「内地の公娼とどう違うのか?」とか真摯に疑問に思う人はまず吉見氏の「従軍慰安婦」を読むべき

当時の公娼が法的に充分に保護されていたかというと、疑問の余地はいくらでもありますが、それを踏まえてもやはり従軍慰安婦とは違い、状況的には従軍慰安婦の方がより酷い状況だったと言えます。
従軍慰安婦が当時の公娼とどう違うのか知りたい」と言っている人のうち、少なくない数の人が、単に従軍慰安婦問題を矮小化したいだけの浅ましい意図で発言しているものと思われますが、それらも含めて、とにかくまずは吉見義明氏の「従軍慰安婦」を読め、と言いたいですね。

吉見氏「従軍慰安婦」は今から見れば、中国での事例についての記載が少ないなど当時知られていた情報の制約から物足りない部分はありますが、上記のような初歩的な疑問に答えるには充分な内容を持っています。

他の国も売春婦を雇っていた? - 誰かの妄想・はてな版」で引用した部分では略したところに回答の一端がありますので、その部分を略さず引用します。

複合的人権侵害

(略)

 まず第一に、軍隊が女性を継続的に拘束し、軍人がそうと意識しないで輪姦するという、女性に対する暴力の組織化であり、女性に対する重大な人権侵害であった。そして、公娼制度の変種であるかのごときかたちをとっていた場合でも、従軍慰安婦たちは、公娼制度のもとで認められていた廃業の自由や通信・面接の自由でさえ保障されない、まったくの無権利状態に置かれていたのであった(もっとも、公娼制度における娼妓に認められた権利を過大視することはできない。この点で慰安婦を「売春婦型」と「性的奴隷型」にわける見解は同意できない。)。しかし、多くの場合、料金を払うという形式をとったために、将兵はこの重大な人権侵害に気づくことが少なかった。内地の公娼を利用するのと同じ感覚で、軍慰安所に通い意識することなく女性たちを傷つけたのである。

売春婦には何をしても構わない、と考えているような人には理解できないでしょうが、公娼と慰安婦の違いについて真摯に知りたいと思う人にはわかると思います。

それにしても、吉見氏の「従軍慰安婦」は基本書なのに、読まずに否定する人が多すぎますね。そりゃ読まなければいくらでも脳内でワラ人形化できますけど、そんなものを否定しても自己満足以外に得るものはありませんよ。