本多勝一「中国の旅」に記載された百人斬り

文庫版「中国の旅」の目次 - 誰かの妄想・はてな版」でも書きましたが、全体で300ページほどのうち、南京事件に関する記述はわずか40ページ程度、そのうち「100人斬り」に関する記述はさらに少なく、本文中では以下のわずか1ページです。(P234)*1

中国の旅 (朝日文庫)

「これは日本でも当時一部で報道されたという有名な話なのですが」と姜さんはいって、二人の日本兵がやった次のような「殺人競争」を紹介した。
向井敏明」と「野田毅」の二人の少尉に対して、ある日上官が殺人ゲームをけしかけた。南京郊外の句容から湯山までの約一〇キロの間に、一〇〇人の中国人を先に殺した方に賞を出そう・・・。
 二人はゲームを開始した。結果は「向井」が八九人、「野田」が七八人にとどまった。湯山に着いた上官は、再び命令した。湯山から紫金山まで約一五キロの間に、もう一度一〇〇人を殺せ、と。結果は「向井」が一〇六人、「野田」が一〇五人だった。 こんどは二人とも目標に達したが、上官はいった――「どちらが先に一〇〇人に達したかわからんじゃないか。またやり直しだ。紫金山から南京城まで八キロで、今度は一五〇人が目標だ」
 この区間は城壁に近く、人口が多い。結果ははっきりしないが、二人はたぶん目標を達した可能性が強いと、姜さんはみている。

文庫版ではこの他に2ページ程度の注釈がありますが、全体からすればわずかと言えます。右翼はこれに噛み付いたのを端緒に南京事件否定論に至ったわけです。歴史修正主義者の唯一の戦略である一点突破全面展開の元祖とも言えるかも知れません。