逃げる稲田、追う平山

橋下煙幕に惑わされずにちゃんと追求する記者もいるのは、現在のような状況では救いですね。
ハシモト舌禍事件(2013/5/13)直後はさすがに大手メディアが歴史修正主義者の稲田大臣*1を追及しています。

稲田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年5月14日
(平成25年5月14日(火) 8:39〜8:46  於:合同庁舎4号館6階620会議室)

(問)おはようございます。フジテレビの和田です。
 昨日インターネットを見ていましたらば、大臣の古い野党時代の勇ましい質問がたくさん出ていまして、時の法務大臣をつかまえて、所掌外だと逃げる法務大臣竹島問題ですかね、不法占拠とも言えないのかというような勇ましいのがたくさん残っていまして、私もちょっと全うに質問しなきゃいけないと思って、あえてお伺いをするんですが、このところ、村山談話がちょっと話題になっています。それからあと河野談話ですね。この二つについて、大臣の何かとんがった話を伺おうというわけでも何でもないんですが、この二つの談話についての大臣の見解をお伺いをしたいと思っています。

(答)和田さんから聞かれると、すごくグサッと来るのですけれども、法務大臣に私は竹島の問題の法的根拠を聞いたのは、私は法務大臣であれば、法的根拠なくとか、そういう曖昧な言い方ではなくて、法務大臣としての法的な見解をお述べになるべきでしょうということで、その問題を所掌外と逃げるので、いや、法務大臣なんだから、やはり法的なことについては、きちんと法的な用語で表現をなさるべきじゃありませんかということでずっと詰めてきたわけです。

(問)逆に、閣僚の一員としてでも結構なんです。私は、別にそこから外れた話を伺うというわけでも何でもなくて、閣僚の一員として村山談話河野談話をどう評価をされるかということでも結構です。

(答)閣僚の一員というお尋ねだとすれば、私は行政改革担当大臣として、安倍内閣の一員だというふうに認識をしておりますので、村山談話ですとか河野談話ということについては官房長官が日ごろお述べになっているとおりでございます。

(問)カメラがあるからというわけではないんですが、官房長官が日ごろお述べになっていることでもいいんですが、総理なんかでも侵略の定義がないとかファジーな部分があったりして、大臣御自身が官房長官がお述べになっていることでも構わないんですが、こう理解をしているという形でお話しいただけるとありがたいんですが。

(答)この間、内閣委員会でかなり前副総理の岡田(克也)さんが質問されておられたんですが、官房長官は自分としては引き継いでいくというような答弁をなさったかと思います。

(問)大臣もお変わりないんですか。

(答)そうですね。また総理も予算委員会の中で、談話自体は引き継ぐし、また必要があれば、また新たな談話も出すということもあるということもおっしゃっていたかと思います。

(問)村山談話河野談話、引き継ぐということ、そのものは大臣は別にそれに対して不満であったり、異論であったりということはないんですか。

(答)ここで私の個人的な見解を述べることは差し控えたいなと思います。安倍内閣の一員としておりますので。

(問)時事通信の大沼ですけれども、昨日、大阪の橋下市長が従軍慰安婦問題に関して必要だったというような発言をされたことによって、与野党からかなり批判の声が上がっていますが、あとかつ韓国政府からも批判のコメントが出されていますけれども、そうした発言について、大臣はどのように受け止められたか。

(答)他党の代表のおっしゃることについて、安倍内閣の行革担当大臣としてはコメントすべきではないと思いますが、ただ、私はやはり慰安婦制度というのは、大変な女性の人権に対する侵害だと思っています。

(問)あともう一点、それに関連して、沖縄の米軍に対して風俗産業をもっと活用したらどうかというような発言もあわせてされていますけれども、そちらのほうはどうでしょうか。

(答)全て橋下(日本維新の会)共同代表の話を聞いたわけではありませんが、ちょっと私は意味が分かりません。

http://www.cao.go.jp/minister/1212_t_inada/kaiken/2013/0514kaiken.html

結構フジテレビの記者がしつこく追及していますが、大手メディアがこの関連で稲田大臣を追及したのはこの日だけでした。

稲田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年5月24日
(平成25年5月24日(金) 9:09〜9:25  於:合同庁舎4号館6階620会議室)

(問)インターネットメディアIWJの平山と申します。初めて会見に参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
 これまで再三話に出ているようで恐縮なんですけれども、橋下市長の慰安婦に関する一連の発言について大臣の御見解を改めて確認させていただきたいんですけれども、以前の定例会見で、慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害だと思っておりますという発言をされていらっしゃるかと思うんですが、他方で昨年8月の産経新聞紙上で慰安婦を強制連行した事実はなく、当時は慰安婦は合法だったという旨の論説を寄稿していらっしゃるかと思うんですけれども、現在の大臣の御見解としまして、戦時中に慰安婦の強制連行はやはりなかったという御認識に現在も立っていらっしゃるのかということをまず確認させてください。
 それから、先日の会見での慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害だという御発言は、強制連行がなかったという認識に基づいた上での御発言だったのか。あわせて御見解をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

(答)「河野談話」に関する慰安婦の問題については現在官房長官の下で検討されておりますので、私の所管外のことについて発言するのは差し控えたいと思います。前回、私が申しました慰安婦制度が女性の人権に対する重大な人権侵害であるということは、現在であれ、たとえ戦時中であれ、私は同じだと思います。ただ、戦時中は慰安婦制度ということ自体が悲しいことであるけれども、合法であったということもまた事実であるということだと思います。

(問)つまり合法ではあったけれども、合法であったということは今の御見解、御認識としてはやはりあるということですか。

(答)いや、合法であったという言い方をすると、人権侵害ではないというふうに誤解されると私は思うので、今であろうとも戦時中であろうとも、女性の人権に対する重大な侵害であることには変わりがないと思います。

http://www.cao.go.jp/minister/1212_t_inada/kaiken/2013/0524kaiken.html

ここでは平山記者がかなり突っ込んだ質問をしています。野党時代の稲田氏の暴言を示した上で問い詰めるのもうまいと思います。このやり取りは稲田氏も「慰安婦は合法」と言ったことが話題となっていますが、個人的には、「合法であったという言い方をすると、人権侵害ではないというふうに誤解されると私は思う」という稲田発言をとったことも大きいと思います。少なくとも稲田氏に関しては今後、合法論を展開する際に「人権侵害ではないというふうに誤解される」ことを理解した上で敢えてする発言ということになります。
主体が稲田氏でなくとも、「合法であったという言い方」が聞き手には「人権侵害ではないというふうに」聞こえるのは当然ですが、まあそういう言い逃れをする人はネットでもリアルでも少なくありません。

さて、平山記者はここで終わらず、6月に入って再度質問をしています。

稲田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年6月4日
(平成25年6月4日(火) 8:43〜8:57  於:合同庁舎4号館6階620会議室)

(問)すみません。インターネットメディアIWJの平山と申します。よろしくお願いいたします。
 ちょっと今の話とは別件で恐縮なんですけれども、ちょっと従軍慰安婦の関連で確認させていただきたいことが2点ございます。よろしくお願いいたします。
 大臣、5月24日の定例会見で、戦時中、慰安婦制度は、悲しいことではあったけれども合法であったことは事実というふうに御発言されております。第1点目としまして、この合法の意味合いなんですけれども、戦時中であった、いわゆる公娼制度が存在していたという意味合いだったのかをまず確認させてください。まず一旦ここで切らせてください。

(答)橋下さんの発言に関して、この慰安婦の問題については記者会見でも2回お話をしたと思います。それ以上に私から申し上げることはありません。

(問)じゃ、この合法ということに関して、韓国側から非難する声明も大臣に対して出されているんですけれども、それに対する受けとめですとか、閣議の中で何かお話しされていることとかというのはありますでしょうか。

(答)そのときの記者会見の議事録を全て読んでいただければ、私の真意はわかっていただけたはずであるというふうに思います。

(問)それは韓国側にということですか。

(答)韓国側というか、そこに書いてある、私が言いたかったことはわかっていただけると思います。

(問)言いたかったことというのを再度お聞きしたいんですけれども、どういうことなのか、改めてお話しできませんでしょうか。

(答)そこでも言っていますように、慰安婦制度は、現在であろうと、また当時であろうと、女性の人権に対する侵害であるという、そういうことです。

(問)その上で、合法であるとおっしゃられたかと思うんですけれども。

(答)それは、過去の私の一議員時代の原稿に基づいて聞かれたので、そこはお答えをいたしましたけれども、つけ加えることはありません。

(問)じゃ、今はお立場が変わられたということですか。

(答)いえいえ、そういうことではなくて、これ以上お話しすることはないということです。

(問)わかりました。

http://www.cao.go.jp/minister/1212_t_inada/kaiken/2013/0604kaiken.html

これはかなりしつこく追及していて稲田氏も辟易しているのが伝わってきます。最初の回答から相当警戒しているのもわかりますね。取材対象者が権力を持った公人である場合、記者は相手を辟易させることに躊躇すべきではないので、この追及はすばらしいと思います。
内容的には、逃げに入っている稲田氏を追う平山氏といった感じで「すでに話した通り」一点張りの稲田氏に深く斬りこむには至っていませんが、「慰安婦制度は、現在であろうと、また当時であろうと、女性の人権に対する侵害である」発言は、前回会見と同趣旨ですが、まあヒットと言えるでしょう。


稲田大臣が5月24日と6月4日に発言した「慰安婦制度は、現在であろうと、また当時であろうと、女性の人権に対する侵害である」という認識は結構大きな話だと思います。これは慰安婦制度が合法かどうかに関係ありません。
日本政府が過去において人権侵害の制度を運用していたことを日本政府の大臣が認めたわけですから賠償乃至救済の責任が当然に発生するんじゃないでしょうかね。