日本と韓国・社会意識の比較の一例

国連軍・韓国軍慰安婦に関しては、以前取り上げたことがあります。その時取り上げた国連軍・韓国軍慰安婦の話は主に1950年代のことですが、淪落行為防止法が成立した1961年以降も主に駐留米軍相手の国家売春は続いており、それは戦後日本の占領軍慰安婦やパンパンなどと類似した存在だといえるでしょう。

‘基地村女性管理’朴正熙 親筆署名文書 公開

登録 : 2013.11.06 19:26修正 : 2013.11.07 00:41
ユ・スンヒ議員 "国家が性売買を容認・管理した証拠"
基地村浄化対策文書
 6日、国会で開かれた女性家族委員会国政監査で、朴正熙前大統領の直筆サインがされた‘基地村女性浄化対策’文書が公開された。(写真参照)当時、淪落行為防止法によって厳格に禁止されていた性売買を国家が容認し管理したという証拠だが、女性部は実体把握もできていないことが明らかになった。 基地村被害女性は国家政策のために被害を被ったとし、国家を相手に損害賠償訴訟を準備していることが明らかになった。
 ユ・スンヒ民主党議員が国家記録院から提出させ公開した‘基地村女性浄化対策’は1977年4月に作成されたもので‘政務2’で作成したことになっている。 ユ・スンヒ議員室は「当時、大統領府政務室で作成されたと推定される」と明らかにした。
 政務室長の決裁を経て同年5月2日、朴正熙大統領が署名した文書は当時全国62ヶ所の基地村に9,935人の女性が生活していると把握していた。 文書は△性病退治△周辺整頓△生活用水△その他事項の4項目で対策案を用意した。 当時、基地村女性たちにとって問題であった性病対策と基地村区域再整理、きれいな水の供給などの内容を含んでいる。
 その他事項で基地村女性たちに専用アパート供給計画を明らかにしていることが目につく。 ユ議員は「この計画は後に公娼論難として問題化され白紙化された」と説明した。 ‘韓国性売買政策に関する研究’で博士学位を受けたパク・ジョンミ漢陽大研究教授は「基地村女性を政府次元で管理したという文書の中で、大統領のサインがある文書は多くない。史料的意味がある」と話した。
 だが、女性部はこのような基地村被害女性に対する実態調査要請を受けても調査さえしていないことが明らかになった。 ユ議員が「当時性病にかかった基地村女性は強制的に収容生活をさせられた。 事実上、国家が組織的に性売買を管理したわけだ」と指摘すると、チョ・ユンソン長官は「該当文書を初めて見る。 被害者支援の次元で文書が作成されたと見られる。 資料を見て全般的な考証作業を行う」と答えた。 これに対しユ議員は 「昨年キム・クムネ前長官に同じ質問をし、調査するという答弁を得た。 1年間何の調査もしなかったということか」と問い質した。
 論難が交わされるとキム・サンヒ委員長が直接立って、「昨年の国政監査でも状況を把握して政策を樹立しろと要求した。 進展がないようだ。 長官がこの部分と関連して報告もまともに受けておらず、把握も出来ていないことに問題がある」と指摘した。
 政府が傍観する中で基地村被害女性たちが国家を相手に損害賠償を請求する訴訟を起こすことにした。 この日、基地村被害女性の支援団体であるセウムト シン・ヨンスク代表は<ハンギョレ>との通話で「政府が米軍を相手に事実上慰安婦を運営したという証拠が続々とあらわれている。 はやい時期に被害事例と証拠を集めて民主社会のための弁護士会と共に被害を賠償せよとの集団訴訟を起こす計画だ」と明らかにした。
イ・ジョングク記者 jglee@hani.co.kr

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/15985.html

基地村女性に関しては戦時慰安婦と同一視できない点もありますが、女性に対する人権侵害である点に変わりありません。ハンギョレ記事にある朴正熙のサイン文書は1977年のもので1960年代前半から在韓米軍の規模は著しく減少した後です。1971年、韓国政府は米軍による基地村の環境改善要求に基づき、12月に基地村浄化委員会を設置しています。基地村浄化運動に関しては、評価する上で難しい点があります。記事でも「当時、基地村女性たちにとって問題であった性病対策と基地村区域再整理、きれいな水の供給などの内容を含んでいる。」と書かれているように、擁護する側からは正当化に用いることの出来る運動内容となっています。「軍隊と性暴力―朝鮮半島の20世紀」でも「浄化運動は人種差別や人種間葛藤を減少させ、基地村の衛生や道路状態、照明証明などの環境改善につながったという。しかし、女性の側から見れば、彼女たちに対する当局の統制が一層厳しくなったことを意味した。」(P328)と書かれています。
日本軍従軍慰安婦問題において否認派が、日本軍が性病検査を行っていたことをもって「良い関与だった」と嘯いていることを想起すれば、韓国内右翼勢力が、上記記事に対してどのような言い訳をするか想像するに難くありません。
しかしながら、韓国国内で自国(韓国)の人権問題を政府に対して追及する真っ当な人権活動を、日本では右翼排外主義者たちが自国(日本)政府が追及されるべき人権問題を糊塗し矮小化し、踏みにじるために利用するという状況です。情けないことこの上ありません。

人権問題という視点から1970年代の基地村問題を追及する韓国の人権団体の主張は真っ当ですが、これに比する日本国内の問題は占領軍慰安婦や米軍基地問題と言えます。そして、日本の従軍慰安婦問題に比する韓国の問題は1950年代の国連軍・韓国軍慰安婦問題と言え、人権侵害の度合いは前記よりさらに大きなものと言えるでしょう(比較すべきものではないですが)。

1970年代の基地村問題に関して国会議員や革新系メディアが政府に対し堂々と追及している韓国は、従軍慰安婦問題に関して有力政党・メディアのいずれもが安倍政権に対する追及に及び腰の日本よりも、社会の政治意識としてはまともに思えてなりません。