植村隆氏による週刊文春に対する提訴理由を裏付ける池上彰氏発言

週刊文春西岡力氏を相手に民事訴訟を起こした植村隆氏の会見の一部です。

 その当時、西岡氏は記事では「朝日に限らず、日本のどの新聞も金さんが連行されたプロセスを詳しく報ぜず、大多数の日本人は当時の日本当局が権力を使って、金さんを暴力的に慰安婦にしてしまったと受けとめてしまった」と書いておりますが、しかし、その後は私だけを狙い撃ちにしております。98年ごろから"捏造"という言葉に変わりました。同じ91年の記事に対して、評価を変えてしまっているんです。フレーム・アップだと思います。
 そして結局、その流れで2月6日号の「週間文春」は、私を"捏造記者"だとレッテル貼りをしました。これはフレーム・アップの延長線上だと思います。
 この記事が原因で、私の転職先の神戸松蔭女子学院大学にいやがらせ、抗議の電話が殺到しました。そして私が勤務している北星学園大学には、更に多くの抗議のメールや電話がかかってきます。そうした抗議の電話の一部はインターネット上に公開されて、さらに憎悪を煽り立てています。
 標的は大学だけではありません。私の家族、娘にまで及びました。娘の写真がインターネット上に晒され、誹謗中傷が書き連ねられています。
 たとえばこんなのがあります。"こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。親爺が超絶反日活動で…稼いだ金で、という意味でしょうか…贅沢三昧に育ったのだろう。自殺するまで追い込むしか無い"と書いてあります。
 私のパートナーは韓国人です。私の娘は父親は日本人で、母親は韓国人です。ヘイトスピーチのような、コリアンを差別するような言葉まで出てきます。
 私は「週刊文春」の捏造というレッテル貼り、そして西岡氏の言説がこうした状況を引き起こしたのではないかと考えています。私は言論の場でも意見を発表しています。法廷の場でも捏造記者でないことを認めてもらおうと思っています。

http://blogos.com/article/103130/

西岡記事が、植村氏や家族に対する名誉毀損・脅迫行為を煽った、という内容と言えるでしょう。提訴に対する週刊文春や西岡氏の反応はこのようなものです。

 提訴を受け、週刊文春編集部は「記事には十分な自信を持っている」とコメント。西岡氏は「言論人が言論で批判されたのであれば言論で返すべきではないか。なぜ訴訟に出たのか理解できない。私の指摘は言論の自由の範囲内と考えている」と話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150110-00000077-san-soci

要するに、“文春記事の内容に間違いはない、言論の自由の範囲内だ”ということで、文春記事が「自殺するまで追い込むしか無い」と言った脅迫行為を誘発したとは認めないという反論ロジックでしょう。
実際、文春記事が、植村氏や家族に対する個人攻撃を煽ったという因果関係を裁判で証明するのは、なかなか難しいことだと思います。文春側の反論として、“植村氏や家族に対する脅迫行為は文春・西岡としても許せないが、それは自分たちの文春記事とは関係なく、第三者が勝手にやったことだ”という主張が考えられますからね。

ところが産経系のネット記事で、池上彰氏が書いた記事に興味深い記述がありました*1

 この問題に関して言えば、元朝日記者の植村隆さんがひどい個人攻撃を受けてしまった。そこら辺の経緯は私も良く分からないからコメントできないですけど、ただ植村さんが最初は神戸かなんかの大学の先生に決まっていたでしょ。あの時、週刊文春がそれを暴露した。あれはやりすぎだと私は思いましたね。こんなやつをとってもいいのか、この大学への抗議をみんなでやろうと、あたかも煽ったかのように思えますよ
 これについては週刊文春の責任が大きいと思います。植村さんが誤報したのだとしたら、それを追及されるのは当たり前ですが、だからといってその人の第二の就職先はここだと暴露する必要があるのか。それが結局、個人攻撃になっていったり、娘さんの写真がさらされたりみたいなことになっていっちゃうわけでしょ。ものすごくエスカレートする。

http://ironna.jp/article/828

第三者である池上氏は植村氏や家族に対する個人攻撃を煽ったのは文春記事であると指摘しているわけです。それも「あれはやりすぎだと私は思いましたね」「あたかも煽ったかのように思えますよ」「これについては週刊文春の責任が大きいと思います」と、植村氏側とはとても言えない産経系ネット記事で書かれたわけです。

要するに世間一般的な認識としても、文春・西岡の記事は植村氏や家族に対する個人攻撃を煽るものであり、その因果関係は明らかだということです。産経としてはとんだ後ろ弾丸となりかねない池上記事と言えるでしょう。

週刊文春西岡力氏に損害賠償が命じられる可能性は極めて高いでしょうね。

*1:記事そのものには池上氏らしくおかしな記述もありますが。