自公連立政権の原発政策
「原発ゼロ」公明が追加公約、「加憲が現実的で妥当」
2013.6.27 13:48 [《参院選2013》各党の公約]公明党は27日、夏の参院選の追加的な公約となる「当面する重要政治課題」を発表した。憲法改正をめぐり、環境権などの新たな理念を条文に加える「加憲」が「現実的で妥当な方式」とした上で、発議要件の緩和について「硬性憲法の性格を維持すべきだ」と慎重な姿勢を示した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130627/elc13062713500069-n1.htm
9条については、自衛隊の存在や国際貢献の在り方を加憲の議論対象とする方針で、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の三原則堅持も明示した。
原発政策に関しては、新規着工を認めず「速やかに原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」と明記し、既存原発の再稼働は原子力規制委員会が策定した基準を満たすことを前提に「国民、住民の理解を得て判断する」とした。
消費税率の引き上げをめぐっては、8%への引き上げ段階で現金を支給する「簡素な給付措置」を実施し、10%引き上げの際には生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」の導入を掲げた。
「原発ゼロ」とか言ってますけど自民党と連立している以上、明らかに嘘ですね。
公明党の公約はこれです。
原発の新規着工を認めず、原発の40年運転制限制を厳格に適用します。新しいエネルギー社会を創造しつつ、原発への依存度を段階的に減らし、可能な限り速やかに“原発に依存しない社会・原発ゼロ”をめざします。自民党との政権合意では、省エネルギー・再生可能エネルギー等により、可能な限り原発依存度を減らすことで一致しています。
https://www.komei.or.jp/news/detail/20130628_11599
再稼働については、40年運転制限制、バックフィット(最新の知見を適用)、活断層等の徹底調査をはじめとする厳しい規制の下で、原子力規制委員会が新たに策定した厳格な規制基準を満たすことを大前提に、国民、住民の理解を得て判断します。
また、使用済み核燃料の再処理は、直接処分への転換を含め、立地地域に配慮しつつ、見直しを検討します。併せて最終処分問題についても責任を持って解決の道を検討していきます。高速増殖炉もんじゅは廃止します。
対する自民党の公約はこうです。
エネルギー制約の解消は、最大の成長戦略である。そのためには、多様なエネルギー源の開拓と多角的な調達先の確保が必要であり、再生可能エネルギーの最大限の導入、安全が確認された原発の活用、高効率火力(石炭・LNG)の導入、低廉なLNG の確保等を進める。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/economic_recovery/121104.html
原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。
https://www.jimin.jp/policy/manifest/
公明党 | 自民党 | 違い | |
---|---|---|---|
原発ゼロを目指す | 目指す | 記載なし | 自民党は明言せず |
原発依存度を減らす | 目指す | 記載なし | 自民党は明言せず |
原発再稼動 | 容認 | 容認 | 同じ |
安全性の判断主体 | 原子力規制委員会 | 原子力規制委員会 | 同じ |
再稼動の理解主体 | 国民、住民 | 地方自治体 | 自民党は自治体の理解であって住民の理解にあらず |
地元の理解による制約 | 理解を得た後判断 | 理解を得る努力のみ | 自民党は理解を再稼動の条件としていない |
つまり、自公連立政権総体では、原発ゼロは目指さないし、原発依存度を減らすことも保証されていません。再稼動の条件となる地元理解にしても自民党の公約では自治体の首長が認めればOKとなります。まあ、公明党の「国民、住民の理解」だって漠然としていて、何をもって「国民、住民の理解」とするのか不明瞭ですが。
自公が対立しそうなのは、地元自治体の首長の理解も得られない場合です。公明党の公約では「国民、住民の理解を得て判断」するとなっていますが、自民党は「理解が得られるよう最大限の努力」をするだけです。「努力したけど理解を得られなかったが、必要なので再稼動します」という言い訳が可能です。もっとも地元の理解が得られない場合でも、公明党は「国民の理解」にすりかえることができますけどね。
そもそも「可能な限り速やかに“原発に依存しない社会・原発ゼロ”をめざします。」とか「可能な限り原発依存度を減らす」とか、マイルストンが何一つない努力目標に過ぎませんので、何も約束していないのと同じです。
次期参院選で自民党・公明党が参議院での過半数を取ることはほぼ確実です。自民党単独で過半数になるかは微妙ですが*1、自民党にとっては維新やみんなの閣外協力を取り付けるのもそう難しいわけではありませんので、公明党のブレーキとしての力はこれまでと比べても相当弱いものになるでしょう。
参院選後、期限も明示しない公明党が原発ゼロを推進する可能性はほぼ皆無とみてよく、結局のところ、電力業界と癒着している安倍自民党が原発再稼動を進めるのは目に見えています。
まあ、有権者はそれでも自公に投票するんでしょうね。そして、次に事故が起こるまで再び眠り続けると。結局、原発事故の犠牲は、生者の意識を変えることすらできず、形だけの慰霊の陰で忘れ去られるのでしょう。