。

*10:ネット上の無責任な匿名(あるいは無名な一個人)発言以外に

*11:当たり前ですからねえ・・・

*12:国際司法裁判所への付託という面において

*13:日露戦争時の韓国占領を今さら掘り起こされるのも面白くはないでしょうからねぇ。

*14:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-08-04/2008080401_01_0.html