J-CASTがデマを流すのは今に始まったことではないけど

嫌韓バカに媚びた紙面づくりというのは経営的には正しいんでしょうけど、報道としては失格で衆愚を煽っているようなものです。
まあ、今の日本人の大半は自ら衆愚になることを望んでいるようですが。

「米軍慰安婦」が存在?122人が韓国政府を訴える 日本では「韓国に大ブーメラン」と大盛り上がり

J-CASTニュース 6月26日(木)18時19分配信
 朝鮮戦争が休戦に近付いた1950年代前半から70年代以降まで韓国版の性奴隷制度「米軍慰安婦」が存在し、国家暴力によって女性の人権を奪われたとして2014年6月25日、米軍慰安婦だったという122人の女性が韓国政府を相手取り、謝罪と賠償を求める訴訟を起こした。
 この米軍慰安婦問題は日本では度々報道されてきたが、韓国では「捏造」との反発が強かった。今回、このニュースは韓国内で大きく報じられたが、衝撃が強すぎたのか、ネットの掲示板などに感想を寄せる人は少なく、妙な静けさが広がっている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140626-00000004-jct-soci

基地村慰安婦を「韓国版の性奴隷制度」と言い切るのならば、日本軍従軍慰安婦が間違いなく「性奴隷」であったことを認めざるを得ないわけですが、嫌韓バカにそういうことを求めても無駄でしょうね。日本軍慰安婦問題に対して日本メディアが好んで用いる「いわゆる」や「〜とされる」と言った表現も基地村慰安婦問題では使っていないあたりは、以下に日本メディアが偏狭なナショナリズムに染まっているかを物語っていますが、これも彼らは認めたがらないでしょう。
「この米軍慰安婦問題は日本では度々報道されてきた」というのも牽強付会と言うか、よくこんな恥知らずなことが言えたものだと呆れますね。日本国内で米軍慰安婦問題を「報道」したのは、日本軍慰安婦問題を矮小化する道具としてであって、人権問題と言う認識で報道したことなどほとんどありません。「韓国では「捏造」との反発が強かった」との記述もひどいですね。ネットで簡単に検索しただけでも日本語になっている記事としてもハンギョレ21が2009年5月に「慰安婦-基地村 ハルモニ ‘同病相憐 初の出会い’」という記事で基地村慰安婦を取り上げています。基地村慰安婦問題について批判的に取り上げている記事は1988年には出ていますし、彼女らを救済するNGO団体トゥレバンが活動を開始したのは1986年です*1。2000年代に入ると金貴玉氏や李任河氏らの報告など、国連慰安婦の問題も含めて表面化しています*2
もっとも、日本国内の保守と称する極右勢力慰安婦問題を「捏造」扱いしてきたように、韓国国内にも基地村慰安婦問題を「捏造」扱いした勢力がいたのは確かでしょうが「反発が強かった」の一言で片付けられるようなものかは疑問です。

■米軍人相手の売春を「愛国」だとして教育

 韓国の大手新聞、中央日報などの報道によれば、韓国の「基地村女性人権連帯」などの女性団体連合がソウル市内で記者会見を開き、韓国政府に対して「基地村」の米軍慰安婦制度の被害者に謝罪し賠償しなければならない、と訴えた。女性団体によると、政府は米国との関係を良くするため女性を性奴隷にしようと考えた。そうした女性には10代の娘もいて、人身売買や拉致によって「基地村」に連行され、暴力によって強制的に米軍人の相手をさせられた。彼女たちは警察に助けを求めたが相手にされず、ただ外貨稼ぎに利用され、米軍人相手に売春することが「愛国」であるといった教育までされた、という内容だ。政府による謝罪と一人当たり日本円で100万円の賠償を求めている。
 この韓国政府による「強制的な管理売春」は日本でも度々問題にされてきた。朝日新聞(02年2月24日付)は、韓国の陸軍本部が1956年に編さんした公文書「後方戦史(人事編)」に「固定式慰安所特殊慰安隊」の記述があり、4か所、89人の慰安婦が52年だけで20万4560回の慰安を行った、との記述があるという韓国の慶南大客員教授の発言を掲載している。最近では「週刊新潮」(13年11月28日号)は「朴槿惠大統領の父は『米軍慰安婦』管理者だった」という特集を組み、韓国は売春禁止なのだが「基地村」では売春が政府公認されていて、そこで働く女性は拉致されたケースもあり、彼女たちは一人ずつドラム缶に押し込まれ「補給品」名目でトラックに積まれた、などと書いている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140626-00000004-jct-soci

ここもひどい印象操作を行っているところで、前半では中央日報をひいて今回の提訴を説明しているにも関わらず、後半では「韓国政府による「強制的な管理売春」は日本でも度々問題にされてきた」と記事冒頭の「日本では度々報道」や「韓国では「捏造」との反発」との記述と併せると、まるで韓国では報道されていないか否定的にしかとらえられていないかのような印象を受けます。
しかし、ここで「朝日新聞(02年2月24日付)」とある内容は同日付の中央日報*3でも報道されており、韓国でも問題にされています*4
「「週刊新潮」(13年11月28日号)」の「「朴槿惠大統領の父は『米軍慰安婦』管理者だった」という特集」に至っては、2013年11月6日に韓国のユ・スンヒ民主党議員の請求に応じて公開された‘基地村女性浄化対策’文書に関する話で、ハンギョレ新聞が11月6日付けで「‘基地村女性管理’朴正熙 親筆署名文書 公開」という記事を報道しています。週刊新潮ハンギョレ記事を後追いして扇情的なゴシップネタにしたてただけです。
そもそも「日本でも度々問題にされて」と言う割には、記事であげているのは、「朝日新聞(02年2月24日付)」と「「週刊新潮」(13年11月28日号)」の二つだけ、しかもいずれも韓国紙と同時かその後追い報道でしかないのはどうなのでしょうか?
週刊新潮に至っては、人権問題としてではなく日本軍慰安婦問題を矮小化・否認するための便利な道具として使っているだけです。ちなみに「彼女たちは一人ずつドラム缶に押し込まれ「補給品」名目でトラックに積まれた」というのは、新潮記事が勝手に解釈しただけで引用している「韓国の慶南大客員教授」である金貴玉氏の発言ではなく、「軍隊と性暴力―朝鮮半島の20世紀」にもそのような記述はありません。
新潮記事の特徴は、日本軍慰安婦問題に関する証言は捏造扱いして「証拠はなんら見つかっていない」*5とする一方で、韓国軍慰安婦については拉致されたという証言を根拠に強制連行と決め付けるダブルスタンダードにあります。
さらに言えば、J-CASTは「「基地村」では売春が政府公認されていて、そこで働く女性は拉致されたケースもあり」と書いていますが、参照している「週刊新潮」(13年11月28日号)には“基地村慰安婦”が拉致されたケースなど記載していません*6。曲解を利用した新潮の差別記事をJ-CASTがさらに改変して捏造を積み重ねるという、新潮とJ-CASTの共同作業による性差別・民族差別と言えるでしょう。

テキサス親父の対韓国侮辱プロパガンダに同調するJ-CAST

「日本完全勝利!河野談合の呪縛から解き放たれる」
 韓国内では一時期、この関係の軍の資料が閲覧禁止だったという。先の朝日新聞によればこの「米軍慰安婦」は隠ぺい工作が行われたのか「韓国でもほとんど知られていない」。しかし09年には韓国系アメリカ人の元慰安婦が米国で提訴するなどの動きもあり、韓国内外で徐々に知られるようにはなっていた。週刊新潮の記事も韓国では話題になったのだが、朝鮮日報の14年2月17日付けの電子版では、朴正煕元大統領が米軍慰安婦総責任者で米軍から給与をもらっていた、という虚偽の動画がインターネットに流れているとし、大韓民国の歴史を歪曲し辱める行為を根絶するため各種外国のサイトを監視する部署を大統領直属機関に置かなければならない、などと書いている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140626-00000004-jct-soci

ここもJ-CASTのほとんど捏造と言っていい印象操作です。「先の朝日新聞によればこの「米軍慰安婦」は隠ぺい工作が行われたのか「韓国でもほとんど知られていない」」と書かれていますが、朝日記事(2002年2月24日)には「隠ぺい工作が行われたのか」などとは書かれておらずJ-CASTが勝手に追加した内容です。さらに朝日記事(2002年2月24日)で報道されたのは朝鮮戦争時の慰安婦であり、基地村慰安婦とは単純に同一視できません。
週刊新潮の記事も韓国では話題になった」のは、週刊新潮が基地村慰安婦を利用して日本軍慰安婦問題を否認・矮小化しているからで、別に基地村慰安婦に触れたからではありませんが、J-CAST記事はそう思わせるように誘導的な記載になっています。
朝鮮日報の14年2月17日付けの電子版では、朴正煕元大統領が米軍慰安婦総責任者で米軍から給与をもらっていた、という虚偽の動画がインターネットに流れている」と記載されている件ですが、これはテキサス親父と称する活動家による右翼プロパガンダ動画のことで事実虚偽と言ってよいのですが、J-CASTはテキサス親父のプロパガンダに加担するということでしょうかね。
なお、「朴正煕元大統領が米軍慰安婦総責任者」という点については、基地村慰安婦が朴正煕政権期に政府管理下にあったことを指しており、その意味では事実ですが、同じ基準を日本に当てはめると1958年まで赤線地帯という売春許可地区があったことを持って、“吉田茂がパンパン総責任者”と言ってよいことになります。

 韓国ではこのニュースが大々的に報じられているのだが、インターネット上は妙な静けさが広がっている。各メディアのコメント欄や掲示板を見ても、この件に関するコメントはなかなか見つけることができない。それほど驚き信じられない出来事ということなのか。やっと見つけたコメントは、
  「韓国人慰安婦の人権侵害で米国を糾弾しなければならない。米国は韓国に謝罪も賠償も行わない。韓国人慰安婦の人権を守ろう!」
などといったアメリカへの八つ当たりだった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140626-00000004-jct-soci

基地村慰安婦に関してアメリカを非難することが「アメリカへの八つ当たり」になると思う感覚が既に異常と言えます。同じ基準を日本に適用すると、RAAで占領軍用慰安婦とされた女性に対する人権侵害の全責任は日本にあり、利用した米軍側には一切責任がないということになりますが、そんなことは日本の左派論者でも言っている人はまあいないでしょう*7

 一方日本では、「従軍慰安婦」問題で韓国から激しい攻撃を受けているせいなのか「韓国に大ブーメラン!!! 」などとはしゃいだ感じのコメントが大量に出て大騒ぎになっている。
  「わはは〜これが歴史の真実ってヤツだwアメ、韓国政府、聞いてるか?」
  「他人事だとおもしれえなw」
  「これは日本完全勝利!これで河野談合の呪縛から解き放たれるのかな」
などといった書き込みが出ている。また、韓国政府が「米軍慰安婦」を否定すれば、日本に対して行っているように、次はアメリカを訴える事になるのではないか、などと考えている人が結構多い。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140626-00000004-jct-soci

日本のネット民の感覚の異常さが浮き彫りになりますが、まあそういうコメントを日本の代表のようにとらえるJ-CASTの感覚の異常さと言ったほうが良いかもしれませんね。

*1:http://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2007/09/ngo-2004.html

*2:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120617/1339946702

*3:http://japanese.joins.com/article/331/24331.html

*4:中央日報には「国防軍事編纂研究所の関係者」の弁解が述べられていますが、記事全体としては「「捏造」との反発」などは見受けられません。もっとも熱心に報道されたわけではありませんが、日本社会が慰安婦問題に対して向けた報道姿勢と大差あるとは言えません。

*5:http://www.gruri.jp/topics/13/12051100/index_2.html

*6:新潮記事は朝鮮戦争時の韓国軍慰安婦について拉致があったと記載していますが、基地村慰安婦については記載していません。ちなみに韓国軍慰安婦の拉致のケースは、金貴玉氏が聞いた証言を根拠としていますので、この証拠採用基準を適用するなら日本軍慰安婦の多くは朝鮮人の事例も含めて拉致・強制連行であったと言えます。

*7:RAAに関して言えば、まともな論者のほとんどは日本政府と米軍の双方の責任に言及しており、どちらかを免罪するようなことはありません。むしろ日本右翼論者などが日本政府のみを一方的に免罪する傾向が強く、その基準を基地村慰安婦に適用するなら、“米軍のみの責任で韓国政府には一切責任がない”となってしまいます。