ハーグ条約に対する態度に関しては実は日弁連が一番差別的だったりする

前回批判した伊藤弁護士と同じ立場でハーグ条約に反対しているのがハーグ「子の奪取」条約の批准に慎重な検討を求める市民と法律家の会です。
賛同者には、上野千鶴子氏などが名を連ねています*1が、見てわかるとおり女性の権利を守る系の団体です。これら女権団体がDV夫に苦しめられてきた妻らを離婚や離婚後の生活の面で支援してきたこと自体は評価できます。
女性の権利が制限されてきた歴史的な経緯から、DV被害を受けても容易に離婚できない女性は確かに存在しますし、離婚後の母子家庭で貧困に苦しんでいるのも確かです。
しかしながら一方で、生活スタイルが多様化し、夫が家事・育児に積極的に関っている事例も増え、昔とは逆に妻から夫に対するDVも顕在化しつつあり、離婚で父子家庭になった場合の貧困も増える傾向にあると言えます。
女権団体は本来なら性差に関係なくこういった苦しんでいる男性にだって手を差し伸べるべきだと思うのですが、どうもハーグ条約絡みでは女権団体自らが性差に囚われているように思えます。

「幼い子から母親を奪うことは、子どもの福祉に反する不当な結果」*2という伊藤弁護士の台詞は全く頭の痛くなる男性差別発言でした。最初に幼い子から父親を奪ったのはその母親なのに。

排外主義者、特にネット上の排外主義者はえてして女性差別主義者でもありますが、国境を跨いだハーグ条約の問題になると、男性差別を行なう女権団体と排外主義者が手を取り合って協力するというのが興味深い現象です。
父親=外国人、母親=日本人という暗黙の等式が両者を結びつけたのでしょう。

それはさておき

ハーグ条約関連で、女権団体と排外主義者以外に、第三の勢力が存在します。

日本弁護士連合会です。
実はこの日弁連の態度がある意味、一番醜悪です。

日弁連は2011年2月18日に、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約ハーグ条約)の締結に際し、とるべき措置に関する意見書」というのを出しています。
基本的に日弁連ハーグ条約に反対の立場ですが、締結するならばと出した条件がこれです。
内容的には、DVがある場合は返還しなくてもよいようにしろとか、概ね妥当な内容ですが、一点とてつもなくひどい内容が含まれています。

(4)ハーグ条約に遡及的適用がない旨の確認規定を担保法上定めることや、国内における子の連れ去り等や面会交流事件には適用されないことを担保法上明確化し、かつ周知すること、

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/110218.html

前半はともかく、後半部分です。

離婚した当事者による子どもの連れ去りは何も国際離婚に限らず、日本国内の離婚でも頻繁に生じています。もちろん日弁連もそれを知っています。しかし、日弁連は国際離婚における子の連れ去りに対して返還してもいいけど、国内離婚における子の連れ去りについては返還しなくてもいいように法整備せよ、と言っているわけです。

一般的な事例で言うなら、日本人母が連れ去ってきた子どもを外国人父に返すのはいいけど、日本人母が連れ去った子どもを日本人父に返すのは認めない、ということになります。

要するに日本人別居親だけ差別的に不当に扱えと日弁連は意見しているわけです。
正直言って、正気か?と思いましたよ。

排外主義者も真っ青な日本人差別推奨の意見書です。


女権団体、排外主義者、そして日弁連、この三者がハーグ条約に否定的な立場として共闘しているのは、ヒトラーマザー・テレサが一緒にダンスを踊っているようでめちゃくちゃ違和感があります。