毛沢東の功罪両面を見る中国、伊藤博文の功の一面しか見ない日本

以前(2013年12月)、こんな記事がありました。

85%が「毛沢東の功績大きい」=7割超が「文革は誤り」−中国紙

 【北京時事】中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は25日、毛沢東生誕120周年を26日に控え、「功績第一、誤り第二」とした毛に対する党の歴史的評価に対し、78.3%が「同意」、6.8%が「低過ぎる」と回答したアンケート調査結果を伝えた。計85.1%が毛沢東の「功績大」を支持した形だ。
 調査は北京、上海、広州など七つの大都市で18歳以上を対象に行われ、有効回答は1045人。毛沢東に対して計91.5%が「尊敬」「尊重」していると答え、「批判的態度」は6.9%。また計90.9%が「毛時代が現在の中国に影響を与えている」との認識を示した。
 毛沢東の主要な誤りとしては、複数回答可で77.2%が「文化大革命の開始」、60.2%が「大躍進」など経済政策、46.3%が「個人崇拝を行い、民主集中制原則を破壊した」を選んだ。(2013/12/25-16:37)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201312/2013122500607

毛沢東中華人民共和国建国の英雄、抗日戦争の英雄であると同時に、建国後、特に晩年においては大躍進や文化大革命の責任者として否定的な評価が下さるべき人物です。毛沢東の思想は多岐にわたり、個々において否定的な見解も肯定的な見解もあります*1中共による統制があるものの、毛沢東崇拝のような一面的な見方しか許容されていないわけではなく、毛沢東の誤りに対して公式に指摘するなど一面的な評価に陥らないような努力はなされています*2
まあ、毛沢東に比べれば小物感がありますが、伊藤博文も近代日本建国における英雄と言えます。初代首相などを務めて近代日本政治体制の確立に大きな功績があったのは確かです。しかし、一方で韓国統監として韓国侵略の責任者であったこともまた事実です。伊藤博文は併合反対論者だったなどと言うのは、保護国という形式での侵略を正当化するものではありませんし、1904年から1909年までの韓国侵略のやり口は非難されるべきものが多いことも否定できません。最終的に韓国併合方針を日本政府が閣議決定した際、それに異を唱えることなく容認していますので、韓国を併合から救おうとしたなどという評価もお門違いというものでしょう。

韓国統監期の伊藤博文を擁護するのは、文革を指導した毛沢東を擁護するようなものです。

一面で功績のある人物でも批判されるべき点があれば、それを避けるべきではありません。それを避けようとするとこうなります。

「けしからん話だ」外務省、中韓両国に抗議

2014.1.20 11:42
 外務省幹部は20日、中国黒竜江省ハルビン駅に初代韓国統監の伊藤博文を暗殺した独立運動家、安重根の記念館が開館したことについて、伊原純一アジア大洋州局長が中国、韓国の両駐日公使に、それぞれ電話で抗議したことを明らかにした。抗議は19日。
 伊原氏は「日本の立場と相いれず大変遺憾だ」と伝えた。外務省幹部は「日本では安重根は犯罪者だという歴史上の評価がある。けしからん話だ」と中韓両国の対応を批判した。
 韓国の朴槿恵大統領が昨年6月に訪中した際、習近平国家主席安重根の石碑建立を提案した。中国側は今回の記念館設立で応じ、歴史問題で連携する構えを見せている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140120/plc14012011430010-n1.htm

安重根記念館 政府、中韓に抗議「テロリストだ」「平和構築に資さない」 菅長官

産経新聞 1月20日(月)12時47分配信
 菅義偉官房長官は20日午前の記者会見で、初代韓国統監だった伊藤博文を暗殺した安重根の記念館が暗殺事件の現場となった中国北東部のハルビン駅に19日に開設されたことについて「極めて残念であり、遺憾だ」と述べた上で、外交ルートを通じて中国と韓国に抗議したことを明らかにした。
 抗議は外務省の伊原純一アジア大洋州局長が19日に中韓両国の在日大使館公使に対し電話で行った。
 菅氏は「安重根は初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ」と強調。「一方的な評価に基づき主張している韓国と中国が連携して国際的に展開するような動きは、地域の平和と協力の関係の構築に資するものではない」と批判した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140120-00000524-san-pol

強権を持って学問や言論を統制している中共の公式見解の方が、学問や言論の自由が保障されている日本の公式見解よりもリベラルだとすれば、何と言う皮肉でしょうかね。

*1:例えば、軍事戦略において、民衆と軍隊の一体化を目指した毛沢東戦略に対しては、その否定と復権が長く繰り返されてきました。

*2:政治的側面があるとはいえ